富士通株式会社 代表取締役社長 時田 隆仁は、全社一体で変革を進めるためには全社員が同じあるべき姿を見据えてそれぞれの役割において自律的に行動することが不可欠だと考え、会社や経営への理解を深めるための社内コミュニケーションを強化しています。その一環として、社員と直接対話する場となるタウンホールミーティングを2019年6月の社長就任以降、約80回開催しており、これまで延べ63,000人以上の社員が参加してきました。本記事では、中期経営計画をテーマとして実施したタウンホールミーティングの様子を紹介します。
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社長就任以降、社員とのコミュニケーションを重視
時田は、2020年に定めた富士通グループのパーパス「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」の実現に向けて、事業や組織、人材、カルチャーの全方位で社内変革を実行してきました。その一つに、社内コミュニケーションの強化があります。社内コミュニケーションのあり方や仕組みをグループ全体で見直しており、自身も社内のSNS上で経営戦略、市場動向などに関する考えから日々の活動までを共有し、また社員の投稿に対して直接コメントするなど積極的なコミュニケーションを行っています。
時田がコミュニケーションを重視するようになった大きな転機は、ロンドンでの駐在経験です。お客様や同僚が全員日本人という環境から一変。生まれや言語、文化が一人ひとり異なる社員たちを束ねる立場に身を置き、お互いを理解し信頼関係を築くためにはコミュニケーションが欠かせないことを改めて痛感したと言います。自ら積極的にコミュニケーションを図ることで、真に互いを理解し合えることを実感した時田。だからこそ、社員との直接のコミュニケーションに注力してきました。
社長と社員が対話する場、タウンホールミーティングを実施
そんな時田が、2019年6月の社長就任以降80回以上実施しているのが、「タウンホールミーティング」です。これは社員に直接思いを伝え、また社員からも日々の疑問や思いを伝えてもらう、社員と顔を合わせて対話する場です。その対象は国内社員にとどまらず、アメリカやヨーロッパなどの拠点へ訪問する際には現地の社員とも対話しています。開催形式としては、現地会場から数十人、オンラインから数百~数千人が参加するハイブリッド形式が主で、多い時には8,000人以上が参加した回もあります。
タウンホールミーティングでは、参加者からの質問をデジタルツールで収集・可視化するなど、オンライン参加者も自由に意思表示ができる工夫を凝らしています。また、海外拠点の社員が日本の回に参加する場合は、同時通訳や、発言をリアルタイムでテキストに変換し翻訳するFujitsu Software LiveTalk (※1)を活用しながら、同じ情報が同じタイミングで共有されるようにしています。
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中途入社した社員を対象とするタウンホールミーティングでは海外の社員も多く参加するため、Fujitsu Software LiveTalkを活用

女性幹部社員を対象としたタウンホールミーティング
これまで部門別、女性のキャリア形成や従業員エンゲージメントといったテーマ別で開催してきましたが、2023年度下期は、同年度5月に発表した中期経営計画をテーマとするタウンホールミーティングを開催しました。これは、タウンホールミーティングをきっかけに、社員が会社の戦略を自分事としてとらえ自ら行動を起こすことを目的としており、部門別に計11回行われました。
社員からの質問に対して、社長自身の考えを率直に回答
タウンホールミーティングで時田が最も大切にしていることは、双方向のコミュニケーションです。社員に向けて中期経営計画策定への思いや背景、各部門への期待などを上意下達的に伝えるだけでなく、社員からの質問に時田が答える質疑応答のセッションに多くの時間を割きます。中期経営計画や事業戦略についての質問から、AI、ダイバーシティ、さらには社員自身が業務で感じる課題など、社員から投げかけられる質問は多岐にわたります。
ある回では、「業務を変革しようとする中で周囲から反対意見が挙がるときもあるが、全社で変革を進めるにあたり何を意識しているか」という質問がありました。それに対し時田は、こう答えています。
「私は、落としどころを見つけたり、妥協するコミュニケーションからイノベーションは生まれないと思っています。イノベーションは、自分と異なる意見を持つ人との建設的なコンフリクト(衝突)から生まれます。相手へのリスペクトを持ちながら、コンフリクトを恐れず自分の意見をどんどん発信してイノベーションを起こしてください。」

タウンホールミーティングには、各部門を率いる役員も参加。
高橋 美波 執行役員副社長 COO(Fujitsu Uvance担当)が担当するグローバルソリューションビジネスグループのタウンホールミーティング

大西 俊介 執行役員副社長 COO(リージョン担当)、CROが担当するグローバルカスタマーサクセスビジネスグループのタウンホールミーティング
経営層との対話を通して生まれる変化
経営層との直接の対話によって、社員にポジティブな変化が生まれています。開催後のアンケートでは、「施策の背景や意義を丁寧に説明してもらい、あるべき姿への理解が深まった。中期経営計画を自分事として感じられた。」「経営課題や社員への期待を実体験に基づいて語ってもらい、非常に分かりやすかった。また、その熱量が自分のモチベーションアップにつながった。」といったコメントが寄せられました。
さらには、参加した社員が印象に残った内容を社内のSNSで共有して今後自分たちが取り組みたいことを積極的にコメントし合ったり、自組織の戦略や目指す方向を考え資料にまとめる活動が行われるなど、経営戦略をベースに社員の自発的な活動が生まれました。
タウンホールミーティングは学びの場
タウンホールミーティングは、対話を通じて現場で起こっていることや社員が感じていることを知る貴重な機会であり、自身にとっては学びの場だと時田は話します。
社員が会社の戦略を理解・共感し、自分事としてアクションを起こす。その輪が広がることで組織全体の変革へとつながっていきます。全社員が同じゴールを見据えて活動することで、グループ全体での変革を加速できるよう、これからも社員との対話を続けていきます。
