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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2000-9月号 (VOL.51, NO.5)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2000-09

特集: 「インターネット時代の開発スピードを実現する設計シミュレーション」

インターネット時代の開発スピードを実現する設計シミュレーション特集に寄せて(PDF)

特集: インターネット時代の開発スピードを実現する設計シミュレーション 目次〕

特別寄稿

  • 設計シミュレーション技術の展開

最適化シミュレーション

  • 三次元仮想設計支援シミュレータ:FJVPS
  • 最適化システムCAOSによる電子機器の最適実装設計

電磁界シミュレーション

  • 電子写真プリンタにおける現像剤挙動の数値解析
  • HDD用磁気記録媒体開発におけるシミュレーション技術
  • GMRヘッドシミュレーションシステム:3D-GMRSIM

電子回路シミュレーション

  • ギガヘルツ時代の伝送線路ノイズ解析システム:SIGAL
  • LSI信頼性向上のための宇宙線中性子ソフトエラー解析シミュレータ

製造シミュレーション

  • 射出成形支援統合システム:MOLDEST
  • リフロー用伝熱シミュレーションソフト:RS-Station― 鉛フリーはんだへのアプローチ ―
  • 電子部品実装のための凝固の計算モデリング

製品への適用

  • モバイルパソコン設計へのシミュレーション適用
  • 光磁気ディスク装置開発におけるシミュレーション技術
  • 携帯電話開発へのシミュレーションの適用

一般

  • 錫-銀-銅はんだによる鉛フリー化技術
  • 公開電子取引“SupplyMART”における仮想チャネルの実現

特集:インターネット時代の開発スピードを実現する設計シミュレーション


特別寄稿

最適化シミュレーション

FJVPSは,三次元ディジタルモデルを製品開発の様々な段階で活用するための各種検証・表示機能を備えたシミュレーションソフトウェアであり,Microsoft Windows NT V4.0上で動作する。三次元ディジタルモデルで検証可能な領域を大幅に広げ,製品の操作性検証,動作検証,環境負荷評価機能などを実現し,設計者の負荷低減と設計効率化を可能としている。さらに,設計者以外でもFJVPS出力データを用いて企業の財産である三次元ディジタルモデルを活用するための機能を提供する。
本稿では,FJVPSの概要,各機能モジュール,適用事例と効果,今後の計画について述べる。

有田 裕一、氏家 一行、酒井 晃

電子機器の高密度小型軽量化に伴い,電子パッケージの熱応力や発熱の問題は無視できなくなっている。これらの対策として,シミュレーションを設計段階で事前に行い,応力や温度を定量的に評価する試みが,設計現場において数多く実施されている。これらシミュレーションは従来の実験評価よりも安価に短時間で評価が可能であり,設計期間短縮やコストダウンに有効な手法である。
しかし,これまでの事例の多くは設計案一つに対する確認作業に停まっており,多くの設計案の中から,最適な設計変数の組合せを決定する最適設計は,計算回数が大幅に増大するため実用化が困難であった。
そこで,今回,実験計画法を数値シミュレーションに取り入れ,効率的に最適化計算を行う統計的最適化システムCAOSを開発した。本稿では,CAOSシステム開発の技術的背景,基本原理,実装冷却設計への適用事例の紹介を行う。

酒井 秀久、清水 啓史、山岡 伸嘉

電磁界シミュレーション

近年,レーザプリンタ,コピー機などで更なる高速化が求められている。これらの装置には電子写真技術が用いられているが,従来その設計には実測や実験的手法が主に用いられていた。しかし,装置の高速化・高画質化を効率的に行うためには,このような試行錯誤的アプローチでなく,電子写真プロセスを原理的に解明し,論理的なアプローチを取ることが不可欠である。そこで本研究では,現像プロセスにおける現像剤の物理的挙動を,数値的に基本運動方程式から解析することを目的とした。現像プロセスとして広く用いられている「二成分現像方式」に着目し,粉体解析の新たな手法を考案して現像剤挙動の数値解析技術を確立した。これにより,現像プロセスにおける現像剤の挙動,現像能力,画質などの数値解析を短時間で行うことを可能とした。本稿では,新しく開発した数値解析技術,現像剤の挙動,およびそれを用いたトナー付着分布と付着量の計算による現像解析について述べる。

久保田 哲行、井上 博之、茂木 正徳

マルチメディア,情報技術(IT)の発展によりコンピュータで処理されるディジタル情報量は爆発的に増大している。磁気ディスク記憶装置(HDD)は現在のストレージ技術の中心的な役割を果たしており,その面記録密度は年率60%以上の速さで向上している。開発期間の短期化,難易度が高まるなか,設計ツールとしてのシミュレーション技術が重要視されてきている。本稿ではHDDの主要部品の一つである磁気記録媒体にフォーカスし,面記録密度向上のための媒体開発指針を探索するための媒体ノイズシミュレーション,および磁気記録情報の長期安定性を確保するための熱磁気ゆらぎシミュレーション技術について紹介する。

秋元 秀行、岡本 巌

ハードディスクの面記録密度は年率60%以上で上昇している。このため,ハードディスクで使用される巨大磁気抵抗効果(Giant Magnetoresistive:GMR)型ヘッド開発の効率化が重要な課題の一つとなっている。本稿では,このGMRヘッドの再生特性シミュレーションシステム“3D-GMRSIM”について紹介する。
3D-GMRSIMは素子形状を三次元的に取り込み,磁気ディスク記録媒体からの漏洩磁界によるGMR素子部の磁化応答をマイクロマグネティックスにより三次元的に計算し,GMRヘッド特性を出力する。このようにGMRヘッドの再生特性が計算できる3D-GMRSIMを活用することで,GMRヘッド開発の効率化が可能となっている。本シミュレータの適用例として,バイアス補正層を備えた新規GMR構造による特性改善,および静電気放電における磁化反転メカニズムを解明した事例を挙げる。

山田 健一郎、向山 直樹、金井 均

電子回路シミュレーション

高周波電気信号を正しく伝送するためには,様々なノイズの影響を考慮した設計が必要になり,設計段階でその影響を考慮した精度の高い解析の要求が高まってきた。また,高速大容量データ転送を実現するための新たなバス方式である「同時双方向伝送」も出現し,設計段階での伝送シミュレーションによる良否判定実現の要望が出てきた。今まで提供してきたノイズ解析システム(SIGAL)は,タイミングを考慮した解析など精度の高い解析が受け入れられ,多くの装置に適用されてきたが,今回,高周波に対応した高精度なノイズ解析だけでなく同時双方向伝送解析にも対応した新機能を開発した。
この新機能は,ギガヘルツ領域の高周波信号解析では波形歪みの大きな要因となる表皮効果の解析,さらにはアイパターン解析を取りいれた差動信号伝送解析,三値論理の同時双方向伝送の信号解析を可能とし,より高精度な解析を実現した。本稿では,今回開発した新手法による解析時間の大幅短縮化,ジッタやスキューを含めたアイパターン解析,三値論理伝送解析について解説する。

登坂 正喜、須和田 誠

ソフトエラーは電子機器中のLSIが何らかの原因により,一時的に誤動作する現象である。最近この現象の原因として地上に到達する二次宇宙線の中性子が注目を浴びている。中性子ソフトエラー解析シミュレータ(NISES)は,この現象の解析のために開発されたものであり,最新の核反応理論に基づく核反応データベースを持ち,モンテカルロ法に基づいてソフトエラーを解析する枠組を持つ。NISESはCMOS回路やDRAMの中性子ソフトエラー解析に適用され,中性子ソフトエラーの重要性を示してきた。さらにNISESは,LSI設計段階のソフトエラー率評価に用いられLSIの信頼性を向上させている。本稿ではシミュレータNISESについて,その構成や機能,適用例について解説する。

戸坂 義春、佐藤 成生

製造シミュレーション

富士通・ファナック・東レの3社は,樹脂成形加工のCAD/CAE/CAMである射出成形支援統合システムMOLDESTを共同で開発し商品化することに成功した。
MOLDESTは,三次元設計した成形加工部品のCADデータから製品量産時に必要な射出成形の最適条件を導き出すことができる画期的なソフトウェアである。このシステムを導入することにより成形品の量産立ち上げ時に発生する試打ち作業を低減するばかりではなく,金型を製作する前から成形条件の適否を検討することが可能になる。
本稿は,今回,共同開発した本システムの開発経緯および商品概要を紹介する。さらにMOLDESTが最終的に目指している「モールド金型設計システム」(MOLDWARE)との連携による設計品質フィードバックシステムについて開発の取組みを述べる。

宮澤 秋彦、稲葉 善治、田中 豊喜

電子機器に使用されているプリント板の製造工程において,基板と部品のはんだ付けには,赤外線や熱風を用いた加熱炉(リフロー炉)が広く用いられている。一方近年では,地球環境保護の観点から鉛フリー化が求められている。しかし,搭載部品の多様化や,信頼性の面から有望視されているSn-Ag系鉛フリーはんだの融点が高いため,接合部をはんだの溶融温度以上に加熱し,同時に,基板や部品への熱的ダメージを抑えることが,技術的に難しくなってきている。
富士通と富士通研究所では,この課題をクリアするために,リフロー時のプリント板伝熱シミュレーションソフト“RS-Station”を開発した。本稿では,“RS-Station”の概要と,プリント板設計に適用して,加熱時の部品最高温度とはんだ接合部最低温度の差(ΔT )を,鉛フリー適用時の目標である10℃以下に抑えることに成功した事例を紹介する。

永浜 由徳、内田 浩基

電子部品の実装で凝固が関係するのは,プリント板に素子を接合するためのはんだ材料である。接合過程では種々の欠陥が生じ得る。よりクリーンな環境を考えると,鉛成分の少ないものに代える必要がある。既存の工程を変えずに同様な材料を見つけることが,技術者の次の挑戦となる。計算機シミュレーションで,欠陥を減らしはんだと基板の統合化を評価する効果的な設計ツールが得られる。電子デバイスが小さくてコンパクトになると,新技術の挑戦は学際的になり,マルチフィジックスシミュレーションと呼ばれる解析を必要とする。たとえば,電子部品を密閉したケースに入れると,電磁気放射が抑制されるが,空気の移動が制限される。これは逆に部品の熱力学的な信頼性と性能に関係する冷却性に影響する。このような問題でのトレードオフを解決するため,相互関係を持つ電子的,熱力学的プロセスを考慮する必要がある。本論文では,著者らが開発した凝固のモデリングと,マルチフィジックスである電子部品実装問題の解法が述べられる。

Peter Chow、Clifford Addison

製品への適用

富士通では,モバイルパソコン開発を迅速かつ効率的に行うために,製品企画段階から「熱流体シミュレーション」,「熱応力シミュレーション」,「衝撃シミュレーション」を適用し,試作回数削減による開発コスト低減,開発期間短縮化を図っている。
これらのシミュレーション技術を製品開発に活用するためには,高精度なシミュレーション技術と短期間での結果出力が要求される。このため,実験検証技術を含めた解析精度向上,モデル簡略化技術確立への取組みを行った結果,開発工程に合わせた短時間でのシミュレーションと実用精度を両立することが可能となった。
本稿では,モバイルパソコン設計へのシミュレーション適用事例,および取組み内容と効果について紹介する。

植田 晃、猪野毛 操、平野 実

光磁気ディスク装置はその名称から明らかなように,磁気記録技術と光学技術を用いて情報を記録する装置である。したがってこの装置の開発にあたっては電磁気学および光学的な知識が必要とされることはもちろんであるが,そのほかに機械,制御,信号処理技術など,広範な技術分野の適用が要求される。しかも,これらの技術は互いに影響し合い,装置の性能を左右する。このような多岐な技術分野を包含する複雑な系においては,シミュレーション技術を用いた装置の特性評価が,情報記録密度の向上を主とした高性能化という観点から必須である。さらに,シミュレーション技術の適用は試作回数低減による開発の効率化,開発期間の短縮などにも有効である。本稿では光磁気ディスク装置開発に適用されている機構部振動解析,電磁界解析および光学系解析の各シミュレーション技術に関して,その目的と得られた成果について概略を解説する。

市原 順一、手塚 耕一

携帯電話の開発では,機能の充実とともに,小型軽量化と堅牢性の両立が大きな課題である。現在のような短い開発サイクルの中で,小型軽量化と堅牢性を両立させるには,製品開発におけるシミュレーションの適用は必要不可欠である。近年,実装基板を小型化するために用いられるBGAパッケージは,はんだ接合強度が弱い。よって,携帯電話の堅牢性を確保するためには,はんだ接合部に許容限度以上の荷重が加わらないように,筐体設計や部品配置を工夫しなければならない。しかし,着目すべき対象が微小なはんだ接合部であるため,強度設計マージンが減少し,経験を重視した従来の開発手法では強度設計を最適化し,効率的な開発はできない。また,一般的な使用において,どの程度の負荷が携帯電話に加わるのかを定量的に把握しなければ最適な設計が行えない。
本稿では,一般的な使用環境に対応した堅牢性評価技術と,携帯電話開発におけるシミュレーション技術を紹介する。

石川 重雄、長竹 真美、井門 修

一般

今回,新たに鉛フリーはんだ合金として,錫-銀-銅からなる接合信頼性に優れたはんだ合金を開発した。
本はんだ合金は,錫-鉛共晶はんだに比べて高融点であるという課題はあるものの,現状の鉛を含む部品端子および将来採用が拡大される鉛フリー部品端子に対する接合信頼性に優れ,早急な鉛フリー化の推進を可能とする。
すでに,一部の富士通製品に本はんだ合金を用いたプリント板ユニットが搭載されており,今後,他製品への展開が計画されている。
本稿では,開発した鉛フリーはんだの基礎特性と実用化に向けての研究成果について述べる。

北嶋 雅之、庄野 忠昭、野口 道子

「総務購買ネットワークサービスSupplyMART」は,B to B(企業から企業へのネットワークサービス)において文具・事務用品などの間接資材の取引をインターネット上で行う場を提供している。SupplyMARTでは,多数の購入企業,販売企業が参加する共同の場において,電子カタログの機能で公開性の中に個別の取引条件の設定を行う「仮想チャネル機構」を実装した。仮想チャネル機構は見積購買における競争価格のメリットと電子カタログにおける購買手順の簡単化というメリットを同時に実現した。このことにより,電子的な商取引の中に現実の取引関係を構築する手段を与え,適度な購入価格の競争関係を実現することにより購入側,販売側双方に電子取引のメリットを与えている。

児玉 道輝


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