ヨーロッパ南天天文台(European Southern Observatory)は、電波望遠鏡プロジェクトの対応をはじめ、天体観測で得た貴重な観測データを世界中の天文学者に提供するため、確実かつ高速にアクセスできるストレージソリューションを求めていました。そこで富士通のミッドレンジディスクアレイETERNUS DX440 S2とETERNUS DX410 S2を採用。業務を止めない容量のアップグレードや、安定性と信頼性を兼ね備えたシステム構築を実現しました。
2012年3月23日掲載
【導入事例概要】 | |
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国名 | ドイツ |
業種 | 研究所 |
ハードウェア | ETERNUS DX90、ETERNUS DX410 S2、ETERNUS DX440 S2 |
ソフトウェア | ETERNUS SF |
「ETERNUS DX400 S2 seriesの優れた性能に非常に満足しています。また、ストレージ基盤ソフトウェアETERNUS SFも私たちのシステム管理者に大好評です。ETERNUSによってシステム構成の柔軟性も確保でき、管理が容易になりました」。
ヨーロッパ南天天文台 オペレーションテクニカルサポート部門責任者 ディーター・スカール氏
世界トップクラスの観測設備を備えたヨーロッパ南天天文台は、オーストリア、ベルギー、ブラジル、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリスの15カ国が共同運営する組織であり、天体観測で重要な役割を果たしています。現在、加盟国の年間出資額は総額最大1億4,000万ユーロに上り、組織を支えるスタッフ数は700名を超えています。
ミュンヘンに近い、ガルヒングの本部に、管轄部門を含めた、最も重要な科学技術部門があり、所属の科学者やエンジニアには、先鋭的な天文学の知識や設備計器の設計、構築、運営能力が求められ、産業界との連携や技術活用の機会などが与えられています。
導入前の課題 | 導入による効果 | |
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ヨーロッパ南天天文台の本部(ガルヒング)では、望遠鏡ネットワークにより記録された観測データを集約しています。
例えば、チリのパラナル天文台には、最新技術を基にした高性能超大型望遠鏡(VLT)があり、口径8.2mのメインミラー4台と、口径1.8mの可動型補助望遠鏡4台を巨大な光学干渉計として使用できます。また、理論上、地球から月面上にある車の2つのヘッドライトが識別できるほどの超高解像画像(1/1000秒角)を撮影することができます。
このような超大型望遠鏡は、毎夜、膨大で貴重なデータを生成しています。本部では、撮影された映像と技術情報を加盟国が利用できるように、サイベース社の様々なデータベースを稼働させています。
オペレーションテクニカルサポート部門責任者、ディーター・スカール氏(以下、スカール氏)は、次のように語ります。「加盟国や世界中の天文学者は、定期的に私たちのアーカイブから観測データを検索しています。そのため、確実にデータを提供できる高速アクセスのストレージソリューションが求められていました。」
ヨーロッパ南天天文台は、北米、東アジア、チリと連携したアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array:以下 アルマ望遠鏡)の天文学プロジェクトにも参加しています。アルマ望遠鏡は、アタカマ砂漠の標高5,000mの高原にある最も高い観測地の天文台で、2013年の本格稼働までに、パラボラアンテナを66台組み合わせる干渉計方式の巨大電波望遠鏡となります。 性能としては、ハッブル宇宙望遠鏡の約10倍を超える解像度があり、66台の高性能アンテナにより、先進的な望遠鏡ネットワークを実現しています。
アルマ望遠鏡の初期科学観測は2011年から開始されています。「私たちが観測した膨大で貴重なデータは各拠点へ継続かつ確実にデータを送り続けています」とヨーロッパ南天天文台のアルマ・アーカイブ責任者、アレッシオ・ケックーチ氏(以下、ケックーチ氏)は説明します。「この天文台では1日約1TBの研究データを生成し、標高5,000mに蓄積されたデータは、4本のグラスファイバーケーブルを介して40kmの距離を転送されます。」そして、望遠鏡で捉えられた生データは毎日約2,900mの標高に位置するコントロールセンターに集められます。「このために、高い要求に見合うストレージシステムが必要なのです。」とケックーチ氏は語ります。
望遠鏡が捉えた画像に加えて、メタデータを保管することも必要です。
「私たちのデータ分析にはどの環境で画像が捉えられたのかを判断することが重要です。つまり撮影された画像だけでなく、望遠鏡が設置された場所の風速や温度などのデータが含まれています。これらのデータは、一晩中、常に収集し保存されているので、どの観測所からのデータ増加にも、対応できなければならないことは明らかでした。」とスカール氏は説明します。
「加盟国や世界中の天文学者などが求める様々な要求に対応するため、処理にあわせてデータの保存先を割り当てています」とスカール氏は説明します。「これまで、運用していたETERNUS DX90 エントリーディスクアレイで、良い結果を出していましたが、さらに高性能なストレージを選択することにより、ストレージ市場の先端技術に目を向けてみることにしました。その結果、再び富士通を選択肢の一つとして選ぶことになりました」。
ガルヒング にあるヨーロッパ南天天文台本部で数か月の検証試験の結果、ミッドレンジディスクアレイの最新機種であるETERNUS DX440 S2が採用されました。ETERNUS DX440 S2は、冗長化されたコンポーネントとRAIDによるデータ保護技術により信頼性が高く、また、スケーラビリティに優れ、急激なデータ増加にあわせて2.5インチのディスクドライブを960本までフレキシブルに拡張することができます。今回、ヨーロッパ南天天文台では容量50TBでシステムを構成しています。
「ETERNUS DX440 S2の優れた性能に大変満足しております。また、ストレージ基盤ソフトウェアETERNUS SFはシステム管理者に大好評です。ETERNUSによってシステム構成の柔軟性も確保でき、管理が容易になりました」とシステム管理者の一人スカール氏は強調します。
「サイベース社のデータベースサーバに2,500 Mbit/sで接続されたETERNUS DX440 S2 ディスクアレイを通してデータフローが実行されます。共有ストレージとしてのETERNUS DX440 S2の性能は非常に優れており、ほかのアプリケーションが同時にシステムにアクセスした場合でも、1,400 Mbit/sでユーザーにデータを提供できます」とスカール氏は検証での結果を語ります。
ヨーロッパ南天天文台の本部(ガルヒング)でDX440 S2を採用したのに対し、アルマ望遠鏡の科学観測では、ファイバチャネルやiSCSI、FCoEなど豊富な接続性と相互運用性を提供するやや小さめのETERNUS DX410 S2がアルマ望遠鏡のニーズにマッチしていました。
「様々なシステム比較を経て、富士通を選びました。ETERNUS DXの比類ない性能とコストパフォーマンスが選ぶきっかけになりました」とアルマ望遠鏡アーカイブ責任者、ケックーチ氏は語ります。 さらに「まず、本部でこのシステムの検証を行い、テストに合格した富士通はチリでの運用許可を与えられました。富士通担当者はこの導入にあたり素晴らしいサポートをしてくれています」とケックーチ氏は続けます。
チリのアルマ望遠鏡に導入されたETERNUS DX410 S2の総容量は10TBあります。このシステムは4台のPCサーバ PRIMERGYでクラスタ構成されています。ここからのデータは、チリの首都、サンティアゴのメインデータセンターに転送し、ドイツ、米国、日本にあるアルマ望遠鏡の統括センターで複製します。この遠隔地へのリモートコピーはETERNUS DXの主要な機能であり、データ保護には不可欠なものです。
ドイツ ガルヒングの本部やチリのアタカマ砂漠であっても、2.5インチ、3.5インチ、SAS、ニアラインSAS、SSDの異種ドライブの混在搭載であっても、ヨーロッパ南天天文台のIT管理者は、ETERNUS DXにドライブを追加するだけで、業務を止めることなく、ダウンタイムゼロで、容量をアップグレードすることができます。
ETERNUS DX400 S2 seriesにより、一年中休むことなく宇宙を観測し続ける望遠鏡に相応しい、安定性と信頼性を兼ね備えたシステム環境を提供することが実現できました。
設立 | 1964年 |
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所在地 | ドイツ |
URL | http://www.eso.org/ |
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