なぜ、品質向上を追求し続けるのか
富士通はメインフレーム開発を開始して50年。UNIXサーバは、このメインフレームのDNAを引き継ぎ、社会基盤をはじめとする多くのビジネスを世界中で支えている。システム停止につながるようなトラブルの発生は、お客様のビジネスへの影響を及ぼすだけではなく、社会経済の混乱をも引き起こしかねない。さらには、お客様の企業活動における信用にもかかわるであろう。
SPARC M10の品質保証部門は、社会を支えるITインフラに求められる品質を追求し続ける。

久保田 宏之
メインフレーム、UNIXサーバの品質保証に長年携わり、出荷後のお客様サポートも対応する久保田は、SPARC M10の品質保証の方針について語る。
ビジネスをとりまく変化が激しい現代では、ITシステムに求められる要件も変化しています。UNIXサーバ SPARC M10においても、高性能・高信頼に加え仮想化やクラウド環境での安定稼働、世界展開など、お客様に求められる品質は刻々と変化しています。その中で、お客様のITインフラの安全で快適な稼働に細心の注意を払い、変化に対応した品質保証に取り組んでいます。
我々は、常にお客様起点での品質保証をミッションと考えており、2つの基本方針をもとに活動しています。
1つめは、「お客様によりよい製品を他社より早く提供すること」です。
SPARC M10には、競合他社をリードする先進的な機能が数多く搭載されています。これらの機能をいち早くお客様に使っていただくため、「品質は源流から確実につくり込む」という考え方をもとに、開発プロセスの源流である企画段階より品質保証部門も参画します。製品/開発両面での品質目標を設定し、開発部門が策定した仕様に満足せず、お客様から見える影響を意識し第三者視点でレビューを実施します。また、メインフレームで培った評価技術 に加え、最先端技術を採用した論理シミュレータや実装構造シミュレータなどを導入し、QCD(Quality,Cost,Delivery)の最適バランスを追求した活動も行っています。
このような取り組みにより、製品出荷までのリードタイムの短縮を図り、 世界中のお客様が安心して使える高品質なサーバを迅速に提供しています。
2つめは、「お客様業務の安定稼動を保証すること」です。
「たとえハードウェアが故障しても、お客様システムの被害を最小限に抑える設計」を確実に保証するため網羅的な検証を行っています。
その1つが「システムRAS(Reliability,Availability,Serviceability)評価」です。自動的にハードウェア疑似故障を繰り返し発生させ、システムの振る舞いを検証しています。また、ハードウェアの観点では製品仕様上想定される構成(パーテション、メモリ、I/O)などを、ソフトウェアの観点ではOSやパッチ版数の組み合わせなどの整合性確認を行っています。さらにベンチマークツールやデータ処理プログラムの組み合わせにより、高負荷状態や低負荷状態でシステム評価を実施し、安定稼働を担保しています。
トラブルが発生した場合、他社ではその現象を引き起こしている部品の特定が難しいケースがあると聞きます。富士通は正確に故障個所を特定し、復旧時間を短縮化することができます。迅速に問題解決できるのが富士通の強みの1つであり、これはハードウェア・ソフトウェアを「自社開発」しているからこそ可能となるものなのです。
我々は検証による製品の品質管理はもちろんのこと、開発フェーズにおける設計品質、工場等でのものづくり現場の工場品質、出荷後のサポート品質までを掌握し、問題解決、効率化へのPDCAを廻しています。このような取り組みの結果、 SPARC M10を販売開始してから、出荷台数が11,000台に到達しても、ハードウェア故障による業務停止は0件を維持しています。(2015年12月現在)


峯村 徹
入社以来、UNIXサーバの品質保証一筋の峯村は、グローバルに展開するSPARC M10の安定稼働を確実なものにしている。
富士通のUNIXサーバの保守期間は標準で5年ですが、長期サポートモデルでは最長10年に渡ります。私たちはこれらの期間において、お客様のシステムが安定稼働できるよう、開発部門の設計段階(設計検証)から検証を実施しています。

正常時/異常時のサーバ仕様や動作について、富士通のこれまでの知見をもとに論理的なレビューを実施して開発部門にフィードバックしていきます。搭載する部品は全て、単体特性、信頼性評価、成分分析を行っています。ハードウェアを構成する部品には品質のバラツキや経年劣化が否めません。そのため、保証期間内に安定稼動できるように、マージン(部品の正常動作が可能な余白となる部分)をとる必要があります。温度、湿度、電圧等のさまざまなストレスをかけて、全世界のお客様の様々な環境下で安定稼働できるようにテストを実施しています。
SPARC M10は、コンパクトな筐体に高性能なシステムを凝縮した高密度設計という特長があります。私たちが検出した問題に対し、物理的に製品を作らなくても、スピーディーかつ効率的に品質向上を実現できる手法を取り入れています。例えば、CADによるシミュレーションであり、これを駆使して開発部門とクロスレビューを行っています。

また、お客様環境で部品故障が発生した場合に、システムのリカバリで不具合が発生しないかをテストするために、検証ツールの開発・活用による自動化を積極的に行っています。ハードウェアの疑似故障を繰り返し発生させ、システムの振る舞いを確認しています。
さらに、振動評価においては、東日本大震災レベルの揺れに耐える構造になっているか、実機で試験を実施しています。2011年の東日本大震災では、お客様先において、他社ラックが傾き当社UNIXサーバが搭載されたラックにぶつかるという事態が発生しましたが、正常に動作を続けたことを確認し、ほっとしたことを覚えています。

鈴木 孝則
メインフレームやネットワーク品質保証部門を経てUNIXサーバの品質保証に携わる鈴木は、工場とともに取り組んだ量産品質の向上ついて語る。
ハードウェアにとっては、工場における量産過程での品質確保も重要であり、製造ラインや試験にも富士通のノウハウが詰め込まれています。それらは、お客様への納期やコストにも反映されるため、私たちはQCDに配慮した取り組みを続けています。
工場ではお客様の構成に合わせて組み立てるだけでなく、出荷する全機種についてお客様の構成で試験を行うため、検査期間は長くなりがちです。これに対し、私たちのQCD活動によって検査期間は従来機種に比べて約1/2まで削減できるようになり、試験時間の短縮化と品質確保を両立できるようになりました。
これまで、量産品質の検討は設計検証の途中段階で開始していました。SPARC M10からは開発部門の基本設計の段階から企画するよう前倒しを行い、新技術も積極的に導入しています。例えば、SPARC M10の筐体(Building Block)は高速インターコネクトにより、最大16台まで構成できます。しかし、その伝送機能をくまなく試験するには様々な環境下での組み合わせが必要となります。全ての構成を組まなくても、疑似的な試験環境下で伝送機能をもれなく確認できるような試験技術などが挙げられます。
そして、「マニュファクチャリングレビュー」という量産プロセスを新たに策定して、それに則ったレビューも実施しています。量産工程での製造性や試験を向上させるとともに品質問題発生を未然に防止し、安定的な製品供給を可能としました。
SPARC M10の製造は、石川県にある、株式会社富士通ITプロダクツが担当しています。お客様起点でのものづくりを徹底するために全社一丸となり取り組んでいる会社です。今回の量産品質の向上にあたっては、富士通ITプロダクツの協力は欠かせませんでした。私は半年近く工場に滞在し、製造現場の皆さんと議論を繰り返しながら、他社をリードする量産品質を作り上げることができたと確信しています。
株式会社富士通ITプロダクツ


石原 令子
オフィスコンピュータやUNIXサーバの開発を経て、ソフトウェアやドライバの品質保証を担当する石原は、サーバをとりまく環境の変化に対応した品質保証に奮闘する。
近年、仮想化やクラウドといった技術やサービスが浸透し、サーバ製品を取り巻く環境は日々変化しています。お客様の多様なニーズにお応えできるようになる反面、システムは複雑化の一途をたどっています。
SPARC M10も多彩な仮想化機能を搭載しており、複数の筐体で構成するハードウェアパーティション、ファームウェア層での仮想化機能「Oracle VM Server for SPARC」、ソフトウェアレベルでの仮想化機能「Oracle Solaris ゾーン」をサポートしています。これらの機能は進化を続けており、私たちソフトウェア品質保証部門もこの変化にいち早く対応し、お客様に安心して活用していただけるよう、検証プロセスの最適化や評価の質の向上に取り組んでいます。
検証プロセスの最適化の例としては、Oracle Solarisの開発段階からの評価があげられます。富士通はオラクル・コーポレーション(以下、オラクル)とのアライアンスにより、SPARC M10に最適化された機能を開発しOracle Solarisに組み込んでいます。そのため、開発段階からSPARC M10とOracle Solarisとの整合性の保証に深くかかわることが可能です。富士通が検出した問題点はOracle Solarisのオーナーであるオラクルにフィードバックされるため、Oracle Solarisの出荷時の品質向上にも貢献しています。
検証の質という点では、大規模構成や仮想化構成等の多くのバリエーションに対応した保証に注力しています。SPARC M10は、高性能CPUや大容量メモリを搭載しており、仮想化技術を活用すると高集約システムを構築できるという特長があります。そのため、64台のサーバを1台のSPARC M10に統合するケースを想定した検証も構成バリエーションの一つとして実施しています。また、Oracle Solaris 11.2では、OpenStackへの対応、ネットワークやサーバの仮想化機能の強化など、オープンなエンタープライズ・クラウド環境に向けた大幅なエンハンスが行われ、私たちはこれら新技術をどのようにお客様に使っていただけるかという視点で評価し、品質確保につとめました。例えば、仮想化機能はSPARC M10のBuilding Blockと組み合わせると、クラスタソフトウェアなしにクラスタシステム相当のシステムを実現することができます。高可用性システムでありながらコストを抑制できるこのメリットをお客様に享受していただくため、構築/運用/故障復旧動作など、様々な観点からの検証を行っています。


お客様やパートナー様のサポートにおもむく久保田は、SPARC M10の信頼性の重要性を力説する。
SPARC M10は世界中のお客様の基幹業務を担っているプラットフォームです。システム停止をまねくようなトラブルはお客様のビジネスや信用に多大な影響を及ぼすため、あってはなりません。そのため、万が一トラブルが発生しても、メインフレームで培った強靭なRASにより、業務への影響を最小限に抑えることが可能にしています。
また、全世界のお客様に出荷されたSPARC M10の稼働情報やトラブル情報などの品質情報は、サポート部門より我々品質保証部門や開発部門にフィードバックされます。これらを監視・分析することにより、さらなるトラブル解決の迅速化が実現できています。
このような強力な取組みの結果、SPARC M10におけるマシンダウンにつながる故障率は、従来機種であるSPARC Enterpriseに比べ、最大6分の1という結果が示されています。(当社調べ)

我々は確固たる信頼性でお客様のビジネス活動を支えるとともに、お客様の声に真摯に耳を傾けながら企業価値向上に貢献できるような信頼性の高みを目指します。
メインフレームで培った信頼性のDNAは耐えることなく、UNIXサーバで進化を続ける。
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エンタプライズシステム事業本部
品質保証統括部
シニアマネージャー 久保田 宏之 |
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エンタプライズシステム事業本部
品質保証統括部
峯村 徹 |
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エンタプライズシステム事業本部
品質保証統括部
鈴木 孝則 |
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エンタプライズシステム事業本部
UNIXソフトウェア開発統括部 第一開発部
マネージャー 石原 令子 |
2015年7月7日
更新日:2016年4月1日
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