川崎フロンターレと小学生と富士通がピッチの外で協力!?地域のSDGs活性化のための取り組み

左前:富士通株式会社 執行役員EVP CDXO兼CIO 福田 譲、左後ろ:執行役員EVP CMO 山本 多絵子、右前:代表取締役社長 CEO 時田 隆仁

2021年5月、サッカーと川崎フロンターレを愛して止まない富士通社員の有志13名が集い、「フロンターレトランスフォーメーションプロジェクト(以下、フロトラPJ)」が立ち上がりました。フロトラPJとは、富士通と川崎フロンターレが協力してCivic Tech型(※1)で地域の課題解決にチャレンジしようという活動です。

活動を開始してから約1年半が経ち、そのメンバーは3倍近くまで拡がり、フロンターレファーストでのアイデアを出し合いながら、様々な活動を企画しています。今回はフロトラPJ活動の一つである、子どもでも自由に楽しめる体験型学習ゲームアプリ「SDGsすごろく」についてご紹介します。

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    Civic Tech型:地域が抱える課題等を、市民自身がテクノロジーを活用して改善していこうとする取り組み
目次
  1. 地域のSDGsにどう貢献できるか。川崎フロンターレの取り組み
  2. 「SDGsすごろく」とは。小学生が開発に参加?
  3. SDGsすごろく体験会現地レポート

地域のSDGsにどう貢献できるか。川崎フロンターレの取り組み

神奈川県川崎市をホームタウンとするプロサッカークラブである川崎フロンターレ。1955年に創設された富士通サッカー部が前身となっており、富士通とは深い関わりがあります。

そんな川崎フロンターレですが、サッカー以外にも地域課題の解決や地域活性に向けたプロジェクトを40以上実施してきていることはご存じでしょうか。プロクラブ化した1997年から地域に認めてもらうこと、そして愛されることを目標に、市民と直接的なコミュニケーションを実施しています。近年ではSDGsについても積極的に活動を始めており、その活動は川崎市内だけに留まりません。このSDGsの活動は、地域からも高く評価されており、社会貢献活動に取り組むアスリートチームを表彰する国内最大の式典「HEROs AWARD 2022」では、団体部門でアワードを受賞しました。地域貢献度第1位を10年連続で獲得し、川崎のイメージを変えるほどの継続的な活動はプロスポーツチームのロールモデルと評されています。

このようなSDGsの取り組みを、富士通として積極的にサポートすべく生まれたのが「SDGsすごろく」と呼ばれるゲームアプリです。

「SDGsすごろく」とは。小学生が開発に参加?

「SDGsすごろく」は、子どもたちにSDGsについて考える機会と、ICTの活用機会を創出するために作られた体験型学習ゲームアプリです。開発には川崎フロンターレ、川崎市立下作延小学校5年生の生徒たち、フロトラPJメンバーが関わっています。通常のすごろくと同様、サイコロを振ってゴールを目指しますが、各マス目は下作延小学校5年生の生徒たちが作ってくれた川崎フロンターレのSDGsの活動の紹介やクイズになっています。

SDGsすごろく画面
指定のマス目に止まると川崎フロンターレのSDGsの活動やクイズが出題され、すごろくを楽しみながら自然とSDGsも学ぶことができる

SDGsすごろく開発の経緯

下作延小学校の5年生の総合学習では、SDGsを生徒一人ひとりが身近なものとして捉えられるよう、川崎フロンターレのSDGsへの取り組みを生徒が調査し、その内容をお互いに発表するという授業が行われていました。この取り組みを知ったフロトラPJメンバーが、もっと多くの子どもたちにSDGsを学ぶ機会を提供したいと考え、川崎フロンターレと協力してアプリを開発することになったのが始まりです。プログラミング言語には子どもたちにプログラム開発の体験を通じたSDGsへの貢献を感じてほしいという思いから、子ども向けの「Scratch(スクラッチ)」という言語を採用しました。

SDGsすごろく体験会現地レポート

2022年10月8日、2022 明治安田生命J1リーグ 第32節の川崎フロンターレvs清水エスパルス戦での等々力陸上競技場フロンパークSDGsブースにて、体験型学習ゲームアプリのトライアルも兼ね、下作延小学校の生徒たちが作成した「SDGsすごろく」の体験会が行われました。
1ゲームに4名が参加し、川崎フロンターレの活動に関するクイズ等を通して、楽しく会話しながらすごろくゲームを進めます。ゲーム説明やクイズの解説などを含む司会進行は、全て事前準備した生徒たちが行います。最初は緊張した面持ちの生徒たちも、時間が経つにつれ、慣れた様子で堂々と振舞えているようでした。小学校の総合学習でありながら、遊びながらSDGs活動が学べ、そして人前で発表するという体験はプレゼンテーション能力やファシリテーション能力の向上にも繋がり、生徒たちの成長の良い機会になったのではないでしょうか。

等々力陸上競技場フロンパークSDGsブースでのSDGsすごろく体験会の様子

下作延小学校の子どもたちからのコメント

児童A: たくさんの人に川崎フロンターレのSDGsの取り組みを伝えることができてうれしかったです。これからも色々な人にSDGsすごろくを知ってもらいたいと思います。

児童B: 私は昔から人前で話をすることが苦手でした。だけど、今回の等々力陸上競技場でのSDGsすごろくの発表にチャレンジしてみたら楽しくなりました。これからはフロンターレのように、人を笑顔にすることができる人になりたいと思います。

教員コメント: 「フロンターレはサッカーチームなのにどうしてサッカー以外の取り組みをしているのか。」それを入り口に授業がスタートしました。フロンターレの活動を調べていく内に、児童は「人々の笑顔のために行っている」ということに気づくことができたと思います。今回の学習のまとめとして行った「SDGsすごろく」との出会いは子どもたちの学びに大きな変化をもたらし、自分達が学習してきた成果をすごろくという誰もが楽しめるコンテンツにしたことで、多くの人に伝えたいという意欲が児童の中で大きくなっていったはずです。取り組みを終えた児童の振り返りには多くの学びが感じ取れました。

株式会社川崎フロンターレからのコメント

GIGA端末を活用することが、こんなにも学びに無限の可能性をもたらすとは思っていませんでした。今までの学習スタイルをデジタル化するだけでなく、ゲーム化させることで子どもたちの学びの深さが広がったと感じています。まさに「教育DX」と感じた瞬間でした。またスタジアムで子どもたちがすごろくを一生懸命、ファン・サポーターの前で伝える姿には本当に感動しました。テクノロジーカンパニーである富士通さんと産学連携できたことを嬉しく思います。デザイン部門やコーポレート部門等、部門横断で力を合わせて良いものを作ってくださり本当にありがとうございました。

SDGsすごろく開発に関わったフロトラPJメンバー

グローバルソリューションビジネスグループ ジャパン・グローバルゲートウェイ GCS ITS Division グループディレクター 綱沢 慎也

私はサッカーや野球などのスボーツ観戦が大好きで、以前から『スボーツ』と『モノづくり』の融合を通じて世の中に何か貢献できないか漠然と思っていました。そんな時にフロトラPJの存在を知り、「これだ!」と思い参画しました。活動の中で今回のSDGsすごろくを作成したいという川崎フロンターレからのお話を聞き、面白い取り組みになりそうだと直感的に思いました。そこで全く触ったことのないScratchのサンプルプログラムを見ながらプロトタイプを1日で作って相談したのが今回の始まりでした。Scratchは教育用の言語のため色々な制約事項があり最初は苦戦しましたが、他のメンバーと試行錯誤しながらアジャイル的に作っていきました。全員、本業の隙間時間での限られた中での開発となりましたが、楽しみながら非常に良いゲームができたと思っています。

グローバルソリューションビジネスグループ ソフトウェアプロダクト事業本部 基幹システムソフトウェア事業部 高落 要

個人的に「音楽」や「スポーツ」などの「文化」と地域共同体や教育との関わりに関心がありました。川崎フロンターレが地域との関わりに積極的なことは知っていましたが、富士通側からそれに関われるということで、本業とは違った刺激や学びがありそうだと思い、フロトラPJに参加しました。Scratchは初めて扱うツールで困惑もありましたが、メンバー同士で協力して楽しく取り組めました。当日は下作延小学校の生徒たちが楽しそうに一生懸命になって大人相手にファシリテーションをしていたのがとても微笑ましく印象的でした。生徒たちが苦労して調べてまとめた手書きの内容が画面に映し出されると、何とも言えずグッとくるものがありました。今後もこのような取り組みを継続して川崎フロンターレ、富士通、地域社会の繋がりを作っていきたいです。

情報セキュリティ本部 インシデントハンドリングセンター セキュリティオペレーションラボ 東 恵寿

私自身も小学3年生の息子を持ち、子どもたちへの教育や楽しみながら学べるコンテンツ作りに興味がありました。川崎フロンターレの選手やマスコットといった素材を使って、楽しく学べるSDGsすごろくを通して、子どもたちの学習のお手伝いができたことがとても嬉しいです。ブースで下作延小学校の生徒たちがお客さんの呼び込みからルールの説明、進行まで全て行っていたのには驚きました。先生に尋ねたところ、事前に調べて学習の内容をまとめただけでなく、説明などの立ち回りまで学校で練習を重ねて準備してきたとのこと。SDGsすごろく制作は想像していた以上に生徒たちの様々な成長に繋がっていることを実感しました。今後も色々な方に向けて、より良いコンテンツを作っていければと思っています。


今後は下作延小学校5年生の総合学習での活用に留まらず、誰でもプレイできるアプリとして展開すべく、アプリのブラッシュアップに取り組んでおります。また、2024年までに川崎市の全小学校にSDGsすごろくを含めた教材の展開を予定しております。今後もフロトラPJはSDGsすごろくを始めとする活動を通して、社会貢献にチャレンジしていきます。

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