2011年10月25日
これまで本連載では、Oracle VM Server for SPARC 2.0を使用してきましたが、現在(2011年10月25日現在)の最新版は2.1になります。そこで、今回はこれまで構築してきたOracle VM Server for SPARCの環境を2.0から2.1へアップグレードしてみたいと思います。
Oracle VM Server for SPARC Softwareをアップグレードする前に、ファームウェアをOracle VM Server for SPARC 2.1に対応した版数にアップグレードする必要があります。
Oracle VM Server for SPARC 2.1に対応したファームウェアの版数は、Oracle VM Server for SPARC Softwareのマニュアル「Oracle VM Server for SPARC ご使用にあたって」の「第4章 動作環境」で確認できます。
本連載で使用しているSPARC Enterprise T5120の場合、7.4.0 b以降が必要になります。
さて、現在のファームウェアの版数を確認してみましょう。版数の確認方法は第1回を参照してください。
現在適用されているファームウェアの版数は7.3.0.cですので、ファームウェアをアップグレードする必要があります。
では、ファームウェアをアップグレードしたいと思います。
まずはドメインの状態を確認して、ゲストドメインが停止している(inactiveの状態になっている)ことを確認してください。起動している場合は、停止させておいてください。
SPARC Enterprise T5120# ldm list
NAME STATE FLAGS CONS VCPU MEMORY UTIL UPTIME
primary active -n-cv- SP 8 3968M 0.1% 27m
ldom1 inactive ------ 8 2G
ちなみにここでは、ldmコマンドのサブコマンドにショートフォーマットを使っています。サブコマンドのショートフォーマットについては、第5回を参照してください。
次に、ドメインの構成情報を工場出荷状態(factory-default)に戻します。
ldm list-configで現在有効になっている構成情報([current]と表示される構成情報)を確認し、factory-default以外の場合には、factory-defaultに設定します。
SPARC Enterprise T5120# ldm list-config
factory-default
config01 [current]
SPARC Enterprise T5120# ldm set-config factory-default
SPARC Enterprise T5120# ldm list-config
factory-default [next poweron]
config01 [current]
factory-defaultが[next poweron]になっていることを確認したら、サーバを停止させます。
SPARC Enterprise T5120# shutdown -y -g0 -i5
サーバが停止したら、ILOMにログインし、ファームウェアをアップグレードします。
ここでは、ILOMのloadコマンドを使用してアップグレードします。
ファームウェアの入手とアップグレード手順の詳細は、こちらで確認してください。
-> load -source tftp://192.168.10.xxx/tftpboot/firm/147307-01/Sun_System_Firmware-7_4_0_b-SPARC_Enterprise_T5120+T5220.pkg
NOTE: An upgrade takes several minutes to complete. ILOM
will enter a special mode to load new firmware. No
other tasks can be performed in ILOM until the
firmware upgrade is complete and ILOM is reset.
Are you sure you want to load the specified file (y/n)? y
Do you want to preserve the configuration (y/n)? y
.........................................................................................................................
Firmware update is complete.
ILOM will now be restarted with the new firmware.
ファームウェアのアップグレードが終わると、自動でILOMが再起動します。再起動後ILOMにログインして、ファームウェアが適用されているか確認しましょう。
-> show /HOST
・・・省略・・・
sysfw_version = Sun System Firmware 7.4.0.b 2011/05/17 13:24
ファームウェアがアップグレードされていることが確認できたら、サーバを起動しましょう。
-> start /SYS
Are you sure you want to start /SYS (y/n)? y
Starting /SYS
Oracle VM Server for SPARC 2.1をインストールする前に、Oracle VM Server for SPARC 2.0を削除する必要があります。
ldmdデーモンを停止して、二つのパッケージを削除します。
SPARC Enterprise T5120# svcadm disable ldmd
SPARC Enterprise T5120# pkgrm SUNWldm
次のパッケージは現在インストールされています:
SUNWldm LDoms Manager software
(sparc.sun4v) 2.0,REV=2010.09.02.10.08
このパッケージを削除しますか [y,n,?,q] y
## インストール済みパッケージインスタンス
このパッケージには、パッケージの削除の処理中にスーパーユーザーのアクセ
ス権で実行されるスクリプトが含まれています。
このパッケージの削除処理を継続しますか [y,n,?,q] y
## 大域ゾーン内でパッケージ
・・・省略・・・
## システム情報を更新中です。
SPARC Enterprise T5120# pkgrm SUNWldmp2v
次のパッケージは現在インストールされています:
SUNWldmp2v LDoms P2V tool
(sparc) 2.0,REV=2010.09.02.10.08
このパッケージを削除しますか [y,n,?,q] y
## インストール済みパッケージインスタンス
このパッケージには、パッケージの削除の処理中にスーパーユーザーのアクセ
ス権で実行されるスクリプトが含まれています。
このパッケージの削除処理を継続しますか [y,n,?,q] y
## 大域ゾーン内でパッケージ
・・・省略・・・
## システム情報を更新中です。
これで、パッケージの削除は完了です。
Oracle VM Server for SPARC 2.1インストールの準備ができましたので、インストールしたいと思います。
最新のOracle VM Server for SPARC Softwareは こちらからダウンロードできます。
ここでは、ダウンロードしたアーカイブを以下のディレクトリに配置しました。
SPARC Enterprise T5120# cd /opt/software/
SPARC Enterprise T5120# ls -l p12569204_210_SOLARIS64.zip
-rw-r--r-- 1 root root 1618909 7月 25日 16:25 p12569204_210_SOLARIS64.zip
では、解凍してインストールしましょう。
SPARC Enterprise T5120# unzip -q p12569204_210_SOLARIS64.zip
SPARC Enterprise T5120# cd OVM_Server_SPARC-2_1
SPARC Enterprise T5120# ./Install/install-ldm
・・・省略・・・
Select an option for configuration:
y) Yes, launch the Configuration Assistant after install
n) No thanks, I will configure the system manually later
Enter y or n [y]: n
Verifying that all packages are fully installed. OK.
なお、最後の選択肢については、第1回で説明していますので、そちらを参照してください。
また、Oracle VM Server for SPARC 2.1には必須パッチがありますので、各ドメインに忘れずに適用してください。必須パッチは、Oracle VM Server for SPARC Softwareのマニュアル「Oracle VM Server for SPARC ご使用にあたって」で確認してください。
さて、ここまででOracle VM Server for SPARCのアップグレードは終わりましたので、作成済みのゲストドメインが正常に起動できるか確認したいと思います。
まずは、ドメインの構成情報をゲストドメイン作成時の構成情報に戻します。
SPARC Enterprise T5120# ldm ls-config
factory-default [current]
config01
SPARC Enterprise T5120# ldm set-config config01
SPARC Enterprise T5120# ldm ls-config
factory-default [current]
config01 [next poweron]
config01をnext poweronに設定しました。config01を有効にするためには、OSの再起動ではなく、ILOMのresetが必要になります。OSの再起動だけでは有効にはなりませんので、注意してください。
いったん、OBP(okプロンプトの状態)に落としてから、resetします。
SPARC Enterprise T5120# shutdown -y -g0 -i0
・・・省略・・・
{0} ok
Serial console stopped.
-> reset /SYS
Are you sure you want to reset /SYS (y/n)? y
Performing reset on /SYS
ちなみに、ILOMからコンソール接続していてそれを切断するには、#.(シャープ+ドット)を続けて入力します。入力した #. は画面には表示されません。
では、サーバが起動したらログインをして確認してみましょう。
まずはOracle VM Server for SPARCのバージョンです。
SPARC Enterprise T5120# ldm -V
Logical Domains Manager (v 2.1)
Hypervisor control protocol v 1.7
Using Hypervisor MD v 1.3
System PROM:
Hypervisor v. 1.10.0 @(#)Hypervisor 1.10.0 2011/04/27 16:19\015
OpenBoot v. 4.33.0. @(#)OpenBoot 4.33.0.b 2011/05/16 16:27
バージョンが 2.1になっていることが確認できますね。
次にゲストドメインが起動できるか確認しましょう。
SPARC Enterprise T5120# ldm ls
NAME STATE FLAGS CONS VCPU MEMORY UTIL UPTIME
primary active -n-cv- SP 8 3968M 28% 3m
ldom1 inactive ------ 8 2G
SPARC Enterprise T5120# ldm bind ldom1
SPARC Enterprise T5120# ldm start ldom1
LDom ldom1 started
SPARC Enterprise T5120# ldm ls
NAME STATE FLAGS CONS VCPU MEMORY UTIL UPTIME
primary active -n-cv- SP 8 3968M 0.2% 5m
ldom1 active -n---- 5000 8 2G 0.1% 2m
ゲストドメイン(ldom1)が正常に起動していますね。"FLAGS"の"n"はそのドメインのOSが起動している状態を表します。"FLAGS"が"t"だと、そのドメインはOBP(okプロンプト)の状態であることを表します。
これでゲストドメインの起動も正常に確認できましたので、Oracle VM Server for SPARC 2.1へのアップグレードは完了です。
次回以降は、Oracle VM Server for SPARC 2.1をベースに話をしたいと思います。
応援メッセージはtwitterにて、ハッシュタグ #fjsparc までお願いします。