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  5. シニア層のICT活用進展と仮想通貨等を利用して高度化する詐欺 ―実態と必要な対策―

シニア層のICT活用進展と仮想通貨等を利用して高度化する詐欺
―実態と必要な対策―

発行日 2017年7月19日
上級研究員 大平 剛史

【要旨】

  • 孤立しがちなシニア層によるICT活用の進展にともない、架空請求などインターネットを利用した特殊詐欺の被害にあうシニア層が増加している。
  • インターネット関連の特殊詐欺は、手口が高度化し、解決を試みて詐欺被害にあう場合も増加している。仮想通貨を悪用した高齢者向けの詐欺も増加しており、被害の回収が非常に困難な場合もある。
  • 自分は詐欺被害にあわないという自信がある人の割合は、高齢なほど増える傾向にあるが、架空請求詐欺などの被害者の約7割が詐欺にあわない自信があったと答えている調査結果もあり、対策が必要である。
  • 被害を防ぐ効果を上げてきた金融機関による対策に加えて、送金手段の多様化やシニア層によるICT活用の進展に対応した情報共有、入金者への声掛けなど、新たな対策が求められている。

インターネット詐欺被害にあうシニア層が増加

  • 6月9日に公表された『平成29年版 消費者白書』によると、架空請求トラブルなどアダルト情報サイトに関する2016年の消費生活相談件数(注1) は、60代以上の男性で約16,500件と2010年の約2.4倍、同年代以上の女性で約1,800件と同年比約6倍であった。一方、男性は40代以下、女性は30代以下で相談件数は減少傾向にあることが明らかになった。
  • 背景には、シニア層によるICT活用の進展がある。シニア層のスマートフォン保有率、PC保有率はともに増加傾向にある。総務省の通信利用動向調査によると、2013年末に11.0%であった60代のスマートフォン保有率は、2015年末には28.4%に上昇し、70歳代では9.2%、80歳以上では1.9%であった。内閣府の消費動向調査によると、世帯主が60代の世帯では、2014年3月に67.4%だったパソコン保有率は、2017年3月には69.4%に上昇し、世帯主が70代の世帯では、同時期に46.9%から48.1%に上昇した。
  • もう一つの背景は、ICTを活用した問題解決能力の年代格差である。問題解決のためにICTを活用するシニア層の能力は、若い世代より低いことがわかっている。2012年の「OECD国際成人力調査(PIAAC)」では、「ITを活用した問題解決能力に関するテスト」で「情報を獲得・評価し、他者とコミュニケーションをし、実際的なタスクを遂行するために、デジタル技術、コミュニケーションツール及びネットワークを活用する能力」(注2) が測定されたが、日本の55歳〜65歳の受検者の平均点は、16歳〜44歳の1割以上低いスコア(262点)であった。

手口が高度化し、解決を試みて詐欺被害にあう場合も

  • 将来の確実な値上がりをうたう業者からビットコイン等の仮想通貨を購入したものの、代金支払い後に解約できなかったり、代理購入後高値での買い取りを約束されながら約束が果たされなかったりするなど、仮想通貨に関する知識に乏しいICT利用者を狙った詐欺的な手口が増えている。高齢者を中心として、こうした手口に関する相談が増加しており、2014年には3件/月ほどだった高齢者からの消費生活相談は、2016年には20件弱/月と約6.7倍になった(図表1)。
  • コンビニ端末とレジでの仮想通貨購入口座への入金によって、アダルト情報サイトなどからの架空請求の際にマネーロンダリングを行う手口に関する相談も寄せられ始めている。6月29日に報道機関向け報告書(注3) を発表した独立行政法人国民生活センターは、架空の請求だと気付いた被害者が入金後に返金を試みても、詐欺業者は仮想通貨を別口座に送金してしまい、「被害を取り戻すことは非常に困難」なケースもあるとして、注意を呼びかけている。身の回りの他者にトラブルの前兆を相談できず、孤立しがちな多くのシニア層が、ITを活用した問題解決能力を十分にもたないまま、被害にあっていると考えられる。

  • 図表1:仮想通貨の詐欺的な手口に関する高齢者からの消費生活相談件数(月平均値)

    図表1:仮想通貨の詐欺的な手口に関する高齢者からの消費生活相談件数(月平均値)

    (出所:消費者庁『平成29年版 消費者白書』から富士通総研が作成)
    (*2014年は4月から12月の数値)

  • アダルト情報サイトからの架空請求などの解決を試みて、詐欺被害にあう高齢者も増加している。インターネットで解決方法等を検索して、無料相談や返金可能をうたう探偵業者等に相談をしたところ、調査費用として数万円を支払うことになり、アダルト情報サイトからの返金等解決にも失敗したというような消費生活相談が急増している。
  • 検索スキルの高いICT利用者であれば、さらに検索をして、そのような探偵業者等には悪質なものも多いことに気づくはずであるが、検索スキルが低い高齢者は、深く調べることなく悪質な業者に相談してしまう場合が多い。こうした探偵業者等に関する60代以上からの消費生活相談は、2012年の25件から2015年には488件となり、2016年には900件と前年の約1.8倍になった。

高齢なほど詐欺被害にあわない自信があるが、実際は新たな対策が必要

  • 内閣府が1月に実施した「特殊詐欺に関する世論調査」によると、自分は架空請求詐欺などのいわゆる特殊詐欺の被害にあわないと思うと答えた人の割合は、50代で37.9%、60代で42.9%、70代以上で50.7%と、高齢になるほど高まる傾向がある(注4) 。しかし、神奈川県警が実施した調査では、架空請求詐欺を含む振り込め詐欺の被害者の約8割はこうした詐欺について事前に知っており、約7割が詐欺にあわない自信があったと答えている(注5) 。
  • こうした詐欺被害の防止策としては、送金手段の多様化やシニア層によるICT活用の進展に対応した詐欺手口の情報を、防止策を講じる機関・団体に定期的に周知徹底することが第1に重要である。国民生活センターによる注意喚起情報に加えて、ICT を駆使したスマートフォン経由の詐欺手口等に関する情報を公開している、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の情報セキュリティ安心相談窓口の発出情報(注6) などは、無料で活用できる情報である。
  • 第2の対策として、金融機関で効果を上げている「声掛け」を、コンビニなど金融機関外の入金窓口でも行うことが重要である。東京都では、「金融機関職員向け特殊詐欺被害防止研修会」を開催しており、銀行利用者への声掛けが被害防止につながっているとしている(注7) 。警視庁によると、2015年に都内で特殊詐欺の被害を防止できた約47億円のうち、約44億円は金融機関によるものであった(6月16日更新情報)(注8) 。混雑などによって入金者への声掛けが難しい場所では、レジやコンビニ端末経由の入金の際、詐欺手口に関する注意喚起情報を表示することも、次善策として有効であると考えられる。
  • 技術がいくら進化しても、進化についていけず、取り残されてしまう人々は必ず存在する。従来は、コミュニティにおける人々のリアルな結びつきが、技術を悪用した詐欺のような犯罪からそのような人々を守ってきた。しかし、特に都市部では、地域とのつながりが弱い一人暮らしの高齢者が増えている。そのため、コンビニなど、シニア層が日常的に頻繁に訪れる場所での「声かけ」など、孤立から生じる問題への新たな対策が必要になってくると考えられる。

注釈

  1. 本文中の消費生活相談件数は、すべて消費者庁『平成29年版 消費者白書』による。
  2. 国立教育政策研究所編『成人スキルの国際比較』2013年、17頁。
  3. http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170629_1.pdf
  4. http://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-sagi/gairyaku.pdf
  5. 澁川祐子「心理の弱点突く知能犯/「自分は大丈夫」が最も危険」『週刊東洋経済』2010年1月16日号、46-48頁。
  6. http://www.ipa.go.jp/files/000044872.pdf
  7. http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/chian/chiankaizen/mijikanahanzai/tokusyusagi/financialtraining/
  8. http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/kurashi/tokushu/furikome/furikome.html