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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2009-11月号 (VOL.60, NO.6)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2009-11

特集:「富士通SEのものづくり革新への取組み」

本特集号では,富士通SEのものづくり革新の全体像と,5つの革新(設計の革新,生産の革新,保守の革新,SEワークスタイルの革新,人材の革新)の個別の具体的な内容をご説明するとともに,今後の取組みの一端をご紹介します。


特命顧問
植松 一裕
特命顧問 植松 一裕 写真

富士通SEのものづくり革新への取組み特集に寄せて(PDF)

お客様向けシステムの品質向上と開発期間短縮に取り組む上で,開発工程ごとの開発技術を深堀りするだけでなく,工程間を横通しに見たり,その間の分業の仕方にメスを入れたりするといったこれまでの見方を大きく変えたまさに「革新」が必要となります。
富士通では,運用・保守のフェーズの重要性も再認識し私たちの活動の中に位置付けて,SEのものづくり革新の取組みを開始しました。現在,「設計の革新」「生産の革新」「保守の革新」を一貫して推進するためにそれらを有機的に連携するとともに,「SEワークスタイルの革新」に5つ目の「人材の革新」を加えて更なる価値増大・品質向上を目指して推進しています。

特集:富士通SEのものづくり革新への取組み 目次〕

総括

  • SEのものづくり革新の新たな枠組み

設計の革新

  • 要件の構造化に基づく合意形成の精度向上
  • 新たな開発規模見積り手法—ファンクションスケール法の実践—

生産の革新

  • アプリケーション品質・検証技術への新たな取組み
  • プロセス重視スタイルによるソフトウェア開発の工業化への取組み
  • 第三者品質検証の適用によるプロジェクト品質の向上

保守の革新

  • 総合的インシデント分析によるサービスマネジメント領域の強化
  • アプリケーション構成管理の拡大

SEワークスタイルの革新

  • ビジネス・エスノグラフィと組織モニターによるワークスタイル変革
  • SEのビジネス基盤を目指すProjectWEBの新たな取組み

人材の革新

  • ソリューションビジネス人材の革新

新たなチャレンジ

  • SaaS/クラウドなどの新技術を用いたアプリケーション長寿命化への挑戦

特集:富士通SEのものづくり革新への取組み


総括

富士通グループは,オープン化の大きな潮流やそれを取り巻く様々な変化に対し,システムエンジニア(SE)の高い技術力を維持し続けるために設計・生産・保守・SEワークスタイルの「4つの革新」活動に取り組んできた。その2年半の活動の成果としては,要件定義ガイドライン・基本設計ガイドライン,APMによる保守の枠組み設定などが挙げられる。一方,本活動を通して課題も明確になってきた。その課題を解決するために,「4つの革新」を第2ステージに進めるとともに「人材の革新」を加えた「5つの革新」とし,今後3年間で推進していく。しかし「5つの革新」は最終目標ではない。設計・生産・保守は統合した形でお客様に価値を提供するための体系(ナレッジ)に集約され,SEワークスタイルと人材はそれを使いこなす次世代のSEを育成する。ナレッジと人材がシンクロし価値を創造し続ける構造を目指す。

柴田 徹, 合田 治彦

設計の革新

システム開発の上流工程の重要性が言われ始めて久しいが,要件定義に起因するシステム開発プロジェクトの失敗は一向に減る気配がない。これには,時代背景や環境変化による要件定義そのものの難化が大きく影響しているが,それだけでは説明のつかない,現状の要件定義の抱えるもっと根源的な問題がかかわっていると考えられる。
本稿では,利害関係者間の役割・責任分担の明確化,要求の連続性の確認による妥当性と充分性の確保,要件定義への経営者の参画と統制という互いに関連する三つの視点(課題)から,利害関係者の階層構造と要求の連続性に基づく合意形成,トレーサビリティの実現手法(新要件定義手法)を紹介する。これにより,要件定義の「仕切り力」が増し,合意形成の精度が向上することで,システム開発における手戻りの発生を抑止する効果が期待される。

若杉 賢治, 新垣 一史, 渡邉 優子

プレスリリース要件定義の課題を解決する新手法を確立

システムのソフトウェア開発を見積もるファンクションスケール(FS)法は,2004年に富士通で開発して以降,富士通グループ内でもかなり普及してきている。
今まで一般的に用いられているSLOC見積りや機能規模測定法のデファクトスタンダードであるファンクションポイント(FP)法に比べて,FS法は,理解しやすく,計測が簡単で,誰が計測しても同じ結果になることを目指した計測法である。
本稿では,FS法が単なる規模計測手法の用途だけではなく,プロジェクトマネジメントにおいてどのように活用できているかについて事例を述べる。また,富士通グループ内へFS法を普及させるための様々な施策についての実施事例についても述べる。

飯田 伸夫

生産の革新

富士通は,アプリケーションの外部仕様を形式的に記述することで,テストシナリオ/データの作成,テスト実行,結果確認を自動化する技術を開発した。これにより,テストケースやデータの考慮漏れ,テスト件数が膨大でテストしきれない,実施/確認時の人的ミス,属人性によるムラといった従来テスト方式の問題が解消される。また,アプリケーションフレームワークと組み合わせることで検証対象のプログラムを絞り込むことができ,実用規模のアプリケーションに適用可能となった。
本稿では,生産の革新の一環として,形式検証技術を用いたアプリケーション品質の画期的向上を目指した取組みを紹介する。

銀林 純, 上原 忠弘, 宗像 一樹, 薮田 和夫

富士通アプリケーションズ(株)は,SDAS(富士通の総合システム開発体系)に基づいた開発部門として,SDASの実践,開発ノウハウの確立と蓄積をミッションとし2004年4月に設立された。「設計と製造の分離」「ソフトウェア開発の工業化」「オフショアの活用」などの試行および実践を通し新たな技術に挑戦している。また,富士通グループにおいて,製造工場と実験工場の役割を担い,現場視点での技術開発,技術検証,開発マネジメントの方法論の確立など,現場と一体で「生産の革新」をけん引している。
本稿では,ソフトウェア開発の工業化への取組みを,属人的開発スタイルからプロセス重視の組織的開発スタイルへの改善の歩みとしてとらえ,自律改善活動の行動規範である「四つの約束事」と「六つの仕掛け」を具体的な実績データなどを交え紹介する。

渡辺 純, 丸山 富子

第三者品質検証は,システム構築プロジェクトなどのプロジェクト品質の底上げに貢献するためのツールである。現在,富士通アドバンストクオリティではSIプロジェクトにおける生産工程での第三者品質検証に取り組んでいる。本検証の仕組みの特徴は,検証対象を「プロダクト(生産物)ではなく人(作業品質)」,また「リーダではなく現場担当者」に着目した点である。三現主義に基づき,現場(現地)に行き,現物(レビュー記録など)を確認しながら,現場担当者にインタビューし,現実(作業品質)を検証する。さらに検証結果は改善提案を添えてプロジェクト側にフィードバックする。実践の結果,多くの作業品質問題を摘出し,プロジェクト品質の底上げに効果を上げている。
本稿は富士通アドバンストクオリティが取り組んでいる第三者品質検証の仕組みと実践事例について述べたものである。

中村 信也

保守の革新

企業活動を支える情報システム,すなわち業務アプリケーションやインフラの複雑さは年々増加してきており,これに伴い,運用保守の難度も年々上昇している。運用現場では日々のインシデント対応に追われている。インシデント全体の傾向を把握し,根本問題解決や改善提案までたどり着くことができるプロジェクトは少ない。富士通のAPMサービスセンターでは業務の円滑な運用をサポートするため,エンドユーザからの問合せ,インフラとアプリケーションのメッセージなど日々発生するインシデントを,サービスマネジメント,ビジネス,利用者の三つの視点で分析する総合的インシデント分析技法を確立した。この技法は,繁忙な現場でも適用できるよう,リーダに負担の少ない傾向分析と根本原因分析ができるサービスとテンプレートから構成されている。
本稿では,総合的インシデント分析の技法と事例に基づく効果について述べる。

佐野 隆, 鈴木 治久

アプリケーションの保守は,完全性を維持しながら既存のアプリケーションを修正しなければならない。数行のプログラム修正であっても,影響がどこに及ぶかの調査と,ほかに影響していないかを確認するためのテストを必要とする。影響調査や確認テストに保守工数の8~9割を要している。アプリケーション保守における課題は,影響調査の精度および効率の向上にあると考える。従来の影響調査は,担当者の経験やノウハウに依存していた。経験豊富な担当者が影響調査をする際には,アプリケーション層のみでなく,アプリケーション基盤,インフラ基盤および運用への影響を調査していることが分かった。このような動向を踏まえ,影響調査に必要な構成情報の要素を整理しモデルを作成し,当モデルをCentraSiteのレジストリに実装し,検索する仕組みを構築した。この仕組みによって,保守担当者ならば誰でもが同じ精度で保守の影響調査を効率良く行えるようになった。

鎌倉 潤一

SEワークスタイルの革新

お客様の現場が抱える課題解決に貢献するには,お客様の業務を理解することが前提となる。富士通では,マーケティング,製品デザイン分野で活用されている民族誌学エスノグラフィの定性分析を,研究ではなくビジネスとしてお客様の業務把握の活用に取り組み,従来の定量分析と融合した「ビジネス・エスノグラフィ」を開発・展開している。また,国際的なエスノグラフィ学会EPICなどで広く認知され始めた組織研究分野では,現場の実態をとらえ解釈した結果の研究発表にとどまっている現在の学術的アプローチを越えて,定量的な分析を融合し,組織や個人が永続的・主体的に変革に取り組んでいく「組織モニター」を開発・実践している。
本稿では,従来のワークスタイルに新たな切り口を加える,この二つのエスノグラフィによる新しいアプローチを紹介する。

岸本 孝治, 寺澤 真紀, 平田 貞代

富士通社内のナレッジマネジメントツールであるProjectWEBは,1998年の導入以来,プロジェクト管理および情報共有のツールとして富士通SEのワークスタイルに定着してきた。また,ProjectWEBを利用することによるセキュリティ施策を実現している富士通社内部門も増加しており,ProjectWEBがあらゆる利用シーンで有用であることが認められている。ProjectWEBはこの位置付けにとどまることなく今後は社外利用を含めて富士通SEにとって不可欠なビジネス基盤としての位置付けを目指している。そのためにはマルチプロジェクトマネジメントの実現に向けた他システム連携,「型」と「作法」の徹底,そしてサービスレベルの向上の3点を重点施策とした取組みを行っている。
本稿では,こうしたProjectWEBの導入背景,主な機能紹介と今後のビジネス基盤として進化するための取組みを紹介する。

村上 希

人材の革新

テクノロジの進化は,ビジネスドメインとコンテンツの変容を加速させた。その結果,新しい市場を獲得するための競争が激化した。こうした環境で,企業が成功するためには,ビジネスの選択と集中が必要となる。また,今あるコンテンツを最大限に活用し,自ら新しいビジネスドメインを創造しなければならない。企業の特性を生かした独自の戦略のもと,成長を考えなければ生き残りが困難な時代の到来である。富士通は,テクノロジソリューションを中核に,サービスとプロダクトの両輪で,ソリューションサービスをグローバルにビジネス展開していく。こうした経営方針の中,お客様の経営価値向上をサポートするプロフェッショナル人材の育成に取り組んでいる。
本稿では,高い技術を正しい視点で使いこなすための「人材革新」についての考えと方向性を紹介する。

川喜田 博幸, 山田 竜輔, 奥出 慎太郎

新たなチャレンジ

近年,SaaS/クラウドを中心に開発・運用技術の革新が著しく,富士通をはじめとするITベンダも素早く追従していくことが迫られている。この分野ではアプリケーションの長寿命化という課題も解決する必要がある。
本稿では,そのための課題提起,解決のための要件,解決策のイメージ「メタフレームワーク」を紹介する。解決のポイントは,設計・開発・検証に至る過程から,設計とフレームワークを分離独立させ,設計が終わると同時に検証も終了するというソフトウェア開発の理想に近づけることである。設計とフレームワークを分離させることで,設計資産の永続化が可能になる。各種のフレームワークが載る共通の土台であるメタフレームワークを作ることで,システムを最新のフレームワークに移行することが可能になる。自動生成に関連するテンプレートを簡単に作成できるようにすることで,自動生成の範囲を拡大し,移行コストを低減できる。

古澤 豊明

---> English (Abstracts of Papers)