Skip to main content

English

Japan

2014年度 私の視点

何基の原発が再稼動するのか?

経済研究所
主任研究員 高橋 洋

2014年4月11日に、福島第1原発事故後初めての「エネルギー基本計画」が閣議決定されましたが、その内容は総花的で、具体性に欠け、日本のエネルギー政策は不透明な状態が続いています。その最大の理由は、現在「稼動ゼロ」となっている原発が、今後何基再稼動するのか予測できないからでしょう。この1年間で原発の再稼動はどのような展開を見せるか、考えてみます。

第1に、新聞報道などを総合すれば、今夏にも九州電力の川内原発が再稼動すると見られます。優先審査が進められており、立地自治体の理解もあるとのことです。その際、具体的に原子力規制委員会がどのような判断を下し、周辺住民や国民全般がどのような反応を示すか、それに対して政府がどのように対応するかは、これ以降の再稼動にも影響を与えるでしょう。

第2に、今年度中に再稼動するのは、川内原発を含めて最大でも8基というところではないでしょうか。現在、17基が原子力規制委員会に対して申請中ですが、その内10基の審査が進んでいるとされます。そして10基の内大飯原発3、4号は、想定地震動を見直すことになったため、今年度中の再稼動は困難だといいます。

原発の再稼働は、高騰する化石燃料費の負担に喘いでいる電力会社にとって、慈雨になるはずです。しかし、8基全て(768万kW)が稼動し、全て石油火力の代替として使われたとしても、コスト削減は年間7000億円に止まります。2014年度という意味では、この金額の半分にも達しないと見られます。また、このためには兆円単位に達する安全対策費用が別途かかっており、電力各社の赤字額を考えれば、決して十分とはいえないでしょう。一方で、政府の意向として電気料金の再値上げは難しく、だからこそ、北海道電力と九州電力は、日本政策投資銀行からの出資を受け入れるようです。

このような厳しい状況の中で、電力会社が老朽原発をどうするか真剣に検討を始めたとの報道もあります。廃炉にするにも、莫大なコストがかかります。原発をどうするか、電力会社の経営問題をどうするか。2014年度は、原発の再稼動のみならず、中長期的観点に立った建設的な解決策を議論する必要がありそうです。