共感・信頼をベースとしたマネジメントへ、富士通が実践する新たな評価制度とは

目次
  1. 富士通のパーパス:そこに込められた想い
  2. 新戦略論、ヒューマンナイジングストラテジーとは
  3. パーパスの実現を目的とした新評価制度「Connect」
  4. 単なるツールではなく、生き方とも呼応する評価制度へ
  5. 富士通が目指すパーパスドリブン経営

世の中の激しい変化が続く中、企業に求められる強い組織づくりのためには、個人が自ら考え挑戦するマインドを駆動するものが、今まで以上に求められています。
富士通は、それらの大きな筋書きとなるパーパスおよび、「Fujitsu Way」を策定し、それらを実現していく目的として、新しい評価制度「Connect」を2021年から導入しました。

今回は、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏と富士通の時田隆仁(代表取締役社長)、平松浩樹(執行役員常務CHRO)の対談から、グローバルな経営学の見地からみた富士通のパーパスドリブン経営、新たな評価制度について迫ります。

富士通のパーパス:そこに込められた想い

平松さん: 富士通は2020年パーパスを策定しました。イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと。そして、それを踏まえてFujitsu Wayの改定を行いました。

野中さん: 経営学の分野で学問的にいうと、今は大きな変革期。従来の分析的・科学的なマネジメントは静態的な環境でうまくいきますが、絶えず変革のただ中にいる環境だと、“共感”がキーポイントになります。変化のただ中で、一緒に戦略をどう構築して課題に向き合っていくか。そこで共感が忖度になってはただの迎合になるだけで、“本当の共感”は生まれません。お客様とお互いの問題を共有しながらの知的コンバットがあってこそ、本当の共感や信頼が生まれ、イノベーション(挑戦)が起こるのです。
富士通が大切にする価値観として、挑戦・共感・信頼を掲げたFujitsu Wayのコンセプトをみた時にすごいと感じました。理論的なバックグラウンドがある普遍的な経営理念が、日本から出てきたことに感動しました。

一橋大学名誉教授 野中郁次郎氏

時田さん: 社長就任時に、「お客様第一」という責任感がきわめて強い会社であることに誇りを持つ一方で、私自身フィールドSEとして働いてきた経験から、お客様に寄り添いすぎている部分があると感じました。社会の急激な変化の中で、お客様が求めているのは、あるべき姿であり変化対応力、そしてスピード。それには、やはり前線に立っている富士通社員一人ひとりの力強さが必要ですが、大きな組織の中で個人がある種抑圧されて、自分がやりたいことや「これが正しいのだ」という意志に向かって一歩踏み出す力が弱まっている。そのようにも考えて個人の強さに着目しています。

富士通全体が強くなるためには、所属する世界中の13万人の多様な力と知恵の結集が必要です。そしてお客様と、野中さんが仰る知的コンバットやディスカッションをして、そこから生まれる信頼と大きな世界を包み込むような共感を創ることを思い描いています。 その時に個人の行動を促すある種の遠心力が働きますが、そこには組織として求心力を持たなければいけない。それが、富士通社員全員が共感できるパーパスであり、富士通そのものの存在意義は、その遠心力をしっかり繋ぎ止め、それを大きな力とすること。そこに富士通という組織自体の責任があると考えています。

富士通株式会社 代表取締役社長 時田 隆仁

新戦略論、ヒューマンナイジングストラテジーとは

野中さん: Fujitsu Wayでは、富士通の歴史をしっかり振り返りながら新しい未来を創るという大きな筋書きと、それを実践する行動規範まで作りあげている。行動規範というものは一人ひとりにガツンとくる言葉でなければ、自分ごとになりませんが、Fujitsu Wayは、変化のただ中で「何が真善美であるか」ということを追求し続けるモデルになっている。

時田さん: そうですね。単なるルーツとか規約というものではなく、富士通の86年の歴史の中でずっと大事にしてきたDNAを凝縮し、かつ今この時代に、全世界13万人の富士通社員の腹にガツンとくる言葉を作ったというのが、このパーパスでありFujitsu Wayです。

野中さん: それを聞いて、そういう意味で今の富士通の生き方、会社像に納得しました。始めに分析でなく“想い“ありきで、そして実践の中で無限に真善美を追求していく。物語と行動規範が一体になった時に、これがまさに新しい意味での戦略論として「ヒューマンナイジングストラテジー」という言葉を使っていますね。
Fujitsu Wayは単なる一企業のパーパスではなく、実は日本の国家も含めた世界を元気にする使命を持っているパーパスでもあると感じました。そういった意味でも、ぜひ信念を貫き通してほしいというのが私の想いです。

パーパス実現を目的とした新評価制度「Connect」

平松さん: パーパスやFujitsu Wayを実現していく目的として、新しい評価制度Connectを2021年から導入しました。富士通のパーパスを起点に、それを各組織のリーダーが組織のビジョンとして、想いを含めてメンバーと共有・共感し、そのビジョンに向けてどれだけのインパクトを与えたか。また、個人のパーパスを起点にどれだけ成長したかなどを大きな流れの中で評価する一貫性を持った仕組みに見直しました。
一番大事なのは組織長がいかに魅力的で挑戦的なビジョンを描けるか。そして、それがメンバーの共感を引き出し、一人ひとりが自ら考えながら挑戦するマインドを駆動する起爆剤になると考えています。

富士通株式会社 執行役員常務CHRO 平松浩樹

単なるツールではなく、生き方とも呼応する評価制度へ

野中さん: かつて評価制度に目標管理などを入れていた頃は、何だかうまくいきませんでした。それは単なるツールであり、生き方の指標ではなかったからだと言えます。新しい評価制度Connectは、生き方を問うものであり、イノベーションを促進する様々な評価の仕組みを入れている。
我々が「何のために生きているのか」というパーパスと筋書き、あるいは行動規範を提示しながら、パフォーマンスに一貫性をもたせたということがかつての目標管理と決定的に違う部分。一つの体系として捉えたことが非常に重要であり、同時に「誰一人取り残さない」という持続可能性とのバランス感覚も組み込まれている印象を受けました。

時田さん: 富士通はパーパスを策定した2020年から、まさにパーパスドリブンを実践するチャレンジを始めたばかり。今は「パーパスドリブン経営とは何ぞや」ということ、そして「その中に息づく人にフォーカスした制度そのものはどうあるべきか」ということを模索している段階です。
僕がずっとこだわっているのは、富士通社員13万人が、いかに富士通のパーパスを実現するために働くか。そして一人ひとりのパーパスにフォーカスし、個人がいかに強くなり、その上で一つの目標に向かってイノベーションを起こしながらどう成長していくかということです。 先生が仰ったようにツールや制度といった捉え方ではなく、これは本当に一人ひとりの社員が、どのように生きて、働き、他者とコラボレートするかを評価するべきであり、また、この評価制度自体が社員から評価されるべきものだと考えています。そういった意味で、社員とのコミュニケーションを大切にし、この制度に不具合があった場合も目を背けることなく、しっかり向き合って改善していく。そういった仕組みだと思います。

富士通が目指すパーパスドリブン経営

時田さん: ヒューマンナイジングストラテジーというお話もでましたが、企業としてストラテジーがいったい何のためにあるのかと言えば、究極的にはプレイヤーたちが活き活きと働いていきていくためであり、もう単なるお金儲けとかそういったことではないことを改めて思い起こされたような気さえします。
このパーパスドリブン経営を富士通はまだまだ始めたばかりで、今回制定したConnectという人事制度もスタートしたところなので、これから成長させなくてはいけない。その責任は我々経営にあると同時に、富士通社員全員でよいものに育て、やがてこのパーパスドリブン経営が世界のリファレンスになり、世界中が同じ想いを持って大きな変革をたくさん起こし、よりよい地球環境である2030年、2050年のカーボンニュートラルの時代を作っていかなければなりません。
そして、まさしくそのカーボンニュートラルの時代の中で、中心的に働く、行動・活動する若い人が富士通にはたくさんいますので、そういう彼らのためにもしっかりと経営をしていきたいと思っています。

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