Skip to main content

Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2004-5月号 (VOL.55, NO.3)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2004-5

特集1: 「CS100」 特集2:「VPS・物理シミュレーション」

特集1では富士通の90 nm CMOSテクノロジCS100,CS100Aについて,特集2では製品開発時のシミュレーション技術であるVPS,物理シミュレーションについて紹介いたします。


 

特集1: CS100 目次〕

  • 90 nm CMOSテクノロジの概要
  • 90 nm CMOS超高速/低リークデバイス技術
  • 90 nm CMOS Cu配線技術
  • 90 nm CMOS開発・量産ラインの構築
  • 90 nm CMOSシステムLSI:CS101シリーズ
  • 90 nm CMOS ASICリファレンスデザインフロー

 

特集2: VPS・物理シミュレーション 目次〕

  • VPS・物理シミュレーション技術の展開
  • VPSを核とした協調製品開発への取組み
  • VPS/Simulation-HUBの実現と高速モデリング
  • 汎用マイクロ磁化解析シミュレータの開発
  • 順送プレス加工へのシミュレーション適用
  • 鋼球落下による基板の衝撃強度信頼性評価

 

一般

  • 高速伝送基板における電源ノイズ解析システム:SIGAL-PI

 

解説

  • カーボンナノチューブの電子デバイス応用

特集1:CS100


本稿では,富士通の90 nm CMOSテクノロジCS100,CS100Aの概要について解説する。膨大なデジタルデータが飛び交うネットワーク社会において,サーバの高性能化や携帯端末の小型化が進み,その中枢となる技術としてLSIの小型化,高性能化,低消費電力化が要求されている。CS100,CS100Aはこれらの要求に対応するために開発されたテクノロジである。CS100は,サーバなどの高性能重視のハイエンド商品向けに開発され,最先端の半導体技術を駆使し世界トップレベルの性能を達成している。一方,CS100Aは低消費電力を要求するモバイル機器から膨大な画像データを高速処理するデジタルAV機器まで広範囲なコンシューマ市場をカバーするために開発され,CS100で培われた技術を部分的に取り込み,コストパフォーマンスに優れたテクノロジである。

甲斐 睦章,久保田 勝久,木本 雅義

本稿では,富士通の90 nm世代CMOS技術であるCS100,CS100Aにおけるトランジスタ技術について解説する。CS100ではサーバ・PC用プロセッサ向け超高速デバイスを,CS100Aでは携帯電話向けに代表される低電力・高性能デバイスを開発した。超高速トランジスタは高電流駆動能力と低寄生容量が要求される。駆動能力はゲート絶縁膜の膜厚をリーク限界まで薄くし,各種独自技術でキャリア移動度を増大させることで向上させた。寄生容量についても,各種独自技術で浅く急峻な接合形成を行って駆動能力を維持しつつ短チャネル効果を抑制し,ゲート長をこの世代として業界最小の40 nmまで縮小してゲート容量を低減した。一方,低電力・高性能トランジスタはリーク抑制と性能のバランスがかぎとなる。ゲート絶縁膜はリーク仕様に合わせて厚めとし,さらに不純物プロファイルを最適化して接合リークを抑制すると同時に,CS100で開発した独自の移動度向上技術を活用して高性能化を実現した。

橋本 浩一

本稿では先端情報機器向けに開発した90 nm CMOSデバイスのCu配線技術について紹介する。富士通は,高性能化,低消費電力化,小型化の要求に応えるため,90 nm CMOSデバイスの配線技術には多くの先端技術を投入している。まず,180 nm CMOSデバイスからいち早く取り入れたCu配線を全面適用することで,配線抵抗の増加による回路遅延を防いでいる。つぎに,回路パターンの形成にはArFレーザ露光技術やOPC技術により,最小線幅が140 nmと,前世代の0.7倍という縮小化を実現した。さらに配線間のみならず,Via層間にも低誘電率絶縁膜を採用することで,配線間隔の縮小に伴う配線間容量の増加を防いでいる。また,高度なCMP技術により配線層を積層しても平坦性を維持することを可能にし,前世代よりも3層多い,Cu 10層+Al 1層の配線構造も実用化している。

内藤 謙仁,大塚 敏志,細田 勉

富士通は90 nmノードのロジックデバイスを世界に先駆けて開発・量産することを目的とし,2001年にあきる野テクノロジセンターへ新規ウエハプロセスラインを構築した。このラインではテクノロジ開発から量産までを担うために,スピードと柔軟性を重要な要素として以下のようないくつかの施策が施されている。まず,SMIFを全面採用することにより立上げ期間短縮と設備入替えなどへの柔軟な対応を可能としている。また,既存工場で実績のあるシステムをベースに開発の効率化をサポートするCIMを導入した。さらにテクノロジ立上げという観点では,高精度微細ゲート加工のためのAPC導入,歩留まり改善指標となるBase Loadロットと新たな高速不良解析技術の運用も開始した。
本稿では,これらあきる野テクノロジセンターラインの特色について概要を述べる。

清水 敦男

本稿では,自社ハイエンド製品向け90 nmテクノロジで培った10層の銅配線,全面Low-kなどの最先端テクノロジを民生用途向けに応用したシステムLSI「CS101シリーズ」を紹介する。本シリーズは,低消費電力が要求される携帯機器,高機能で小型化が要求されるデジタル家電機器および高性能なネットワーク向けまで幅広い分野に適用可能である。
これらを実現するために“CS100”の低消費電力版90 nm CMOSテクノロジ“CS100A”を採用した。1ゲートあたりのリーク電流は,従来製品比1/10の25 pAへ低減し,1ゲートあたりの消費電力も従来比1/2の2.7 nWと業界最高水準の低消費電力化を実現した。また,最大ゲート数は従来製品に比べ2倍の1億ゲートを搭載可能とする高集積化を実現し,性能も従来製品に比べ25%上回る1.2 GHzまで対応可能である。

大庭 久芳

LSIの微細化が進むに従い搭載可能なゲート数は増加しており,昨今のASIC(Application Specific Integrated Circuit)開発では,1,000万ゲートを超えるチップの設計を手掛けることも多くなっている。この度開発したCS101では,最大1億ゲートのLSI(CS91シリーズに比べ約2倍)も実現可能となっている。搭載ゲート規模の増加に伴う開発期間の増加とともに,先端テクノロジへのインプリメンテーションにおいては微細化・新素材の採用により,新たにこれまでにはなかった様々な課題が現れてきている。今回90 nmのLSIレイアウト設計をターゲットとして設計環境の大幅な見直しを行った。
本稿では,今回構築した設計環境「リファレンスデザインフロー」の特徴と効果について解説する。

池田 裕

特集2:VPS・物理シミュレーション


情報機器の高性能化や小型化・軽量化,環境負荷低減化といった多種多様化する開発課題を解決し高品質・低コストな製品をタイムリに市場に提供するために,開発源流で各種検証を行うフロントローディング型開発の重要性がますます高まってきている。このフロントローディング型開発を実現する上で,コンピュータ上で製品を仮想試作し,設計検証するシミュレーションは必要不可欠なものとなっている。
本稿では,富士通における製品開発のためのシミュレーション技術としてのVPS,物理シミュレーションについて最近の取組みを紹介する。

氏家 一行,井上 博之

現在の製品開発プロセスは非常に複雑であり,多くの関連部門が開発効率を最適化しようと3次元CADと3次元データを活用している。設計段階で様々な検証を実施することは,製品開発の各工程を通して非常に重要な役割を占めている。さらに,3次元モデルをより実用的に活用することで,開発の効率化は促進される。しかし,3次元CADの操作は非常に複雑で,深い経験を要するという問題がある。
VPSを活用すると,簡単な操作で3次元データを扱うことが可能になる。上記問題の解決策として,VPSを製品開発に適用し,関連部門が3次元モデルを共有した,協調製品開発を実現した。
本稿では,VPSの概要および製品開発への活用事例について述べる。

天間 司,野崎 直行

電子機器の設計に熱流体解析を適用する場合,モデリング時間の短縮と高い精度の解析結果を得ることは重要な課題である。VPS/Simulation-HUBは上記課題を解決し,高速に解析モデルを構築するシステムである。VPS/Simulation-HUBは以下に示す三つの機能を有している。一つ目は様々なCADから解析モデルへ変換が可能となるロバストなCADインタフェースである。二つ目は解析に不要な部品を削除する部品削除機能である。三つ目は解析精度向上のための形状簡略化機能である。本システムを光磁気ディスクの熱流体解析に適用し,モデリング工数は1/7に短縮され,解析工数は1/3に短縮することができた。
本稿では,詳細な3次元CADデータを解析モデルへ一括変換し,解析モデル作成工数短縮と高精度なモデル構築を実現するVPS/Simulation-HUBについて紹介する。

植田 晃,浦木 靖司,青木 健一郎

ハードディスクのヘッド設計を支える磁界シミュレーションは,マイクロ磁化による考え方に基づいた手法が用いられる。マイクロ磁化とは小さい磁性体要素であり,マイクロ磁化シミュレーションとは,マイクロ磁化により分割された磁性体のエネルギーを安定状態に近づけることで,動的に変化する磁壁,磁区などの磁性体の挙動および磁化の安定状態を解析する手法である。年々,面記録密度が増加し,ヘッドの微細化が進むにつれ,ヘッド特性の安定化を保証する意味でも磁界の詳細メカニズムの的確な把握は必須となり,ヘッドの3次元形状を考慮した数値シミュレーションの必要性が高まってきた。著者らは,マイクロ磁化の運動を記述する方程式に対して有限体積法を適用し,磁場の方程式に対しては有限要素法を適用することで汎用マイクロ磁化シミュレータを開発した。
本稿では,本シミュレータの概要を説明し,製品への適用事例を紹介する。

清水 香壱,秋元 秀行,田村 亮

順送プレス加工は,高速で大量に高精度な部品製造が可能であるため,精密板金部品の製造に広く普及している。しかし,金型設計上の課題解決には多くの経験を要し,形状によっては,多くの試作評価工数を必要としている。
そこで,著者は,社内製品に対して塑性加工解析を適用し,これまで,経験と勘を頼りに金型形状を決定していかざるを得なかった部分で,解析結果を指標とした成型性の評価,破断の可能性の評価を実現することができた。
本稿では,磁気ディスク装置内の精密板金部品を対象とした事例を用いて,塑性加工解析の解析モデルと計算方法,摩擦係数の同定,精度検証,成形性の評価方法および破断可能性の評価について説明する。

石川 重雄

携帯電話などモバイル機器に搭載されているLSIパッケージおよびメモリなどは,微細なはんだボールによって実装するBGA(Ball Grid Array)タイプが主流である。これらの実装部品は落下衝撃に対する実装強度が重要であり,その接合信頼性は自由落下試験で確認している。しかし,この試験では落下姿勢を一定にすることは難しく,衝撃の再現性がないため評価が安定しないなどの問題があった。これらの解決方法として,プリント基板(PT板)の自由落下と同程度の衝撃歪みを与える鋼球落下による評価法を検討してきた。そこで鋼球落下による衝撃寿命測定のための装置を開発し,BGAの寿命試験に関して,PT板の固定方法と衝撃歪み,鋼球の落下高さと衝撃歪み,およびBGA破断判定などを評価した。同時に,自由落下と鋼球落下衝撃による歪みを衝撃解析ソルバ“LS-DYNA”によって計算し,LSIパッケージ近傍のPT板表面に発生する衝撃歪みをそれぞれの実測結果と比較した。

舘野 正,井門 修,伊東 伸孝

一般


近年,装置の高速化に伴って電源ノイズが問題となるケースが増加しており,電源ノイズ解析への要求が高まってきている。この要求に応えるべく,富士通は電源ノイズ解析システム(SIGAL-PI)を開発した。SIGAL-PIではプリント基板(PCB)の電源/GNDのインピーダンス特性を解析,表示することが可能である。これにより,PCB上のバイパスコンデンサの最適化や電源/GND層の最適化などを行うことができ,部品数の削減や電源ノイズ問題の撲滅に大きな効果が期待できる。また,フロアプランナとの連携機能も有しており,仕様設計段階からの検証が容易となっているため,電源ノイズ問題による設計手戻りをなくし,結果的に設計期間の短縮にも大きな効果が期待できる。
本稿では,まずSIGAL-PIの概要を説明する。さらにカードエッジ基板への適用事例を紹介し,最後に今後の取組みについて述べる。

平井 天道,藤森 省吾

解説


粟野 祐二


---> English (Abstracts of Papers)