Skip to main content

Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2004-11月号 (VOL.55, NO.6)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2004-11

特集: 「システムLSI」

本特集号では,ユビキタス情報社会に向けて富士通が取り組んでいる,システムLSIに必要なキーテクノロジを,LSI商品の観点からだけでなく,大規模化でますます重要となる設計品質,短TAT(Turn Around Time)を確保する技術など設計・開発技術にも触れて紹介しております。


経営執行役 LSI事業本部長
藤井 滋
経営執行役 LSI事業本部長 藤井 滋 写真

システムLSI特集に寄せて(PDF)

富士通は,先端技術開発力と製造から販売までの一貫した体制をベースに,新しい価値観を提供するNew IDM(Integrated Device Manufacturer)として,お客様の視点に立ったパートナシップを築き上げ,シリコンソリューションのご提供により,お客様の製品競争力の向上をご支援して参ります。

特集: システムLSI 目次〕

  • システムLSIへの富士通の取組み

応用分野:マルチメディア

  • 低消費電力MPEG-4ビデオコーデックコア
  • モバイルマルチメディアプラットフォーム
  • メディア処理向けプロセッサFR-Vファミリ

応用分野:コミュニケーション/ネットワーク

  • 超高速CMOSインタフェース技術
  • 1チップ10ギガイーサネットスイッチLSI
  • IP/IPsec通信高速処理エンジンLSIセット
  • セキュリティ機能を搭載したネットワーク家電向けシステムLSI
  • デジタルTV対応PC向け権利保護LSI

設計手法

  • カバレッジ指向IPマクロインタフェース検証手法
  • システムLSI設計のためのタイミング設計CADツール
  • 電源ノイズ解析のためのLSIノイズモデル

特集:システムLSI


システムLSI(SoC)の時代に入って約10年が経過した。この間,プロセステクノロジやSoCの設計手法の絶えざる発展とともに,SoCのタイムリな開発の成否がお客様のビジネスの成否を左右する時代となり,半導体ベンダとお客様の関係もデバイスの売買関係から,より複雑で相互に依存性がある関係へと変質してきている。
本稿ではこのような状況を踏まえて,SoCの技術やビジネスに共通して見られる最近の動向と富士通の対応,そしてSoCを中心にしたLSIビジネスに富士通が今後いかに取り組むのかという点について解説する。

村上 丈示

応用分野:マルチメディア

VGA 30フレーム/秒のビデオ圧縮符号化が可能な低消費電力,高品質MPEG-4ビデオコーデックコアを開発した。目標性能を達成するため,追跡型高速動き検出アルゴリズムにより演算量を大幅に削減するとともに,ブロックノイズを除去するポストフィルタをマクロブロック処理パイプラインに組み込むことで外部メモリへのデータアクセス量の低減を可能にした。開発したMPEG-4ビデオコーデックコアは,すでに携帯電話やデジタルカメラなど多様なモバイルマルチメディア機器向けシステムLSIに組み込まれており,VGA 30フレーム/秒ビデオ圧縮符号化時のコーデックコア消費電力は73 mWであることを確認した。
本稿では,MPEG-4ビデオコーデックコアに適用した低消費電力化技術について解説する。

中山 寛,渡部 康弘,萩谷 太郎

カメラ付き携帯電話は,日本のみならず欧米や近年成長著しい中国をはじめ,世界的規模で普及し続けており,より特徴的でより質の高い映像・画像を実現する要求が強い。富士通はこの要求に対し確実に応えるため,代表的なIP,ARMプロセッサを柱にしたモバイルマルチメディアプラットフォームを構築した。このプラットフォームをベースに開発したLSIシリーズの第一弾として,携帯電話などのモバイル機器向けでは必須とされている高画質カメラ/ビデオ機能を1チップかつ低消費電力で実現できる携帯電話向け画像処理LSI“MB86V00/MB86V01”を開発した。
本稿では,本LSIを開発するに当たっての背景や開発経緯,モバイルマルチメディアプラットフォームの考え方,低消費電力化実現への取組みなどを紹介する。

黒木 健一郎

本稿では,メディア処理向け組込み用VLIWプロセッサとコンパニオンチップで構成されるFR-Vファミリを紹介する。FR-Vプロセッサは,Linux,μITRONに対応可能という汎用プロセッサの特徴と,高性能メディア処理が可能という専用プロセッサの特徴を併せ持つ。FR-Vプロセッサのうち,性能を重視した8並列VLIWのFR555,価格性能比を重視した2並列VLIWのFR400シリーズ,またMMUを搭載することで標準Linuxに対応可能なFR461の概要を述べる。
最新のシステムLSIであるFR461では,設計手法の工夫によりクロック周波数400 MHz動作を可能とし,また専用メディア命令の効果により,MPEG-4 VGAサイズ30 fpsのデコード処理をソフトウェアで実現可能とした。FR461で採用した物理設計手法,さらに低消費電力機構とその効果,またFR461評価のための開発キットに関して解説する。

檜垣 直志

応用分野:コミュニケーション/ネットワーク

インターネットのブロードバンド化,また,コンピュータやストレージシステムの性能を向上させるためには,これらシステムをつなぐネットワークの高バンド幅化が不可欠である。富士通は10 Gイーサーネットなどの高速ネットワーク向けインタフェースを製品化しているが,さらなる高バンド幅化を実現するため,1信号線あたり6.4 Gbpsの高速データ転送を行うCMOS LSI間インタフェースを開発した。送信側で多タップのプリエンファシス,さらに受信側でアダプティブ機能を持つイコライザを開発し,装置内バックプレーンや筐体間ケーブル伝送などにおいて20 dB以上の高周波ロスを補償することが可能となった。また,多チャネルインタフェースとしてシステムLSIに搭載することにより,システムにおけるバンド幅の飛躍的な向上を実現することが可能となる。
本稿では,0.11 μmプロセスで試作した超高速CMOSインタフェースについて紹介する。

後藤 公太郎,石田 秀樹,松原 聡

柔軟で信頼性の高いITシステムを構築するため,高速サーバや大容量ストレージを接続する小型・低コストでレイテンシも小さな10ギガビットイーサネットスイッチが強く求められている。このような状況で,富士通は,世界初となる1チップの10ギガビットイーサネットスイッチLSIを開発した。本LSIは,12ポートの10ギガビットイーサネットインタフェースを備え,レイヤ2のスイッチ機能を持つ。また,新たに開発した銅線ケーブルで10ギガビットイーサネット信号を25 m伝送できるIO回路(eXAUI)をチップ上に搭載しており,システムの小型化,低コスト化,省電力化を可能にした。本LSIを用いた10ギガビットイーサネットスイッチ製品も既に開発されており,データセンタ,高性能コンピュータなどの分野で使われている。
本稿では,本LSIを実現する主要な技術について述べ,本LSIの機能と構成,eXAUIの構成,LSIの実装について解説する。最後にLSIの性能評価とリファレンスボードを紹介する。

堀江 健志,清水 剛,服部 彰

近年,インターネットにおけるアクセス回線の高速化が進み,さらに通信の秘匿化が求められている。今回開発したMB86977,MB86978は,このような高速でセキュアな通信用途のゲートウェイ装置であるブロードバンドVPNルータに最適なLSIである。MB86977はルーティング,NAPT,PPPoE,フィルタを双方向100 Mbpsのフルワイヤ処理可能なIPパケット高速処理エンジンLSIであり,MB86978はIPsec通信を双方向100 Mbpsのフルワイヤで実現可能な高速IPsec処理エンジンLSIである。
本稿では,この二つのLSIの機能,機構,性能について説明を行い,従来のCPUによるソフトウェア処理ソリューションに対するLSIソリューションの優位点について述べる。また,ブロードバンドVPNルータを速やかに開発するためのリファレンスボードを併せて紹介する。

青木 智一,長友 晃彦,浅野 和也

家電機器をインターネットなどのネットワークに接続すると,情報やサービスが手軽に利用できるようになる一方,情報流出や外部からの攻撃などの危険も増える。このような背景から,ネットワークに接続される家電機器にもセキュリティ機能の搭載が求められている。
本稿では,家電機器に最適なCPUや各種周辺機能に加え,このようなネットワークとの接続機能,セキュリティ機能を内蔵した,ネットワーク家電製品向けの1チップシステムLSIについて述べる。本LSIは,デジタル家電機器システムのメインプロセッサとして,機器の制御やデータ処理だけでなくネットワーク機能やセキュリティ機能を1チップで処理できる。また,本LSIを既存のシステムにスレーブプロセッサとして接続して,簡単にネットワーク機能やセキュリティ機能を実現することも可能である。

藤山 博之

本稿では,PCによるデジタル放送受信を可能にする権利保護LSIについて述べる。PCは,ソフトウェア仕様が公開されたオープンアーキテクチャである。スキルある人間なら誰でもハッキングできる可能性がある。このためデジタル放送処理ソフトウェアは放送事業者などコンテンツホルダから危険とされ,これがPCでのデジタル放送視聴の障壁となっていた。
著者らは,このようなオープンアーキテクチャPCを使っても,コンテンツの権利保護ができる手法を考案し,それを権利保護LSIとして実装した。これによって,PCを所持するユーザにとっては,新たにデジタルTV受信機を購入することなく,PCを使ってデジタル放送を享受する道が今後開ける。

小檜山 清之,藤山 博之,吉武 敏幸

システムLSI開発プラットフォームの新しい取組み

AccelArrayは0.11μmプロセスのCMOSテクノロジを適用し,高性能,Time-to-Marketの短縮,トータルコスト削減という設計思想を実現したASIC製品である。AccelArrayは,品種ごとに再設計する必要がないマスタ共通部と,品種ごとに配線層を設計するカストマイズ部の二つから成る。マスタ共通部には,AccelArrayの設計思想を実現するため,お客様の設計の負担やリスクを低くする様々な要素技術を取り入れた。その結果,スタンダードセル開発に近い大規模・高速のシステムLSI開発において,その設計期間を1/3に短縮し,開発のトータルコストを大きく削減することが可能となった。
本稿では,AccelArrayの設計思想とこれを実現する要素技術,開発環境とレイアウトCADについて述べる。

松原 裕之

設計手法

近年,大規模化・複雑化するLSI設計の加速化のために,既設計回路モジュール(IPマクロ)を積極的に再利用することで設計効率を上げる設計手法が注目されている。しかし,実際には「仕様のあいまいさ」「検証の不十分さ」などにより,思ったほど設計効率が上がっていない。とくにモジュール間インタフェースに絡む障害はファームウェアやIP利用方法の制限などでは回避不可能であり,深刻な問題としてとらえられている。そこで,著者らは,インタフェース仕様のあいまいさからくる検証の不十分さを解決する検証手法を開発した。
本稿で紹介する検証手法は,形式的インタフェース仕様記述言語Component Wrapper Language(CWL)でインタフェース仕様を記述することで仕様のあいまいさをなくし,そこから「何を検証すべきか」「どれだけ検証すべきか」といった検証用情報を自動的かつ網羅的に抽出し,形式的検証技術とカバレッジ測定技術の連携により網羅度の高い検証を実現する,という特徴を持っている。

古渡 聡,木村 雅春

システムLSIの設計では,低消費電力化,およびモジュール再利用などのため,タイミング制約がますます厳しく,かつ,複雑になってきている。このようなタイミング制約のもとで,タイミング収束のための工数増大が問題となっている。本稿では,この問題を解決するための新しいCADツールとして,クロックツリー合成ツール“March”とマルチサイクルパス解析ツール“MagusMCP”を紹介する。
Marchは,従来よりも柔軟な構成のクロック回路を生成する枠組みを提供することで,タイミング制約を満たす回路の生成を容易にする。その結果,クロック生成の設計期間を短縮することができる。また,MagusMCPは,回路の論理を考慮した解析によりマルチサイクルパスを自動検出する。その結果,タイミング制約を緩め,タイミング収束の早期化を実現する。

金澤 裕治,樋口 博之

半導体プロセスの微細化に伴い,システムLSIの設計において,電源ノイズ対策のための設計が重要な課題となってきている。著者らはこの課題に応えるべく,電源ノイズを解析するためのLSIモデル作成およびシミュレーションのフローを開発した。このフローを用いてシミュレーションすることで,システムLSI内部で発生する様々なノイズ,例えば入出力回路の同時スイッチングノイズや,LSI内論理回路動作時に発生するノイズを求めることができる。さらにLSIの設計初期段階の電源設計に本モデルを用いることで,電源配線やパッケージ電源ピン数の最適化を実施して,システムLSIのコストを下げることも可能となる。
本稿では,まず電源設計で考慮しなければならないノイズについて説明する。つぎにそのノイズを表現できるLSIノイズモデルの全体構成,作成フロー,精度確認のためのテスト回路の評価結果,および本モデルの商品開発への展開について述べる。

佐藤 富夫,橋本 鉄太郎,笹川 隆平


---> English (Abstracts of Papers)