AIをはじめとするテクノロジーの進化は、ビジネスと社会に急速な変化をもたらしています。一方で、地政学的緊張や気候変動など、サステナビリティへの対応も重要な経営課題です。このような状況の下で、世界のビジネスリーダーはどのような舵取りを進めるべきなのでしょうか。
富士通が2024年8月に発表した「富士通SX調査レポート2024 AIが加速するサステナビリティ・トランスフォーメーション」は、世界15カ国の経営者(CxO)800名を対象に実施した、AIとサステナビリティ・トランスフォーメーションに関する意識調査の結果をまとめたものです。本レポートには、ビジネスと社会の未来を大きく左右する重要な洞察が盛り込まれています。
今回は、AIに大きな関心を寄せるビジネスリーダーの皆様に向けて、本レポートの3つの重要なポイントを紹介します。
AIは今後どのような業務に浸透していくのか
AIの進化は目覚ましく、多くの企業がビジネス活用に向けて取り組んでいます。調査によると、76%の企業がAIをデジタル・トランスフォーメーションにおけるトップ5の優先事項に挙げ、また、約9割の企業が昨年よりもAIの投資を増強すると回答しています。
では、この投資はどのような領域に向かうのでしょうか。
現状では、顧客対応や定型業務の自動化、業務支援など、主に効率化を目的としたAI活用が中心です。52%の企業が顧客対応の自動化にAIを活用し、31%の企業が生成AIによる業務支援に取り組んでいます。一方、経営意思決定の支援へのAI活用は17%、研究開発への支援は11%と、これらの業務にAIを活用している企業は少数です。
しかし、3年後には状況は大きく変化すると予想されます。
今後3年以内の見通しとして、95%の企業が経営意思決定の支援、83%が研究開発の支援にAIを活用する計画であることが明らかになりました。商品・サービスの機能強化や経営意思決定支援など、これまでAIでは難しかった複雑な意思決定を伴う領域にまでAIを適用しようとしているのです。
この調査結果は、AIが今後3年の間にビジネスのあらゆる場面に浸透し、私たちのビジネスを劇的に変えていくというシナリオを、多くのビジネスリーダーが想定していることを示しています。経営者は、この急激な変化に対応するために、AI活用の戦略立案と実行を迫られています。

企業のAI導入の現状と課題は
企業は、AIがもたらす急速な変化に対応していく必要があります。調査によると、ほぼすべての企業がAIに関する取り組みを行っていますが、その進捗にはばらつきが見られました。
約4割の企業がAIの全社戦略をまだ策定していない一方で、約半数の企業はAIに関する全社戦略を定め、ガイドライン整備を進めています。この全社戦略とガイドラインに基づきデータ、テクノロジー・インフラ、人材といった経営資源を振り向けている成熟した企業は約1割にとどまります。
現状は、多くの企業がAI導入の初期段階にいると言えます。では、AI導入にはどのような課題があるのでしょうか。
まず、人材不足が大きな課題です。AIの導入・運用には高度な専門知識やスキルが必要であり、企業は従業員のスキルアップや新たな人材獲得に積極的に取り組む必要があります。
さらに、AIはセキュリティリスクも抱えています。AIは偽情報や誤情報を生成したり(ハルシネーション)、著作権やプライバシーを侵害したりする恐れがあり、企業の信用を一瞬で失墜させるリスクがあります。
AIに関する法規制は強化されており、企業は早急にガバナンス強化の対策を講じていく必要があります。
企業は、AIを前提としたビジネス変革の成功に向けて、組織全体でAI活用の成熟度を高めていくことが重要です。
AIはSXを加速する鍵となる

AIやデジタルテクノロジーの活用は、環境や社会にポジティブな影響を与えることが期待されています。
調査によると、ビジネスリーダーの78%が、2030年までにAIとコンピューティングの処理能力が進歩を続け、複雑な環境・社会課題の解決を支援するという見通しを肯定しています。
また、73%がAIやトラスト技術の進化によって、多くの商品の環境・社会価値が評価されて流通することにより、サステナビリティを促進すると考えています。
企業がサステナビリティ・トランスフォーメーションを推進する上で、AIは重要な鍵となります。
調査によると、6割以上のビジネスリーダーがAIの活用強化がデジタル・トランスフォーメーションやサステナビリティ・トランスフォーメーションの成功に寄与すると考えています。また、76%のビジネスリーダーが、デジタル・トランスフォーメーションがサステナビリティ・トランスフォーメーションの成功に寄与すると考えています。
実際、サステナビリティのビジョンや戦略を策定し、自社の組織能力を高め、AIを中心とするテクノロジーの活用に意欲的に取り組んでいる先進的な企業(パイオニア企業)は、その他の企業に比べてより高い割合でサステナビリティの取り組みを売上に結びつけ、ビジネス化することに成功していることがわかりました。
調査レポートでは、本記事では紹介しきれなかった、サステナビリティ・トランスフォーメーションの取り組みの詳細や、AIを代表とするデジタルテクノロジーを活用した企業の実践例、SXを成功に導くためのCxOへの提言についてまとめています。
ぜひダウンロードして、ご活用ください。
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富士通SX調査レポート2024 AIが加速するサステナビリティ・トランスフォーメーション