2022年6月、富士通は、ローカル5Gを屋外で検証したいけれど、「場所がない」「基盤となる器材の準備ができない」という声にお応えして、富士通の通信機器の製造拠点である那須工場(所在地:栃木県大田原市)に、ローカル5Gのシステムを検証できる環境を構築しました。
ローカル5Gの浸透拡大を目指して、本検証環境の構築をリードした富士通 ナショナルセキュリティ事業本部の國武 寿弘に、今回の取り組みに対する想いを聞きました。
那須工場では具体的に何ができるようになるのか
那須工場での検証環境では、約1万5,000平方メートルのエリアが確保されています。この広さを活かすことで、住宅が密集する地域での検証が難しいドローンを活用した飛行実験や、広範囲での無人搬送車、無人搬送ロボットの運行試験など、ローカル5Gの屋外活用に向けた技術検証が可能になります。これにより、例えば、屋外施設の設備点検や侵入者検知、河川や山斜面の監視を模した検証など、現場にローカル5G環境を構築する前に、制御の妥当性やシステムの保全性、連結試験など、ローカル5Gを含むシステム全体の検証ができるようになるのです。
なぜ屋外に構築する必要があったのか
――本環境構築をしようと考えたきっかけを教えてください。
國武: 私が担当するお客様の案件では5Gに関する事業が活発に進んでいます。多くの人が場所を問わず屋外で活動されるようなお客様の環境では、特に5Gの特長でもある「多数接続」や「高速通信」に注目されております。この事業を進めていく上で、広く世の中を調査しました。すると多くの検証の場は、実施場所や期間などの条件に沿う環境を屋内で臨時に構築して実証実験を行うケースが多いことが分かりました。一方で、検証自体は活発に行われていることからも、屋外における5Gの検証の場というのは私が担当するお客様だけでなく他業種のお客様においてもニーズが高いと考え、構築を進めることになりました。その際には、他の検証の場にはない特徴をアピールするためにも、同じく活用が活発になっているドローンを飛行(検証)できるようにしよう、という点も考慮しました。
――構築の際に苦労したことはありますか。
國武: 「場所の選定」です。当初の候補としては、富士通が所有する、新川崎、川崎工場、那須、小山等、複数の工場がありました。これらの検討においては、関連部門と連携して、共に考えながら選定を行いました。最終的に、前述のドローンを飛ばすための広さを確保できること、建設レベルの大型工事にならないように既存施設をある程度活用できること、電波がエリアから出てしまわないためのアンテナ配置ができること等を考慮し、那須工場での検証環境構築を決定しました。

5G検証環境の構築にかけた想いと今後の展望
――本環境構築において、こだわったポイントはありますか?
國武: 検証の場を作るにあたり、検証や作業をする皆さんがより作業しやすい環境にすることを意識しました。器材を展開する部屋から、検証エリアまではフロアを1つ降り、外に出たらもう到着してしまうくらいの近い距離感で、近くに駐車場もあるので往来もしやすい形になっています。
また、本環境は常設となるため、複数日にわたり、腰を据えてじっくりと検証作業に取り組むことができます。臨時環境の場合は都度申請手続きや5Gシステム器材等の運搬で労力が発生すると思います。今回の那須工場での取り組みを広く知って頂くことで、これらの労力を解消し、少ない手間で効率よく検証して頂く、そんなサポートができればと思っています。
――最後に今後期待する事を教えてください。
國武: このプロジェクトを通して、社内の他部門との連携を活発に進めたり、また社内に留まらず外部のお客様とのリレーションの構築の場にもなれば良いなと考えています。そして多くの皆様に、この検証の場を活用して頂くことで、結果的に世の中全体の5G推進に貢献ができれば嬉しいですね。
余談ですが、那須工場の近くには温泉等もありますので、是非、来工の際には那須観光も合わせてご検討ください(笑)
今回の検証環境を用いた検証の第一弾として、NTTコミュニケーションズ株式会社様による侵入者検知や対象物を自動追尾する監視業務向けの機能について、ローカル5Gを活用した場合の有用性を2022年7月より共同で検証開始しました。
富士通は今後も引き続き、那須工場での検証環境をDX推進の場として、様々な業種のお客様へ幅広く提供していくことで社会へ貢献してまいります。

富士通株式会社
ナショナルセキュリティ事業本部
DXサービス事業部
國武 寿弘(くにたけ・としひろ)