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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2005-11月号 (VOL.56, NO.6)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2005-11

特集: 「ものづくり革新」

富士通では,2003年より全社の工場にトヨタ生産方式(TPS)を導入し,これまでの各工場でのTPSによる生産革新活動では大きな成果をあげております。現在は,この製造現場からのものづくり革新を起点に,サプライチェーンマネジメント(SCM)革新,設計源流での開発革新と製品ライフサイクル全体におけるトータルなものづくり革新活動を進めております。本特集では,富士通ITプロダクツ・富士通那須工場・島根富士通における生産革新活動,高速データベースエンジン“Shunsaku”によるSCMの「見える化」,強いものづくりを支える生産技術,ITツール活用と品質工学(タグチメソッド)導入による開発プロセスの見える化と開発手戻りのムダ排除など,プロダクト製品を例にものづくり革新活動を紹介致します。


経営執行役 プロダクトビジネスサポートグループ副グループ長 ものづくり担当
村嶋 純一
経営執行役 プロダクトビジネスサポートグループ副グループ長 ものづくり担当 村嶋 純一 写真

ものづくり革新特集に寄せて(PDF)

富士通は,ものづくり革新を起点としてあらゆるプロセスのたゆまぬ改革を継続して進め,単なるITサービスのサプライヤとしてではなく,お客様のパートナとしてご信頼いただけるよう,お客様のビジネスや生活に役立つプロダクト,サービスを提供し続けてまいります。

特集: ものづくり革新 目次〕

  • 富士通のものづくり革新

現場起点の生産革新

  • トヨタ生産方式導入による生産革新活動への取組み
  • 富士通グループの工場における生産革新活動の実践
  • 高速データベース検索システム“Shunsaku”によるものづくりの「見える化」

強いものづくりを実現する生産技術

  • 基幹系製品のプリント板ユニットのアセンブリ技術
  • 高密度実装を実現するコンシューマ製品向けLSIアセンブリ技術
  • 鉛フリーはんだによるアセンブリ技術
  • 小型ローコストアセンブリマシン
  • 高付加価値を低コストで生み出す微細・精密加工技術
  • 生産分野における3次元計測技術

設計上流からの開発革新

  • ものづくり革新を支える統合設計環境
  • 開発プロセスの可視化とプロジェクトマネジメント
  • ロバスト設計を実現するタグチメソッド

開発革新の活動事例

  • 富士通におけるDFXの適用
  • シミュレーションの活用による携帯電話端末のTTMの短縮
  • トヨタ生産方式の導入によるソフトウェア開発プロセスの革新

特集:ものづくり革新


富士通では,2003年より富士通の強みを生かす高付加価値の「ものづくり」と人材価値の向上を目指した「ものづくり革新活動」の全社展開を開始した。
中国や東南アジア地区への製造シフト,技術の部品化,オープン化の進展による部品・ユニット購入比率の拡大による内部製造付加価値の低下など,「ものづくり」の環境が大きく変化している。
本稿では,このような「ものづくり」環境の変化を分析した上で,サーバや基幹ネットワーク,およびパソコンや携帯電話の開発~製造におけるQCD{Quality(品質),Cost(コスト),Delivery(納期)}の作り込みの実現に向けて,富士通の「ものづくり」へのこだわりと,現在進めている工場起点の生産革新活動から,サプライチェーンや開発源流までさかのぼった革新活動の展開によりトータルコストでの競争力向上を推進している「ものづくり革新活動」について紹介する。

酒井 雄一,宮澤 秋彦

現場起点の生産革新

富士通では,これまでに個々の工場やビジネスユニットごとに生産性・効率化の向上を追求し推進してきたが,2003年より全社活動としてトヨタ生産方式の導入によるものづくり革新活動を開始した。この活動は,トータルとしてのものづくりを考えた全生産活動として,工場だけでなく,営業部門の受注活動からお客様への製品搬入,設計・開発の源流革新を含めた活動を目指している。そのために,まず,生産ライン革新という製造現場での活動を起点に,各工場や製造会社のトップの旗振りのもと,従業員の意識付け教育や2S(整理・整頓)を中心にスペース削減や生産性向上目標を掲げて外部コンサルタントによる指導を受けながらトヨタ生産方式の導入・展開に取り組み,成果をあげ始めている。現在,各工場ともにまだ,工場内において問題が見える仕組みの構築段階にあり,さらに,工場内からサプライヤやお客様までをつないだ革新や工場からさかのぼった開発との連携を目指して活動している。本稿では,その取組み経過と概況をプロダクト系工場を例に説明する。

酒井 雄一,菅野 敏彦,前田 智彦

生産革新活動は,富士通グループトータルとしてのものづくり革新に向けて2003年より開始し,まずは,各工場での整流化や後工程引取りの実現に向け,TPS(トヨタ生産方式)コンサルタントの指導を受けながら展開している。
本稿では,生産革新活動の取組みとして,最初に,その原動力となった富士通コンポーネント(FCL)における事例を紹介する。つぎに,2004年4月よりTPSコンサルタントの指導を受けて推進している工場の中から,富士通ITプロダクツ(FJIT)と,富士通那須工場の生産革新活動の取組み事例を紹介する。そして,2005年4月よりTPSコンサルタントによる指導を受けている,島根富士通(SFJ)の取組み事例を紹介する。

菅野 敏彦,前田 智彦

富士通では,サーバ製品・ネットワーク製品のビジネスを強化するため,サプライチェーンマネジメント(SCM)の構築に取り組んできた。このSCMにおいては,需要と供給の調整をとることが最も重要であるが,難しさを増すものづくりにおいては,それらを阻害する様々な問題がいろいろな局面で起こってきた。こうした問題をタイムリに摘出し,ただちに手を打たなければ,お客様の納期に間に合わないなど大きな影響を与えてしまう恐れがある。そのため,富士通では生産計画の変動や突発的な部品の供給不足といった問題をタイムリに摘出し,目に見える形にする「見える化」に取り組んできた。
本稿では,高速データベースエンジンInterstage Shunsaku Data Manager(Shunsaku)を採用して実現した棚卸資産のデイリー照会,余剰部品の発生原因追跡,ものづくりトラッキングの三つの「見える化」の実例を紹介する。

熊谷 榮二,松崎 恒一郎

強いものづくりを実現する生産技術

サーバ系やネットワーク系の基幹製品は,高機能のプリント板ユニット(PCBA:Printed Circuit Board Assembly)を内蔵している。中でもCPUを実装するPCBAは,非常に大型の基板に,先端のパッケージや電子部品を高密度で実装しており,一般的なPCBAに比較して製造の難易度が高い。事前にPCBA製造時の部品挙動を把握し,挙動特性に応じた対策の実施などにより,これらPCBAを製造している。
本稿では,高性能と高信頼性を要求される基幹装置の大規模PCBAを,高品質で製造するための,リフローはんだ接合技術,およびPCBAに実装する高発熱パッケージ冷却機構のアセンブリ技術について述べる。

坪根 健一朗,東 修士

電子機器の小型軽量化・薄型化・高機能化に伴い,内蔵される電子部品のLSIに対しても高密度実装が要求されている。通常LSI実装は,金ワイヤを使用してLSIと基板の電極端子同士を接続するワイヤボンディング実装方式が主流であるが,近年,高密度実装の要求によりワイヤレスで実装するフリップチップ実装方式が注目されている。
富士通は,独自のフリップチップ実装方式を開発し,コンシューマ製品に適用して,製品の小型軽量化と性能向上に寄与している。
本稿では,LSIアセンブリ技術の中で最も高密度化が可能なフリップチップ実装技術について,コンシューマ製品向けに富士通が開発したフリップチップ実装技術のバンピング技術・実装プロセス・信頼性評価結果・製品適用例などを述べる。
また,最も高スループット・低コスト化が可能である超音波エネルギーを応用した最新のフリップチップ実装技術に関する富士通の取組みについても述べる。

吉良 秀彦,高島 晃,尾崎 行雄

2006年7月に,欧州RoHS(restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment)指令が施行される。この指令に向けて対応する最大の技術課題は,対象6物質のうち最も広範に使用されている鉛の代替である。とくに,エレクトロニクス実装の基本材料とも言うべき「はんだ」の鉛フリー化では,主流となっている錫-銀-銅(Sn-Ag-Cu)はんだを採用した場合,はんだ付け温度が高温化するため,電子部品の耐熱管理,リフローはんだ付けの均熱化対応が必要である。また,はんだ材料の代替に当たっては,その材料特性と品質,信頼性の見極めが重要であった。富士通は,これまで鉛フリーはんだの基礎的材料の開発をはじめとして,製品への鉛フリーはんだ適用に向けた総合的な技術開発を進めてきた。
本稿では,こうした鉛フリーはんだ付け技術にかかわる課題解決のための富士通の取組みを紹介する。

松村 唯伸,山本 剛

近年,製造業への生産要求が以前の多品種少量生産から,多品種変量生産へと大きく変わってきている。また,社内に目を向けると,初期投資がかからない現行設備の有効利用や,トヨタ生産方式導入による生産革新が推進されている。投資を抑え,ムダなく生産要求に応えることができる生産システムの構築と,それに対応する設備開発が今後のものづくりの大きなテーマとなっている。
本稿では,人間作業と協調性に富み,製品試作から量産まで一貫して使用でき,また,設備本来の高速高精度を備えるとともに,工程変動や製品変動に迅速に対応できる柔軟性と,小型経済性を併せ持った小型ローコストアセンブリマシンの開発について紹介する。

嶋村 公一,佐々木 康則,藤井 昌直

情報処理機器では半導体デバイスとともに多くの精密機構部品を使用している。とくに,ユビキタスコンピューティング時代のツールとして,その利用分野の拡大を目指して小型・高機能化を進めている携帯電話,小型情報処理端末や通信機器に用いる機構部品,次世代の高機能デバイスでは微細化,高精度化,高品質化が不可欠となっている。富士通では,これらの高付加価値を低コストで製造するための加工技術を「ものづくり」の基盤技術ととらえて開発を推進している。
本稿では,精密機構部品や次世代デバイスの加工技術開発として取り組んでいる,超精密ラップ加工技術,マイクロレーザ加工技術,精密射出成形技術,および精緻プレス技術開発の取組み状況について製品製造への適用事例を中心に,その概要を説明する。

松下 直久,柳田 芳明,塚原 亨

生産分野における3次元計測技術は,ものづくりを支える重要な要素技術であり,電子部品の著しい微細化に伴って精度,速度の両面から高度な性能が求められている。富士通においては,半導体,磁気ディスク装置,表示素子,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を生産していることから,サブミクロンからサブナノレベル精度までを高速に計測できる技術が必要とされている。
本稿では,これまで開発してきた3次元計測技術を紹介し,今後の展開を述べる。3次元計測では様々な原理に基づいた技術が開発されているが,生産分野に適用できるものとして三角測量法と光干渉法を採用した。三角測量法では半導体のバンプ計測技術を,光干渉法では磁気ディスク部品,表示素子用導光板の計測技術を紹介する。最後に,MEMSの実用化に伴って新たに必要性の増したナノオーダの動的計測技術を紹介する。

塚原 博之

設計上流からの開発革新

製品開発において,高性能化・小型化・低コスト化などの市場要件と同時に,製造・組立・試験・保守などのものづくり要件を短期間で満足するためには,全体最適化が可能な設計環境とともに,後工程からの手戻りのない革新的な設計手法の導入が必要である。富士通グループでは,富士通グループ統合設計環境を構築して,開発革新とものづくり革新を推進しており,本環境がサポートする電気設計統合CAD環境“EMAGINE”では,設計源流からの各種シミュレーションの活用や,DFM/DFT導入,構造設計との協調設計などにより,これらの課題を解決している。
本稿では,ものづくり革新を支える仕組みを中心にEMAGINEの概要を説明し,その後,ノイズシミュレーション設計環境,および構造設計環境について述べる。

山口 高男,小泉 健夫,酒井 晃

企業を取り巻く環境は複雑であり,変化も早い。他社より優れた価値を持つ製品をベストなタイミングで提供し,企業が継続的な進化を遂げるためには,品質・コスト・スピード・環境に対応しながら,複雑化する一方の製品開発プロセスを分かりやすく可視化し,マネジメントしていくことが重要である。著者らは,CMMI(Capability Maturity Model Integration:能力成熟度モデル統合)を参考にしてプロセスの成熟度に着目し,成熟度が低い新規プロセスと成熟度が高い開発プロセスの大きく二つに分けて課題解決へのアプローチを開始した。本稿ではこれらの活動事例について報告する。はじめに,成熟度の低い初期の開発プロセス事例として,環境ラベル取得プロセスの標準化活動と,それを支援するシステムを紹介する。つぎに,成熟度の高い開発プロセス事例として,開発プロセス標準化・繰り返し最適化を行うワーキンググループ活動と,進捗管理などの実プロジェクト作業を支援するプロジェクト管理ツールについて紹介する。

有田 裕一,中山 典保,粟田 豊

複雑な市場の要求に応え,より良い製品をより早く提供していくためには開発の仕組みも常に見直していく必要がある。品質工学(タグチメソッド)は田口玄一博士によって体系化された技術開発の方法論であり,近年その評価が更に高まっている。品質工学ではモノの働き(基本機能)に着目し,システムを構成する因子を主に三つのカテゴリ(信号因子,制御因子,誤差因子)に整理して取り扱うが,従来の手法に慣れてしまったエンジニアには難解な部分も多い。しかし「ものづくり革新」をより確実なものにするためには,エンジニアや組織の意識改革を行い,この手法をより普及させなければならない。
本稿では品質工学普及への取組みについて,推進体制と解析ツール(WebSTAT,ParaNAVI)の概要,および適用例としてシミュレーション分野,プロセス材料分野,ソフトウェア評価分野の事例を紹介する。

竹下 修二,細川 哲夫,雨森 和彦

開発革新の活動事例

従来は,製品の量産開始後に設計改善を行い原価低減や手番短縮を図ることが主流であったが,近年,製品の多品種少量化が進みライフサイクルが短期化した状況下では,量産初期から最適な製造を実現することが重要である。製造性は,その80%が設計で決まると言われており,早期に最適量産を実現するには,開発設計段階で工場での製造性(組立性,試験性)を検討し,設計に反映させるDFX(Design For Manufacturing/Testing)が必要である。そのためには,開発初期段階から設計部門と工場部門が連携して製造性改善に取り組むことが求められる。富士通では,DFXの取組みとして,工場でのものづくりのノウハウや製造条件に関するガイドラインの活用,開発段階で製造性を検討する仕組づくりなどを行っている。
本稿では,DFXの概要,および実際に製品にDFXを適用して製造性を改善し効果をあげた事例を紹介する。

谷沢 秀徳,関屋 幸雄,高橋 英明

いつでも,どこでも,だれとでもコミュニケーションできる「ユビキタスネットワーク社会」は,PCや携帯電話端末,無線LAN,ICカード,セキュリティ技術など様々な技術開発の進展により着実に実現しつつある。一方,このユビキタスネットワーク社会で使用されるPCや携帯電話端末市場は成熟化が進み,今後の市場成長率はほぼ横ばいとなることが予測され,メーカ間の競争は一層激化する。このような市場環境の中で競争優位を確保するためには,デザインや機能を差別化するとともに,QCD{Quality(品質),Cost(コスト),Delivery(納期)}の作り込みによって製品開発サイクルを短縮し,タイムリにお客様の期待する価値や品質を提供していくことが非常に重要である。富士通は,シミュレーションを活用した科学的な開発アプローチ手法を導入し,開発上流の品質作り込みによるTTM(Time To Market)の短縮に取り組んできた。
本稿では,携帯電話端末の開発を例に,シミュレーションの活用例を紹介する。

岩渕 敦,山岡 伸嘉,山口 愼哉

富士通プライムソフトテクノロジ(PST,現在,富士通ソフトウェアテクノロジーズ)では2003年からトヨタ生産方式(TPS)の導入による生産性向上活動に取り組んでいる。TPSの基本コンセプトをITのソフトウェア開発分野で実践する手段としてアジャイル開発プロセスとストア管理手法を導入した。この二つの手法には,TPSの基本コンセプトである「ムダの徹底排除」,「平準化」,「自働化」,「目で見る管理」が具体的な実践手法(プラクティス)として組み込まれている。PSTでは,アジャイル開発プロセスをソフトウェア開発プロセスに,ストア管理手法をサポート保守プロセスに導入した。その結果,両プロセスの改善とともに組織風土においても大きな改善効果が得られた。
本稿では,まず,アジャイル開発プロセスで実践されているTPSのコンセプトを紹介するとともに,PSTでの実践効果を紹介する。つぎに,ストア管理手法における「平準化」の実践手法を紹介するとともにPSTでの実践効果を紹介する。

古垣 幸一,高木 徹,坂田 晶紀,岡山 大輔


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