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Japan

2014年度 私の視点

バイオガス発電の可能性

経済研究所
上級研究員 加藤 望

私は昨年度より、地域エネルギー事業構築に向けた研究や活動を行っています。特に、農業と深く関わり地域への波及効果が他の再エネと比べて大きいという点で、バイオガスに重点を置いています。国内外の状況を調べていると、バイオガスが地域活性化以外にも重要な役割を果たしうるものの、日本ではそれを実現するまでにはまだ長い道のりであることが分かります。

ドイツをはじめ欧州では、バイオガスはあらゆる使い方ができる再エネとして期待されています。熱需要のある所までガスを送って効率よく熱電併給する、メタンに精製して天然ガスの供給網に注入する、ガスのまま溜めておき電力の市場価格が高い時を選択して発電するなど、様々な選択肢とそれに対するインセンティブが与えられています。再エネによる発電割合が増えていく中で、調整電源としての役割も果たすこともできます。

日本では、これらの活用方法に必要なインフラ整備も電力自由化もされていません。したがって、現状下で発揮できるバイオガスの利点は、天候に左右されない安定した発電に留まりますが、それすらも特に意識されていないようです。北海道では、太陽光や風力と同様、バイオガス発電事業の計画も系統接続ができずに断念する場合が少なくありません。

まだほとんど導入されていないことも、バイオガスの特性が見過ごされている一因でもあります。ドイツでは、再エネによる発電量の1割以上をバイオガスが占めており、電力供給の調整機能を発揮するための促進策を実施する意義があったといえます。

日本におけるバイオガス発電は、まだ採算性や副産物利用などの課題解決の途上にあります。事業構築においてそれらに取り組むと同時に、様々な利用の仕方があるという特性にも注目し、地域活性化だけでなく日本の電力システムに与えうる影響も考えていきたいと思います。