「FUJITRA Festival」に中嶋一貴さんが登場!

富士通では、富士通グループ全体のDX活動を全員参加で推進することを目的に、「FUJITRA Festival」 というイベントを定期的に開催しています。2022年5月30日(月)~6月3日(金)、第7回目となるFUJITRA Festivalは、「腹を割って話そう」をコンセプトに参加者が安心してオープンに議論できることを目指して実施されました。その中の注目セッションの一つとして、ル・マン24時間レースを目前に控えた、TOYOTA GAZOO Racing Europe副会長の中嶋一貴さんをスペシャルゲストに迎え、「極限状態が人を鍛え、技術を鍛える」をテーマにトークライブを行いました。

参加者300人を超え、150件におよぶ質問や応援コメントが届いたトークライブ。中には「ゲストが豪華」「社内イベントとは思えない」などのコメントもあり、大盛況のうちに終わりました。本記事ではそのトークライブの内容を一部ご紹介します。

目次
  1. 「極限状態が人を鍛え、技術を鍛える」 トーク内容を一挙公開
  2. まだまだ聞きます、中嶋一貴さんへの質問コーナー
  3. ル・マン24時間レース5連覇おめでとうございます!
  4. 中嶋一貴さんからのメッセージ

「極限状態が人を鍛え、技術を鍛える」 トーク内容を一挙公開

左上:中嶋一貴さん 右上:CDXO補佐 福田さん 
左下:Mobility事業本部 平原さん 右下:ナビゲーター 近藤さん

――目前に控えたル・マン24時間レースはどのようなレースだと捉えられていますか。

中嶋氏: ル・マン24時間レース(以後、ル・マン)は、100年前からクルマの技術を鍛える場所として続いてきたレースです。ル・マンは速さを競うことはもちろん、限られたエネルギーでどれだけ走れるかというところが重要で、自動車メーカーが技術を鍛えるのに最適な場として考えています。僕もこれまでドライバーとして参戦した経験がありますが、24時間で何が起こるか分からない、何度参戦しても気が抜けない難しいレースです。一方で観戦する側にとっては最後まで楽しめるレースだと思います。

福田: 耐久レースならではの極限状態があるのですね。私はモータースポーツに対して、昔は速さのみにしか注目していなかったのですが、その背後には「技術を進化させたい」というトヨタさんの意志があることに気づきました。「極限状態が人を鍛え、技術を鍛える」をどのような場面で実感されましたか。

中嶋氏: 福田さんの言われた通り、耐久レースならではの極限状態があります。その中で我々は、マシン(クルマ)を鍛える、人を鍛えるところに意義を見出して戦っています。
この10年間で技術が大きく変化しました。ハイブリッドエンジンを使うことでエネルギー効率が各段に向上したのです。通常のエンジンだけで走るマシンと比較すると、ハイブリッドエンジンを使ったマシンはその60%のエネルギーしか使わずに同じスピード、同じ周回を達成できます。さらに、ラップタイムが10秒縮まったこともあり、かなり技術が鍛えられたと実感しています。
技術がどんどん進化しているということは、開発を立ち止まった瞬間、他チームにあっという間に置いて行かれてしまうということです。その緊張感がよりエンジニアの人たちを鍛えていると感じます。さらに2021年からは、各マシンができるだけ公平に走れるよう、性能を調整しながら走るというルールに変更となったため、人がレースの結果を左右するようになりました。技術に加え、人も大きく鍛えられています。

福田: レースの最中だけでなく、365日、技術向上に向けて戦っているということですね。富士通の業界でいうと「アジャイル」というやり方と同義だと思います。トヨタさんもアジャイルで挑戦され、技術者、ドライバーが一体化して戦っているのですね。

中嶋氏: 2014年、トヨタは年間優勝(シリーズチャンピオン)を果たしましたが、その翌年には競合チームが想像していた以上に技術を伸ばし、なんと秒単位で敗北してしまいました。開発のスピードを少しでも緩めると置いて行かれることに気づかされ、レースが人を鍛え、技術を鍛えることを実感した瞬間でした。

――モータースポーツには、データが重要な役割をもつように思います。チームではデータをどのようにパフォーマンスとして活用していますか。

中嶋氏: 実際にマシンを走らせる前にデータでのシミュレーションは行っているのですが、リアルタイムで走っている時のデータ分析は、まだ主に人に依存しています。最終的な判断は人であったとしても、リアルタイムでの分析を自動化させる技術が発展していけば良いなと思います。
また、ル・マンはデータ量がとてつもなく多いので、レースの振り返りをする際、人間よりAIの方が迅速かつ正確にデータを拾い上げることができそうです。これが今後のレース結果や信頼性にも直結してくると感じます。

まだまだ聞きます、中嶋一貴さんへの質問コーナー

ライブでは、中嶋一貴さんご本人やレースに対し、参加者から多くの質問・コメントが飛び交いました。限られた時間内では取り上げられなかった質問に、後日お答えいただきました。

――レーサーがル・マンのような一般道を24時間も高速で走れるのはなぜでしょうか。集中力、体力、メンタル、技術など色々あると思いますが、ル・マンで勝ち抜けるようなトップアスリートの方は何が違うのでしょうか?また、一般ドライバーにも役立つような運転の安全確保のポイントや視点があれば教えてください。

中嶋氏: 端的に言ってしまうと、実戦や練習、日々のトレーニングで繰り返し鍛錬してきたこと、そこからの経験によるところが大きいと思います。モータースポーツでは実際にマシンに乗って練習することのできる時間が限られているので、その時間をいかに有効に使い、経験(失敗も含めて)の中からいかにたくさんの引き出しを作ることができるかが違いを生むと思っています。特にル・マンでは、他のマシンの追い越し時など、アクシデントと常に隣り合わせですので、経験をもとに「~かもしれない」運転を心がけている部分も大きいです。皆さんもよく耳にした言葉だとは思いますが、これは安全運転にはとても有効なメンタリティだと思います。

――今年から、マネジメントの立場でのル・マン参戦となりましたが、レーサーとして関わっていた時とどのような意識変化がありましたか。

中嶋氏: 今年から立場が変わって一番感じたことは、レースを見守る立場になっても、レースに臨む責任感や緊張感の大きさは、多少種類が違えどドライバーの時と変わらないということです。そういった意味ではチームに関わる全員が同じ思いを共有していることを、ドライバーの立場であったとき以上に認識し、そこがモータースポーツの素晴らしさでもあると再認識しました。

さらに、富士通社員ならではのITやデータに関しての質問も複数あがりました。

――富士通のテクノロジーの力を使って、できたらよいと思うことがあれば教えてください。例えば、マシンの情報(油温、水温、空気圧等)や路面の情報等はリアルタイムで把握できると思いますが、こういうデータが取れて、このように分析出来たらいいなと思うものはありますか?

中嶋氏: レース中や、練習セッションの合間など、マシンから得られるデータ量は膨大なものになります。性能向上や不具合検知のためのデータ分析作業は現在、人によるマニュアル作業に頼っている部分がほとんどなので、分析の優先順位づけや効率化のためにより分かりやすくデータが見える化できたらエンジニア達の負担も減らせるのでは、と考えています。

――モータースポーツを通して実現していきたいご自身のパーパスがあれば教えてください。

中嶋氏: カーボンニュートラルを含めたモータースポーツを通したもっといいクルマ作りは、ひとつの大きな目標です。それに加えて、自分自身幼少期からモータースポーツを見る立場、プレイする立場で関わってきた中で、とてもたくさんのドラマと感動を目にしてきました。その素晴らしさをできるだけたくさんの方に知っていただき、共感していただきたいという思いも強いです。

ル・マン24時間レース5連覇おめでとうございます

FUJITRA Festivalから10日後の2022年6月12日、ル・マン24時間レースが開催され、2台体制で臨んだTGRチームは、平川亮さんら8号車が優勝し見事5連覇を達成しました。小林可夢偉さんら7号車も2位に入り、2年連続のワンツーフィニッシュを果たし、大変盛り上がりました!

ル・マンを終えて、チームとしてはトヨタが103ポイントを獲得しシーズントップに浮上。 ドライバーとしても平川亮さんら8号車ドライバーが2位、小林可夢偉さんらは4位に浮上しています。残り3戦。総合優勝に向けてTGRさんの活躍に期待が膨らみます。

中嶋一貴さんからのメッセージ

2022年のル・マン24時間を一緒に戦ってくださった、すべての皆さんに御礼申し上げます。
ライバル不在と言われつつも、7号車と8号車の秒単位での競り合いはとてもレベルが高い、手に汗握るものでした。元ドライバーとして、あれだけの長い時間神経を張り詰めて戦ったドライバーたちを尊敬しますし、それを支えたチームも素晴らしい戦いをしていました。
しかしトラブルが2台の明暗を分けてしまったことも事実で、もっといいクルマ作りへの道のりはまだまだ長いと思い知らされたレースにもなりました。来年はル・マン100周年、そしてたくさんのライバルたちが戻ってくる一大決戦になります。それに向けて皆さんと一緒に戦っていきたいと思います。よろしくお願いします!

「FUJITRA Festival」へのご参加、また参加者から募った質問への回答も快く引き受けて下さった中嶋一貴さんに、心より感謝申し上げます。残り3戦、総合優勝目指して頑張ってください!

富士通は、カーボンニュートラルな世界の実現に向けて、引き続きFIA世界選手権(WEC)に参戦するTOYOTA GAZOO Racing新しいウィンドウで表示を応援します。

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