Skip to main content

English

Japan

2014年度 私の視点

劣化する日本の技術力

経済研究所
上席主任研究員 梶山 恵司

日本の技術レベルの高さは自他ともに認めるところであるが、筆者がかかわっている、バイオマスを中心とした再生可能エネルギーや林業の分野では、技術劣化が目立つようになってきた。

たとえば、木質バイオマスボイラーである。形状や水分が不均質なバイオマスを効率よく燃焼し、熱を取り出すには、相応のノウハウと技術の蓄積がいる。ところが日本では、バイオマスボイラーとは名ばかりで、焼却炉の技術に終始し、バイオマスボイラーとしての技術の蓄積はほとんどなされてこなかった。技術・コスト両面で、欧州のバイオマスボイラーとわたりあえるメーカーは、日本には存在しない。

日本の林業機械も、事情はそれと大差ない。建機を部分的に改造して「林業機械」として売っているにすぎない。生産性も低いうえ、労働安全・衛生の面からも問題だらけだ。林業専用にベースマシンからつくられ、労働安全・衛生にすぐれる欧州の林業機械とは雲泥の差だ。

欧州のバイオマスボイラーや林業機械は、IT化も進んでいる。スマートフォンとつながり、ボイラーの燃焼状況や不具合状況などがどこからでも遠隔監視・操作できるシステムや、林業の伐採現場にスマートフォン経由でリアルタイムで採材指示が入るシステムなど、日本では夢物語のようなことが、欧州では当たり前に普及している。

こうした事例は、バイオマスや林業にとどまるものではない。再生可能エネルギーやエネルギー効率向上にかかわる分野において、外国では陳腐化した技術を平気で使っていたり、コストが異常に高いなどのことはいまや日常茶飯である。

これら技術はいずれも、量産で差別化しにくいコモディティー化した技術とは対極にある。だからこそメーカーの独自性を発揮できるのであり、新興国とは競合しにくい先進国型の産業といえる。つまり、日本のこれからの産業の目指すべき方向を示すものであるが、これはそれまでの日本の成長をさせてきた経済社会システムからの転換を迫るものである。