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「災害福祉広域支援ネットワークの構築に向けての調査研究事業」 (社会福祉推進事業)の実施について

富士通総研では、厚生労働省「平成24年度社会福祉推進事業」(セーフティネット支援対策事業費補助金)として、「災害福祉広域支援ネットワークの構築に向けての調査研究事業」を実施致しました。

お問い合わせ先

担当:第一コンサルティング本部 公共事業部 名取直美、北川弘美

電話:03-5401-8396(直通)  Fax:03-5401-8439

背景と目的

災害では、人命をどう守るかが最重要課題となります。したがって、要援護者支援でも、発災直後に想定される「災害による直接的な被災」から命を守る、という一次被害の防止を主眼とした対応がなされていますが、その後の発生が懸念される「災害による間接的な被災」である二次災害から命を守るには、救命以降に保健や福祉の専門性のあるサービスにどう結びつけていくかがポイントとなります。

東日本大震災では避難中や避難後の避難先で体調を崩して亡くなる等の災害関連死の発生が注目され、二次災害からいかに要援護者を守るか、新たな要援護者の出現を食い止めるかが課題として現れてきました。少子高齢化が進む今後の日本では高齢者数は増加するものの、それを支える地域コミュニティの脆弱化が懸念されています。また、在宅生活の推進によって、自宅に住む要介護高齢者や重度の障害を持つ方も増えています。毎年のように何らかの災害が発生し、南海トラフ巨大地震の発生が懸念される今、災害時の要援護者支援体制をどう構築するかは喫緊の課題です。

以上の課題認識のもと、本事業では、東日本大震災における災害時要援護者と被災地支援の状況を踏まえ、二次被害発生の防止策としての災害時に提供される福祉の有効性に着目し、今後の支援体制の構築やそれに関わる事業者等の主体、人々への防災リテラシーの向上に寄与することを目指して、支援体制のあるべき姿とその具体的な実施方法等についての検討を行いました。

事業概要

本事業では、都道府県に対してアンケート調査(悉皆)とヒアリング調査(抽出)を実施しました。アンケート調査では、各都道府県に対し、(ⅰ)東日本大震災における人員派遣・受入れの状況、(ⅱ)都道府県内の支援体制の構築状況、(ⅲ)他都道府県との広域支援体制の構築状況、を確認することで実態を把握し、今後の検討に資する基礎データの整理・分析を行いました。また、すでに検討を開始している都道府県に対しては、その取り組み状況等についてヒアリング調査によって把握しました。

以上の調査研究の実施にあたっては、有識者(13名)から成る検討会を設置し、4回にわたり、調査内容や結果を報告し、検討・精査をいただきました。

調査結果からは、広域支援以前に都道府県や市区町村内でも要援護者支援体制の構築や検討が進んでいないこと、そして、広域支援ネットワーク構築の前提条件とも言える、支援を行う送り手・受け手双方の問題、災害福祉に対する基本的な認識や温度の違い等が見えてきました。そして、災害福祉や要援護者支援についての共通認識の醸成、効果的な支援を行うための連携体制づくり、支援の送り手と受け手がストレスを感じずに結びつくための条件検討等の環境整備が急務であることが明らかとなりました。

以上を受けて、検討委員会では、発災後の時間軸に沿った災害福祉の必要性、公民が協働しての支援体制の構築についての議論を重ねました。その一方で、災害はいつ発生するか判らない喫緊の課題であることから、東日本大震災で確認された状況をもとに、災害時すぐに活動することができる災害福祉支援チームについての議論も行うことで、(ⅰ)支援体制と環境の整備、(ⅱ)実効的なチームの組成、という両輪の検討を行いました。

【検討について】

検討委員会で最も討議されたのは、災害福祉の重要性をどのように明らかにするかでした。少子高齢化の進行により、今後は要援護対象者である高齢者も増加することから、要援護者の量的増加への対応が求められます。また、在宅で生活している重度の要介護高齢者、障害者の増加等から、地域で生活する要援護者の質も変化していると考えられますが、コミュニティ自体の力は減じている状況にあります。東日本大震災で見られた要介護高齢者の増加や重度化等の二次被害の状況は、単に大規模災害だからということではなく、福祉サービスを恒常的に必要とする・もしくはそうなり得る人々が増加している時代が来ていることの表れでもあり、そうした点からも災害時の福祉はどのように提供されるかを考えることが必要です。また、東日本大震災では、救命された後の避難生活以降で想定される「災害による間接的な被災である二次災害」から命を守ること、二次被害の防止が重要であり、そのためには発災後の早い段階からの福祉ニーズの把握等の災害福祉の提供が重要であるとの方向性が打ち出されました。一方、災害によって生じる課題は時系列で刻々と変化し、求められる対応も異なります。よって、その段階ごとに求められると考えられる支援の機能の確認を行いました。

以上については、支援体制は市区町村~圏域~都道府県~広域と段階的に構築されると考えられることから、時系列による整理を行い、また、その構築や活動等については、都道府県や市区町村の福祉と防災のセクション、実際に活動を行う民間事業者や団体等によって公民協働で行われることをあるべき姿として描き出しました。

報告書の公表

本事業における成果は、今後の災害時の要援護者支援体制の構築にあたっての資料として活用されることを願い、報告書としてまとめましたので公表いたします。

アンケート調査・ヒアリング調査等に御協力下さった都道府県をはじめ、本事業に御支援・御協力下さった皆様に深く感謝すると共に、本報告書を、今後広くご活用いただけますと幸いに存じます。

災害福祉広域支援ネットワークの構築に向けての調査研究事業報告書

関連する調査研究

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