2022年10月01日
南京富士通南大軟件技術有限公司

中国人にとって日本語は易しい!? ~実は難しい日本語の発音~

「違和感」のない日本語を話せるには、道のりは長い!

FNSTでは、社内日本語教育を長年実施してきた結果、JLPT(日本語能力試験)の上位(N1・N2)資格者は全社員の約半数51%を占めています。ところが、N1になっても、会議では聞き返されたり、理解してもらえなかったりすることが度々あります。原因は日本人にとって違和感のある発音です。ちなみに、JLPTは日本で認められた試験ですが、発音の能力測定は含まれていません。 


JLPTの詳細については公式サイトを参照ください:https://www.jlpt.jp/index.html

中国人にとって日本語の発音は易しい!?

「漢字が分かる中国人にとって日本語は易しい」と思っている中国人は多いと思います。しかし、漢字が分かるのは諸刃の剣で、中国語漢字の発音が頭の中にあることで逆に日本語の発音に苦戦することになります。

中国語の発音には、21の声母(子音)と38の韻母(母音)に加え、約400の音節、そしてすべての音節に四声というアクセントがあり、全部で1600種類の発音があると言われています。

これに対し、一見、日本語には50音図で表される少ない音素しかないように見えるので、日本語の発音は簡単だと甘く見てしまうことがよくあります。しかし、これが大間違いです!「自然な日本語」を話すには大きな難関がいくつもあります。

発音の難関はこんなにある!

難関1 日本語の漢字は読み方がたくさん!

中国語では基本的に1つの漢字には1つの読み方が決まっていて、複数の読み方がある漢字(多音字)は数が限られます。一方、日本語では多くの漢字にたくさんの読み方があります。例えば、「生」という漢字は中国語ではshēng/シェンと読みます。文章のどこにあっても、どのような熟語になっても同じ読み方です。しかし、日本語では、生きる(い)、一生(しょう)、生もの(なま)、生物(せい)、生憎(あい)、誕生(じょう)・・・と様々な読み方があって、しかも、読み方を決めるルールが無いように思えます。これは中国人にとって驚きです。

難関2 英語なのに英語と違うカタカナ語!

日本語の中にはカタカナ語がたくさん出てきます。多くのカタカナ語は英語の「読み」から作られたものだと思うのですが、実は発音をそのままカタカナに置換えたものではなく、おそらく長年日本語の中で馴染んだ読み方になっている事が多いのです。中国人は、英語の発音が先に頭にあるので、英語の発音をそのままカタカナで書けば良いと思ってしまいます。でも、そうすると日本語としては変なカタカナ語になってしまいます。

難関3 日本語には中国語にない発音がある!

日本語の促音(っ)、撥音(ん)、長音(ー)は中国人が苦手な発音です。これらの発音に共通する特徴は、音の長さです。促音や撥音は母音が無いのに、他の音と同じように「一拍」の長さを持っています。長音は二倍の長さに伸ばさなければなりません。こういう発音は中国語には無いので、中国人は一拍の「溜め」ができずに、短く発音してしまいがちなのです。

難関4 日本語のアクセントは、文脈によって変わる!

中国語では一つの漢字ごとに四声(音の高低・変化)というアクセントが決まっています。ところが、日本語のアクセントは言葉が繋がると変わることが良くあります。「中国」と「中国人」ではアクセントが違うのです!しかも、辞書に一つ一つの単語のアクセントは載っているのですが、言葉が繋がった時のアクセント変化は全てが載っている訳ではありません!NHKニュースや朗読を聞いて覚えるしかないのです。

発音の難関を乗り越えよう!

日本語の発音が如何に難しいかご理解いただけたでしょうか?中国人が「自然な日本語」を身につけるには、日本語ネイティブ環境に没入するのが良い方法です。FNSTでは約20年前(2003年)から教育をお願いしている日本語学校Progress Japanese Academy(PJA) と協力して、日本現地での3ヶ月間集中特訓コースを導入し、コロナで渡航が難しくなる2020年の前まで 継続して社員を日本研修に送り出してきました。この研修コースでは、「聴く」「話す」に重点を置いて、月曜から土曜まで毎日授業を受け、宿舎に帰った後もたくさんの宿題をやらなければなりません。研修生は学生時代に戻った気分で日本語学習に取り組みます。その学習の様子を紹介します。


研修スケジュール(赤字は「聴く」と「話す」中心のレッスン)

「漢字」や「カタカナ語」を「耳」から覚える

漢字の「読み方」を中心に覚えると、読み方が多すぎてかえって混乱します。「読み方」を覚えるのではなく、文章に出てくる「日本語の音」として頭に刷り込む方が有効です。そのため、「目」からの学習ではなく、「耳」と「口」で練習を大量に行い(毎日2時間以上)、耳に入ってきた単語や短文の音をそのまま認識できるように訓練します。苦手なカタカナ語については、「耳からカタカタ」という特別なレッスンまで設置されています。

早口言葉の練習で、拍子を意識する

最初は1音ずつ、ゆっくり読みます。慣れてきたら、だんだん読む速さを上げます。拍子を抜かず、間違えずに言えるようになるには、百回以上の練習が必要です。

ひたすら音読・シャドーイング練習でアクセントを身につける

アクセントを身につけるためには、ひたすら音読やシャドーイングを繰り返します。シャドーイングとは、お手本の音声を聞いてから、すぐに自分で繰り返して発音する方法です。お手本とそっくりに発音できるようになるには、何時間も繰り返して練習する必要があります。

私も短文を百回くらい繰り返して練習したものです。限られた時間を活用するため、帰り道の電車の中でも、食事の時でもイヤホンをかけながら音声を聞きました。

日記・スピーチの発表練習

シャドーイング練習で発音を直す一方で、自分で書いた日記やスピーチ文の発表練習も行います。辞書で単語1つ1つのアクセントを調べ、メモを作り、先生に確認して、レッスンで恥ずかしくない発表ができるように、何回も練習します。授業から帰っても宿舎で深夜まで勉強していることがよくありました。


書いた作文の一部

大晦日の日でも深夜まで作文を書く研修生

おわりに

語学に王道なし。発音を直すには、近道がなく、繰り返し練習によって少しずつ上達していくしかありません。3ヶ月悪戦苦闘した結果、ネイティブ並みの発音とは言えませんが、最初に比べると随分「違和感」のない日本語が話せるようになります。日本のお客様から「うまくなったねー」と褒められるのが、とても嬉しく感じられます。研修が終わっても地道にレベルアップを続けましょう!