社会や環境の限界を突破すべく、サステナビリティ・トランスフォーメーション(以下SX)をビジネスに乗せていく。この難題は一企業だけで解決できることではなく、あらゆる産業、さらに生活者をも巻き込んで「共創」しなければブレークスルーは生まれません。
富士通はフジトラ(※1)の一環としてFujitsu Transformation Now(FXN)(※2)を開催しています。先ごろFXNで行われた「Fujitsu Uvance(※3)特別セッション」は、SXの実現に向けて、お客様×富士通の「共創」を引き出す、きっかけづくりの場。FXN初のお客様参加セッションがどのように共創につながっていくのか、企画・運営を担当したグローバルビジネスソリューションBG SX事業企画統括部の桑岡 翔吾、川原 早百合がご紹介します。セッションに参加されたお客様からのメッセージもお見逃しなく。
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※1Fujitsu Transformation(通称フジトラ):業務プロセスや組織、企業文化・風土を変革する全社DXプロジェクト
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※2Fujitsu Transformation Now(FXN):変革の現況を知り、新たな情報を得るフジトラの社内イベント。四半期に一度開催
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※3Fujitsu Uvance(ユーバンス):2021年10月にローンチした新事業ブランド。社会課題にアプローチし、サステナビリティに寄与する事業をブランド化したもの
お客様といっしょに「やってみる」ことで、共創を一歩前へ
——今回、FXN「Fujitsu Uvance特別セッション」を企画した目的を教えてください。
桑岡:私は今年度よりFujitsu Uvance 事業に携わっており、グローバルビジネスソリューションBGのフジトラDXO(※4)メンバー として、Fujitsu Uvanceへの理解を深めてもらうための社内コミュニケーションを設計してきました。具体的には、Fujitsu Uvanceを自分ごとに感じられるトップメッセージの発信、学び場づくりなどです。
次のステップとして、SXとは何か、どうしたらSXに近づけるかを学ぶためには「やってみる=実践する」場が必要だと考えていました。そんなときに社内イベントであるFXN でFujitsu Uvanceセッションを開催する提案を受け、せっかくなら社内にとどまらず、お客様も巻き込んだワークショップを開催することにしました。
——お客様参加セッションをやってみて、成果はいかがでしたか。
川原:今回、Work Life Shift編、Healthy Living編、ESG編の3つのセッションを開催しました。各セッションにおいて、どのお客様に声をかければシナジーが生めるかという点は特に考慮しました。例えば、サーキュラーエコノミーというテーマに対してはサプライヤー、メーカー、小売業といった各ステークホルダーが必要ですし、データ活用というテーマではデータを提供する側と活用したい側が必要です。
富士通には幅広い業種のお客様とのつながりがあり、担当営業との間で培った信頼関係があります。そういった強みがあるからこそ、様々な業種のお客様をお招きすることができたのだと思います。
桑岡:結果は、お客様から「参加してよかった」との声を多数いただきました。課題を共有し、それぞれに共感や学びを持ち帰っていただいたことが何よりの成果です。「もっとこのような場をつくってほしい」と、次につながる声もいただきました。SXの議論は曖昧なビッグピクチャーになりがちですが、基盤になる技術、リソースを持っている富士通となら実現可能性も話し合えると、期待感を持って参加していただけたようです。
企業と企業をつなげて、協業や共創のご提案ができることは私たちの強みです。そこに富士通が「場」をつくる意義があります。

SX事業企画統括部 オファリングデザイン部 マネージャー 桑岡 翔吾(左)/川原 早百合(右)
川原:今回のセッションは、テクノロジーを活かして会場と視聴者をライブ配信でつなぐハイブリッド形式のワークショップとして開催しました。ハイブリッド型ワークショップは初めての試みでしたが、一方的な情報提供ではなく、オンライン参加者の声も取り入れて課題を深堀りし、アイデアを育てることができました。現地で参加できなかった参加者にとっても、貴重な対話の機会だったのではないでしょうか。社内においては、特にフロントでお客様と接している社員にとって、お客様との関係性を深めるきっかけになっていたらうれしいです。
桑岡:私自身、お客様との関係性を、「顧客×ベンダー」という関係ではなく、「SXパートナー」として築いていきたいと思っています。確かなパートナーシップがなければ、共創は生まれません。お客様との対等な関係性を築くための「場」が必要だと、今回の経験を通じて実感しました。
- ※4Digital Transformation Officer(DXO):各部門の全社DXプロジェクト(フジトラ)推進リーダー
あの日持ち帰ったこと、他社との交流に期待すること
ここで、FXNで行われた3つの「Fujitsu Uvance 特別セッション」を振り返ります。どのセッションもハイブリッド形式でのパネルディスカッション、ワークショップを実施しました。またWork Life Shift編に参加されたパナソニック株式会社、ESG編に参加されたサントリーホールディングス株式会社からは、セッションに参加された所感と、今後の共創活動へのエールをいただきましたので、そちらも併せてご紹介します。
Work Life Shift編:パナソニック様と考える新しい働き方&組織風土への変革
パナソニック様のカルチャー変革に向けた取り組み「Make New Culture Wave」と、富士通の「Work Life Shift」をもとに、新しい働き方&組織風土改革の「いま」と「これから」について、活発な議論が交わされました。
“ 社外とのコラボレーションには、イノベーションの突破口が潜んでいる ”

Make New Culture Wave カルチャー改革チーム
西原 弘剛 氏
西原 氏:「私は以前から富士通さんと社内のカルチャー改革について情報交換をしておりますが、両社の社内調査の結果や課題感が驚くほど似ていると感じていました。今回、皆さんとディスカッションする中で、改めて課題を共有でき、また、デジタルによる効率化やデータの利活用など、DXをリードする富士通さんらしい取り組みを見ることができ、とても勉強になったと感じています。
同時に、会社の壁を越えて現場の社員同士で直接話し合えたことは得難い経験でした。現場同士がコラボレーションすると、そこには思いがけない気づきがあり、仕事のやり方やクオリティを向上させるヒントを見つけることができます。次の機会には、他のメンバーにも参加してもらい、その経験と気づきを共有したいと思いました。
カルチャー醸成の視点で考えると、将来的には今回のようなイベントだけでなく、様々な企業の社員が「場」を共有しながらワイワイと協働し、アイデアが交差して、技術が合流して、「いっしょにやろう」という展開があるかもしれないと、密かに想像しています。」
ESG編:サントリー様と考えるSX プラスチックリサイクルで始めるサーキュラーエコノミー
サントリー様の取り組み事例をご紹介いただき、他業種のお客様を交えて、参加者全員でサステナビリティ向上、サーキュラーエコノミーへ向けて、業界を越えた協業、共創のアイデアとネクストアクションを話し合いました。
“ 信頼できるパートナーとともに、挑戦し続けて成功体験を重ねていきたい ”

サステナビリティ経営推進本部
内田 雄作 氏
内田 氏:「今回、ゲストスピーカーとしてお声がけいただいたときは、もう少し小規模なイベントを想像していましたが、蓋を開けてみると、富士通さんの熱量が伝わってくる大規模なイベントで驚きました。
いま世界中の企業が、サステナビリティに向き合っています。私たちサントリーも、経営はもちろん、事業サイドからも変わらなくてはいけないという機運が高まっています。社会や環境の課題解決につながらないビジネスは淘汰されるだろうという危機感も持っています。しかし、一社で解決できることは少なく、定石も正解も見つからない。信頼できる他社を巻き込んで、すぐに結果が出なくても挑戦し続けることが重要だと考えています。
異なる領域にいる企業同士が、対話をきっかけに手を組むことで、見えていなかったことが見えてきて、できなかったことが実現できると、私は信じています。「やってみなはれ」精神でトライ&エラーを繰り返しながら、小さくてもいい、成功体験を積み重ねて答えを見つけたいですね。」
ご紹介した上記2つのセッションの他、Healthy Living編として、「クロスインダストリーで考えよう!ヘルスケアデータを活用した新しいウェルビーイング社会」をテーマにしたセッションも開催。この場では業種の異なるお客様が複数参加していただき、参加者全員でヘルスケアデータを活用した理想のウェルビーイング社会を描き、実現に向けた異業種協業の可能性を考えました。
知恵と技術と思いが響き合う「アンサンブル」を目指して
——今後の共創活動について、目標と展望を教えてください。
川原:「共創でSXビジネスをつくる」ことに終わりはありません。心ある企業が強みを持ち寄って話し合い、共創の芽を見つける場を増やしていきます。次回のFXNでは前回やったことを次のステップに進めるセッションや、新しい企画も用意しています。
桑岡:FXNという場は大事にしていきたいですね。お客様とのワークショップをクローズドな場でゼロからやるのは相当に大変ですが、FXNはフェス=祭りなので、気軽に参加していただけます。そこで“WAO”と喜んでもらって参加者同士が仲良くなると、新たなエンゲージメントが生まれ、共創を具体化していくことが期待できます。実際に、「もう一度やりたい」と言っていただいた方や、社内に広めてくれた方がおり、生まれた共創の芽を育てていくことも進めていきます。
川原:ワークショップを共創のモデルケース=型として広げるために、わかりやすい呼び名として「Fujitsu Uvanceアンサンブル」と名付けました。みんなで奏でようという意味です。
また、ワークショップ以前にお客様の興味・関心を発掘したり、ワークショップを通して引き出された課題を解決したりするには、個々のお客様との対話も重要です。お客様と担当営業の対話は「Fujitsu Uvanceダイアログ」と名付けて、ビジネスを加速できるよう、レベルアップさせていきたいと考えています。アンサンブルとダイアログを掛け合わせて、Fujitsu Uvance=SXビジネスを社会に実装することが最終目標です。
桑岡:ダイアログ(対話)によって、お客様の「Hidden Agenda(隠れた課題)」を解き明かす。それぞれのお客様の課題を集約すると共通項が見えてきます。それをアンサンブルの場に移して協働していきます。対話にはじまり、ワークショップなどの共同作業でお互いを理解し、手を組んでSXビジネスを創り上げていく。FXN「Fujitsu Uvance特別セッション」を通じて共創を再定義できたこと、これもまた大きな収穫ですね。