Skip to main content

Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2008-7月号 (VOL.59, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2008-7

特集:「ITS」

ITSで使われる技術の領域は大変広範囲にわたっています。本特集号では,富士通グループのITS分野での代表的な取組みについて,24のトピックスを紹介いたします。


経営執行役
青木 隆
経営執行役 青木 隆 写真

持続可能なモビリティ社会の実現を目指して(PDF)

富士通グループは,安全・安心な交通,環境に優しい効率的な交通,利便性が高く快適な交通の実現を目指し,全力を挙げてまいりたいと考えます。

特集:ITS 目次〕

概要

  • ITS特集の概要

環境

  • 運行支援システムとロジスティクス管理
  • クリーンディーゼルエンジン制御モジュール
  • リアルタイム運行情報システム

安全

  • 交通事故実態の分析
  • インフラ協調安全運転支援システム
    検証用模擬実験環境
  • ドライブレコーダー
  • 車載用76GHzミリ波レーダ
  • 歩行者検知用ミリ波レーダ
  • 衝突被害軽減ブレーキ用ECU
  • 画像認識技術のドライバ視覚支援への応用
  • 車載カメラ映像の視認性向上処理技術
  • 対称性による路上歩行者候補領域検出
  • ドライバの覚醒度検知技術
  • 光ビーコンを用いた高精度車両測位技術
  • ITS無線通信技術
  • 首都高速道路株式会社様向け
    ITS道路インフラへの取組み

自動車の電子化

  • ワンセグ内蔵AVN
  • GPSフィルムアンテナ
  • 自動車の神経網(車載ネットワーク)
  • 映像圧縮技術を用いた車載ネットワーク
  • 自動車制御開発用シミュレータ:CRAMAS

ITSの活用

  • プローブへの取組みとITSセンタ構想
  • 安全運転支援システム(DSSS)実証実験への取組み
  • ITSに関する国の政策・活動

特集:ITS


概要

ITSとはIntelligent Transport Systemsのことであり,道路交通システムを高度化することにより人々に利便性を提供することを目的とした研究および事業の分野である。道路交通システムの高度化は,車での高度な処理を実現するための半導体やデバイス,車が外界を認識するためのセンサ,カーナビのような車載情報処理端末,車と外部との通信装置,路側の処理装置,道路管理のセンタなど,多くの要素技術の連携により実現されるものである。富士通グループでは,数多くのIT機器,ソリューションの開発実績を基にITSの分野においても広範囲にわたって研究開発,製品の提供を行っている。
本稿では,今回のITS特集のサマリーとして,ITS関連開発の背景となるITSが実現する高度な交通社会について概説する。

船越 裕計, 畑瀬 勉

環境

富士通は1992年にトラック輸送業向けに車載端末を開発し,国内で初めて車速タイムチャート付き運転日報を商品化した。2000年には国土交通省が認定するデジタル式運行記録計の型式指定を受けた。GPSレシーバを車載端末に業界で初めて標準装備し,運転・作業位置情報と事務所パソコンに設ける地図とを連携して運転日報の自動作成処理を実現した。業界最先端の運行支援システムは運送会社の安全・経済運転と運行のコストダウン,さらには作業改善に大いに貢献してきた。店舗に商品を配送する販売物流では小売店舗―小売本部―運送(卸売)事業者の三者から成るロジスティクス管理がかぎになる。
本稿では,運行支援システムを用いて荷主と情報を共有し,業務改善をするロジスティクスチェーンマネジメント(LCM)の手法を紹介し,トラック輸送の行政施策に対応するリアルタイム運行支援システムの将来像について述べる。

福井 覚, 倉橋 敬三

本稿では,ディーゼルエンジンの排気ガスクリーン技術,およびそれを実現するためのエンジン制御モジュール(ECM)を紹介する。商用車に搭載するECMは,軽量化,低コスト化が求められ,シャーシ搭載可能な構造が必要になってきている。開発したECMは,高圧・微粒子化(コモンレール技術・燃料噴射技術)された燃料を適正量,かつ適正タイミングで燃料噴射するための処理能力を有し,また小型・中型・大型トラックに搭載可能となるよう,エンジン近傍のフレーム取付けに耐える耐環境性能を実現している。

大森 篤

リアルタイム運行情報システムは,商用車(トラック,バスなど)に搭載される各種コントローラから運転操作状況(アクセル,ブレーキ,トランスミッション操作状況など)や,省燃費・安全運転に役立つデータ(車速,エンジン回転数,ギア段など)を読み出して解析する。また,CO2,NOx,PM排出量といった環境データも把握することができる。これらの情報を参照する運送事業者は,省燃費運転(エコドライブ)のための適確なアドバイスをドライバに行うことができる。
本稿では,すべての運送事業者が環境にやさしいエコドライブを実践することで,CO2排出量削減を目指す仕組みについて紹介する。

畠 精一, 犬伏 篤史

安全

交通死亡事故への取組みはITSにとって非常に重要な命題となっている。その取組みのためには,事故の実態に基づいたシステムの開発と効果の予測が重要となってくる。その意味で,公表されている統計情報は非常に重要な情報源となり得るが,一方でシステムを開発する立場から見た情報のまとめ方というものも必要になってくるはずである。
本稿では,事故発生地点の視察から始め,2年間にわたり日々発生する事故の情報の調査を行い,そこから得られた内容について報告するものである。また,一つの形態に着目し,実際の事故情報を基にケーススタディを行った結果についても併せて報告する。

谷口 充己

車載システムと道路側のインフラとが協調して交通事故防止のためのサービスを提供する「インフラ協調安全運転支援システム」の開発が進められている。その実用化に向け,サービスを適用した状況における効果や影響の検証が必要となっている。しかし,実環境での実験には,安全面・コスト面・技術面で制約があり,短期間で効率的に検証を行うことが難しい。著者らは,このような検証作業を実験室で効率的に進めることを目的として,模擬実験環境を構築した。本模擬実験環境では,ドライビングシミュレータでの模擬運転に連動し,コンピュータ上に仮想的に構築した道路側インフラシステムと,車載システムとが連携してリアルタイムで動作する。これによりドライバは,路上を運転する場合と同様にサービスを模擬体験することが可能となる。このときのドライバの反応やシステムの動作結果などから,システムの妥当性検証を行うことができる。本稿では,インフラ協調安全運転支援システムの検証を目的に構築した模擬実験環境について述べる。

藤田 卓志, 五味 俊明, 池田 拓郎

1991年から死亡事故件数は減少傾向にあるが,交通事故の件数と負傷者数は増加し続けている。今後は事故そのものを減少させるため,事故に至るまでの原因を追求し,対策を打つことが求められている。国土交通省は,2005年に「事故」や「事故にならなかった危険な状況」を検知して,その前後の画像や走行状況を記録する「ドライブレコーダー」の実証実験を行い,事故処理の迅速化,事故件数の低減,燃料費の低減という効果が得られることを調査結果としてまとめた。今後ドライブレコーダーは商用車市場に普及し,その後,カーナビやカーセキュリティなどと融合しながら乗用車市場へ普及していくと期待される。
本稿では,今回開発したドライブレコーダー車載装置,事務所設備の製品概要および市場動向について紹介する。

木谷 哲也, 高木 正樹

自動車での死傷事故低減や渋滞の解消を目的に,衝突被害低減のためのプリクラッシュセーフティシステムをはじめ,新たな車両制御システムの開発が進んでいる。最近では,前方向だけでなく後方や側方への動作にも対応するシステムも実用化されてきており,自車両の周辺全体をセンシングするシステムなどが検討されている。これらのシステムには天候などの影響を受けにくく,小型化が可能なことから,ミリ波レーダが採用されている。
富士通テンでは,用途に合わせたミリ波レーダを製品化しており,「遠距離レーダ」は,角度精度に優れ,150 m以上の遠距離まで距離・相対速度を求めることができる。また「小型近距離レーダ」は,小型で広角検知,高速応答性を実現している。
本稿では,遠距離レーダと小型近距離レーダの開発事例を中心に,今後の課題についても紹介する。

伊佐治 修, 生野 雅義, 島 伸和

近年,IT(Information Technology)を活用した車両の安全システムの進化により,車両事故による死亡者数は大きく減少している。しかし,歩行者などの交通弱者を保護する安全技術は未確立であり,その実用化が求められている。富士通グループでは,これまでに蓄積してきた技術を基に1970年代よりミリ波レーダの開発を開始しており,この分野における高い技術やノウハウを有している。これらの技術を更に発展させ,上記社会的要求に対応するために高分離分解能化と検知能力を向上させたミリ波レーダおよび横断歩行者検知アルゴリズムの開発を進めている。本稿では,現在開発中の歩行者検知用ミリ波レーダの概要・性能・特性を紹介し,つぎに横断歩道上の歩行者検知への適用例について説明する。そして,最後にITS(Intelligent Transport Systems)の安全・安心分野における本技術を活用した他システムへの具体的適用検討事例について述べる。

石井 聡, 梶木 淳子

本稿では,自動車における安全技術,プリクラッシュセーフティ技術の一つで,事故の危険を早期に認識する衝突被害軽減ブレーキ(PCB:プリクラッシュブレーキ)システムの仕組み,および制御ECUの役割について紹介する。
本技術は,ミリ波レーダからの先行車情報と自車情報より,追突の危険が迫った場合,まず警報音でドライバにブレーキ操作を促し,ステアリングでもブレーキでも衝突を回避できない場合,自動ブレーキの指示を出し,衝突速度を軽減させ,追突死亡事故低減に貢献するものである。

杉田 博一

安全な交通環境を実現するために,高解像度で安価なセンサとして普及が進むカメラと画像認識技術による安全機能の実現に期待が高まっている。本稿では,見せるだけの視界補助から気付かせる認知支援の実現を目的として,見通しの悪い交差点での頭出し時に左右の安全確認を行うためのブラインドコーナーモニタ向けに開発した接近物体検知技術を紹介する。本技術では,接近物体の早期発見を重視し,遠方の小さい動きを効率良くとらえるために,異なる時刻の画像間のフロー検知処理のための可変フレーム時刻差制御方式を開発した。評価用映像を用いて検知性能を評価した結果,接近物体が自車両前方を通過する5秒以上前から検知できることを確認した。また,ハードウェアで実現する場合の演算リソース規模を評価した結果,入力映像を30フレーム/秒で処理可能な設計で,メモリ容量は1/2フレーム分の容量で実現でき,DRAMを使用せずに低コスト化できることが分かった。

水谷 政美, 鶴田 徹, 森松 映史

近年,車両後方や側方の死角エリアなど周囲の撮影映像を,車載ディスプレイに表示することによって運転者の視覚支援を行う車両周辺監視カメラシステムの普及が進んでいる。しかし,夜間や逆光などの悪条件下では,カメラ映像の階調情報が暗部明部に二極化し,視認性が大幅に欠如するという問題が発生する。この問題を画像処理によって解決すべく,視認性向上処理技術を開発した。
本技術では,独自のフィルタリング処理によって,人間が物体の所在や模様などを認識する上で重要な反射率成分を拡大し,重要でない照明光成分を抑制する,高画質な視認性向上処理を可能とした。また,0.065 ms以内の小さい処理遅延と小規模ハードウェアによる車載カメラ映像の実時間処理も実現した。
本稿では,視認性向上処理技術の原理や特徴,および処理性能について解説する。

豊田 雄志, 清水 雅芳, 鶴田 徹

本稿では,プリクラッシュセーフティシステムの要素技術として,車載単眼カメラ画像から走路上の歩行者の候補領域を抽出する「対称性アルゴリズム」を提案する。本手法は,人がほぼ線対称に見えることに着目して,1枚の単眼カメラ画像から線対称性のある画像領域が歩行者を含む可能性の高い候補領域として検出することを基本とした。また,路面に含まれる白線や横断歩道などにおいても対称性を持つことが分かっており,これらを棄却するための路面の特徴を考慮した検証処理を適用した。様々な評価用映像を用いて,提案手法の検知性能を評価した結果,走路上の歩行者を注目領域として安定的に抽出できることを確認した。また,著者らが保有する単眼カメラ画像を用いた手法「顕著性アルゴリズム」との性能比較を行うことで,本手法の有効性を確認した。

藤岡 稔, 冨士原 純, 水谷 政美, 森松 映史

近年の交通事故の多くが,脇見や眠気などのヒューマンエラーが原因であることが知られている。著者らは,このような事故を未然に防ぐ手段として,ドライバの覚醒度(かくせいど)を事前に検知する技術の開発を行っている。
本稿では,覚醒度の中で特に眠気に注目し,心拍揺らぎを用いた新しい眠気検知手法について紹介する。心拍揺らぎの解析では,従来からLF成分(0.04~0.15 Hz)とHF成分(0.15~0.4 Hz)を指標とした推定手法について研究報告されているが,従来法では安定に欠き実用化まで至っていない。提案手法は,今まで難しかった個人差による精度のばらつきを,逆に個人に特徴的な固有周波数を追跡することで精度を高めたことに特徴がある。ドライビングシミュレータを用いた実験より,提案手法と顔面表情による眠気評価とがほぼ一致することを確認し,眠気状態を推定する新しい手法としての可能性を示した。

中野 泰彦, 宮川 あゆ, 佐野 聡

富士通研究所は,道路交通情報を提供するために普及している光ビーコンのインフラを活用して自車位置を高精度に推定する技術を開発した。従来,自車位置を推定する手段として多用されてきたGPSは原理的に各種のITSサービスが要求する精度と信頼性を満たすことが困難だった。そこで,車両が光ビーコン投受光器の直下を通過する際に赤外光の発射地点を精密に標定することによって自車位置を推定する技術を考案した。光ビーコン投受光器と車載受光センサ間の距離は数メートルと短いことから,通信の信頼性が高い。また,赤外光は直進性が高いことから,発射源を推定することが電波と比べて容易である。
本稿では,これらの特徴を生かすことで従来技術では不可能だった精度40 cmの自車測位を実現する方法を示す。今後,本技術の適用により,高精度で高信頼な位置情報を必要とする各種のITSサービスの実現が期待される。

肥田 一生, 沢田 健介, 森 信一郎, 中山 高一郎

富士通では道路インフラの情報を車両に提供することで安全サービスを実現するインフラ協調システム用の無線通信システムの開発を進めている。安全サービスを提供するためには,建物や走行車両による外乱の多いITSの通信環境で,高信頼,リアルタイムな無線通信を実現する必要がある。著者らは,ITSの通信環境で問題となるマルチパスに対する耐性の高いOFDM技術を中核とする無線通信方式の検討を進め,試作システムを開発した。試作システムは,OFDMを採用するモバイルWiMAXをベースに,ITS用に新たに割り当てられたUHF帯を利用し,安全サービス用のリアルタイムなブロードキャスト通信を可能にしたものである。試作システムを用いた公道実験の結果,交差点から180 m以内のすべての場所で,パケット到達率99%,通信遅延時間100 ms以下を満たすという安全サービスの要件を十分にクリアでき,開発している無線通信システムが有用であることを確認した。

飯田 一朗, 樋口 守, 深澤 光規

首都高速道路の維持運営において,道路上に設置された情報板,非常電話,交通量計測設備やITS設備であるETCなど常時連続稼働する設備を監視することが不可欠である。この社会的設備の監視を支えるネットワークインフラは非常に重要であり,設備の高度化による急速なデータ量の増加などに対応するために,新たな技術を取り入れたネットワークインフラの高速化・高信頼化が求められている。
本稿では,道路維持管理の運用性,将来性,コスト面などでの課題を抽出し,従来技術と新たな技術の融合,運用コストの低減,および道路監視でのサービスレベルの維持向上,さらには新たなITSに柔軟に対応できるネットワークインフラ構築の取組みを紹介する。

石川 文夫, 高橋 誠司, 鈴木 新也

自動車の電子化

富士通テンでは,ワンセグ放送受信機能を内蔵したAVN(Audio,Visual,Navigationを一体化した製品)を開発した。本稿では,その機能と特徴について紹介する。ワンセグ放送は,地上デジタル放送中(全13セグメント)の1セグメントを使用した放送で,変調などの伝送パラメタは,車載など移動体受信に適したものを使用している。Low-IF方式のシリコンチューナ,制御機能内蔵DSPの採用など,小型化設計を行うことによりAVNへの内蔵を実現した。

菅原 秀二, 澤井 利仁

富士通テンでは,線状導体の平面上への配置のみで構成する円偏波アンテナを新たに開発し,自動車のフロントガラスに貼り付けて設置するGPSフィルムアンテナとして製品化した。このアンテナは透明樹脂フィルムの片面にのみ線状パターンを印刷して構成できるため,セラミック基板などを使用し立体構造を有する従来のパッチアンテナに比較して簡易な構成で実現でき,また自動車のデザインを損なうことがないという特長を持つ。これらの特長により,今後はITS関連分野を含め,車載用円偏波アンテナとして幅広い応用が考えられる。
本稿では,本アンテナ方式での円偏波受信原理とその性能,および製品化したGPSフィルムアンテナの特長,そのほかの応用例などについて紹介する。

井元 哲治, 荻野 和滋, 藤原 章洋

富士通は,自動車の各ECUを連携して動作させるための車載ネットワーク制御向けに各種のネットワーク制御コントローラを開発している。自動車内部の電子部品化が進み各種のデータが多種多様(ボディー制御系,安全走行制御系,情報系)になるに伴い,それぞれの特性に合った最適の転送スピード,転送方法が必要になってきている。今回,将来の安全走行制御系としては,転送レート10 Mbps,安全を確保するための冗長通信を行うことのできるネットワークプロトコルFlexRay,情報系としては,転送レート400 Mbpsで通信を行えるネットワーク規格IDB-1394に対応し,映像情報を2~3 msの低遅延で3分の1サイズに圧縮復元を可能とするSmartCODECを開発した。
本稿では,FlexRayとIDB-1394への富士通の取組み,および国際標準化が進んでいる中で各種標準化団体での活動について述べる。

神 俊一, 川西 末広

現在,自動車内の情報・AV系システムは,映像・音声・コマンドの通信に,それぞれ個別のケーブルを使用しており,これらを統合する車載情報系ネットワークとしてIDB-1394(ITS Data Bus-1394)が注目されている。
本稿では,まず,高画質・低遅延,および低コストを実現する車載用映像圧縮技術"SmartCODEC"を搭載したIDB-1394コントローラLSI:MB88388Aによる,カーナビ画面とDVDコンテンツの同時伝送など,広帯域・低遅延伝送の実現について述べる。つぎに,プロトタイプシステムとして試作した,リアシートエンタテインメントシステム,運転支援向けマルチカメラシステムを紹介する。さらに,試作システムにおけるネットワーク性能の検証結果により,本技術によって情報・AV系システムのネットワーク統合が可能であることを示す。

河合 淳, 小田切 淳一, 吉田 茂, 山田 浩

本稿では,シミュレーションによって自動車制御開発を効率化するCRAMAS(ComputeR Aided Multi-Analysis System)を紹介する。CRAMASは,富士通テンが独自に開発したもので,HILS(Hardware In the Loop Simulator)に分類される。CRAMASは,制御の対象となる実機(例えばエンジン制御の場合はエンジン)の挙動をリアルタイムに模擬することができるため,開発者は,実機なしでの制御開発が可能となり,開発の効率化に貢献する。当初はエンジンやトランスミッションのパワートレーン制御を中心に浸透してきたが,最近ではハイブリッドや統合制御,ミリ波レーダなど幅広い分野に展開されている。

深澤 健, 樋口 崇, 岡本 貴子

ITSの活用

個々の車を移動センサと見なし,収集データを活用して交通・気象などの情報を生成・提供するプローブシステムが期待を集めている{プローブ(Probe)とは探針の意味}。現段階で実現されつつあるのは,主に,車両位置・時刻などから交通(渋滞)情報を導くプローブ交通情報システムである。2005~2006年度に,その有効性が大規模実証実験(富士通も参加)で検証されたが,それに基づき富士通は,数社とともにタクシープローブ交通情報システム事業化を目指し,活動を開始した。また並行して,同システムと連携するITSセンタ構想を策定しつつあり,その中で,一層の付加価値向上を伴う新サービスの検討も進めている。
本稿では,プローブ交通情報システムへの取組み,ITSセンタ構想を中心に論述する。

中嶋 かおり, 尾林 俊文, 三浦 寿

交通事故による負傷者が毎年100万人を超える中,警察庁は交通事故の削減を目指し,安全運転支援システム(DSSS)の開発を推進している。富士通は社団法人新交通管理システム協会(UTMS協会)の一員として,右折時衝突を防止する二つのDSSSサブシステムを開発し,豊田市の公道で実証実験に取り組んでいる。一つは,交差点カメラで映した対向車線の映像をMPEG-2で右折車に配信する右直事故防止画像提供システムである。これにより,周辺の車に視界を遮られて対向車を目視できないときでも,車載ディスプレイで対向車を確認して,安全に右折することが可能になる。もう一つは,交差点センサで対向車の位置,速度を検出して,右折車に配信する右直事故防止情報提供システムである。これにより,対向車の位置,速度に基づいて衝突の危険を判断し,ドライバに音声で注意喚起することで,漫然運転による対向車の見落としを防ぐことが可能になる。

嶋村 昭秀, 小林 弘幸, 中島 哲

人間は,移動することによって経済を発展させ,豊かで快適で便利な社会や生活を築き上げてきた。反面,交通事故や渋滞,環境汚染などの負の側面を生じさせてきたことも真実である。
ITS(Intelligent Transport Systems)は,IT技術を活用して負の側面を解決し,より高度な移動を実現するものである。1994年に第1回ITS世界会議が開催され,日本のITSも1996年に国家プロジェクトと位置付けられ活動を開始した。
本稿では,日本のITSに関する多くの活動について過去から現在(IT新改革戦略)までの経緯を紹介し,さらに,国の政策や各関係省庁の活動,それらの連携などについても紹介する。

片原 尚俊, 大平 泰幸


---> English (Abstracts of Papers)