富士通は、社会課題解決を起点とし、まちをより持続可能にしていくために、市民・行政・企業・スポーツチームという様々な方々とともに、力を合わせて取り組みを進めています。本日は、市民や川崎市・川崎フロンターレといった様々なステークホルダーを巻き込んだ新しい挑戦の舞台裏を、ソリューショントランスフォーメーション本部 クロスインダストリービジネス推進室の若手担当者2人が解説します。
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持続可能な未来都市をどう作る?富士通の挑戦
富士通はパーパス実現に向けた、マテリアリティの1つである「地球環境問題の解決(Planet)=人と自然が共存・共栄し、地球の未来を共に創る」アプローチの1つとして川崎市を起点に、脱炭素に向けた取り組みをスタートしました。これらの取り組みは、川崎市に限らず、全国の自治体および、そこに拠点を置く企業が一緒に考えていく必要があります。
藤原:私たちのミッションである「持続可能なまちづくり」は、言い換えると「まちのSX」の実現、つまり「まち」を今後継続して住み続けられるよう持続可能なものにしていくことだと考えています。今、世界が直面している課題は複雑さを増し、これまでのように富士通とお客様との1社1業種だけの関係では解決困難となっています。私たちが目指す「まちのSX」も、1対1の受発注関係だけではなく、N対Nの関係性の中で、様々なステークホルダーやプレーヤーを巻き込むことも重要であると考えています。まずは、富士通の創業地である川崎市に点在するN対Nの関係性を使って、社会課題解決のための「変革の起点」となる取り組みを進めています。

まちのSX実現に不可欠なみんながつながるアプリ『Green Carb0n Club』

Green Carb0n Club(以下、GCC)とは、環境配慮型のライフスタイルに向けた行動変容を、市民に継続的に促すことを目的に、市民・企業・自治体が「環境」をテーマにつながる場になるよう開発したアプリです。川崎市のCO2排出量が、他の政令指定都市と比べて多かったことをきっかけに、行政と富士通の取り組みとして効果を発揮しやすい「テクノロジー」と「市民の環境行動変容」に着目し、開発を始めました。
[アプリとしてできること]

1:川崎市内で行われる環境イベントへの参加や、環境関連コンテンツの視聴、SNSコミュニティへの投稿といったエコアクションを実践しGreenポイントを貯める。貯めたGreenポイントを使用して、協力事業者が提供する環境に良い製品やサービスのクーポンと交換し、エコライフを楽しむことができる。
2:GCC内のSNSコミュニティ(Green NOTE)に集まる、川崎市に暮らす人、働く人、川崎市に遊びに来る人が、共通の興味を持つ仲間としてつながり、励まし合いながら環境行動に取り組むことができる。
3:昨年度リリースした箱庭ゲーム(Green Carb0n Farm)で、川崎市内に実在する給水スポットや、フードロスに取り組む店舗などのエコアクションスポットと連携しながら、自分好みの箱庭を作ることができる。
協力事業者様にとっては、コンテンツ記事や動画を通してSXにまつわる取り組みを紹介したり、正しいエコアクションの啓発ができる設計になっており、SXに明るい企業であることをPRできます。実在するエコアクションスポットに訪れれば、ゲーム内のレアアイテムと交換できるチケットを獲得できる仕掛けを加えたことも、実店舗に足を運ぶ動機付けとして、協力事業者様にご好評いただいております。
----GCCの普及にあたって苦労されたことはありますか?
山口:私自身、BtoBの営業経験はあったものの、チームメンバーにも市民や消費者に向けたビジネス経験がある人が少なく、BtoCの対応を理解するところから始まりました。
当初はGCCの認知度も低く、ユーザー獲得に難航しました。川崎市内にあるショッピングモールに、PRブースを設置した対面型の普及活動から始めたのですが、アプリも、イメージキャラクターである“ぐりーんかーぼんくま”も認知度がなかったため、ダウンロードはおろか紹介チラシすら受け取っていただけないような状況でした。どうすればGCCに興味を持っていただけるのか探りながら進める中、地道に地域のお祭りや、川崎市関連イベントに参加して市民との接点や交流を持つうちに「このくま知ってる!」というお声をいただくなど、アプリ認知度の高まりを実感しました。
今では、川崎市内で開催される環境イベントの主要アプリとして活用いただくことも増えました。イベントの回遊率を上げるための「スタンプラリーツール」として使われるなど、市民・行政の環境分野では、活動の啓蒙や活性化の一助となるアプリとして成長しています。
GCCを通して、市民や事業者の環境アクションがつながり、市民・企業・自治体の三位一体の関係性をより強く構築できたことから、今後もより多くの方に活用していただけるよう精進します。

実証実験で得た”楽しさ”に、確かな手ごたえ
----川崎市との実証実験で出た課題や、取り組み効果についてお聞かせください
山口:クーポンなどのインセンティブをきっかけにダウンロードしてもらえたとしても、環境行動を継続してもらえないという課題が残りました。何かを続けるためには、楽しむことが大前提だと気付き、”楽しさ”を前面に押し出した箱庭ゲーム「Green Carb0n Farm」をリリースしました。
このゲームは、市内に実在するエコアクションスポットと連動しており、地域の環境アクションの認知度向上に寄与しています。ゲーム内のレベルが100を超えている方も多くおり、中には「今回は、こんな箱庭を作ってみました」と、Green NOTEに投稿を続けてくださる方もいます。2023年12月~2024年3月までのエコアクション数は1190回で、約106.4tのCO2削減に貢献しました(地球温暖化防止全国ネット参照)。また、アプリのデザインについては、まちにいらっしゃるすべての皆様がターゲットになるため、どなたでも楽しく使えるようなUI/UXを意識し、直観的に触っていただけるものに改良しました。

川崎市、川崎フロンターレというステークホルダーを巻き込んだ挑戦
----これまでも、多くの連携を共にしてきた「川崎市」との取り組みについてお聞かせください
藤原:今年度、川崎市は市制100周年を迎えましたが、昨年度、私たち富士通は「川崎市制100周年からはじまる、好きをカタチにしていくまちづくりイベント Colors!Future, Summit2023」に主催者として参加しました。「まちのサステナビリティを共創型で推進する」をテーマとしたカンファレンスセッションと、「Green Carb0n Farmを使い環境について楽しく学ぶスタンプラリー」ブースを出展し、2日間で800名以上の方に参加いただきました。

現在は、川崎市市制100周年記念事業の一環として「かわさき脱炭素プロジェクト」(※1)を推進しています。これは「環境に優しいライフスタイルの創出・実践」を目指した市民・企業・行政協働の取り組みとして、ヤマト運輸様・Packcity Japan様・川崎市市制100周年記念事業・全国都市緑化かわさきフェア実行委員会事務局様との共創事業です。宅配便の再配達によるCO2排出量の増加とドライバー不足という社会課題に着目し、市民の方に自分の暮らしにあった「宅配の受け取り方」を実践いただくことで、再配達を皆で減らし、同時に市内で出るCO2排出量も減らしていこうという取り組みです。


----今回は、川崎フロンターレの協力もあったそうですが、取り組み効果についてお聞かせください
山口:ご存知の通り、川崎フロンタ―レは川崎市に根強いファンがいるチームです。数あるスポーツチームの中でも、地域に根ざした活動を積極的に行っており、SDGsや環境に関連する社会課題にも取り組まれています。今回、特別に箱庭ゲームで、川崎フロンターレオリジナルキャラクターに登場していただきました。コラボレーション期間中には、川崎フロンタ―レ主催イベント「かわさきSDGsランド powered by FDK」にも出店しました。GCCを使ってブースを回遊しエコアクションをすることで、選手のユニフォームが当たるキャンペーンを実施し、当日は300名以上の方にご参加いただきました。また、市内の環境アクションスポットを回遊することで交換できるアイテムにも川崎フロンターレの主要キャラクターを採用し、地域の環境アクション認知度向上に協力いただきました。

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※1「かわさき脱炭素プロジェクト」 開催日:2024年6月17日~8月31日
社会課題解決のパートナーとして
今回の取り組みでは、市民・企業・自治体との連携など、想定以上に有効な活動ができたといいます。継続した環境アクションの促進を支援するため、「まちのSX」に貢献していることを直感的に体感できるような環境アプリになるよう刷新を続けています。また、より多くの事業者参画に向け、アプリで収集した環境アクションに関連するデータを用い、環境貢献の効果検証や環境施策立案を支援するなど、都市の様々な情報をデジタル上で再現するソーシャルデジタルツイン(※2)の社会実装を進め、脱炭素社会実現に寄与していきます。
-----今後の展望についてお聞かせください
山口:現在まで、想定以上に地域に根付いた活動を実施できたと思っています。富士通社員として働いていると、企業の方々と仕事をすることが多いため、どうしても事業性を重視する場面が多くありました。今では、市民に近いところで活動しているからこそ持てる市民感覚を社内でも発揮し、社会性と事業性の両立ができるよう取り組んでいきたいと思っています。
まちのSX実現には、市民・企業・自治体のいずれか一方だけが頑張ってもダメで、三者の協力関係が必要だということを、あらためて実感しました。皆様に、GCCを楽しく使い続けたいと思ってもらえるような環境アプリを目指し、近い将来、川崎市だけではなく、ほかの自治体のSX実現にも携わりたいと考えています。まちづくりパートナーとして認知いただけるよう、これからもアクションを積み上げていきたいです。
藤原:「まちづくり」は誰のためかといわれると、そこに住む人のためだと考えています。もしくは、今住んでいる方の次の世代、あるいは次の次の世代の人のためだと思っています。ただ、市民だけで「まち」を作ることはできないので、企業・行政の協力が必要不可欠です。まちづくりを考える順序としてこの考え方を忘れずにやっていきたいと考えています。また一方で、携わる企業がサステナブルであるためには、事業性がなくてはなりません。まちのために活動する社会性と、企業が持続可能であるための事業性の両方が大切であり、そのバランスこそが、企業がまちづくりに関わるうえで最も重要であると考えています。今後、富士通がまちづくりを進めていくうえでも、このバランスを常に意識して取り組みたいと思います。
-----最後に、社会課題解決に取り組んでいる、またはチャレンジしたいと思っている読者の方にメッセージをお願いします
山口:社会課題解決は一社で成し得ることが困難です。私たち富士通も、社会課題解決のパートナーとして一緒に取り組み、デジタル領域において貢献したいと考えています。多くの業界のお客様と取引させていただいている富士通だからこそ、業界・業種の垣根を超えた取り組みを実行することが可能です。もし、社会課題解決に向けて取り組みたい企業様や自治体様がいらっしゃれば、お気軽にお声がけください。
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※2ソーシャルデジタルツイン:行動経済学などの人文社会科学と計算機科学を融合したコンバージングテクノロジーにより、人々の動きを高精度に予測してデジタルに再現するとともに、人々の行動特性に基づく未来の行動や起こり得るリスクを可視化し、多様な施策の立案を支援すること

Green Carb0n Dashboard にて、川崎市のみんなが環境アクションを実施中です!
実際のダッシュボードはこちらから ※PC閲覧推奨