東北大学×富士通、人に寄り添う新しい医療づくりをスタート

2022年9月に国立大学法人東北大学(以下、東北大学)と富士通は、治療から予防へのシフトを加速させ、誰一人取り残されることのないウェルビーイング社会の実現を目指す戦略提携を発表しました。本提携で目指す新しい医療づくりや、いま大学や病院に求められることについて、富士通 執行役員の堤 浩幸が、東北大学 総長の大野英男氏と副学長 兼 病院長の冨永悌二氏に伺いました。(「Fujitsu ActivateNow 2022」Special Sessionより)

目次
  1. ウェルビーイング社会の実現に向けた戦略提携
  2. 社会変革のために、いま大学に求められること
  3. 新しい医療づくりに欠かせない産学連携
  4. 異業種間のデザイン思考がイノベーションをうむ
  5. まずはヘルスケアから、そして日本のイノベーションを世界へ

ウェルビーイング社会の実現に向けた戦略提携

堤: 富士通は、サステナブルな世界の実現を目指す事業「Fujitsu Uvance」を通じて、新しい社会づくり、価値創造を進めています。その中のテーマの一つ、「Healthy Living」の具体的な取り組みとして、先般、東北大学様とウェルビーイング社会の実現に向けた戦略提携を発表させていただきました。
東北大学様がお持ちの卓越した研究やデザイン思考という素晴らしいメソッド、そしてオープンイノベーション精神に、当社が持つ最先端のDX技術、日本でNo1シェアの電子カルテシステムなどを組み合わせてシナジーを創出することで、ウェルビーイング社会を現実に実装できる環境をつくっていこうと考えております。
めざしたい健康像にむけて、皆さまが自律的な行動をできるように促し、その中で変化を早期に捉え、行動変容を促すサポートを行っていきます。

今回は、東北大学様から大野総長、冨永副学長兼病院長をお招きし、今回の提携について詳しくお話しを伺っていきたいと思います。

社会変革のために、いま大学に求められること

堤: 社会に対してイノベーションを起こすにあたり、我々は課題をきちんと把握しておく必要があると考えております。まずは、大学における課題についてお聞かせいただけますか。

大野氏: 私たちは今、予測不能な時代に生きていると思います。その時代にあって、大学における価値創造というものが非常に期待され、求められていると考えています。新たな価値を大学が想像し、社会変革・イノベーションを先導する。さらには地球規模の課題に対して解決を見出していき、その過程で次の世代の人材も育成する。そういうことを大学はやらなければいけません。

国立大学法人 東北大学 総長 大野 英男 氏

大野氏: 東北大学は創設以来、社会と共にある大学です。東日本大震災で学んだことを一つお話ししておきたいと思いますが、それは私達が育んできた知識、あるいは研究の成果は、それだけでは社会にすぐに役に立たないということです。その間に多くのステップがあって、多くの人たちがステップをつないでくれて初めて、「知」というものが社会に役に立つようになります。このギャップをいかに埋めるかということが、とても重要なことだと思っています。別な言い方をいたしますと、大学がプラットフォームになって、その上で皆さんに集まっていただいて、多様なステークホルダーが、価値創造から社会変革・イノベーションにいたる道を作っていくこと、それが重要だと思います。

本学はオープンイノベーションを加速するため、産学官が集うサイエンスパークを精力的に整備しています。このサイエンスパーク、あるいは今回の東北大学病院での取り組みは、大学がプラットフォームになり、社会変革・イノベーションを先導していくことの象徴だと考えています。

東北大学のサイエンスパーク:青葉山新キャンパスは、生命科学や創薬、新材料やデバイス開発に向けた最高の産学連携環境を実現しており、星陵キャンパスは、大学病院をはじめ、医学、歯学、研究所に加え、世界有数の複合バイオバンクである東北メディカル・メガバンクを擁し、ライフサイエンスの一大研究拠点を形成

新しい医療づくりに欠かせない産学連携

堤: 続きまして、病院における課題についてお聞かせください。

冨永氏: 東北大学病院は、高度医療・先進医療を提供することはもとより、創立以来長きにわたり、地域唯一の大学病院として地域医療に向き合ってきました。仙台という100万都市の医療から医師が少ない過疎地域の医療まで、広いレンジで医療提供、医療連携を行っています。
そういった中で感じるのは、やはり人口の高齢化、それから人口減少であります。国が求める健康寿命延伸という観点から考えますと、地域で一番大きな医療リソースをもつ我々は、これまで通りの急性期医療あるいは高度医療に特化するのではなくて、「プレホスピタル」あるいは「ポストホスピタル」にもっと目を向けていかなければいけないというふうに考えております。

国立大学法人 東北大学 副学長 兼 東北大学病院 病院長 冨永 悌二 氏

冨永氏: そして、そういった分野で新しい医療・ヘルスケア開発をするには、やはり医療従事者だけでできることには限界がありますので、産業の方、あるいは自治体の方との連携が必要になってまいります。先ほど、大野総長も言われましたが、我々が、医療開発あるいはライフサイエンスのプラットフォームとなって、多くのステークホルダーと新しい医療、時代に即した医療を開発していく必要があるというふうに感じています。

堤: 有難うございます。東北大学様は、英国の教育専門誌が発表するタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)世界大学ランキングで、3年連続日本一を獲得されています。これは東北大学の皆さまが強いリーダーシップ発揮し、様々な変革を進められているところが大きいかと感じております。今回、私どもが東北大学様と一緒に、いろいろなイノベーションを進めさせていただくことを非常に光栄に思っております。

異業種間のデザイン思考がイノベーションをうむ

堤: 次は、今回の連携をどうやって進めているのか深堀していきたいと思います。
私どもは、今回の取り組みを進めるにあたり、ディスカッションをしていくつかのコンセプトを決めました。ここで2つご紹介させていただきます。

1つ目は、一人ひとりが「めざしたい健康像」を認識し、その中で「自ら判断」しながらイキイキと生活できるように、人と人あるいは人とモノの「絆」を強めながら、このイノベーションを進めることです。

2つ目は、医療従事者と患者の双方が、「早期に」「必要最小限」の受診、治療を行えるよう、「EMR/PHR」といった技術革新をベースとした仕組み作りをタイムリー且つスピーディーに進めていくことです。

これを連携の一つの目的として、いろいろなアクションを進めさせていただきたいと思っております。

富士通株式会社 執行役員 SEVP JapanリージョンCEO 堤 浩幸

堤: それではここで、今回の取り組みに対するお考えをお伺いしていきたいと思います。まずは、冨永病院長からお話しいただけますでしょうか。

冨永氏: 今までの医療というのはただ受診するだけだったと思いますが、先ほど仰っていたように、次の時代は、自分のめざしたい健康像を考え、皆さま自身が様々なツールを通じて、もう少し積極的に自分の健康に関わっていくようになるのではないかと考えています。

東北大学病院は、そういった新たな医療に対応していくように、様々な取り組みを進めております。その中の一つが、デザイン思考を実践する産学連携室のデザインチームです。16名のスタッフが企業の方を臨床現場に迎えて、臨床観察をしていただき、ブレインストーミング・ネットワーキングをする。こういった形で、新たな医療開発をする一歩にしていければと考えています。
そして、我々の中で、企業の方と新しいものを作り一緒に課題解決に取り組む文化、また、自分たちの取り組みを別の領域のプロフェッショナルに見ていただき、改善すべき点があったら改善していこうという文化が醸成されてきたというふうに思います。
東北大学病院には、未来医療人材育成寄附部門などに所属するインターン、ビジネスリエゾンを含めて、デザイン思考に関わる人材が多くいますので、その強みを生かして、一緒に「Fujitsu Uvance」が目指す医療、あるいは社会の実現を目指していきたいと考えています。

堤: 有難うございます。続きまして、全学という意味で大野総長いかがでしょうか。

大野氏: 冨永病院長からデザイン思考というお話しがありましたが、デザイン思考は実は大学全体に浸透させたいという概念であります。研究者と企業だけがいても、あるいはテクノロジーだけがあっても社会変革あるいはイノベーションというものは起きないと考えています。ヘルスケアを例にとれば、病院の外に世界が広がっているわけです。それら全体を包含し、データも使い、さらに行動変容に繋げることで、個人そして社会全体のウェルビーイングが実現できるだろうと考えています。産業、アカデミア、そして社会の様々なステークホルダーが分野を超えて手を携えることで初めて結果を得られると考えています。

まずはヘルスケアから、そして日本のイノベーションを世界へ

堤: 有難うございます。最後に富士通への期待値も込めて、皆さまに向けて一言ずつお願いいたします。

冨永氏: このたびの富士通様との取り組みを大変歓迎しており、ぜひ成果を上げたいと思っております。地域の医療従事者や自治体の皆さまにはぜひ注目していただき、取り組みの輪に入り新しいサービスを存分にご活用いただくことで、新しいヘルスケア医療の発展にご参画いただければと考えております。

大野氏: 今回は、富士通様との協業を通して、人のぬくもりとテクノロジーが最も重要になるヘルスケアの分野で大きな一歩を踏み出すことができ、私達も大変嬉しく、また責任を感じているところです。ぜひ皆さまとともに課題を解決しながら、豊かな社会を築いていきたく思います。

また、多様な人材の協業の場として東北大学が機能し、デザイン思考で社会変革・イノベーションが生まれる、こういった姿は、ヘルスケアを超えて、あるいは東北大学や富士通を越えて様々な分野でインパクトをもたらす、我が国にとっても極めて重要な一歩だと考えています。

堤: ありがとうございます。大野総長が仰ったとおり、東北大学様との提携は、社会全体に大きなインパクトをもたらすと私は考えています。このインパクトは、私どもの「Fujitsu Uvance」を推進し、さらには生活環境を変え、そして日本からイノベーションを世界全体に展開することもできるものだと信じております。そのきっかけをまずはヘルスケアからつくっていきたいと考えています。
「Fujitsu Uvance」は、いろいろな価値を創造していきます。ぜひみなさん、ウェルビーイング社会実現に向けた富士通の取組み、そして東北大学様との戦略提携に大きな期待をしていただきたいと思います。皆さまにはこういった形でやっている、さらにはこのような結果が出たということをタイムリーにお示しができるようにしてまいります。

ウェルビーイング社会実現に向けたエコシステム
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