減圧気化冷却技術「Vapor and Liquid Loop Cooling」
プロセッサ上部に設置されたクーリングプレートとラジエータが一体となったVapor and Liquid Loop Coolingユニットは、ポンプによって冷却水が循環する液体冷却ユニットです。ユニット内部の気圧を下げることで、効率的にプロセッサの冷却ができる減圧気化冷却を実現しています。
プロセッサの上部には、冷却水が通るクーリングプレートが設置され、プロセッサの熱を回収しています。
Vapor and Liquid Loop Coolingユニット内部が減圧されているため、冷却水はおおむね50℃程度で気化するようになっています。プロセッサの熱を受け取ると同時に、冷却水は気化します。液体が気化する際に熱を奪う現象により冷却されます。
この気化状態を含む冷却水を、ポンプの力で強制的にラジエータまで運び、Vapor and Liquid Loop Coolingユニットに隣接するファンからの送風によって冷やし(空気冷却)、高熱を帯びた冷却水の温度を下げています。
クーリングプレート部分で発生した蒸気は、空気冷却が行われるラジエータ部分で消滅し、全て元の冷却水になります。
SPARC M10で採用しているLiquid Loop Coolingと比較して、SPARCM12に搭載しているVapor and Liquid Loop Coolingは約2倍の冷却性能向上を実現しています。
このVapor and Liquid Loop Coolingユニットでは、液体冷媒をユニット内部のポンプで効率よく循環させるため、サーバの外部から液体冷却のための特別な設備やメンテナンスが必要ありません。また、冗長化された2個のポンプが冷却水の循環を行い、信頼性の高い液体冷却を実現しています。
ハイブリッド冷却の効果
メモリレイテンシの低減
年々、プロセッサは高性能化し、その発熱量は増加しつづけています。そのため、従来のサーバではファンの最も近い場所に発熱量の多いプロセッサ(CPUモジュール)を実装するなど、部品の実装位置に制約が生じていました。
Vapor and Liquid Loop CoolingおよびLiquid Loop Coolingでは、冷却水をユニット内部で循環させるため、放熱部をプロセッサから離すことができます。放熱性を高めることで、プロセッサとファンの実装位置を隣接させる必要がなくなり、各部品の実装位置に自由度をもたらしました。
そのため、プロセッサとメモリの実装距離を短縮することができ、低レイテンシでのメモリアクセスを可能にしています。さらにSPARC64™ XII、SPARC64 X+、SPARC64 Xはプロセッサ内にメモリコントローラを内蔵しており、プロセッサ外部にメモリコントローラを実装していた前機種と比較して、メモリアクセスの応答時間は最大1/5まで短縮し、高速なデータ転送を実現しています。
省電力化、省スペース化
サーバ内で冷却効率の良い場所へ、冷媒を介して熱を移動させるため、ラジエータの容積は空冷のサーバのヒートシンクと比較して、約20%に小型化しています。さらに、空気冷却を集中的に行うため、ファンの消費電力の削減だけでなく、静音性も向上しています。
部品寿命の向上
プロセッサの冷却だけでなく、サーバ内の冷却効率を大幅に改善しているため、高密度実装を実現しながら、部品寿命の向上を可能にしています。