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サーバ仮想化環境で求められるストレージとその技術

ICTシステムの効率化、TCO削減といった課題の解決策として多くの企業が仮想化技術を導入している。特にサーバ仮想化は本格的に普及が拡大しているが、その一方でさまざまな課題が顕在化している。サーバ仮想化環境におけるストレージ管理の課題とその解決策の1つであるストレージ仮想化について概観する。

(注) 本連載ではIDCのレポートを基に、中小規模の企業=1~999人以下、大規模の企業=1,000人以上と定義している。

サーバ仮想化環境下でのストレージ管理の課題

IDCの従業員規模別「サーバ仮想化(仮想化ソフトウェア利用)の導入状況」という調査によると、サーバ仮想化を導入済みの企業は中堅中小企業が20.5%、大企業で33.5%、導入を予定または検討している企業は中堅中小企業が34.7%、大企業で36.1%に上る。どちらも昨年度の同調査の結果より伸びており、サーバ仮想化の導入が順調に普及していることが伺える。
IDCはその他にもサーバ仮想化に関してさまざまな調査を行っている。まず、「従業員規模別 サーバ仮想化環境におけるストレージ管理の課題」という調査の結果を見てみよう。

従業員規模別「サーバ仮想化環境におけるストレージ管理の課題」のグラフ

「データ量の増大」「災害対策の強化」「管理者のストレージスキルの不足」などはストレージ管理に関して企業の多くが挙げる課題と同じだが、ここでは「ストレージのI/O性能の向上」「障害発生時の問題箇所の特定が困難」という回答に注目したい。

サーバ仮想化は、コンピュータのリソースを分配して複数のサーバを仮想的に稼働する技術である。利用する物理サーバの台数を減らし、コスト削減につながるが、その分サーバの論理環境は複雑になり、管理が難しくなる。サーバが仮想化されていても、ストレージが仮想化に対応していなかったりストレージの性能が十分でなかったりする場合、それがボトルネックになってシステム全体の効率を下げる場合もある。この代表例として「ストレージのI/O性能の向上」という課題が挙がっていると言える。
また、複雑なサーバ仮想化環境では、障害が発生したとき、問題箇所の特定に時間がかかることがある。これはサーバ、スイッチを含むネットワーク、ストレージといった論理的な接続構成が複雑な点から、問題箇所の究明やそこから起因する業務への影響範囲の特定を難しくすることがある。「障害発生時の問題箇所の特定が困難」は、この問題を指し示している。

では、これらの課題に対してどのような解決策があるだろうか。IDCは、従業員規模別「サーバ仮想化環境におけるストレージ管理課題への対応(実行済み)」という調査を行っている。

従業員規模別「サーバ仮想化環境でのストレージ管理課題への対応」(実行済み)のグラフ

「仮想サーバ管理ツールへのプラグイン機能の利用」のほか、ストレージ仮想化、シン・プロビジョニング、デ・デュプリケーション、スケールアウトストレージといった、ストレージ仮想化関連の技術の利用が挙げられている。主な技術とその期待効果は後述するが、サーバ仮想化を成功に導くポイントは、ストレージ仮想化にあると言ってもよいだろう。

ストレージ仮想化技術の導入とその効果

IDCでは、ストレージ仮想化の導入目的について調査を行っている。

従業員規模別「ストレージ仮想化の導入目的」のグラフ

「資産の有効利用」「ハードウェアコストの削減」「運用/管理の効率化」「容量の有効利用」「運用/管理コストの削減」「信頼性/可用性の向上」「柔軟な構成変更の実現」といった回答が多い。ストレージ仮想化によって、コスト削減、運用効率を高めたいという意思が感じられる。

では、ストレージ仮想化の導入によって具体的な成果を見てみよう。

従業員規模別「ストレージ仮想化の導入成果」のグラフ

この調査結果からは、ストレージ仮想化の導入によって目的どおりに成果を上げていることが伺える。

ここでストレージ仮想化に関連する技術について見直してみたい。
シン・プロビジョニングは、仮想的にディスク容量を割り当てることで、実際に利用するストレージのディスク容量を抑える技術であり、コスト削減や運用効率が期待できる。IDCの従業員規模別「シン・プロビジョニングの導入目的」という調査では、導入目的として「ストレージ容量の利用率向上」「サーバ仮想化環境でのストレージ管理の効率化」「ストレージハードウェアコストの削減」「容量増の要求への迅速な対応の実現」「容量予測作業に関する負荷軽減」との回答が多い。
デ・デュプリケーション(重複排除)は、データ内に含まれる重複部分を排除する技術である。データ自体の容量を減らすことで、必要なディスク容量の削減と利用効率の向上を実現する。現状ではバックアップストレージとしての導入が進んでいる。IDCの従業員規模別「デ・デュプリケーションの導入目的」という調査では、「バックアップ時間の短縮」「バックアップデータの容量削減」「管理者のバックアップ/リストア作業の負荷軽減」「リストアの高速化」「バックアップ統合」などの目的に導入されていることが明らかにされている。

従来型ストレージは容量が固定されており、容量の拡張が必要になった場合にはストレージ自体を追加する必要があった。これに対し、スケールアウトストレージは、ノードを追加することで簡単かつシームレスに容量を拡張できる。容量・性能の管理が容易であることに加え、最初は最低限の投資だけで済み、必要になったときにのみ容量・性能を追加すればよいため、ハードウェアコストの削減が可能になる。
IDCの従業員規模別「スケールアウトストレージの導入目的」という調査でも、多くの企業が「柔軟な容量の拡張性」「柔軟な性能の拡張性」「導入/構築が容易」「運用/管理が容易」「設定が容易」「サーバ仮想化環境に適している」などと回答している。

仮想化環境下におけるストレージ管理

サーバ仮想化の普及が進む一方で、ICTシステムの性能が上がらない、障害時の対応が難しいといった、仮想化環境ならではの課題も浮き彫りになってきている。ストレージはサーバが管理するリソースの1つであり、場合によってシステム全体の性能向上を妨げるボトルネックとなりかねない。サーバ仮想化導入によるメリットを享受するには、ストレージの性能、利用効率、拡張性を向上するストレージ仮想化が必要になる場合もある。
ストレージ仮想化については、シン・プロビジョニング、デ・デュプリケーションといった技術に加え、スケールアウトストレージに注目が集まっている。重要な企業データを保持するストレージをいかに効率的に活用するかを考え、サーバ仮想化とともにこれらの技術の導入についても検討することが重要である。

更新日:2017年5月31日
掲載日:2013年10月1日

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