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Japan

2014年度 私の視点

中国の「法無禁止即可為」、「法無授権不可為」に向けた改革

経済研究所
主席研究員 金 堅敏

中国の習近平政権が一年以上に経ちましたが、汚職撲滅や汚染対策に政権運営の重点を置くとともに、2013年11月の「三中全会」で2020年に向けた政治、経済、社会、国防など国の根幹にかかわる「全面改革計画」が採択されました。2014年は「改革の元年」として位置づけられました。改革の目標は「国家のガバナンスシステムの制度設計とガバナンス能力の向上」とされ、経済運営の基本が市場の「決定的」役割を果たすシステムを構築すると目指すことになりました。つまり、政府と市場の関係が再定義し、政府主導の経済運営システムから民間主体で市場メカニズムを基本とする経済運営システムへの移行を意味します。

確かに、これまで中国経済産業運営における「政府の手」が強く働き、特に地方政府が市場の主体となる「競争的地方政府」の成長モデルが機能してきました。しかし、30年以上にわたって高度成長が実現されたが、土地財政への偏り、深刻な過剰設備と環境破壊、噴出する社会不満、汚職の蔓延などをもたらし、経済・社会が持続不可能な状態に陥れさせたのもこの政府主導の「競争的地方政府」成長モデルであると認識されるようになりました。したがって、中国の「全面改革」も政府セクターの改革となる「行政改革」から大いに進められています。政府による許認可権限の大幅削減と新設の制限、残存許認可権限内容の公表(中国では「権力リスト」という)と再検討、すべての許認可は法律による「法による行政」の改革が進められています。他方、民間資本とする経済運営システムの形成には、「ネガティブリスト」式や「投資前の内国民待遇」を経済制度に導入することを目指されてます。

李克強首相は、中国に市場では「法無禁止即可為」(法に禁止規定がなければすべてができる)、行政では「法無授権不可為」(法による授権がなければ行動することができない)の制度的枠組みを目指すことを強調しています。マインドセットのチェンジや既得利益を守ろうとする抵抗勢力の打破とともに、改革の方向をつけるグランドデザインが必要となります。2014年に中国の市場原理に基づくガバナンス改革は進展するどうかは、習・李政権の改革本気度を測ることになり、私がもっとも注目している中国イシューとなります。