富士通は、誰もが夢に向かって前進できるサステナブルな社会の実現に向け、事業ブランド「Fujitsu Uvance」を策定しました。フジトラニュースでは、Fujitsu Uvanceを構成する7つの重点注力分野について連載でご紹介します。
第6回目となる今回は、「Business Applications」です。世の中の急速な変化への対応速度と適応性が求められているアプリケーション。そのメガトレンドを、富士通 執行役員常務グローバルサービスグループ長のティム・ホワイト、マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナーのサウラブ・ミシュラ氏、富士通 VP Head of Strategic Programs and Changeグローバルサービスグループのレジーナ・モランの対談から探ります。(Fujitsu ActivateNow2021 Key Focus Area Sessionsより)
- 目次
アプリケーションが果たす役割とその未来とは?
ティム: 適応性や持続可能性が求められるアプリケーションが、今、我々の顧客や社会に対してどういう意味を持つのか、そのテーマを掘り下げると変化の速度という課題に行き着きます。環境変化のスピードが加速度的に速くなっているため、もはやアプリケーションはインフラではなく、ビジネスアプローチの一端となっているのです。
富士通においては、新事業ブランド「Fujitsu Uvance」が対象とする7つの重点項目から見えてくるものがあります。社会課題を解決するための4分野「Vertical Area」とその課題を解決するための技術「Horizontal Area」の3分野があり、Horizontal Areaには「Digital Shifts」「Business Applications」「Hybrid IT」という3領域があります。中間層のBusiness Applications領域は、Hybrid ITを基盤として、最上位層のDigital Shiftsにデータを生成するなど、様々なシステムを統合するカギとなります。
サウラブ氏: 私はビジネスアプリケーションが、将来の組織戦略を決定する重要な要素になると確信しています。その要因としては、①組織の考え方と優先順位の変化と②アジャイル開発と反復型開発の爆発的な普及が挙げられます。この2つにおいて成功者が行っていることや、取り入れていることを説明させていただきます。
1 組織の考え方と優先順位の変化
ビジネスの中心を担うIT予算の使い道や優先順位は、CXOおよびCDO(チーフデジタルオフィサー)
や各部門の責任者が集まり決定するのですが、今後5年から7年の間にIT関連への投資のほぼ半数をCIOではなくCTOが行うようになるでしょう。
さらに、テクノロジー関連における意思決定者の観点にも変化が訪れています。彼らは技術的な視点からだけではなく、導入事例や利用シーンからITを考えています。例えば「未来の小売店や未来の保険会社を作るためにはどうすべきか?」などと考えているのです。
2 アジャイル開発と反復型開発の爆発的な普及
現在、意思決定者の多くが重要視しているのは、コストよりも市場投入までの時間とユーザー体験です。コストを軽視しているわけではありませんが、市場投入までの時間とユーザー体験こそが競争を優位に進め、結果的に企業の成長につながるからです。製品を早く市場に投入するためであれば、早い段階の失敗すら歓迎しています。組織はビジネスアプリケーションというものの本質を正しく理解し、またその変化に上手く順応することが求められるでしょう。
変革の推進力となる技術の進歩とは?
レジーナ: 真の改革に必要なのは、シームレスな主要技術の進歩と、一貫したユーザー体験の提供です。私は以下の4つの進歩が変革の原動力になると考えています。
1 アプリケーションのエッジとモバイルの民主化
5Gの進化により超低遅延、超広帯域のインターネット利用が可能になったことで技術革新の機会は増加しています。政府や民間企業がすでに6G投資していることから、今後、さらにこの流れが加速することが予想されます。
2 AIを活用したワークフローに重点を置いた、アプリケーションの開発
サプライチェーンマネジメント4.0、AIを活用したERPのワークフローなど多くのソリューションが誕生しています。
3 クラウド型アプリケーションの導入
数年以内に75%の企業のCIOが、自企業のワークロードの40%以上をクラウドに移行すると予測しています。今まで以上にマルチクラウド化が進行します。
4 セキュリティの強化
革新技術の価値を安全に享受するためには、セキュリティの強化が不可欠です。
アプリケーションの充実で、人はどう変わる?
ティム: レジーナが述べた、革新を推進する技術によって、人とのつながりが促進されます。次世代型言語翻訳システムの出現により、いまや、人材開発は国境を超えて行われており、我々が求める人材は世界中で見つけることができるのです。現在の翻訳システムは、正直、精度が不安定なところがあります。しかし着実に、そして急速に進化しています。言語の障害がなくなるのです。
さらに、ローコードやノーコード開発の台頭により、誰もがイノベーターになれるチャンスがある時代になりました。顧客、地域社会、顧客体験からビジネス要件の収集を始めれば、それを収集できる人材の重要性が高まり、収集の速さこそが鍵になるのです。
特にハイテク企業の富士通ならば、顧客や従業員の体験を、顧客にとって有益なサービスに転換することができるでしょう。開発者だけがイノベーターではなくなるのです。
企業が成功の可能性を最大限に高めるために
サウラブ氏: 企業は①戦略・プロセス、②能力、③組織文化にまで及ぶ総合的アプローチを必要としています。この3要素を市場と照らし合わせて詳しく説明していきましょう。
1 戦略・プロセス
まず、自社の利益が顧客に支えられているならば、顧客に向けた新しい製品やサービスの提案スピードは、迅速ではないように思えます。自社のサービスを押し付けるような戦略は見直すべきなのです。
また、デジタル技術の導入こそ戦略の要です。私自身もクライアントによく進言していますが、過去に戻りデジタルネイティブにはなれないが、新たなビジネスや転換期を迎えているビジネスにおいては、デジタルネイティブこそが活躍するのです。
2 能力
今後5年から7年の間に約30%から40%の人々のスキルが余剰になると言われています。従業員のスキルアップや再教育、アジャイル開発、反復型開発のプロセスを社内全体で取り入れる必要があります。また、業務やプロセスが複雑化していく中で、すべてを自社で構築しようとせず、パートナーを効率的に活用すべきです。富士通はエコシステムを採用し、様々な組織のパートナーとして柔軟に変化に対応し、業務を行うという重要な役割を担っています。
3 組織文化
組織文化は戦略や能力を超えたところで、課題にどう対処するかという姿勢により決定します。自社の組織はリスクを取ることを奨励し、異なった視点からの意見を出すよう従業員を鼓舞していますか? また、その成果を称賛しているでしょうか?
組織の課題を解決するのは、戦略・プロセス、能力、組織文化のすべてなのです。
アプリケーションのメガトレンドを最大限活用するために
レジーナ: 最後にこれまで説明したアプリケーションに関するメガトレンドを最大限に活用するための五つのポイントをお話します。 一つ目は、「大胆に」です。主要なトレンドには大胆さと適切なリスクに対する感度が必要です。スピード感をもって行動すべきなのです。二つ目は、「組織文化」です。行動に移す際、サウラブ氏の言葉通り、重要な鍵を握るのは組織文化です。三つ目は、「共創」です。企業単体や個人で成功することは不可能ではないですが、困難な道のりになるでしょう。“共創”つまりエコシステムの中で働くことは非常に重要なのです。四つ目は、「イノベーションにより、ユーザーに新しい価値を提供すること」です。富士通のような企業が果たすべき役割を理解し、そこから生まれる新たな価値や提案をぜひ活用してください。最後に、スキル不足が深刻化する世界では、「専門的知識を生かし、さらに総合的に考え行動すること」が必要です。