要件からカタログ化! "総合力"に長けた富士通のクラウド構築ソリューション - NetApp Innovation
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「最強クラウドの作り方」というサブタイトルが掲げられた今年のカンファレンスでは、クラウドデータ管理をテーマにベンダー各社が最新テクノロジーを披露。オールフラッシュで構成される新製品や、Amazon Web Servicesらが展開するパートナーソリューションなど、幅広いトピックスが取り上げられ、ストレージ業界の近未来像を示すイベントとなった。
本稿では、パートナーの技術が紹介された個別セッションの中から、クラウド環境の構築/運用ノウハウを披露した富士通の講演『クラウド環境を支える富士通のトータルソリューション ~データの維持管理から確実な業務運用まで~』の内容を簡単にレポートしよう。
5万超の案件からクラウド構築ノウハウを体系化
「富士通では、これまで富士通が手掛けてきた商談の中から、累計5万7000件にものぼるお客様要件を抽出、ノウハウとして体系化し、クラウド化をはじめ、お客様のさまざまなICT活用シーンの進化のお手伝いをしています。これこそが、他社では真似できない大きな強みだと思っています」
富士通 システムビジネス営業推進本部 プロダクト拡販推進統括部 ストレージビジネス部の軸丸洋行氏は、講演の冒頭でこのように語り、満員の聴衆の関心を引きつけた。
一口にプライベートクラウド基盤と言っても、仮想化したサーバをデータセンターに置いた程度のシステムから、何十万人もの社員を抱えるグローバル企業が国を跨って活用する大規模なシステムまで、考えられる形態はさまざま。そのため、ユーザー企業自身で明確な要件を洗い出せるケースは稀で、何から取りかかればよいのかさえわからない情報システム部門も多いようだ。
富士通 システムビジネス営業推進本部 プロダクト拡販推進統括部 ストレージビジネス部の軸丸洋行氏
そうした状況を踏まえ、富士通では膨大な事例をベースにユーザーの要件と対応ソリューションをカタログ化。それぞれ6段階にレベル分類された32種類の利用シーンを定義している。
それらの資料と照らし合わせながらシステムの現状を分析したうえで、将来あるべき姿、当面のターゲットを見つけ出し、プロジェクトの共通認識としてロードマップの共有、プロジェクト推進が可能であるという。
5万7000件の実績をもとにプライベートクラウドの構築要件を体系化
サービスレベルをもとにプライベートクラウド基盤を選定
クラウド基盤を選定する上で、富士通が判断材料としているのが、各種業務で求められるサービスレベルだ。
軸丸氏は、具体的な項目として、「サービス停止許容時間」、「リカバリポイント」、「サービス提供時間」、「サービス稼働率」、「ハードウェア復旧時間」などを列挙。それぞれの数値を洗い出したうえで、パターン化されたサービスレベルに応じて業務を分類、プライベートクラウド基盤の構成を判断していくことを説明した。
ハードウェア構成に関して、昨今、有力な選択肢となっているのが、垂直統合型システムである。
クラウド基盤を短期に構築したい、運用を簡略化したい、あるいは信頼性を重視したい、という場合には垂直統合型がお勧め。ベストプラクティスを凝縮するかたちでハードウェアからOS/ハイパーバイザー、運用管理ソフトまでが、細かいチューニングを施した上で統合されているため、ユーザー企業の負担は圧倒的に少ないです」(軸丸氏)
富士通では、「FUJITSU Integrated System Cloud Ready Blocks」(以下、Cloud Ready Blocks)というブランド名の下、4モデルの垂直統合型システムを提供している。上限目安を60VMとするブレード型の小型モデルから、1000VM程度まで対応できる1ラックタイプの大型モデルまで取り揃えており、ユーザー企業が最適なものを選べる環境を用意している。
また、Cloud Ready Blocks 4モデルのうち上位3モデルには、NetAppのOEM製品として提供している「ETERNUS NR1000 series」も適用可能で、富士通が提供する垂直統合基盤のストレージとしてNetApp製品も使えるという。
Cloud Ready Blocksのラインナップ
軸丸氏は、Cloud Ready Blocksの事例として関東学院大学の学内基幹システムの統合案件を紹介。導入コスト、構築期間が約40%削減されたうえ、セルフサービスポータルにより仮想マシンの提供プロセスが自動化された結果、それまで1日~2日かかっていた申請から提供までの期間が30分に短縮されたことを明かした。
「専用構築」のポイントはストレージ
軸丸氏は講演の中で、ハードウェアを個別に導入して構築する「専用構築」の要点にも言及した。
そのうちの1つが、異種混在のリソースをプール化し、さらにそれを自動管理できるようにすること。ある程度の規模になれば、セルフサービスポータル機能を用意し、運用の自動化の割合を高めることも推奨した。
この要件を満たすソフトウェアとして、軸丸氏は「ServerView Resource Orchestrator」を紹介。複数のハイパーバイザーが使われている環境でも統合的に管理でき、運用を大幅に効率化できることを説明した。
そしてもう1つ軸丸氏が専用構築のポイントとして挙げたのがストレージである。
重要なデータを大量に捌くことになるプライベートクラウドにおいては、ストレージがボトルネックになることが多い。相応のストレージ容量と性能が求められるうえ、データを保全する仕組みも不可欠で、さらにこれらをコスト効率の高いかたちで実現しなくてはならない。
軸丸氏は、こうした厳しい要件に応えるべく、富士通がETERNUS NR1000 seriesだけでなく、SAN対応ディスクアレイ「ETERNUS DX series」などを提供していることを訴求。小規模から大規模のシステムでも対応できることを強調した。
また、ディスクストレージはシンプロビジョニング機能を備えるほか、ServerView Resource Orchestratorと組み合わせることで拡張性を飛躍的に高まり、初期投資コストを大幅に抑えられることも説明。さらに、重複排除アプライアンス「ETERNUS CS800」やテープシステム「ETERNUS LT series」も提供しており、バックアップに関してもニーズに応じてコスト効率の高い製品を選べることを示した。
特にテープバックアップについては、「技術の進化と相俟ってストレージ業界で見直されている」とし、消費電力を95%も削減できるなど導入メリットが大きいことを解説した。
プライベートクラウド構築の多様なニーズに応える、富士通のストレージ製品群
Data ONTAPと連携してファイルセキュリティを自動化
講演の後半では、富士通エフサス サービスビジネス本部 サービスインテグレーション統括部の林正樹氏が登壇し、ファイルサーバに格納される文書(ファイル)のセキュリティ対策として有効な新たなソリューションを紹介した。
林氏はまず、日本ネットワークセキュリティ協会のデータを引用するかたちで、セキュリティ事故の多くが誤操作と管理ミスに原因があることを説明。ヒューマンエラーが起こることを前提に「機密文書が社外へ出てしまったとしても、文書を開けないようにする対策が必要(二次流出の防止)」(林氏)との見解を示した。
こうした課題を解決するソリューションが、富士通エフサスが開発した「Rightspia for Secure Documents」である。
富士通エフサス サービスビジネス本部 サービスインテグレーション統括部の林正樹氏
Rightspia for Secure Documentsは、「Active Directory Rights Management Services」と連携してファイルサーバのディレクトリに紐づいてファイルを自動的に保護できるソリューション。管理者がディレクトリに対して操作制限ポリシーを設定しておくと、所属部署や役職などに応じて操作制限をかけることが可能だ。ファイル閲覧はもちろん、文字のコピーや画面ショットの取得を制御することもできる。
林氏は、同製品の大きな特長として、ファイルサーバにファイルを置くと即座にファイル保護が実施される点を説明。NetApp製ストレージのOS「Data ONTAP」からイベント通知を受け取ることで実現しているという。また、Microsoft Officeに加えてPDF(Adobe Reader)にも対応している点を訴求していた。
Rightspia for Secure Documentsの概要
最後に林氏は、ソリューションのメリットとして「ユーザーに負担をかけることなく、統一的にファイルセキュリティを施せる」ことを強調。個別に暗号化してパスワードを伝えるといった煩雑な運用を避けられるうえ、ポリシーをクライアント端末に配布する必要がないため、ユーザー追加時などにも管理者の手間が増えることがないことを説明し、壇上を後にした。



