持続可能な社会の実現に向けて~富士通のこれまでの10年と、これからの10年

Fujitsu Technology and Service Vision(FT&SV)は、富士通がどのような未来をお客様やパートナーとともに実現したいのか、そのビジョンの実現のためにどのようにテクノロジーが人をエンパワーし、どう成し遂げていくのかを毎年まとめ、提言しているものです。2013年の発行から今年で10年目を迎えるFT&SVですが、持続可能な未来社会を実現するために、新たに見えてきたこと、そして止まることのない取り組みについて責任者に話を聞きました。

目次
  1. これまでの10年 – 継続の秘訣と見えてきた課題
  2. これからの10年 – FT&SV 2022で新たに伝えたかったこと
  3. 反響と今後の展望

これまでの10年 – 継続の秘訣と見えてきた課題

――富士通がFT&SVを2013年にはじめて発表してから、今年で10年目になります。その間、毎年発行を継続してきましたが、この10年を振り返っていかがですか。富士通は、当時描いてきた社会の実現に貢献できているでしょうか。

西川: 2013年当初のFT&SVでは、富士通が考える未来の社会ビジョン「Human Centric Intelligent Society」を発表しました。「テクノロジーが支えるインテリジェントな人間中心の社会」という意味です。あれから10年、わたしたちはそのような社会をまだ実現できているわけではありませんが、そのイメージは10年前より具体的になり、かつ、実践事例が多くみられるようになりました。たとえばIT創薬による健康寿命の延伸や自動運転、EVによるスマートモビリティ等は、テクノロジーが人や社会を支えているよい例だと思います。さらに、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってデジタル化が大きく進展し、テレワーク・遠隔医療・遠隔教育が当たり前になりました。

――いまの社会は当時描いた世界に近く、テクノロジーの進化がその実現に大いに貢献しているということですね。では、お客様との新たな共創や富士通の変革という意味ではいかがでしょうか?

西川: 共創という意味では、日本でもエコシステムというキーワードが当たり前に使われるようになったことが重要なポイントだと思います。複雑な社会課題の解決といった大きな目的に共感する企業が集まって、それぞれが保有する価値を提供し、ビジネスを拡大すると共に社会に貢献することの重要性が認識され、富士通も宇宙、水、食の安心・安全といった様々なテーマでの共創を進めています。
富士通社内の変革に関しては、特にここ数年、企業のパーパスと個人のパーパスを合わせる取り組みや、働き方改革を推進するWork Life Shift、また全社のトランスフォーメーションを推進するフジトラを実施し、従業員が自ら変革の中心になると共に、お客様にも富士通の変革の取り組みが伝わっていると思います。

――パーパスやビジョンをいちど策定したらそのままで、実現に向けてのストーリーや手段についてはあまり見直さないという企業もある中、富士通が2013年以降毎年FT&SVのアップデートを続ける理由と、継続の秘訣は何でしょうか?

西川: 企業としての中長期的な目標は変わらないものだと思いますし、10年前にFT&SVで提唱したHuman Centric Intelligent Societyといった未来の社会ビジョンの内容はいまも大きくは変わっていません。また、そのビジョンを実現するための手段である富士通の提供サービスやテクノロジーを“一気通貫で紹介する“といったコンセプトも変えていません。

一方、3年、5年、10年と経っていく中で、その進捗やビジョンの実現に向けた取り組みを継続して示していくことが、お客様との共創や従業員の共感の醸成につながっていくと考えています。そのため、この10年間、その時代に即したテーマを取り上げ、かつ進捗を示してきました。例えば、2016年にはデジタルトランスフォーメーション(新たな産業革命)、2017~18年にはCo-creation(共創)、2019年にはトラストをテーマにしてきましたが、それらはその時代を反映した重要なキーワードであり、お客様や従業員からの共感を得ることができたと自負しています。同時に、テクノロジーの進化は激しく、2013年には紹介していなかったAI、量子コンピューターなどについては、その進化や活用事例をタイムリーに紹介してきました。変わらない部分の進捗と、時代とテクノロジーの進化に追従して変えるべきところを変えてきた、それをご紹介してきたことが、継続につながったのだと思います。

――この10年間で成し遂げられなかった部分や新たに見えてきた課題もあると思いますが?

西川: ITの領域での課題も多く、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の取り組みはこれからという現場も多く存在すると思います。そのような現場からすると、ビジネスで社会課題を解決するというビジョンで描かれている世界と、目の前にある取り組むべき課題とのギャップが引き続き存在しています。一方で、2015年に持続可能な開発目標(SDGs)が発表された頃は15年先の遠い目標でしたが、今ではもう2030年まで10年を切り、社会や国からも、企業の取り組みを加速させることへの要請が非常に強くなってきています。

加えて、未だ終息の兆しが見えないCOVID-19や地域紛争等によって、人と社会が豊かに持続可能になるというポジティブなメッセージの妥当性や、むしろテクノロジーが情報や経済格差を助長したり、莫大なエネルギーを消費しているといった、ネガティブな影響を与えている面も課題として指摘されています。

――これまでの10年で、デジタルテクノロジーの進化など発展した部分と、新たな課題として顕在化した部分が見えてきたわけですね。

これからの10年 – FT&SV 2022で新たに伝えたかったこと

――2030年のSDGsの実現に向けて、FT&SV 2022はこれまでとどのようなところが違うのでしょうか?

西川: これまでの10年を振り返った際に述べたように、今回も変えなかったところと変えたところがあります。富士通は、2020年にパーパスを発表しましたが、ビジョンはそれまで描いてきた世界と変わるところはありません。すなわち、CSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)、SDGs、ESG(Environment/環境・Social/社会・Governance/ガバナンス)の重要性、テクノロジーによる人の支援や社会課題の解決、富士通のテクノロジーやサービスによるビジネス/社会への貢献という3つのポイントは、今回も中心に据えています。

この3つに対して、FT&SV 2022で新たに強化した点が3つあります。
一つ目は、IT・DX・SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)のそれぞれが個別の取り組みでは無く、ITやDXを取り組むことがサステナビリティにつながることを示していることです。FT&SV 2022の2章(テクノロジービジョン)では、指数関数的に拡大するコンピューティングのパフォーマンス強化が、社会課題の解決につながるイノベーションを加速することを紹介しています。また、今回6月に発表したグローバル・サステナビリティ・トランスフォーメーション調査レポートの結果を参照して、DXに取り組むことがSXにつながることを示しています。IT・DX・SXを個別に捉えるのではなく、それぞれがつながっていること認識して取り組むことが重要です。

次に、デジタルテクノロジーがビジネスや社会にどのようなインパクトを与えて、どのように変革していくのか、4つのテクノロジービジョンとして明確に示しました。これからの10年で境界が無くなっていく(ボーダレス)、安心・安全になる(レジリエンス)、イノベーションが加速していく(ディスカバリー)、信頼が高まっていく(トラスト)という4つのテクノロジービジョンを紹介しています。ビジョンを明確に示したことで、お客様とこれまで以上に具体的な共創の議論や取り組みが生まれることを期待しています。

最後に、お客様や従業員が今の取り組みがどのように持続可能な未来社会につながっていくのかをイメージできるように、ビジョンと私たちの活動との結びつきを強くしました。2021年10月に富士通は、クロスインダストリーの取り組みを強化するFujitsu Uvanceを発表しました。これから、カーボンニュートラルや食品ロスの削減に貢献する持続可能なモノづくり、パーソナライズな顧客体験や公共サービス、治療から予防へのシフトによる健康寿命の延伸といった具体的な取り組みを強化し、ビジョンをよりリアリティのあるものにしていきます。

反響と今後の展望

――現在、5月16日の公開から2か月ほど経過していますが、お客様や従業員からの反応は如何でしょうか?

西川: FT&SV 2022に続いて6月28日にグローバル・サステナビリティ・トランスフォーメーション調査レポートも発表しましたが、今回取り上げたサステナビリティ・トランスフォーメーションは、紹介したお客様からも評価いただいています。先日ご紹介した銀行業のお客様からも、「是非このような攻めのITの取り組みを強化していきたい」とのフィードバックを頂戴しました。また、流通業のお客様(自社で製造部門を持ち、リサイクルビジネスも推進、サステナビリティの実現に向けたクロスインダストリーの取り組みを体現されている)からも、私たちのメッセージに大いに共感いただきました。従業員からも「社会課題解決に取り組む姿勢や各自の業務との関係性が理解できた」、「自身もこのFT&SVの取り組みに貢献したい」などといったポジティブな評価を受けています。

――現状はポジティブな反応を頂いているということですが、最後に、今後の取り組みや展望について教えてください。

西川: まだ数か国の従業員や何組かのお客様に反応を頂いただけですので、引き続き今回のメッセージをより多くの従業員やお客様に届ける取り組みを強化していきます。そうすることで、お客様や従業員が富士通のパーパスやビジョンに共感し、更に、社会課題の解決に向けたアクションを起こすことにつながると考えているからです。DXでは、日本は出遅れたと言われていますが、SXはまだ定義も明確ではありませんし、調査で明らかになった通り、企業によってその成熟度もバラバラです。この分野で日本や日本企業がフロントランナーに立てるよう、FT&SVをはじめとする取り組みを通して努力していきたいと考えています。

富士通株式会社
技術戦略本部 コミュニケーション戦略統括部
シニアディレクター 西川 博

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