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雑誌FUJITSU

2011-9月号 (VOL.62, NO.5)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


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雑誌FUJITSU 2011-9

特集:「研究開発最前線」

富士通研究所では,「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」の実現に向けて,ソリューションやサービスから,システム/ネットワーク/ユビキタスプロダクト,そしてデバイス,材料に至るまで幅広く研究を進めています。本特集号では,これら研究開発の取組みの一端をご紹介します。


富士通研究所
代表取締役社長
富田 達夫
富士通研究所 代表取締役社長 富田 達夫 写真

研究開発最前線特集に寄せて(PDF)

ICTは飛躍的に進展し,それらが貢献できる領域がより一層の広がりを見せつつありますが,3.11の東日本大震災では,多くのことを反省し,新たに学ぶことになりました。このような状況の中で,「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」をビジョンに掲げる富士通の果たすべき役割と社会的責務は非常に大きいものと考えます。私たちは,ICTによって人々の生活に単なる利便性を提供するにとどまらず,新しい価値を創造するための道筋を提案し,実現していかなければなりません。人間のいる現場で,人間が行動している中から起こる様々な情報をICTシステムに取り込み,価値や知識に変えて,現場に返すサイクルを回すことで,様々なリスクに対処できるヒューマンセントリックで知的な社会を実現していくことが求められていることだと考えております。

特集:研究開発最前線 目次〕

インテリジェントソサエティ

  • インテリジェントソサエティ実現に向けた研究の全体像
  • インテリジェントソサエティを支える分析技術
  • ソーシャルソリューションへの取組み

ヒューマンセントリックコンピューティング

  • ヒューマンセントリックコンピューティングの全体像
  • ヒューマンセントリックソリューション構築に向けた取組み
  • 海外研究所におけるヘルスケアの研究開発

クラウドフュージョン

  • クラウドフュージョンの全体像
  • クラウド運用管理技術
  • クラウドにおける大量データ処理技術
  • 安全なクラウド連携のためのデータセキュリティ

次世代グリーンデータセンター

  • 次世代グリーンデータセンターの全体像
  • 次世代グリーンデータセンターを構成するシステム:Mangrove
  • 次世代環境配慮型データセンターを実現するファシリティ一体化技術

先端技術

  • 広域道路交通シミュレータの開発とその応用
  • 単眼カメラによる立体撮影技術
  • 高精度手書きOCR技術と第6回中国国勢調査への適用
  • デジタル信号処理によるフォトニックネットワークの新たな展開
  • 次世代サーバ内高速信号伝送技術
  • 次世代スーパーコンピュータ向けSPARC64VIIIfxプロセッサの電力削減手法
  • 3次元LSI集積化技術
  • エネルギー効率から見たデータセンターアーキテクチャの特性評価
  • IT機器廃熱を利用した冷却技術
  • DNA材料で実現するタンパク質センシング

特集:研究開発最前線


インテリジェントソサエティ

富士通研究所では,ICTの利活用により人がより豊かに安心して暮らせる「インテリジェントソサエティ」の実現に向けた研究開発を行っている。大量データの利活用の研究では,リアルワールドから収集されたソーシャルメディアやセンサ情報などの大量のデータを高度なICTにより分析し,予測や最適化などの高度な判断支援を実現するための,「時空間データ処理」「複合多系列分析」「ダイナミック最適化」といった最先端技術の研究に取り組んでいる。ソーシャルイノベーションの研究では,人間や組織・コミュニティを観察・分析することにより,個人や社会にとっての豊かさや価値の発見,創出を目指しており,まちづくりにかかわる様々な個人や団体の相互連携を支援する新しいソーシャルメディア「まちばた.net」の開発などを行っている。これらの研究を融合することによって,エネルギー,安心・安全といった個人や個別の企業では解決が難しい複合的な社会問題を解決する「ソーシャルソリューション」を提供し,真に豊かで安心なインテリジェントソサエティの実現を目指していく。

原 裕貴, 石垣 一司

富士通研究所では,人や社会の知恵や行動,環境変化などに関する様々な情報を分析・活用することで,より豊かで安心できる社会を実現するためのインテリジェントソサエティの研究開発を進めている。人や社会の動きなどを分析し活用するためには,ブログやTwitterなどのマイクロブログ,SNSのような内容や書き方に関する多様性が非常に大きいテキストデータや,センサデータのように個別の情報量は少ないけれどもリアルタイムで大量に集まるデータといった,これまでビジネスインテリジェンスなどの従来の分析技術が扱ってきた企業内のビジネス情報とは全く異なる性質を持つデータを扱うための新しい分析技術が必要となる。
本稿では,それらの分析技術の中から,ソーシャルメディアを対象とした自然言語処理技術,人の行動や社会の動きを考慮した最適化技術,時刻や位置情報を大量に処理するための時空間データ処理技術の3種類の技術について,簡単な応用例を交えて紹介する。

湯上 伸弘, 井形 伸之, 穴井 宏和, 稲越 宏弥

富士通研究所では,ヒューマンセントリックなインテリジェントソサエティの実現に向けて,個人の行動,企業の活動,社会の状況を収集・統合・分析することにより,個人や個別企業では解決できない複合的な社会問題を大局的な視点で解決する「ソーシャルソリューション」の研究開発を進めている。ソーシャルソリューションのカバーする領域は広く,まだ研究開発の緒についたばかりではあるが,「安心・安全で豊かな社会」をターゲットとしたソリューションを中心に,社内での実証実験や実ユーザとのトライアルを実施する段階に達している事例も出てきている。
本稿では,その中から代表的なソリューションとして,四つの事例(予防型リスクマネジメント,運輸安全マネジメント,市場品質マネジメント,地域エネルギーマネジメント)を取り上げ,富士通研究所におけるソーシャルソリューションへの取組み状況を紹介する。

渡部 勇, 竹林 知善

ヒューマンセントリックコンピューティング

ヒューマンセントリックコンピューティングは,人間を中心にその場に必要なコンピューティング資源が提供される新しい技術パラダイムである。技術中心のシステム設計から,人間中心のシステム設計にパラダイムシフトすることで,人が活動する実世界に新たな価値創造が生まれ,ひいては今まで情報通信技術が十分浸透できていなかった新しい大きな市場が開拓されていくものと期待される。この新しいビジョンの実現を目指し,富士通では,モバイル端末とクラウドを垂直統合し,人が活動するあらゆる場所で的確なサービスを自然な形で提供するための研究開発を進めている。
本稿では,まず本研究開発のねらいを整理した後,主要な要素技術として,コンテキストアウェアサービス技術,マルチデバイス連携技術,ヒューマンインタラクション技術の三つを概説する。

飯田 一朗, 森田 俊彦

プレスリリース
				時間や場所に応じて必要なアプリケーションが自動配信・自動実行される情報端末技術を開発

関連情報
				人の動きを識別するモーションセンシング技術:携帯電話の健康支援・スポーツ診断アプリに適用

関連情報
				人にやさしい端末「子ぐま型ソーシャルロボット」:ユーザーとの親和的な関係を築くインタラクション技術

富士通研究所では,現実世界とクラウド上に構築された仮想世界との間で情報が行き来し,利用者の状態や置かれている環境に適したサービスを,適切なタイミングで提供するヒューマンセントリックな社会の実現に向けて,いまだICTが活用されていない現場領域に対する新しいソリューションの開発を進めている。これらのソリューションは,社会的な課題解決への貢献となること,およびモバイル端末などの活用によりICTの導入効果が見込まれることの2点を重視している。いずれのソリューションも,センサなどの活用による現場情報の収集,収集した情報の分析,分析結果を適切なタイミングでフィードバックするサービスの3ステップで構成されており,多くの領域へ適用が可能と考えている。
本稿では,オフィスのエネルギーマネジメント,農業,およびヘルスケアの三分野におけるソリューションについて,上記3ステップの研究開発状況を紹介する。

若菜 伸一, 柳沼 義典

プレスリリース
				小形電力センサー内蔵スマートコンセント新発売

関連情報
				農業分野へのクラウドコンピューティングの適用と他分野への展開

米国富士通研究所および欧州富士通研究所では,ICTを利用したヘルスケアに関する研究開発活動を推進している。ヘルスケアでは,大きく医療システムの改善,効率化と予防医療の推進の二つが重要であると考える。そこで,著者らは,Q-Scoreという医療の品質を評価する尺度を導入することにより,医療システムの改善,効率化を促進する方法について検討を進めている。また予防医療に関しては,生活の各局面での血圧や脈拍,体重などのバイオデータを本人にとって迷惑でないような手段で測定し,そのデータに基づいてアドバイスなどを返すことにより健康管理を推進する方法について検討を進めている。本稿では,その概要と現状について報告する。

木村 康則, Dave Marvit, 久富 真紀子, Aisha Naseer

クラウドフュージョン

今後,クラウドは単体クラウドからクラウド間や既存システムとの連携を図るハイブリッドクラウド,そして複数クラウドの融合へと発展していくと見られている。富士通研究所はその高度な連携形態を2010年初めに「クラウドフュージョン」と名付けた。
本稿では,そのねらいと研究の方向性を説明する。また,クラウドフュージョンと富士通および富士通研究所のビジョンである,ヒューマンセントリックなインテリジェントソサエティとの関係も述べる。さらにクラウドフュージョンの五つの研究の柱とその概要を述べる。とくに柱の一つである開発実行環境について詳しく紹介する。

坂下 善隆, 高山 訓治, 松尾 昭彦, 栗原 英俊

プレスリリース
				クラウド向けデータストアを最適配置する技術を開発:サービスの迅速な立ち上げとビジネス規模に応じた柔軟なシステム提供が可能に

先端テクノロジー
				クラウド向けデータストア最適配置技術:RDBや分散KVSの特徴を活かした自動選択・切り替えを実現

プレスリリース
				企業内のWebアプリケーションを部品化して再利用する技術を開発

クラウドシステムは仮想化技術の進展などから本格的な導入が開始されている。一方,運用管理の面では,その管理対象のサーバが膨大になるとともにサーバ間の依存関係も複雑に構成されているため,安定した品質で運用するためには多くの課題がある。しかしクラウド環境ではシステムを構成するインフラがある程度画一した要素で実現されているために,これまでのように業務アプリケーションやサービスを個別に運用するのではなく,アプリケーションのライフサイクル管理や障害予兆検知技術など共通的な運用管理基盤や手法を用意できることが期待されている。
本稿では,そのようなクラウドの特質を活用し,PaaS領域で提供するアプリケーションの開発とその運用フェーズを連携し,アプリケーションの特性や個別のSLA(Service Level Agreement)に合わせ,アプリケーションの最適配備を実現する技術のほか,アプリケーション変更時に本番環境と同一のテスト環境を自動または簡易な操作で構築し,自動テストを実行する技術について紹介する。また,このようなアプリケーションのライフサイクル管理を実現する上で核となる業務の監視,可視化技術についても触れる。さらに,運用時にシステムから発行されるログを統計処理することによって障害の予兆検知を実現する技術について紹介する。

安達 基光, 小高 敏裕, 河場 基行, 松本 安英

プレスリリース
				業界初!クラウドコンピューティング時代に向けた障害対処技術を開発

近年,ICT機器やネットワークの低価格化に伴い,実世界で計測された様々なデータがクラウドに集まり,大量のデータ分析から企業活動や社会に有益な「価値ある情報」を得ることへの期待が高まっている。しかし,本格的なデータ活用では数十Tバイト~数十Pバイトという大量データを扱うこととなり,従来のICTとは異なる技術が必要となっている。また,社会システムなどの重要サービスは24時間365日止めるわけにはいかず,システムを動的に構成変更する技術が求められている。
富士通および富士通研究所では,こうしたクラウドでの大量データ処理の基盤となる技術や応用を促進する技術の開発に取り組んでいる。
本稿では,その一端として,基盤技術である分散データストアと複合イベント処理,およびデータ処理向けワークフロー記述を紹介し,今後のデータ処理技術の方向性を展望する。

土屋 哲, 坂本 喜則, 槌本 裕一, Vivian Lee

クラウド時代になると,外部サービスの利用によって社内外の境界があいまいになるため,情報漏えい対策においても,従来のように社外との境界のゲートウェイで機密情報の流出をブロックするという考え方だけでは不十分になる。また,今後クラウドの利用形態が多様化するにつれ,オンプレミスや複数のクラウドが連携した環境で,プライバシー情報や機密情報を安全に利活用する技術やソリューションが求められている。
今回開発したクラウド情報ゲートウェイおよびアクセスゲートウェイ技術では,社内の機密情報からプライバシー情報を秘匿してクラウドで処理したり,クラウド側にある処理アプリケーションを社内に移動させ安全に実行したりすることが可能である。本技術により,ユーザ環境・サービス・情報の三つの多様な条件で,クラウドをまたがって安全に機密情報を利用することができ,異業種間での協業や分業などの新たなクラウド利用を促進する。
本稿では,情報ゲートウェイおよびアクセスゲートウェイの概要と利用シーンについて述べる。

津田 宏, 松尾 昭彦, 阿比留 健一, 長谷部 高行

次世代グリーンデータセンター

近年,急速に需要が拡大するデータセンターの消費エネルギーと運用コストの増大が問題となっている。著者らはこれらを低減することができるデータセンターアーキテクチャを検討し,「次世代グリーンデータセンター」と呼ぶ新しいシステムアーキテクチャの研究開発を開始した。本研究開発においては,装置レベルで実現される省エネルギー化,高機能化の限界を超えた性能を実証することを目標とし,装置役割の見直し,機能の垂直統合と再配分のほか,従来は別個に考えられていた給電や冷却といったファシリティ技術についても情報機器との統合設計を行うことで,全体を通じた重複機能の除去や,機能のミスマッチに起因する無駄の排斥により,エネルギー効率が高く,運用コストを低減できるデータセンターの実現を目標とする。具体的には,資源のプール化,ハードウェアのミドルウェア化,コモディティ活用,ファシリティを含む最適化,全体の統合運用という五つの手法により,ヒューマンセントリックでインテリジェントなICT社会の基盤を支えるデータセンターに向けた技術の開発を目指す。

久門 耕一

次世代グリーンデータセンターを構成する,サーバ,ストレージ,ネットワーク,ミドルウェア,ファシリティを融合した垂直統合による全体最適化システム“Mangrove”について紹介する。Mangroveは次世代グリーンデータセンターのコンセプトである資源プールと機能のミドルウェア化を実現するシステムアーキテクチャであり,Mangroveに基づくITプラットフォームにより,柔軟で効率的な資源利用,迅速な再構成,可用性・信頼性向上とその効果として低コスト,省電力を可能にする。Mangroveを構成する要素として,ハードウェア資源をプール化するサーバ・ストレージアーキテクチャ,ミドルウェアによる資源プール上でのストレージ機能の実現,スケーラブルなデータセンターネットワーク,低コスト・高集約な光インターコネクトによる高速インタフェース,VM(Virtual Machine)配置を最適化する運用管理技術の取組みについて取り上げ,それぞれのねらいと特徴について述べる。

三吉 貴史, 大江 和一, 田中 淳, 山本 毅, 山島 弘之

プレスリリース
				電力削減20%を実現できるネットワークの自動設計技術を開発

プレスリリース
				世界初!高性能と柔軟性を両立する次世代サーバの試作に成功

富士通研究所では省電力チップおよびシステムボードから,サーバシステム/ネットワークの構築,電源技術,冷却技術,ソフトウェア技術まで一貫した研究開発をグローバルに実施しており,源流からの技術開発を追求するとともに,省エネルギー技術のバリューチェーンを構築している。省エネルギー性能を実現するトータルな技術開発力を生かし,サーバ,ストレージ,ネットワークなどのIT機器だけでなく,給電,冷却を含めたファシリティ機能が一体化された,コンパクトなデータセンター(次世代環境配慮型データセンター)を実現する要素技術開発に取り組んでいる。
本稿では,CPUチップで生じる熱を高効率に冷却水に伝達させるマイクロチャネル技術,サーバ電源と一体化して高効率化させたグリーンUPS,データセンター内温度の空間分布をリアルタイムで可視化する光ファイバ多点温度測定技術,データセンターのITシステムとファシリティを効率的に動作させるシミュレーション技術など,次世代環境配慮型データセンターの省エネルギー性能を追求する取組みを紹介する。

近藤 正雄, 福田 裕幸, 水野 義博, 壷井 修, 山本 保, 田中 努, 武井 文雄

プレスリリース
				データセンター向けリアルタイム多点温度測定技術を開発

関連情報(富士通ジャーナル)
				データセンターの省エネ化に向け、温度分布を「見える化」する多点温度測定技術

先端技術

地球環境問題への社会全体の取組みの一環として,交通分野における道路渋滞や交通事故の防止,車両からのCO2排出低減を目指し,様々な交通施策によって交通円滑化を図る試みがなされている。効果の高い交通施策を開発するためには,交通施策の事前評価が不可欠であるが,費用面や安全面から実道路での評価実施が困難であるため,事前評価にはシミュレータが利用されている。交通施策の事前評価は,エリア全体や個々の車両での効果の客観的な評価だけでなく,利用者視点での主観的な評価も重要である。これには広域道路における運転体験が有効だが,膨大な計算をリアルタイムで行う必要があり,従来のシミュレータでは実現できなかった。
著者らは,広域道路において緻(ち)密な車両挙動計算を行うミクロ交通シミュレータに運転体験の機能を追加して,これら両方の評価を可能とした広域道路交通シミュレータを開発した。リアルタイムでの広域運転体験機能を実現するために,分散環境において数万台の精密な車両挙動をリアルタイム計算するとともに,ドライバーの操作入力や運転場面の映像生成をリアルタイムで処理する機能を開発した。これらにより,広域交通シミュレータの任意の車両に仮想的に乗車して,シミュレーション対象エリアのどの道路でも運転することを可能にした。また,交通施策例である無停止走行支援サービスの評価に本シミュレータが有効であることを示した。

北川 英志, 池田 拓郎, 藤田 卓志, 森松 映史

プレスリリース
				運転体験が可能な広域道路交通シミュレーターを開発

2010年に3Dテレビが発売され,ブルーレイディスクや放送などに3Dコンテンツも出始めた。また立体画像を撮影することができるデジタルカメラやカムコーダも販売されている。これらは,左目用と右目用の二つのカメラを用いているが,カメラ1台で立体撮影できれば,3D映像が広く普及する後押しになると考える。そこで富士通研究所は,1台のカメラで2度に分けて撮影することで,従来からある単眼のデジタルカメラや携帯電話などで立体撮影できる技術を開発した。
開発した技術は,左目と右目に相当する適切な視差のある2枚の写真を自動で撮影する技術,およびその2枚を自然な立体に見えるように加工する技術から成る。これらにより,ユーザは被写体に向けて1度シャッターを押してから横方向に振るだけで,カメラが自動で適切な位置での2回目の撮影と加工を行う。本技術は,FOMA F-09Cに搭載しており,誰でも簡単に立体撮影ができるようになった。

佐藤 輝幸, 三好 秀誠, 島田 智史

高精度手書きOCR(光学式文字認識)は,とくに中国語や日本語など大規模カテゴリ言語においては実用化がいまだ困難である。著者らは,このたび修正線形判別分析,部分空間に基づく類似文字判別,複数分類器の結合,相互情報に基づく適応的棄却による高度な認識アルゴリズムを開発した。本技術は中国政府により2010年の第6回中国国勢調査(世界最大規模の国勢調査)に採用された。ここに示すように,開発したアルゴリズムは住所と民族名の既知情報を組み合わせることにより99%を超える精度と低棄却率を実現できる。漢字認識技術が大規模な中国国勢調査プロジェクトで使用されたのは今回が初めてである。
本稿では,第6回中国国勢調査に適用された富士通研究開発中心有限公司の高度な手書き文字認識技術について紹介する。

鄭 大念, 孫 俊, 于 浩, 直井 聡

プレスリリース
				中国国家統計局様、第6次国勢調査に富士通グループのスキャナとOCRソフトウェアを採用

100 Gbps級の高速インタフェースの長距離伝送技術として,デジタル信号処理を用いるコヒーレント光ファイバ通信技術の研究開発が活発に行われている。さらなるネットワークの大容量化に向けては,送受信ノード間の伝送距離や必要となる信号速度に応じて,最適な変調方式,信号処理アルゴリズムを適用する適応変調技術を用いることで,周波数利用効率の高い柔軟なフォトニックネットワークの運用が期待されている。このような複数の変調方式,信号処理アルゴリズムを用いるシステムにおいては,実運用時における最適な変復調方式を用いた送受信器間での通信経路の設定や研究開発段階において,各変調方式,信号処理アルゴリズムでの光伝送特性を実環境下に近い条件で模擬して評価することが重要となる。
本稿では,複数の変調方式に対応可能な光送受信器を用いた際のネットワーク容量の効果について,シミュレーション結果によりその有効性を議論する。また,著者らが開発した様々な信号処理アルゴリズム,光伝送特性を評価可能な,FPGAベースの受信器,PMD/PDLエミュレータと周回伝送実験系を統合した伝送評価プラットフォームを紹介し,実環境下での伝送劣化要因を模擬した周回伝送実験系における,112 Gbps偏波多重QPSK信号の伝送特性評価について報告する。

青木 泰彦, 中島 久雄, 小田 祥一朗, Paparao Palacharla

本稿では富士通研究所で行っているサーバ内の電気および光伝送技術の研究について紹介する。まず,サーバ内伝送に要求される伝送速度が年々高速化の傾向にある社会的背景に触れた後,電気伝送技術としてチャネル損失を補正する「等化」という技術について説明する。そして,この等化技術により25 Gbpsという高速伝送を電気的に実現する際の課題と,低消費電力化を図りつつ40 Gbpsを光伝送技術で達成する際の課題を示す。

William W. Walker, 日高 康雄

SPARC64VIIIfxは,富士通が開発するSPARC64シリーズのプロセッサであり,次世代スーパーコンピュータに搭載されている。本プロセッサは,前世代に当たるUNIXサーバ用プロセッサSPARC64VIIに対してSIMD命令の追加やレジスタ拡張といったHPC向けの演算性能強化が施された8コア,周波数2 GHzのプロセッサである。128 GFLOPSという高いピーク性能でありながら,水冷冷却方式を採用することなどによるリーク電力削減や,ゲートレベル電力解析フローによる電力解析値を基に無駄な電力を削減することにより,チップ電力58 Wという低い消費電力を達成した。これはSPARC64VIIと比較して電力あたり6倍という高い電力性能比になる。
本稿では,まずSPARC64VIIIfxプロセッサの消費電力対策に用いた電力解析フローおよび本チップで適用したリーク電力・ダイナミック電力の削減手法について紹介する。つぎにコア部・チップ全体の最終的な電力解析結果,および電力測定結果について説明する。

川辺 幸仁, 菅 竜二, 山下 英男, 岡野 廣

関連情報
				高性能・高信頼と低消費電力を兼ね備えたCPU「SPARC64™ VIIIfx」

ムーアの法則(スケーリング則)に基づいた従来のLSIの高性能化は,デバイス動作の物理限界のみならずチップ間の高速バス化や低消費電力化に対しても限界に近づきつつある。3次元高集積化技術(3DI)はLSIチップを積層し,上下のデバイス間をSi貫通ビア(TSV)で接続することで,従来のデバイスとは異なる機能と性能を実現できる画期的なデバイス製造方法として,近年活発に研究開発が行われている。
本稿では,富士通研究所が東京大学を中心としたWafer on Wafer(WOW)アライアンスに参画して開発中のウエハレベルの3次元積層技術に関し,デバイス薄化技術とバンプレスTSVプロセス技術について述べる。45 nm CMOSロジックLSIやFeRAMなどのデバイスウエハを10 µm以下まで薄化し積層する極薄化ウエハ転写技術,および形成温度が200℃以下の低温プロセスとデュアルダマシン法を採用したバンプレスTSV技術を開発し,高歩留まりと信頼性の高さを実証するとともに,高帯域かつ低消費電力である3次元LSIの実現性を明らかにした。

北田 秀樹, 水島 賢子, 中田 義弘, 中村 友二

本稿では,データセンターのエネルギー効率を表す,二つのパラメータで構成される直感的な指標を紹介する。この指標は,データセンターの稼働開始からフル稼働までのエネルギーパフォーマンスを正確に示し,将来のパフォーマンスの予測およびプロビジョニング方針の根拠として使うことも可能である。この指標は同時に,データセンターの理論上の理想的なパフォーマンスを表現できるため,異なる規模のデータセンター間,プロビジョニングの各ステージ間,または設計および開発の各フェーズ間の比較に使うことができる。本稿では,この指標を2箇所の富士通データセンター(IT機器の消費電力ベースで600 kW~3 MWの範囲)に適用し,詳細なシミュレーションと測定の両方に照らして実証した精度の高さを紹介する。

David F. Snelling, C. Sven van den Berghe

関連情報
				欧州富士通研究所(Fujitsu Laboratories of Europe)

富士通研究所は,サーバなどのIT機器から排出される廃熱を用いて吸着式ヒートポンプを動作させ,20℃以下の冷水を製造できる新しい廃熱利用技術の研究開発を行っている。廃熱を利用して製造した冷水を冷却に活用することで,データセンターの空調システムの消費電力を低減することができる。これまでにIT機器の廃熱で動作する廃熱利用システムを実際に構築し,従来の廃熱利用下限温度の70℃を下回る,60℃以下の廃熱温度でも冷水を製造できることを確認した。IT機器の廃熱だけでなく,工場やビル,家庭用の太陽熱温水器などの廃熱からも冷水を製造できるようになれば,冷房や冷却装置などへの活用が広がると期待される。
本稿では,IT機器の廃熱を利用した廃熱利用冷却技術の開発状況と,今後の展開について紹介する。

安曽 徳康, 眞鍋 敏夫, 吉田 宏章, 近藤 正雄

タンパク質を簡単かつ迅速に定量測定することが,癌(がん)などの疾患マーカーをとらえる医療・健康分野や,毒素をとらえて食中毒を未然に防ぐ食品分野において求められている。富士通研究所は,取扱いの容易なDNA材料を用いて,タンパク質を簡便に測定する技術の開発を続けてきた。その結果,タンパク質を識別するための抗体タンパク質を代替する人工抗体(修飾型DNAアプタマー)技術の開発に成功した。同時に,人工的に誘起したDNAの分子運動を手掛かりとする新しいタンパク質測定原理を,ミュンヘン工科大学との共同研究を通じて開発した。ともにDNA材料を使って実現したこの二つの技術は,DNA二重鎖形成能を使って容易に複合化することができるため,新しい対象物に対しても測定系を構築することが容易である。また名古屋大学との共同研究を通じて,食中毒毒素タンパク質を短時間で測定できることを実証した。これら技術の事業化を進めており,ヒューマンセントリック情報システムにおけるフロントエンドのセンサとして,QOL(Quality of Life)の向上や安心・安全な社会の実現に役立てたいと考えている。

藤田 省三, 有永 健児, 藤原 健志, 安藝 理彦, 吉瀬 智康

プレスリリース
				世界初!DNAを用いた革新的なバイオセンサー技術を開発(日本語)

プレスリリース
				世界初!DNAを用いた革新的なバイオセンサー技術を開発(英語)

プレスリリース
				富士通グループ初となるバイオ医療の研究拠点をシンガポールに開設(日本語)

プレスリリース
				富士通グループ初となるバイオ医療の研究拠点をシンガポールに開設(英語)

プレスリリース
				DNA素材の人工抗体を用いて毒素タンパク質の高速検出を実現(日本語)

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				DNA素材の人工抗体を用いて毒素タンパク質の高速検出を実現(英語)

関連情報
				やさしい技術講座 バイオセンサー

関連情報
				「平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」において「科学技術賞」を2部門で同時受賞

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				「平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」において「科学技術賞」を2部門で同時受賞

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				CEATEC JAPAN 2010 米国メディアパネル・イノベーションアワード デジタルヘルス分野受賞

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