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2014年度 私の視点

人材育成の根幹

経済研究所
上級研究員 北川 弘美

町なかで新しいスーツに身をつつんだ新入社員を見かけることが多いこの時期、これまで気にも留めなかった疑問が湧いてくるようになりました。-この人達はそれぞれの会社に入って、誰からどのような教育を受け、どのようなキャリアを積んでいくのだろうか。

私自身、ちょうど1年前に再生可能エネルギー、特に木質バイオマスの研究員として経済研究所に異動しました。そして本分野で先行しているドイツやオーストリアの関係者と関わる中で、圧倒的な力の差を感じるようになりました。

特に、同世代のドイツの木質バイオマスのエンジニアと一緒にワークショップを開催した際、その知識の幅や現場の把握・分析力に衝撃を受けました。彼はドイツでは当たり前のエンジニアの1人であり、決して突出しているわけではありません。しかし、日本で彼に相当する能力を持ったバイオマスのエンジニアは存在するのでしょうか。

その原因を自分なりに分析すると、ドイツやオーストリアでは、ベースとなる理論ノウハウが確立・共有化されており、これをベースに人材が養成されています。例えば、誰に聞いても熱価格の相場が返ってきますし、木質バイオマスの基本原則(電力利用ではなく熱利用が基本、残材利用が基本など)は関係者皆が共有しています。日本ではこれらの数値は人によってまちまちです。原則は存在すらしていないといえるでしょう。

このようにベースとなる理論ノウハウが整理および共有されている環境だからこそ、彼のような人材が育ち、成功事例が作られ、普及していくのだということを痛感した2013年度でした。素人が声高にそれぞれの持論を吹聴している世界では到底、到達することのできない世界が広がっていました。

今年度は、再エネの分野でどのような議論が展開されていくのか注目するとともに、自身が正しい理論ノウハウを発信し、成功事例を構築できる研究員として力をつけていきたいと思います。