帝人×富士通の共同プロジェクト。持続可能なライフサイクルの実現へ

帝人株式会社(以下、帝人)と富士通は、リサイクル素材の利活用によって、環境に配慮したプラットフォームの実現を目指した共同プロジェクトを2022年7月12日より開始しました。

帝人は、炭素繊維などの製造工程における温室効果ガス排出量の算出方法を確立するなど、環境を意識した取り組みを推進しています。富士通は、情報の改ざんを不可能とするブロックチェーン技術を活用したシステム構築において多くの実績を有します。

本共同プロジェクトは、両社がこれまで培ってきた技術やノウハウを融合し、業界に先駆けてリサイクル素材の利活用による環境価値化プラットフォームを立ち上げ、市場への適用を目指していくものです。

目次
  1. 現代社会のキーワード 「環境価値」 とは
  2. 帝人と富士通が共同で立ち上げる、環境価値化プラットフォーム
  3. 環境ビジネス創出を目指して

現代社会のキーワード 「環境価値」 とは

太陽光や風力などのような再生可能エネルギー(グリーン電力)は、石油や石炭、天然ガスなどの従来からある化石エネルギーとは違い、エネルギーそのものの価値に加えて地球温暖化の一因とされている二酸化炭素の排出がないという付加価値を持っています。この付加価値が「環境価値」と呼ばれています。

近年では、製造業において、製品のライフサイクルを通じたLCA(※1)の導入や、製品やサービスがどのように環境負荷を低減するのか購入者に伝える環境ラベルの取得に向けた対応が求められています。回収された資源由来のリサイクル素材を実際に利用しているかどうかを示す来歴情報の提示や証明を制度化する動向もあることから、リサイクル素材に対する来歴情報の信頼性にも期待が寄せられています。

  • ※1
    LCA(ライフサイクルアセスメント):商品やサービスの原料調達から、生産・流通、廃棄・リサイクルに至るまでの一連のライフサイクルにおける環境負荷を、定量的に算定するための手法

加えて、航空機や電気自動車のような交通輸送分野で産業利用が拡大している繊維強化プラスチック(FRP)などについては、今後はより高度な環境配慮設計が求められています。そのため、政府・民間の双方において、廃棄処理に対する規制やリサイクルの技術開発に向けた動きが活性化しています。

これらの背景から、「環境価値」は、現代社会における重要なキーワードとなっているのです。

帝人と富士通が共同で立ち上げる、環境価値化プラットフォーム

そのような中、帝人と富士通の両社がタッグを組んで目指すのが、環境価値化プラットフォームの実現です。このプラットフォームの特徴としては以下の2点が挙げられます。

  • 温室効果ガス排出量のような環境負荷に関するデータの収集やトレース(追跡)において、富士通のブロックチェーン技術をバリューチェーン全体を通して活用することで、リサイクル素材の環境価値の信頼性向上を実現できます。
  • リサイクル素材を用いて製品を設計するメーカーに対して、リサイクル素材の出どころの証明や、温室効果ガス排出量といった環境負荷に関するデータを提供することによって、メーカーによるリサイクル素材の利活用や環境配慮設計を促進できます。
<リサイクル素材の環境価値化プラットフォームのイメージ>
※GHG排出量:温室効果ガス排出量

環境ビジネス創出を目指して

今、いかに環境に配慮されたビジネスが求められているか、そしてそのようなビジネス促進のために、帝人と富士通がどのようなプラットフォーム構築に取り組んでいるのかについてお伝えしてきました。
最後に、本プロジェクトに関わる担当者が、今後への期待や意気込みを語ります。

帝人株式会社 新規事業マーケティング部長 松本 昇久 氏

社会課題を目的に新しい分野へ別々のカルチャーと技術を持った会社同志が取り組む“共創”は今や当たり前になっていますが、実際は中々実現しにくいことも事実かと思います。しかしながら自社視点ではなく社会視点で取り組む時代に突入したと認識しておりますので、富士通様と視座を合わせながら進めさせて頂ければと思っています。

帝人株式会社 新規事業マーケティング部 斉藤 幹夫 氏

化学業界で「持続可能な社会」を具現化する一つの手段となることを目標とし、富士通様と当社がそれぞれの強みを活かしタッグを組んで臨みます。この取組みが、当社圏内の素材やサービスに留まらず、同業他社様や他素材、他用途までグローバルに広く普及することを目指してまいります。フィジカルな“モノ”とその裏側にある“背景”つまり各種履歴をつないでデータ化し、リサイクル製品のカーボンマネジメントに貢献する所存です。

帝人株式会社 新規事業マーケティング部 平川 亮太 氏

環境問題への対応が今後さらに重要になっていく中で、我々は本プラットフォームを実現することでモノの循環の見える化を行い、より多くの製品のリサイクルの実現およびその活用により社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。このプロジェクトの実現には、我々のみならず多くの方のご賛同とご参加が必須だと考えていますので、ご興味を持っていただけるようでしたら一緒に進めてみませんか?

富士通株式会社Manufacturing事業本部 化学インダストリー事業部 シニアマネージャー 佐々木 彩

本件は帝人様と当社におけるお互いの企業理念やビジョンへの共感から協業検討が始まりました。企業において環境配慮設計の促進が求められる時流の中、動脈・静脈のバリューチェーンを繋げて信頼性を担保したリサイクル素材の普及により、社会課題を解決する共同プロジェクトとして検討を進めて参ります。本構想の実現にあたりましては、バリューチェーン上のあらゆる企業様との連携が必須であると考えております。是非本取り組みにご共感頂けましたらお問合せを頂ければ幸いです。

富士通株式会社Business Operation & Sales Enablement本部 Division Sales Enablement DXビジネスコンサルタント 和田 将太

本件は世界共通の課題である脱炭素社会実現に向けた「カーボンニュートラル」(※3)と、ゴミ処理や資源枯渇問題に通じる「サーキュラ―エコノミー」(※4)という2つの大きな課題をお客様との協業により一度に解決しようというチャレンジングな取り組みです。
帝人様の持つ、廃棄物から低炭素なリサイクル素材を開発するノウハウ。富士通が持つ、サプライチェーンのシステム開発実績や、ブロックチェーン等の先端技術。この両方が合わさることで、「業種×DX」の相乗効果が生まれ、そして大きな社会課題を解決できると信じ、社会全体のグリーントランスフォーメーション(GX)に向けて全力で取り組んでまいります。

  • ※3
    カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること
  • ※4
    サーキュラーエコノミー(循環型経済):今までの経済活動で廃棄されてきた製品や原材料などを「資源」と考え、リサイクル・再利用などで活用し、資源を循環させる新しい経済システム

富士通株式会社Uvance本部 Sustainable Manufacturing Sustainable Transformation オファリングビルド 松井 善裕

欧州のグリーンディール(EUの執行機関である欧州委員会が発表した気候変動対策)に関連し、サーキュラ―エコノミーは非常に重要なテーマとなっており、Fujitsu UvanceにおけるSustainable Manufacturingに向けた推進テーマの1つとなります。希少資源の枯渇への対応やESG経営(※5)への市場期待なども受けて、再生素材の取り組みは各社で進めていますが、品質面や安定供給等の課題があります。今回のプロジェクトでは、どういう仕掛けづくりを作れば静脈プレイヤーを巻き込み、品質の高い再生素材、安定供給網を作れるのか、またトレーサビリティ(※6)等を活用した新しい付加価値をどう生み出していくかがキーとなります。今後検討を進めていき、サーキュラ―エコノミーの実現及び持続可能な社会の実現を両社で目指していきます。

  • ※5
    ESG: 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉。 企業が長期的に成長するためには、経営においてESGの3つの観点が必要だという考え方が広まっている。
  • ※6
    トレーサビリティ:商品の生産から消費までの過程を追跡可能な状態にすること。商品が「いつ、どこで、誰によって作られたのか」を明らかになることで企業の信頼性が高まる。
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