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Fujitsu

Japan

VOICE ~ETERNUSの現場から

1つの技術・製品は、開発、販売、サービスなど、数多くの担当者の手を経て世に送り出されます。「VOICE ~ETERNUSの現場から」では、富士通ストレージシステム「ETERNUS(エターナス)」の技術・製品にかかわる担当者にスポットをあてて、開発や販売にまつわるエピソード、製品への熱い想いなどを紹介します。

「ETERNUS DX series」が世界に提供する高信頼技術とは

今回は、ETERNUS DX400/DX8000 series にみる"ETERNUS品質"とは何か、そして世界市場にその価値をどう提供できるのかについて、富士通の山中、今井に聞きました。

(注)本稿は@ITで2010年2月に紹介した記事より、編集・構成しています。


  • 富士通株式会社
    • ストレージ事業本部 ストレージシステム事業部 ハードウェア担当
      山中 亮一郎
    • ストレージ事業本部 ストレージシステム事業部 ファームウェア担当
      今井 泰武

――富士通は2009年11月に、ミッドレンジ/ハイエンド・ストレージシステムの呼称をそれぞれ「ETERNUS DX400 series」(旧名称ETERNUS4000)「ETERNUS DX8000 series」(旧名称ETERNUS8000)に改めた。それは単なる名称変更ではなく、エントリーストレージを含めてストレージシステムのラインナップを再定義し、全世界で統一して、グローバル展開を本格化しようという強い想いを込めたものだった。富士通のミッドレンジ/ハイエンド・ストレージが、日本から世界に提供できる価値とは何か。

ストレージ製品開発でこだわってきた「高信頼性」とは?


富士通は2009年、IAサーバの開発機能をドイツにある富士通テクノロジー・ソリューションズの開発センターに集約した一方で、ディスクアレイの開発機能は日本に集約し、日本発の世界市場攻略を進めています。

ETERNUS DX400 seriesとETERNUS DX8000 seriesは標準およびオプションで、多彩な機能を提供しています。例えば128bit AESによるデータ暗号化、災害対策のためにストレージ間の自動データ転送を実現するリモート・アドバンスト・コピー機能、RAIDグループの活性容量拡張、ボリュームの活性容量拡張、MAIDによる消費電力の削減機能など、ミッドレンジ/ハイエンドの分野で、最も多彩な機能を備えたストレージシステム製品シリーズの1つに数えられます。

しかしそれは、機能の数を増やすこと自体を目的としたわけではなく、あくまでもユーザーのニーズに応じられるかどうか、また、逆に新機能によってユーザー企業に迷惑を掛けることはないかを検討したうえで、実装の可否を判断してきた結果でした。

富士通がストレージ製品の開発で、昔から最もこだわってきたのは高信頼性です。これも、データを守ることが、ユーザーの最も基本的なニーズを満たすことにつながるという信念からです。

今井

「『ETERNUS』という製品シリーズ名は『ETERNAL』(永遠)から来ています。このことが示すように、当社ではお客様のデータを守るという部分を最優先し、一丸となって開発を進めています。この点に関しては昔から培ってきたものであり、これからもどこにも負けないつもりで、何をするにしても意識しています。おかげさまで富士通のストレージは、ミスの許されない官公庁や金融関連などの基幹システムの分野で広く導入されています」(今井)。

それだけにトラブルが起こってしまった場合には影響が非常に大きい。

――理想的なのは、予想できる使用期間中に、どの部品もまったく壊れないようなストレージシステム。しかし、利用するかぎりいずれかの部品に障害が発生する可能性は、どんなストレージシステムのメーカーでも回避できない。大切なのは「きちんと壊れてくれる」システムであることだった。

富士通ストレージ製品における障害対策とは?


富士通における対策その1は出荷前の徹底的な検査。

「抜き取りでなく全数検査を行う。少しでもおかしいところがあれば交換し、再検査して出荷する」。これが富士通の根本的な考え方です。

対策その2は、部品が壊れた場合でも稼働を止めない設計。

山中

「ハードウェアの担当者としては、必ず壊れることを想定しなければなりません。壊れたときにどう壊れたのかが重要です。当社のストレージではすべての部品を冗長化し、1つの部品が壊れたことで装置がダウンしないようにしています。製品評価の段階では、すべての部品についてエラーを起こす試験を行い、装置としてダウンしないことを確認しています。つまり、壊れるならばきちんと壊れてくれる、装置としてダウンしないように壊れてくれるということです。そこは他社に比べて富士通が優れているところだと思います。お客様にしてみると、壊れたものは壊れたと見えてしまいます。しかし問題のないように壊れてくれることも重要なこと。装置をダウンさせてしまう、あるいは止めなくては修理できないというのではお客様に迷惑がかかってしまいます。われわれとしてはそういう意識を持って、部品が壊れても影響を局所化するようなつくりにしているのです」(山中)。

対策その3は予防保守サービス。

ストレージシステムに障害の予兆やトラブルが発生すると、システムが自動的に電子メールでサポートセンターに通報します。このメールに記載された情報に基づいて、スタッフが問題を迅速に解決する仕組みが用意されているのです。

対策その4はトラブルシューティングを円滑化するツールの提供。

「トラブルが起きたときに、ストレージシステムの動作ログをソフトウェアツールにかけてもらうと、何が起きているのか、何をすればいいのかが分かる。そういう仕組みで即時対応できるようにしています。通常の障害対応は、壊れた部品を交換してもらえばいいので、日常的に使う管理ツールでは細かい情報を表示しないケースがありますが、どこが壊れたのか、どう壊れてしまったのかを知る必要のあるお客様もいらっしゃいます。このため、求められたときには出せるようにという仕組みを用意しているのです」(今井)。

――高信頼性を基本としながら、ETERNUS DX400/DX8000 seriesでは技術の進歩や、ユーザーのニーズおよび利用目的の変化に対応して、設計の変更や機能の追加を進めてきた。

技術進歩とともに発生する問題もある?


一例として、ディスクドライブ容量の飛躍的な向上が挙げられます。SATAドライブでは1TB(2010年12月時点2TB)の製品が使えるようになってきました。しかし、ドライブ当たりの容量向上に比べ、回転数の向上はあまり期待できないのが現実です。このことは、例えばRAIDのリビルド作業の長時間化につながってしまいます。技術が進歩したからこそ発生する問題もあるのです。

例えば、RAID 5でディスクドライブ1基が故障すれば、即座に新規ディスクドライブを入れ替えてリビルド作業を行えば、ストレージシステムの稼働を続けながら修復ができます。しかし、ディスク当たりの容量が大きいほどその作業に時間が掛かってしまう。富士通のストレージのファームウェアでは、リビルド作業を実I/Oの合間に行うよう、自動的に低い優先度で制御するため、リビルド作業が実I/Oのパフォーマンスに与える影響は少ない。しかし、リビルド作業の間に同一のRAIDグルー プを構成するディスクドライブがもう1台壊れてしまうと、もはや修復は不可能になる。つまり、リビルド作業に掛かる時間が長くなるほど、データロスのリスクが増大するわけです。

1つの対策として、ハイエンド・ストレージ製品に広がっているのはRAID 6への対応です。RAID 6なら、パリティを二重に保持することによって、同時に2台のディスクが壊れていても、復旧が可能です。ただし、RAID 6はRAID 5に比べてディスクドライブの利用効率が低下するため、敬遠されがちです。

故障以前に予兆を検知する?


ETERNUS DX400/DX8000 seriesでは、より経済的な仕組みとして、「リダンダント・コピー機能」を提供しています。これは、RAIDグループ内のディスクドライブに故障の予兆を検出すると、自動的にスペアディスクに対してバックグラウンドでデータの再構築を実施する機能です。新規スペアディスクにデータを再構築してしまえば、故障しそうなディスクドライブを切り離してスペアディスクをRAIDグループに組み込むことができます。

さらにコスト効率がいいのは「ディスクドライブパトロール」です。ディスクドライブをシステムが定期的にチェックし、いずれかのドライブのブロックにエラーが検出されるとRAIDグループのほかのディスクドライブのデータから正しいデータを計算し、このデータだけを別のブロックに書き込むというものです。

また、データ量の増大ペースが高まり、業務を停止させずに容量拡張したいというニーズも急速に高まっています。これに対しては、既存のRAIDグループに、稼働を止めることなくディスクドライブを1台ずつ追加できる機能があります。同じく稼働を止めずに、論理ボリューム(LUN)を拡張できる機能を組み合わせて利用することも可能です。

――新しいニーズの背景には、ストレージ統合や仮想化の普及という大きなトレンドがある。いずれも、サーバとストレージがもはや1対1の関係ではなく、ストレージ1台で多数のサーバのI/Oを引き受けることを意味している。このことは、パフォーマンス管理に大きな影響をもたらす。

性能もパフォーマンスも。ますますストレージに求められるニーズにどう応える?


「10台のサーバのデータを1台のストレージにまとめられ、なおかつ10台のストレージと同じ性能が出せるということが求められています。性能向上はこれから先も課題であり続けるでしょう」(今井)。

ETERNUS DX400 series ディスクアレイ ETERNUS DX8000 series ディスクアレイ

ETERNUS DX400/DX8000 seriesではコントローラ用のプロセッサおよびキャッシュを強化するとともに、ファイバチャネルディスクのドライブインターフェ-スを4Gbpsに高速化。SSDも搭載できるようにして、高度な性能ニーズに対応しています。ただし、SSDを使えば速くなるという単純な話ではありません。

「道路にスピードを出している車(ディスクドライブ)がいると、これからその道路に合流しようとしてくる車はなかなか合流できずに待たされてしまう可能性もある。飛ばしすぎないことで、装置全体のパフォーマンスを引き出せるケースもあります」(今井)。

パフォーマンスを追求したいユーザーには、富士通でストレージの性能管理を担当する部署で、専任のスタッフがニーズに合わせてチューニングのアドバイスを行える体制を築いています。

また、コスト効率の向上と環境への配慮も最近のニーズとして顕著です。例えばストレージ容量の仮想化「シン・プロビジョニング」や富士通のストレージがいち早く実装したMAID(Massive Array of Idle Disks)技術があり、環境への配慮という点で非常に注目されるようになってきました。

――IT業界における最大のキーワード「クラウド・コンピューティング」にどう対応していくのか。ストレージメーカーの間でも「クラウド」という言葉に紐付けた、製品の宣伝合戦が繰り広げられている。

クラウド、そしてグローバル展開、ストレージ事業はどう挑むのか?


ETERNUS DX8000 seriesは、ディスクドライブを最大2760台、記憶容量を2.7PBまで確保(2010年12月時点5.4PBまで確保可能)できるため、拡張性という点ではすでにかなりのレベルまで到達しています。また運用スリム化、全体最適化といったクラウド要件も上述の機能をはじめソフトウェアとの連携ソリューションで実用レベルに達しています。

今後も富士通におけるサービスやサーバを含めた全社的な取り組みの進展とともに、これから導き出されるニーズに応える機能を、製品に組み込んでいく予定です。

ストレージ事業のグローバル展開の過程では、欧州や米国の事業担当者からのリクエストに基づき、日本では提供していないモデルやオプションを追加したり、管理用のユーザーインターフェ-スをカスタマイズするなど、個別対応にも力を入れています。

――1つの製品(日本品質)を世界中に押し付けるのではなく、個々の市場ニーズにも応えながら、高い品質とサポート体制を提供していくこと。これが富士通のストレージ事業をグローバル展開していく上で、これからも大きな柱となっていく。

(注)本稿は@ITで2009年9月に紹介した記事より、編集・構成しています。
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

次回 『私たち、「安くて使いものになる」ストレージつくりました

掲載日:2010年12月9日


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