Skip to main content

Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2009-1月号 (VOL.60, NO.1)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2009-1

年頭ご挨拶

特集1:「モバイルWiMAX」特集2:「映像ソリューション」

高速データアクセスサービスを提供するシステムとして注目されているモバイルWiMAXについて,今回はシステムの概要,標準化への取組み,MAC技術,ベースバンドSoC,RFチップセット,WiMAX端末向けデザインキット,高出力電力増幅技術など,主にデバイスを中心にまとめました。また,国際映像符号化技術であるH.264/AVCをはじめ,高品質伝送技術,蓄積/検索技術,画像処理技術を駆使した富士通の映像ソリューションを紹介いたします。


富士通研究所フェロー NGWプロジェクト部長
高野 健
富士通研究所フェロー NGWプロジェクト部長 高野 健 写真

モバイルWiMAX特集に寄せて(PDF)

富士通はWiMAXシステムの開発に取組み,ユビキタス社会を支えるワイヤレスブロードバンドシステムの発展に貢献してまいります。

特集1:モバイルWiMAX 目次〕

  • 富士通のモバイルWiMAXへの取組み
  • モバイルWiMAX標準化への取組み
  • モバイルWiMAX端末向けベースバンドSoC
  • モバイルWiMAXのMAC層による低消費電力化技術
  • モバイルWiMAX端末向け小型RFモジュール
  • モバイルWiMAX端末向けハンドセットモジュール/システムデザインキット
  • モバイルWiMAX基地局向け高効率GaN-HEMT増幅器

経営執行役上席常務
石田 一雄
経営執行役上席常務 石田 一雄 写真

映像ソリューション特集に寄せて(PDF)

富士通は,映像をもっと身近に感じられるように,お客様視点で高性能・高品質なプロダクトやサービス,ソリューションを提案してまいります。

特集2:映像ソリューション 目次〕

解説

  • 映像を取り巻く社会的動向と富士通の取組み

フィールドでのソリューション事例

  • 共有化された多数の監視映像の長時間蓄積
  • 映像技術を活用したフィジカルセキュリティの実践
  • ハイビジョン伝送システムIP-9500のグローバル展開

映像ソリューションを支える製品とサービス

  • 映像配信SaaSプラットフォーム
  • ネットTV指向の映像配信システム
  • 映像ソリューション向け収集・配信・管理ミドルウェア:FutureyeII
  • H.264|MPEG-4 AVCリアルタイム映像伝送装置IP-9500,IP-900

研究所での技術開発

  • 映像ソリューション向けメディア処理技術

特集1:モバイルWiMAX


WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)は移動環境において高速アクセスを実現するシステムの最有力候補となっている。日本国内ではUQコミュニケーションズが2009年からサービス開始を予定しており,また米国ではSprint/Clearwireが2008年9月からサービスを開始している。
本稿では,このWiMAXシステムの特長的技術{OFDMA(スケーラブル直交周波数分割多重方式),AMC(適用的に最適な値を選択する方式),およびスマートアンテナ}を説明するとともに,WiMAXを含むコアネットワークの構成およびWiMAXを利用したサービスに言及し,最後に富士通のWiMAXシステムへの現状の取組みについて説明する。

齊藤 民雄, 高野 健, 阿波賀 信人

モバイルWiMAXは,WiMAXフォーラムが定めるMobile WiMAX System Profileに基づく無線システムで,詳細な無線仕様はIEEE802委員会の下部組織である802.16WGが定める802.16無線仕様を参照している。したがって,モバイルWiMAXの標準化は,802.16WGとWiMAXフォーラムの2箇所で行われていると言える。
本稿では,二つの標準化団体802.16WGとWiMAXフォーラムの目的と運営の違いについて簡単に述べ,それぞれの場所での富士通の活動について紹介する。技術的な見地で議論が行われる802.16WGでの標準化では,世界各地にある研究所を主体としたグローバル体制により活動を行っている。一方,事業性が重視され開発する製品の認証試験や他社製品との接続性に密に結びついた議論が行われるWiMAXフォーラムでの標準化では,開発部門を主体とした活動を行っている。

中村 道春

富士通は,次世代ワイヤレス通信規格「モバイルWiMAX」に準拠するモバイル端末向けデジタルベースバンドSoC(System-on-a-Chip)を開発した。このSoCは,物理層処理部(PHY),下位MAC(Media Access Control)層処理部(LMAC),およびデュアルプロセッサで構成される。PHYはMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)の処理ならびにOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)の変復調処理を行う。LMACは,暗号化機能ならびにフレームレベルのデータトランザクション制御を行う。MAC層の処理に二つのプロセッサを用いることで,低いクロック周波数にもかかわらず高いデータスループットを実現した。44.8 MHzの動作周波数において最高45 Mbpsのデータ受信が可能である。

齋藤 美寿, 吉田 昌弘, 毛利 真寿

移動端末の低消費電力化は,ワイヤレスブロードバンドシステムを普及させるための最重要課題の一つである。このため,モバイルWiMAX標準仕様では,アイドルモードとスリープモードを規定している。移動端末はこれらのモードに移行することで動作を一時的に停止することができる。また,モバイルWiMAX標準仕様では,移動端末の送信電力を基地局から制御するための電力制御も規定している。本制御により,基地局は電波を受信するための必要最小限の電力を移動端末に指定することができる。ただし,標準で規定されているのはプロトコルまでであり,そのプロトコルをどうやって使うかについては実装に委ねられている。
本稿では,移動端末の低消費電力化を実現するために,MAC(Media Access Control)層の機能を用いて,移動局のアイドルモードとスリープモードを実現するメカニズムについて論じる。また,省電力を可能にする新たな送信電力制御アルゴリズムについても説明する。

伊勢田 衡平, 鶴岡 哲明, 加藤 次雄

次世代無線ブロードバンドとして注目を集めているモバイルWiMAX端末向けのRF(高周波処理)モジュールには,低価格,低消費電力,そして小型であることが求められる。これらの条件を満たすため,著者らは小型RFモジュールと90 nm CMOS技術を用いたRF CMOS LSIを開発した。このRFモジュールは,主要3周波数帯,および下りリンクMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術をサポートし,RF LSI,パワーアンプ,電圧制御温度補償型水晶発振器(VCTCXO),バンドパスフィルタ(BPF)を備えている。大きさは幅15 mm x 奥行11 mm x 高さ1.7 mmである。また特長は,設計者がRFに関する知識がなくても,本モジュールを実装するだけで容易にRF性能が得られることである。
本稿では,RF LSIとRFモジュールに採用されるRFアーキテクチャと高周波回路技術について紹介する。

小林 一彦, 齋藤 伸二, 韮塚 公利

富士通のモバイルWiMAX向けチップセットを搭載したハンドセットモジュール(HSM)とシステムデザインキット(SDK)をFDK株式会社と共同で開発した。HSMは富士通が開発したWiMAX用SoCチップおよびRFチップさらに専用電源チップを搭載したモジュール構成で,対応周波数としては2.3/2.5/3.5 GHz帯をサポートしている。外形寸法は19.7 x 18.2 x 1.5 mmである。一方,SDKは,お客様による前記チップセット搭載HSMの評価作業やチップセットを用いた製品開発を支援する。このSDKを使えば主要な通信システム動作状況やインストールしたアプリケーションをパソコンからモニタできる。
本稿では,HSMとSDKのハードウェアおよびソフトウェアの概要を紹介するとともに,WiMAX端末開発への適用例を示す。

渡辺 保信, 山本 祥二

富士通は,モバイルWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)基地局向け送信用小型電力増幅器を実現するための高効率窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)の開発を行っている。高い利得と高電力効率の電力増幅器を開発し,基地局の消費電力低減と小型化の実現を目指している。GaN-HEMTは,その高い破壊耐圧特性により,高効率電力増幅器を実現できるトランジスタとして注目を集めている。今回,モバイルWiMAX基地局向けGaN-HEMTの開発を行った。まず利得性能を向上させるゲート長と単位ゲート幅を設計した。また,効率向上の点で必要となる重要な点は,電子トラップ特性であるということを見出し,その改善手法を確立した。モバイルWiMAX信号に対し,-50 dBc未満の隣接チャネル漏えい電力比で50%のドレイン効率を達成し,小型の基地局を実現することが可能となった。

吉川 俊英, 岩井 大介, 多木 俊裕

特集2:映像ソリューション


解説

近年,放送のデジタル化やハイビジョン化,ネットワークのブロードバンド化などを背景に,映像コンテンツの利用が増加している。また,メディア・コンテンツ分野以外でも,セキュリティ,防災,医療,教育,農業,ITS(Intelligent Transport Systems),地域活性化など,様々なビジネス分野,公共分野において,ICT(Information and Communication Technology)の利活用の一環として,映像によるソリューションの利用が広がってきている。
本稿では,映像利用の進展の状況,およびその背景と映像利用の促進に関連する政策動向について紹介する。

八木 隆

フィールドでのソリューション事例

近年,IPネットワークの普及,低廉な価格のカメラの登場,デジタル映像の取扱い容易化などにより監視カメラの設置が飛躍的に増加している。監視映像は,ライブ映像によるリアルタイム監視とともに,犯罪や事故などの証拠として記録することが更に重要となっている。監視対象には監視映像を常に蓄積することでしかとらえられない対象がある。しかし,蓄積する監視映像数が多く,長時間となるほど目的映像の検索や管理が煩雑となる。
本稿では,既存の監視カメラ映像のMPEGマルチキャストストリーム,および監視カメラ映像の管理情報を活用し,大容量となる映像データの蓄積にネットワークストレージを用い,100台規模の監視映像を長時間蓄積する「映像情報蓄積システム」の概要,特長を述べる。

福野 哲也, 岩見 隆弘

近年,個人情報の漏えいやコンプライアンス違反などにより,企業活動の存続に影響を与えるケースが発生しており,内部統制への動きが活発化し,総合的なセキュリティ対策が企業に求められている。富士通は,こういった拡大傾向にある市場に対し,他社に先行する映像圧縮技術や手のひら静脈認証技術をベースにしたフィジカルセキュリティソリューションを市場へ展開している。こうした中,2007年度に,画像処理による人数検知と生体認証を組み合わせた共連れ防止や監視カメラによる死角のない映像監視などを採用し,より堅ろう性の高いフィジカルセキュリティシステムを大手システムインテグレータのデータセンタや富士通のシステムセンタに適用した。
本稿では,画像センサ処理による人物検知技術の入退室適用例の紹介と映像圧縮技術による監視映像データの長期保存および今後のビジネス展開について説明する。

新堀 栄徳, 川喜田 聖

近年,全世界で地上波デジタル放送開始やIPネットワークの高速化などのインフラ整備が進行し,放送・通信サービスの融合による映像サービスベンダ間の競合状況もあり,映像コンテンツのHD(High Definition)化が進行している。
一方で,従来のMPEG-2方式を中心とする映像符号化技術で膨大なHD映像コンテンツを取り扱うことは,多大な伝送システムの追加投資や伝送コスト増加が必要となるため,従来方式の2倍以上のデータ圧縮を実現する最新映像符号化技術H.264|MPEG-4 AVCの早期実用化に対する需要が高まりつつある。
本稿では,富士通が世界に先駆けてH.264|MPEG-4 AVC新方式を製品化し,世界市場のフィールドで新映像符号化技術の有効性を実証することに成功したハイビジョン伝送システム"IP-9500"のグローバル展開状況について紹介する。

三隅 健司, 天本 保, 坂本 昭彦

映像ソリューションを支える製品とサービス

NGN時代に入り,インターネットを通じた映像配信サービスが急速に多様化・高品質化している。富士通では,この流れに対応した高品質な映像配信ビジネスのプラットフォームサービスを提供している。
本プラットフォームは,安全な映像コンテンツの流通を行うための著作権管理機能を有し,大容量配信に耐えるインフラを備え,ハイビジョンクラスの映像配信に対応している。
本稿では,本プラットフォームをSaaSとして提供することで,コンシューマ向けに急速な普及が見込まれるネットTV向けの配信から,e-learningや広報分野の利用が進む企業向け・PC向けの配信まで,規模や目的に応じた映像配信サービス提供,コストを抑えて短期間に実現することが可能なサービスについて紹介する。

北川 義人, 立川 健

IPTVの国内標準化が進展し,IPTVを直接受信できるネットTVと呼ばれるテレビ装置が普及しつつあり,ネットTVへの配信サービスとして,アクトビラなど新たな配信事業者が生まれつつある。
映像配信の重要な技術要素として,圧縮技術,配信技術,コンテンツ保護技術がある。本稿では,このうち配信技術を中心に,ネットTV向け映像配信のための製品や取組みについて紹介する。映像配信では,オープンインターネットでの配信技術が求められ,HTTPをベースとする新たな規格が制定され,サービスの実現・装置の実装に採用された。富士通ではこれらに対し,いち早く製品化に取り組み,ネットTV仕様対応大規模映像配信ソフトウェアMillionStreamを提供している。また,センタ設備のコスト低減に向けて,オンデマンド配信におけるキャッシュ配置・振分の機能や,ソフトソリューションによる地デジIP再送信に取り組んでいる。

内田 正之, 新田 拓哉

富士通では2003年にブロードバンド映像ソリューションBroadsightを発表し,リアルタイム映像伝送装置IPシリーズと,映像収集・配信・管理ミドルウェアFutureyeのラインナップを整備し,映像監視市場,放送市場に展開してきた。現在,2006年にリリースされたIP-9500と,このFutureyeをエンハンスしたFutureyeIIとによって,高効率映像符号化技術H.264|MPEG-4 AVCにも対応し,従来の市場に加え,民需,教育,医療,広告配信へと利用シーンを広げている。また,2008年12月にはH.264|MPEG-4 AVCのSD映像に対応したIP-900をリリースし,さらに広範囲な市場へと展開している。FutureyeIIにおいてもそれら新規市場に向けた機能を開発し,さらなる利用シーンの拡大を図っている。
本稿では,FutureyeIIのH.264|MPEG-4 AVCへの対応および各市場要求への対応機能について紹介する。

田嶋 聡司

H.264|MPEG-4 AVCを用いたHD(High Definition)映像対応リアルタイム伝送装置IP-9500は,映像品質・伝送品質・低遅延において国内はもとより海外においても高い評価を得ており,2007年1月の発売からこれまで放送事業者を中心にHD映像を安価に収集・配信する手段として数多く活用されてきている。さらに,近年ではこのH.264|MPEG-4 AVCという技術は,通信事業者によるIPTVシステムや,官公庁や民間企業による映像監視など多様な用途に活用が期待されており,扱う映像もHDからSD(Standard Definition)まであらゆるコンテンツが対象となってきている。
本稿では,映像素材の収集・蓄積・配信により,放送から映像監視まで様々な用途に応じたソリューションを実現する最新の製品ラインアップである「IP-9500シリーズ」および「IP-900シリーズ」について紹介する。

井原 範幸, 澤田 順一, 吉田 要

研究所での技術開発

富士通研究所では,富士通が展開する映像ソリューションの基盤となる,オーディオ/ビデオなどのメディア符号化に関する高品質化技術と,これらの技術をソリューションとして展開するためのシステム化技術の研究開発を行っている。
本稿では,富士通の製品に適用された最新成果を紹介する。まずオーディオ符号化技術として,5.1チャネル音声に対応し,原音と差異のない高音質性能を実現するAAC(Advanced Audio Coding)圧縮技術を紹介する。つぎにビデオ符号化技術として,H.264|MPEG-4 AVCにおいて,放送の生中継への適用を目的として,世界最高水準である300 msの映像伝送の低遅延化を実現した技術を紹介する。最後に,システム化技術として,並列処理による高速化と,共通インタフェースによるマルチコーデックへの迅速な対応を特長とする高速トランスコードシステムを紹介する。

鈴木 政直, 数井 君彦, 此島 真喜子


---> English (Abstracts of Papers)