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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

1998-3月号 (VOL.49, NO.2)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 1998-3

特集: 「システムLSI」

システムLSI特集に寄せて(PDF)

特集: システムLSI 目次〕

概要

  • システムLSIの現状と動向

システムLSI

  • PC向け三次元グラフィクス用幾何変換プロセッサ:Pinolite
  • システムLSI向けCPUコア
  • MPEG-2システムLSI
  • マルチメディアオーディオ用DSP
  • 携帯電話用LSI
  • メモリにおけるビジネス展開

システムLSIの基礎技術

  • システムLSI新設計手法の導入
  • システムLSIソフトウェアの開発環境と実行環境
  • システムLSI設計の検証技術
  • 低消費電力技術
  • 次世代CMOSロジックLSIプロセスモジュール技術
  • 富士通IPハイウェイ

一般

  • MPEG-2ビデオコーデック:FEDIS-M2
  • 戦術的データマイニングシステム

特集:システムLSI


概要

半導体技術の急速な進歩を背景に,システムレベルの機能をシリコンチップ上に実現するシステムLSIが脚光を浴びている。2000年には1,000万ゲートを超える集積度が可能となる。この時期には0.18 μmプロセス品の量産が始まる。DRAMの混載も本格化し,システムLSIの性能も飛躍的に増大する。一方,大規模なシステムLSIの設計能力との乖離が生じている。このため,LSI設計はより細分化,専門化される。また,設計期間の短縮のため,性能や動作が保証された機能回路ブロックをIP(知的財産)として,標準化とオープン化が促進されている。
本稿では,このような半導体の動向とともに,新しい設計環境の提供やIP Highwayシステムの構築など,システムLSI時代に向けた富士通の取組みについて紹介する。

馬場重典

システムLSI

PC用三次元グラフィクスに活用するための幾何変換プロセッサを紹介する。三次元グラフィクス処理は,物体の形状を加工したり位置を移動させたりする幾何変換処理(ジオメトリ)と,表示領域に投影し着色するための描画処理(レンダリング)から成る。Pinolite は,その幾何変換処理部分を高速化するための専用プロセッサであり,100 MHz動作時に,最先端のアーケードゲーム機に匹敵する500 kポリゴン/秒(三角形グーロポリゴン)および750 kポリゴン/秒(三角形フラットポリゴン)の処理能力を提供する。PCIコントローラ,SDRAMコントローラ,DSPコアおよびI/Oプロセッサといった各種機能マクロを集約統合し,PC環境への適用に最適化されたシステムLSIとして製品化した。3D WinBench 98によるベンチマークテストの結果,Intel Pentium MMX (200 MHz)と比較して,項目により80%以上の性能向上が認められた。本稿では,本プロセッサに適用したアーキテクチャと,幾何変換処理高速化のために適用した命令セット,およびPC用に最適化するためのバスインタフェースの工夫について紹介する。

阿波賀 信人、中原 誠

システムLSIは,一つのチップに多くの技術要素をまとめ上げる技術であり,製造プロセスの微細化が非常に進んでいる現在,難しいことではなくなった。
しかし,ハードウェアだけでは要求仕様のマイナチェンジ等に短期間では対応できない。自由度を上げ,将来の仕様変更等にもソフトウェアで対処できるようにするため,システムLSIにプロセッサコアを内蔵する場合が増えている。著者らは,システムLSIでのソフトウェア処理を行うために,現在, SPARCliteシリーズとFRシリーズの二つの32ビットRISC CPUを提供している。これらのプログラマブル・プロセッサコアは,それぞれ高い演算性能(SPARClite),制御用に最適化された仕様(FR)という特徴を有している。これらのプロセッサコアを用途に応じて搭載することで,ユーザ・アプリケーションに最適で拡張性のあるシステムLSIの開発が可能となる。

助村 隆郎、高橋 均

1996年に開始されたPerfecTV衛星ディジタル放送や1997年から本格的に量産が開始されたDVDは,ディジタル画像をMPEG2方式で圧縮したメディアである。MPEG2の処理においては,入力データ(ストリーム)の構文解析,画像・音声信号の抽出,および復号処理に伴う演算などの多様な処理が要求される。富士通では,先に,ケーブルテレビ向けにMPEG2デコーダ(画像デコードのみ)を開発しているが,今回,DVDプレーヤ向けに符号解析,MPEG2画像・音声デコード,およびDVD専用処理を行うDVD用システムLSI(MB86371)を製品化した。また,衛星ディジタル放送向けには,すでに受信信号のQPSK復調用LSI(MB86660)を製品化しており,衛星放送対応のMPEG2デコーダLSIについてもほぼ開発を終えている。

西森 英二、山下 公一、玉村 雅也

マルチメディアオーディオ技術に欠かせない,Dolby Digital(AC-3),MPEG-Audioデコード用システムLSIとして開発したマルチチャネル・オーディオプロセッサ(MUCAP)を紹介する。MUCAPは高性能DSPコアと専用の周辺回路を搭載することで,複雑かつ高速処理が要求されるDolby Digital(AC-3)デコードやMPEG-Audioデコードの処理を効率よく実現でき,Dolby Digital(AC-3)デコーダLSIとして米国Dolby Lab.の認証を得ている。また,MUCAPは,Dolby Digital(AC-3),MPEG-Audioデコード,Dolby Pro Logicデコード,サラウンド処理などの信号処理を同時に行うことも可能にした。
本稿では,Dolby Digital(AC-3)デコード処理フローとMUCAPアーキテクチャについて説明する。

糟谷 武

携帯電話は,その携帯性が必須条件になっていることから,その中核の部品であるLSIに求められる小型軽量化への期待は,非常に大きなものとなってきている。
本稿では,小型軽量化携帯電話機を実現するための主要技術であるシステムLSIについて述べる。
小型軽量化実現のために要求されるLSIの役割は,チップ統合によるチップ数の削減と消費電力の削減である。
今回開発したベースバンド部のシステムLSIでは,最先端の微細プロセスを使用したディジタル・アナログ混載テクノロジを採用することにより,従来5チップで構成していたベースバンド部を2チップに統合し,かつ大幅な消費電力の低減を実現することで,携帯電話機の小型軽量化に貢献することができた。

姉歯 伸彦

MOSメモリ市場では,DRAM,フラッシュメモリ共にデータ処理速度の向上と低電圧化,そして実装面積の縮小化を目指した技術革新が激化している。この傾向は,今後システムLSIへの搭載が急激に進むと想定される比較的大容量のメモリの技術動向にも同様に見られるであろう。
DRAM市場では,向こう2,3年にかけて高速化に向けた大きな技術革新が期待されるが,現在富士通はDDR(Double Data Rate)技術において業界をリードしている。
またフラッシュメモリ事業で,富士通は米AMD社と提携し,世界最大規模のフラッシュ・メモリ・オンリーの前工程ファブを運営する一方,需要を先取りした製品開発に努めている。
本稿では,富士通のDDR技術の特徴について紹介すると同時に,フラッシュメモリの特徴およびパッケージング技術,そしてフラッシュメモリカードのラインアップについても紹介する。

システムLSIの基礎技術

大規模かつ高性能なシステムLSIを短期間で設計するために導入した新設計手法を紹介する。HW/SW Co-design,すなわち,Hardware/Software Co-designはハードウェアとソフトウェアを同時に開発する設計手法であり,ソフトウェアを含めたシステム検証をハードウェアの試作前に行うことが可能になった。新論理検証手法では,スタティックタイミング解析による高速タイミング検証と,フォーマル・ベリフィケーションによる高速論理機能検証の結合により,論理検証期間の大幅な短縮を実現した。論理フロアプラン設計手法は,フロアプランに基づいた再最適化処理を行うことにより,実際の配置・配線後に近い予測配線容量での論理設計を可能にし,チップレイアウト後のタイミングエラー発生を最小限に抑えるので,最終的なタイミング調整のための作業を軽減した。また,RTL(Register Transfer Level)での消費電力解析と低消費電力合成手法は,短期間かつ最適な低消費電力設計を可能にした。

石渡 啓介

システムLSI用のソフトウェアは,開発量が多く,プログラム構造も複雑になってきており,また種類も多岐に渡る。このような状況のなかで,プログラム開発者は限られた期間で確実にソフトウェア開発を行わなければならない。しかし,従来のコンパイラ,デバッガなどの基本ツールだけではこれらの状況に対応できなくなってきた。これに応えるため,富士通では統合開発環境“SOFTUNE”を開発した。SOFTUNEは,ソースファイルをプロジェクトという単位にまとめて管理し,エディタ,コンパイラ,デバッガなどのツールを連携させることで開発効率を上げることができる。また,ビジネスパートナ各社との協調により,言語ツール,デバッガ環境,ICEや,リアルタイムOS,COデザインツールに至るまでの製品を幅広く取り揃えたことで,顧客が目的に応じた開発ツールを選択できるようにした。
一方,近年はインターネットに代表されるように,ネットワーク,マルチメディア,リアルタイム処理をキーワードとするソフトウェアの開発が多くなってきている。このため,出来上がったソフトウェアを実際のシステムに近い環境で動作させ検証する「実行環境」が必要となっているため,リアルタイムOSを搭載し,ネットワーク,マルチメディアに対応したリファレンスボードとマルチメディアライブラリを提供した。

五十嵐 純、根岸 康之

システムLSIの論理規模増大への対応のため,設計品質の観点からLSI設計の検証技術について述べる。2000年には,ランダム論理は300万~500万トランジスタの設計規模となり,設計不具合も現在の1.5~3倍増加すると予測される。LSI設計における設計不具合の約70%はテスト項目の組合せ不足であり,設計品質の面から新しいLSI設計検証技術が必要となる。大規模化に対応して形式的検証を導入することは,論理シミュレーションでは検出困難な設計不具合を発見でき効果が期待できるが,本格導入のためには処理規模の拡大と検証用モデルの自動抽出が課題である。原因-結果法によるテスト項目生成は,仕様レビューと抽出した項目組合せの網羅性で効果があるが,LSI設計に適した仕様項目記述方法と項目間制約方法の改良が課題である。

木村 雅春、久門 由紀、安倍 健志

システムLSI低消費電力化技術として進めている,トランジスタのしきい値を2種類使うDUAL VTH方式をベースにしたデバイスと回路技術からの低電力化アプローチを紹介する。本アプローチにより,従来のテクノロジ・ロードマップのほかに低電力化ロードマップが可能になることを示した。従来のテクノロジに比較して,半分の速度で動作させてよい場合には,電力はほぼ一桁低下させることができる。また,同一速度性能なら約6割の電力で達成できる。このテクノロジをベースにして,システムLSIを構成する基本マクロである積和器やSRAMを低電力化した手法を説明するとともに,これらのマクロ技術と並列化アーキテクチャを応用して音声コーデック用DSPコアの消費電力を1/5にした技術を紹介する。

川嶋 将一郎、福士 功、井上 淳樹

次世代(Post Quarter-Micron)CMOSロジックLSIのためのプロセスモジュール技術について紹介する。現在,ロジックLSIは,消費電力の削減と配線遅延時間の改善という二つの大きな課題に直面している。プロセスモジュール技術の観点からは,消費電力の低減にはレトログレードウェル技術,デュアルゲート技術による低閾値電圧化,Co-サリサイド技術,浅いトレンチ素子分離技術等の採用が効果的であり,配線遅延時間の改善には低抵抗配線材料,低誘電率絶縁膜の採用が有効である。しかし,これらの問題は本来プロセスモジュール技術のみで解決が図れる性質のものではなく,設計面からの対応策も必須である。とくに,配線遅延の把握に関しては従来の設計レベルでは対応できなくなりつつあり,設計コンセプトを含む発想の転換が必須である。

後藤 広志

インターネットとイントラネットを利用した,LSIの設計資産(IP:Intellectual Property)を流通させるためのシステムである“Fujitsu IP Highway”を紹介する。
本システムにより,任意の事業所のサーバに登録されたIP情報を,オープンなサーバ連携技術でグローバルな事業所のサーバに自動転送し,優れた検索技術で世界中の設計者に効率良く利用させることを実現した。オープンなサーバ連携技術として,多くの企業が採用しやすい標準的なデータ転送プロトコル(転送レコード形式,転送方式)を仕様化している。具体的には,転送レコード形式としてSGMLを,転送方式としてFTPとCORBAを採用している。優れた検索技術として,多量のIP情報から迅速にかつ的確に欲しい情報を検索可能とするため,検索対象のIP情報の「クラス分類化」と「比較表示」を採用した。

鉾碕 宗夫、小泉 元春、田原 昭紀

一般

映像伝送システムにおいて,ネットワークを効率良く利用するためには情報量を圧縮してネットワークに伝送する仕組みが必要である。ビデオコーデックはまさにこの仕組みを実現する装置であり,映像・音声を符号化/復号化する機能を有し,それぞれを多重化して各ネットワークに伝送する。
富士通は,映像・音声の符号化および多重化方式の国際標準であるMPEG-2規格に準拠したビデオコーデックをいち早く市場に投入した。これまでのビデオコーデックは,映像と音声を伝送するネットワーク上のコンポーネントとしての役割を果たしてきた。しかし,利用環境の拡大を図るためには,ネットワーク全体をインテグレートする機能を持ち,高品質な伝送を提供することが要求される。
本稿では,利用環境を拡大するための課題,つぎに,利便性を向上させるための課題を説明し,これらを克服する技術を中心に今回開発した装置を紹介する。

藤山 武彦、浜野 崇、山中 俊宏

ビジネス分野において,競争優位のためのデータの分析的活用は,専門家から非専門家へと裾野を広げつつある。それに伴い,データマイニングにも戦略的および戦術的の両面からのアプローチの必要性が高まってきた。
富士通は,OLAP(Online Analytical Processing)であるSymfoWARE Navigatorを中心として,分析者の発想や洞察を支援する新しい分析スタイルを提供するSymfoWARE VisualMinerと高速なマイニングエンジンSymfoWARE Mining Serverを密に結合し,戦術的データマイニングシステムを実現した。

加藤 博己、小薮 正晴、岩本 昌己


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