VUCAの時代を勝ち抜く 人と地球が共存する「Sustainable Manufacturing」

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富士通は、誰もが夢に向かって前進できるサステナブルな社会の実現に向け、事業ブランド「Fujitsu Uvance」を策定しました。フジトラニュースでは、Fujitsu Uvanceを構成する7つの重点注力分野について連載でご紹介します。

第1回の今回は、環境と人に配慮した循環型でトレーサブルなものづくりを実現する「Sustainable Manufacturing」について、富士通執行役員常務の大西俊介より紹介します。(Fujitsu ActivateNow2021 Key Focus Area Sessionsより)

目次
  1. 製造業が直面している課題とは
  2. VUCAで企業が勝ち抜くための5つの処方箋
  3. 人と地球が共存するSustainable Manufacturingの実現に向けて

製造業が直面している課題とは

VUCA(※1)と呼ばれる時代が到来し、私たちはこれまで経験したことのない困難や脅威に対して柔軟かつ迅速な対応が求められています。不確実性と多様性が増している現代において、製造業が直面する課題についてご紹介します。これらは全て10年前には「いつかは来るだろう」程度に思われていたものばかりですが、現在は多くの企業が大きな課題として捉えています。

気候変動
近年、甚大な被害をもたらす自然災害が増加しています。2019年に日本を襲った台風19号による経済損失は、世界最大の1兆6500億円にも上りました。世界各地でこのまま何も対策しなかった場合、今世紀末には気温が4度、海面が82センチ上昇すると予測されています。日本では洪水が現在の4倍に増加する可能性も指摘されています。

COVID-19
COVID-19によっても世の中は一変しました。デジタル化の進展にパンデミックの反動が重なり、半導体の供給不足が発生。例えば世界の自動車メーカーの2021年の売上高への影響は23兆円に上るという調査データも出ています。

新たな国際政治リスク
米中対立などの国際政治リスクが顕在化し、製造業にとって必要不可欠なレアメタルなどの材料・資源の確保が喫緊の課題となりました。

労働力の不均衡、匠のノウハウの喪失
先進国における製造業の労働力不足も経営課題となっています。日本では、大企業、中小企業のどちらも40%以上が人手不足を重要な経営課題として挙げています。米国においても労働需要はあるものの、なり手がいないというミスマッチが発生しています。また、労働人口の高齢化や継承者が見つからないことによる匠のノウハウ喪失も現実のものとなっているのです。

待ったなしの脱炭素への取組み
既にほとんどの先進国においては脱炭素社会に向けての目標設定がなされ、達成に向けた取り組みが必要となっています。

このように、製造業はこれからの事業活動を営むにあたり様々な要件を満たすことが求められますが、逆にこのことが新しい事業機会の創出へのトリガーとなっていると言えるのではないでしょうか。
このような環境の中で市場の不確実性はこれまでにないほど高まり、企業はマネジメントのあり方を大きく変えることが求められているのです。

VUCAで企業が勝ち抜くための5つの処方箋

このような課題に対し、企業は何を経営の優先課題とし、どのように取り組む必要があるのでしょうか。自らも製造業の一員である富士通が考える5つのポイントをご紹介します。

企業活動の可視化と、それによる意思決定スタイルの高度化
設計から製造に至る一連の企業活動やサプライチェーンを可視化することにより、データに基づいた意思決定ができる環境を整えることが重要です。マネジメントのスタイルも当初の計画にこだわりすぎず、起きた事象を認知し、これに対する対応を即座に具体化していくというようなアプローチに変えていく必要があります。

ロボット・AIを活用した自動化や技能継承
労働力の課題に対しては、ロボットやAIを使った自動化やデジタル化により人の能力を拡張することで、量的な不足を解消し、熟練者の技能を継承していく仕組みを構築することが重要です。私たちの働き方が変わっていく中、リモートとオンサイトの組み合わせにより、地域的な事業環境の拡大を可能にします。

バリューチェーン全体のトレーサビリティと需給の最適化
多様性の高い市場ニーズに迅速に適用するには、D2C(※2)やOTA(※3)などの新しいビジネスモデルを活用することも重要です。現在、世界におけるサーキュラリティ(製品や資源の価値を永続的に再生できる能力)は9%にとどまっているというデータがあります。end to endでの廃棄ロス削減に向けて需給を最適化するとともに、材料や商品のトレーサビリティも実現していく必要があります。また、循環型への転換には、企業間連携の在り方にも再考が必要です。そのためセキュリティを確保したトラステッドな基盤をベースに、柔軟に構成の変更ができる仕組みが必要になります。

予測できない危機に対応するサプライチェーンの自己修復能力
災害やパンデミック、政治的混乱によって引き起こされる市場の不確実性を予測することは困難です。事象発生後にサプライチェーンを速やかに自律的に回復できる体制が重要になります。

バリューチェーン上でのGHGの可視化、削減
脱炭素化に向けた国際法の変更は脱炭素化の資格を証明できない企業にとって、厳しい罰則に直面することを意味します。
GHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)の排出を全てのプロセスでモニターすることは、問題の特定や解決が容易になり、GHG排出量の削減に繋がります。

人と地球が共存するSustainable Manufacturingの実現に向けて

富士通は、Manufacturing​の未来の姿として「Sustainable Manufacturing​」を定め、次の図にある5つのテーマでの価値の提供に取り組んでいきます。
企業活動を可視化して繋げる土台の提供(Enterprise Visualization)、労働力の不均衡の解消と失われる匠のノウハウ継承(People Enablement)、業界を横断したエコシステムの実現と最適化(Value Chain Optimization)、世界的災害、国際政治リスクへ対応するサプライチェーンの担保(Resilient Supply Chain)、カーボンニュートラル実現に向けた多面的な貢献(Carbon Neutrality)の5つです。

富士通は、自らもManufacturing​企業であり、デジタル技術を活用したサイバーフィジカルシステムや環境への対応といった実践のノウハウもあります。 また、お客さまに対して長年にわたり、エンジニアリングとサプライチェーンの両面から製品や企業間連携の仕組みを提供してきた実績もあり、設計から製造に至るend to endのオペレーションやサプライチェーン全体の理解と、最適化のノウハウは様々な局面でのトレードオフとなる問題を解決できるはずです。
SAPやシーメンスといったグローバルパートナーとの戦略的な協業だけでなく、「富岳」をはじめとした世界最高レベルのコンピューター、ハイパフォーマンスコンピューティングやAI、セキュリティなどをカバーするトラステッドな富士通のテクノロジーは、今後、不確実な世界に立ち向かうための大きな武器となるはずです。
このように、富士通は業務ノウハウとICTベンダーとしての技術力を多数持っています。お客様のパートナーとなって、Sustainable Manufacturingの実現に向けて共に歩んでまいります。

富士通株式会社 執行役員常務
グローバルソリューション部門副部門長(兼)エンタープライズソリューションビジネスグループ長
大西俊介
  • ※1
    VUCA:Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語。社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味する。
  • ※2
    D2C:Direct to Consumerの略。自ら企画、生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法を指す。
  • ※3
    OTA:Over The Air。無線通信でデータを送受信することを指す。たとえば自動車の車載ソフトウェアに代表されるように、OTAによってソフトウェアのダウンロードやアップデートを自動で行えることが可能となる。
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