WEC 2023シーズンがいよいよ開幕!
TGRチーム代表兼7号車ドライバー 小林可夢偉の熱き想い

小林可夢偉さんとTGRメンバー

2023年のWEC 世界耐久選手権が、3月15日のセブリング(米国フロリダ州)を皮切りにいよいよ開幕。待ちに待った熱いシーズンが始まります。富士通は、モータースポーツでサステナブルな未来を切り拓くための変革と挑戦をし続けるトヨタ自動車の姿勢に強く共感し、今シーズンもTOYOTA GAZOO Racing(TGR)に協賛し、共に戦ってまいります。
さて、昨年2022年シーズンは、ル・マン24時間レース(以下、ル・マン)での5連覇をはじめ、母国レースである富士6時間レースでも優勝し、結果、4シーズン連続でダブルタイトルを獲得されたというたいへん輝かしい年でした。しかし今シーズンのWECハイパーカーカテゴリーは新たに多くのライバルも参戦します。また、ル・マン24時間レースは今年が100周年記念大会となる注目の年です。TGRのドライバーであり、チーム代表として2年目を迎える小林可夢偉さんはいまどのような思いで何を考え、今シーズンに立ち向かおうとしているのでしょうか。フジトラニュースがお話を伺いました。

目次
  1. チーム代表としての1年を振り返って
  2. 勝ち進めるために重要なこと
  3. パートナーと共に戦うということ

チーム代表としての1年を振り返って

――小林さんにとって昨年2022年シーズンは、ドライバーだけでなく「チーム代表」としても初めてご就任された年でした。1年を振り返っていかがでしたか?

すごくいい経験をさせてもらっている、というのが一番の感想です。4シーズン連続でダブルタイトル獲得という、チームとしては最高の結果を得ることができましたが、ドライバーとしては悔しいレースもありました。ドライバーとして「一番になりたい」という思いがある一方で、チームとして正しい判断をしないといけない・・・そんな葛藤もあって、人として50倍くらい丸くなったんじゃないかなというのが、チーム代表兼ドライバーの二刀流、1年目の結果です(笑)そういう意味でも、チーム代表は僕にとってポジティブな経験として受け止めています。

小林可夢偉さん

――8月にインタビューさせていただいた際には、「モータースポーツ=チームワークだ」(勝つためには車の開発者からドライバーまで大勢のメンバーで力を合わせる必要がある)とおっしゃっていました。チームオーナーである豊田章男代表取締役社長からも、「家庭的なチームでありながらプロフェッショナルなチーム」という目標を掲げられていたと思います。これについてはいかがですか。

「家庭的なチームでありながらプロフェッショナルなチーム」というのは “皆がみんなのために戦う気持ち”があるかどうかだと思っています。その点は、チーム代表としての僕の立場から見ても、チーム全体が既にそのような気持ちを持って戦い、目指す姿に向かっていっていると感じています。ただ僕は、周りから“皆がみんなのために戦っているチーム”だな、と見られるようになって初めて家庭的なチームに近づけたことになると思っているので、今の段階ではまだそれを達成できたとは言い切れません。自分の仕事が終わったらそれで終わりではなく、周りの人たちのサポートを何かできないか、常にチームとしてチーム全体を見て動くことができる、そのような意識が家庭的なチームづくりに必要不可欠ですし、僕としても、ワンチームとして強いチームを作っていくことを心掛けています。昨シーズン、レースを重ねていくたびにチームからそういう部分の意識の変化を感じられたので、いつか皆さんがレースを見に来られる機会があり、TOYOTA GAZOO Racingを近くで見るタイミングがあれば、ぜひそういった面も見ていただけたらなと思います。

勝ち進めるために重要なこと

――WECの今シーズンは、新たに多くのライバルが参戦しますね。勝ち進めるには何が必要と感じていますか。チーム代表として、ドライバーとして、それぞれの立場で教えてください。

勝つために何が必要か・・・一番簡単に言ってしまえば「すべて」だと思います。パズルのピースのようにどれか一つ欠けても達成できないのがル・マンで、それは勝てなかったル・マンで経験し実感しています。ただ、そのすべてを揃えるためには、資金だけでもなく、気持ちだけでもなく、もちろん運まかせでもなく、一つ一つの積み重ね、その積み重ねがタイミングとも重なって、結果につながっていくように思います。自分たちがレースに挑む意味をしっかりと理解し、積み重ねていく、ル・マンで経験してきたことを活かしながら強いチーム作りをやっていきたいです。今年から新しいメーカーも参戦してきますが、ライバルが増えても、周りに惑わされるのではなく、自分たちがやってきたことを信じてやりきることが大事だと思います。それはチーム代表としてだけでなく、ドライバーとしても同じです。新しいことをしても勝ちきれない。やっぱり自分が今までやってきたことを、いかに確実に、精密に、そして極限にやりきることができるか。自分がこれまで経験したことを活かして、最高の運転で力を出し切れるかが大切だと思います。

小林可夢偉さんとTGRメンバー

パートナーと共に戦うということ

――より良い社会の実現に向けて、富士通もモータースポーツの世界にテクノロジーで取り組み、共に戦っていきたいと考えています。昨年の富士では技術協業の可能性についてもディスカッションさせていただきました。当社に期待することがあれば教えてください。

まず富士通さんがなぜWECにトヨタと共に挑むのか。それは、やはり歴史あるル・マンをはじめ、過酷なレースを一緒に戦って、そこで勝つこと、さらにそこで磨かれる技術やテクノロジーをグローバルに世の中に広めていくことを重視いただいているからではないかと思います。一緒に戦ってくださる富士通の皆さんには、ル・マンで戦う意味、ここで戦うスピリットが新しい技術やテクノロジーを生みだすことをまずは知っていただいて、それがいつか世の中のためになるように、一緒に未来を作っていくような活動をしていけたらなと思っています。ぜひこれからもよろしくお願いします!

――はい、モータースポーツから始めるサステナブルな世の中に向けて、ぜひ共に戦わせていただきたいと思います。こちらこそよろしくお願いします。
それではさいごに、初戦のセブリングに向けて、ファンの皆様にひとことお願いします。

2023年の開幕戦ということで、どのチームも不安はあると思います。ただ、僕たちには今までレースをしてきた経験があるので、ここはチームワークを意識して、チームが100%の力を出し切れるように、まずは集中してやることが大事だと思っています。もちろん初戦なので勝ちたい思いはありますが、勝つことだけでなく、自分の力を100%発揮することに集中して、その結果勝つことができるよう、レースに挑みたいと思います。

小林可夢偉さん、開幕前のお忙しいところ、どうもありがとうございました。
富士通では、モータースポーツをはじめとした新たな分野でのチャレンジを通じ、カーボンニュートラルなどのサステナブルな世界の実現をはじめ、社会が抱えている課題の解決に取り組んでまいります。

小林可夢偉さんのプロフィール写真

【小林可夢偉さんプロフィール】

兵庫県出身のレーシング・ドライバー。9歳でカートを始め、2000年には全日本ジュニアカート選手権、翌年は全日本カート選手権ICAの王者に。同年、フォーミュラトヨタ・レーシング・スクール(FTRS)を受けスカラシップを獲得。2002年の15歳誕生日を迎えると限定競技ライセンスを取得し、フォーミュラトヨタで4輪デビュー。2004年からTDPドライバーとして欧州のフォーミュラに挑戦。2008年にはGP2で優勝、翌年はGP2アジア王者に。2010年からF1にフル参戦し、2012年の日本GPで3位獲得。2015年からは日本のスーパーフォーミュラに参戦。2016年からWECへもフル参戦。2017年のル・マン24時間ではコースレコードでポールポジション獲得。2019-2020シーズンは4勝して初のチャンピオンに。2021年はハイパーカーのGR010 HYBRID(7号車)で自身初のル・マン24時間制覇、WECは前年に続きチャンピオン獲得と活躍。2022年からはドライバーを兼任するWECチーム代表にも就任、今年も引き続きWECとスーパーフォーミュラに参戦する。

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