社会課題をテクノロジーで解決するために。富士通新CTOの決意

目次
  1. 新しい世界、それはグローバルな組織改革からはじまる
  2. CTOが組織改革の先に見据えるソリューション
  3. ビジネスのコア(Key Focus Areas)を支える5つの技術領域
  4. テクノロジーで様々な社会の課題を解決していくということ

これからの持続可能な社会を考えたとき、その実現に欠かせないのがデジタルイノベーションであり、新しいデジタルテクノロジーです。富士通は社会に信頼をもたらし、より持続可能な世界を実現するために、組織改革を行い、新たなCTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)にヴィヴェック・マハジャンさんを迎え、7つの重点注力分野を支えるための5つの技術領域を重視した研究開発に取り組んでいます。そのための技術戦略はどのようなもので、何を重視しているのでしょう。
今回はマハジャンさんが「Fujitsu Activate Now 2021」および同期間中に実施した「研究開発戦略説明会」でご紹介した内容をベースに、そのポイントをフジトラニュースが解説します。

新しい世界、それはグローバルな組織改革からはじまる

2021年4月、富士通は52年続いた富士通研究所を富士通に統合しました。調査・分析から研究開発までを通してマネジメントするためです。それにより研究開発のスピードアップをはかります。
そして7月に新しいCTOとしてヴィヴェック・マハジャンさん(以下、マハジャンさん)を迎え入れました。マハジャンさんは日本オラクル、日本IBMで実績を重ねて米IBMへ就任した経歴があります。米IBMではゼネラル・マネージャーやクラウド担当のチーフ・レベニュー・オフィサーを歴任。
そして富士通では技術全般の責任者として、経営戦略と整合性をとった研究開発に取り組んでいます。その一環として、グローバル研究開発体制を強化。富士通はグローバル企業として、日本の他に中国・欧州・米国に研究開発拠点を持っていますが、さらにインドとイスラエルに新しい拠点を設けます。 マハジャンさんは、新たな拠点にインドとイスラエルを選んだ理由を次のように語っています。「デジタル化が加速すると、ソフトウェアの重要性が高まります。そのため優秀なソフトウェアエンジニアを求めてインドとイスラエルを選びました。各拠点で、AI・量子コンピューティング・セキュリティのスペシャリストを採用する予定です」
既にイスラエルでは2021年夏から活動し始めました。研究開発も富士通のみで進めるのではなく、現地の大学と連携するなどオープンイノベーションを推進して新しいサービスやソリューションを提供していく予定です。

CTOが組織改革の先に見据えるソリューション

富士通株式会社 執行役員 マハジャン

マハジャンさんは新たな研究開発体制を作り、グローバルな研究開発体制を強化しました。その狙いはどこにあるでしょう。
ひとつはスピードアップです。
マハジャンさんは次のように言っています。
「就任から3カ月で富士通の様々な技術を確認しましたが、これら技術にはかなり競争力があります。研究所と富士通本体の一体化を機に、これら技術をできるだけ迅速にビジネスへつなげられるものにするのがCTOとしての役目です」
技術だけではビジネスとして成り立ちません。
「お客様もハードウェアやネットワークだけを導入してあとで使い方を考えるのではなく、ハードウェア、ネットワーク、ソフトウェアも含めたソリューションを購入したいのです。それにはXaaS(X as a Service:クラウドによって提供されるサービスの総称)が重要です」

また、クラウドのみならずサービスとして提供することがエンタープライズ企業の常識になっていくと考えるマハジャンさんは「富士通がグローバルに研究して開発したトップレベルの技術を、いかにして社会課題やビジネスに役立てるかが私の大きなミッションです」と語っています。
では富士通が強みを持っている技術を、社会やお客様の課題解決につなげるための戦略とはどのようなものでしょう?

ビジネスのコア(Key Focus Areas)を支える5つの技術領域

富士通は、サステナブルな社会の実現を目指す事業ブランド「Fujitsu Uvance」を策定しました。その中で、7つのKey Focus Areas(重点注力分野)をさだめ、それを支えるために5つの技術領域に研究開発リソースを集中することを宣言しました。富士通が強みを持っており、デジタルイノベーションによってビジネスの変革と持続可能な社会を実現するために必要な技術です。その5つを簡単に紹介しましょう。

1:コンピューティング
コンピューティングは長い歴史を持つ富士通の伝統です。
最近では3期連続で世界No.1を獲得している、富士通と理化学研究所が開発したスーパーコンピュータ「富岳」や、量子現象に着想を得たデジタル回路で組合せ最適化問題を高速に解くデジタルアニーラを他社に先駆けて提供しています。
マハジャンさんは「スーパーコンピュータやHPC(高性能計算)も一般的なコンピューティングのためにXaaSの形で使えるようにします。それによって、今まで限られた人々しか使えなかった技術などをより多くの人に提供できます」と語ります。

2:ネットワーク
エンド・ツーエンドで仮想化されたクラウド・ネットワークを提供します。それはBeyond 5Gやパブリッククラウドを含むオープンなネットワークであり、AIを活用したセキュアな技術を提供し、消費電力の減少を含むサステナブルなインフラを目指したグリーン技術を提供します。

3:AI
AIではより良き社会を実現するために、「AI倫理」や「行動認識と分析」、「因果関係を分析する発見AI」などの強みを持っています。特に因果関係の分析はAIが苦手とする分野ですが、富士通のAIはそれを明らかにすることができ、幅広く利用されています。

4:データ&セキュリティ
DXの進展においてますます重要となるデータとセキュリティですが、異なるブロックチェーンを連携する「Hyperledger Cactus」や異なるクラウド間でのデータの真正性を保証する「TaaS(Trust as a Service:クラウド型サービスとして検証を行うこと)」などを研究しています。

5:コンバージングテクノロジー
これが非常に重要です。複雑な社会課題はテクノロジーだけでは解決できません。そこで最先端のデジタルテクノロジーと人文・社会科学などの分野の知見を融合するコンバージングテクノロジー(行動分析技術と行動科学を融合し、人が次にどんな行動を行うかを予測するヒューマンセンシングなど)の開発に取り組んでいます。

テクノロジーで様々な社会の課題を解決していくということ

今、世界は持続可能な社会の実現を含む、多くの大きな課題を抱えています。その実現や解決は新しい技術の研究開発だけではなしえません。
今回紹介したような、デジタルテクノロジーを使って社会やビジネスの課題を解決するソリューションが必要となります。富士通はより良い社会に変革しようとする人々を支える力となり、人や社会、経済の発展にテクノロジーで貢献していきます。

社会課題をテクノロジーで解決するために。富士通新CTOの決意
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