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  6. 住み慣れたところで安心して暮らす 地域包括ケアシステム

「地域包括ケアシステム」を成功に導くために 自治体に求められる役割と地域の人的ネットワーク構築

2014年12月25日掲載

団塊の世代、約800万人が75歳の後期高齢者層となる2025年に向けて構築が進められる「地域包括ケアシステム」。各市区町村は、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じ、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じたシステムを構築していくものとされています。「石巻市地域包括ケアシステム推進計画基本構想」に携わった株式会社富士通総研の湯川喬介氏に、システムの概念とともに、自治体職員や医療・介護従事者、そしてサービスを提供する事業者などが担う役割について、詳しく解説していただきました。

「地域包括ケアシステム」制度化の経緯

制度としての「地域包括ケアシステム」が登場した背景とは、どのようなものでしょうか

まず、少子高齢化が今後どのように推移していくか、あらためて考えてみたいと思います。ご承知のように、高齢化は先進国を中心に大きな問題となっています。その中でもわが国の高齢化は比較にならないスピードで進行しています。まさに日本は、世界で最も高齢化が進んだ「超高齢社会」なのです。

65歳以上の高齢者が全人口に占める高齢化率でみますと、いわゆる高齢化社会が7%、高齢社会が14%、そして超高齢化社会では21%といわれています。ちなみに日本は、2005年に20%を超え、2013年には25%、じつに4人に1人が高齢者です。

株式会社富士通総研 金融・地域事業部 マネジングコンサルタント 湯川 喬介 氏の写真

株式会社富士通総研
金融・地域事業部
マネジングコンサルタント
湯川 喬介 氏

この高齢化率上昇がもたらす課題を端的に表しているのが、高齢者1人の社会保障費を何人の生産年齢層の人たちで支えているかという数字です。1965年には9.1人で支えていたのが、2012年には2.4人、2050年にはなんと1.1人という過酷な数字になると推計されているのです。

もちろん高齢者1人を、働く世代の1人が支えるという状況は、現実的とはいえません。社会保障費の側面から計算しても、それは明らかです。さらに、どこで死ぬかという死に場所の問題もあります。現在、高齢者が死亡する場所は8割強が病院や診療所、1割程度が自宅といわれています。2025年には年間死亡者数が現在の1.7倍、約170万人になると予測されますが、今後医療機関のベッド数が大幅に増えることはないでしょう。

介護施設が2倍程度に整備され、自宅でケアを受け看取られる人を現在の1.5倍とみても、約47万人が「死に場所がない」状況になるといっても過言ではないでしょう。病院から早く退院することを促されて家に戻っても、ケアする人はいない。いったいどこで死ねばいいのだろうという「死に場所難民」が47万人も生まれてしまうのです。こうした状況を背景に登場してきたのが、「地域包括ケアシステム」の考え方なのです。

一言で「地域包括ケアシステム」を説明すると、どのようなものなのでしょうか

重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される社会システム、ということになるでしょう。もう少し言葉を費やすなら、高齢者が住み慣れた地域で、地域の人々に見守られながら、できる限り働き続け、健康寿命を延ばしながら生活できる社会システムといえるでしょう。

そもそも社会保障制度改革の分野でこうした概念が明確になったのは、2000年に制定された介護保険法の「住み慣れた地域での生活の継続を本旨とした居宅でのサービス提供を自立支援の理念によって行う」という内容にさかのぼります。

その後、2005年の介護保険法改正の3期介護保険事業計画において「地域包括ケアシステム」という用語が初めて使われ、地域密着型サービスとしての「地域包括支援センター」が生まれていますが、大きなポイントとなったのは2011年の介護保険法改正でした。この改正の条文に、「自治体が地域包括ケアシステム推進の義務を担う」と明記されたのです。

そして2013年、「地域包括ケアシステム」は「社会保障改革プログラム法」により、政策として推進される取り組みに定められました。同法では、2014年度から2017年度に行う「医療」「介護」「保険」など制度改革のスケジュールや実施時期などを定めています。さらに2018年度から2023年度には、団塊世代が後期高齢者となる2025年度以降を見据えた体制の最終整備がなされることになっています。

「地域包括ケアシステム」の概念

医療機関や介護サービス事業者、そして推進役の自治体の関係や位置付けはどうなっていくのでしょうか

下の図は、団塊世代が後期高齢者層にさしかかる2025年の地域のあり方を示しています。この図は、「石巻市地域包括ケアシステム推進計画基本構想」に携わった際に、石巻市地域包括ケア推進協議会の皆様と検討していったものです。詳しくは、「石巻市地域包括ケアシステム推進計画基本構想」をご覧ください。中央の植木鉢に咲いている花は、住み慣れたところで安心して暮らし、元気な高齢者も含めて働く気持ちを持つ人が働ける環境を示しています。

地域包括ケアシステムのコンセプト図

では、きれいな花を咲かせるためにどのような要素が必要かを考えてみてください。「医療・看護」「介護・リハビリテーション」の役割となる葉が必要になります。花や葉を支える土も必要です。地域包括ケアシステムで土の役割を担うのが「保健・福祉・生活支援・予防」です。また、これらをしっかりと受け止めるには、植木鉢にあたる住まいと住まい方が確保されなければなりません。そして、花、葉、植木鉢の安定を支えるのが、本人・家族の選択と心構えです。

行政の役割は何にあたるでしょうか。それは必要に応じて葉に「医療・看護」「介護・リハビリテーション」を供給すること、そして花に欠かせない「保健・福祉・生活支援・予防」役の土に、ジョウロを使って水分や養分を供給することです。さらに、すべての要素が円滑に機能する太陽の光は地域のコミュニティに相当し、それが大きな役割を果たしていることを示しています。

土の役割を担う「保健・福祉・生活支援・予防」がポイントになってきますね

そのとおりです。例えば生活支援は、買い物支援、タクシーによる移動支援、お弁当の配食、さらには住宅改修支援など多面的な内容となり、おそらく様々な事業者、NPOやボランティアが関わることになるでしょう。その意味で、これらインフォーマルなサービス提供者は、「地域包括ケアシステム」推進に加わる新たな役者といえるでしょう。

「ジョウロを使って水分や養分を供給する」ことが行政の役割であると述べましたが、それは行政が独自に蓄積してきたノウハウであったり、あるいは「医療・介護」「介護・リハビリテーション」の分野との関わりにおいて蓄積してきた知恵や人脈、場合によっては資金ということになると考えてください。

私見ですが、「地域包括ケアシステム」が目指すところを理解するために、じつは「きれいに咲く花」が、2025年の高齢者のあり方だけにとどまらないことを念頭におくべきではないかと考えているのです。つまり、医療や介護、保健・福祉・生活支援・リハビリテーションがシームレスに連携し、これらを地域のコミュニティが包み込む環境に咲く花は、障がい者や子育て中の両親であってもよいはずなのです。また、そこにはワークライフバランスやワークシェアリングといった仕組みなども関わってくるはずです。そう考えると、2025年問題も前向きにとらえられるのではないでしょうか。

今日の社会ではかつてのような親密な関係をそのまま再生することは難しいでしょう。けれども、それぞれの地域の特性に見合ったコミュニティを、いまどきの社会システムとして醸成していくことは可能なはずです。それが「地域包括ケアシステム」の考え方であると思いますし、こうした概念が受け入れられ、定着していけば、医療費や介護費用の増大に歯止めがかかり、数十万人もの「死に場所難民」の問題についても回避できるだろうと考えられます。

「地域包括ケアシステム」の担い手と、その役割

医療関係者、介護事業者、インフォーマルサービス提供者、そして自治体は、それぞれ新しい役割を担うことになりますね。その具体的な役割とはどのような内容でしょうか

それぞれの大きな役割でいえば、まず医療関係者には在宅医療の環境を整えることが求められます。介護事業者には、医療関係者とインフォーマルサービスの提供者との連携を踏まえたケアサービス、ケアプランを用意することが求められます。そしてインフォーマルサービスの提供者に求められる役割のひとつが、高齢者の健康寿命を延ばしていくためのサポートです。

これは「地域包括ケアシステム」の推進において大変重要な役割といえます。具体的な例を挙げると、寝たきりの高齢者や認知症の予備軍を早期に発見し、悪化しないうちに検診を促したり、健康づくりの基本となる運動や食生活に対する意識を高め、実践する活動への参加を促すといったことです。その担い手となるのが、有償・無償を問わず、サービスを提供する株式会社やNPO法人、ボランティア、社会福祉法人などです。

そしてこれらの医療関係者、介護事業者、インフォーマルサービス提供者らがシームレスに連携する仕組みづくりを支援し、マネージメントし、必要に応じて調整するといった業務を担うのが自治体です。

「石巻市地域包括ケアシステム推進計画基本構想」に携わった経験から、どのような知見、また課題が見えてきましたか

石巻市は、正確なことはいえませんが、かねてより就労人口の市外流出や少子高齢化など課題を抱えていました。これらの問題をさらに深刻化させたのが、2011年の東日本大震災です。被災者、高齢者、障がい者、子どもたちなどの保健、福祉、医療、介護、生活支援、地域コミュニティなど、あらゆる社会生活が変容し、その見直しを迫られたのです。私たちはこの石巻市の事態を、2025年問題にいち早く直面したものと理解し、有効な対応策を打ち出すべく、2013年、自治体や関係する諸機関・団体とともに石巻市地域包括ケア推進協議会の立ち上げにご協力させていただきました。

復興が進む石巻市
(撮影:塩澤 耕平 氏)

そこから見えてきたのは、医療関係者の取り組みとして、在宅医療に携わるドクターを増やすことが望ましいのですが、それは一朝一夕にはいきません。そのためまずは、在宅医療に携わっているドクターの負荷軽減のための対策が重要だと考えました。介護事業者の役割としては、前述した、医療関係者とインフォーマルサービスの提供者との連携を踏まえたケアサービスの実現です。そのためには、医療と介護の接点者である、ケアマネジャーの働きが最も重要になると考えています。

ケアマネジャー向けの教育を充実していくだけでなく、一例ではありますが、ケアマネジャー1人ひとりが蓄積する、例えば近隣で雪かきをしてくれる人、住居の修繕をしてくれる人がいるといったインフォーマルサービスに関わる情報を、みんなで共有する仕組みづくりをしていくことも取り組みのひとつではないでしょうか。そして、介護関係者と医療関係者の接点を活性化する取り組みとして、チャット(メッセージ交換)などを使ったコミュニケーションの促進にICTを活用していくこともひとつだと思います。

インフォーマルサービスの提供者が取り組むべき課題も、やはり実践例の中から見えてきました。それは、要介護の認定をされる前の予防段階においても活躍の場が多くなるのではないかということです。要介護高齢者に比べ他者との接点が少ない自立高齢者の困り事やニーズを拾い上げ、民間のサービス事業者につなぐことで、迅速にニーズを満たしていけると考えられます。

しかし、そのためには、コーディネートをする役割も必要となってきます。今後、地域包括ケアシステムを各地域で実現していくためには、行政が担うか民間事業者が実施するかを問わず、地域でコーディネートする役割が求められていくと考えられます。しかし、医療・介護の領域から飛び出し、インフォーマルサービス提供者とも連携していくことを想定すると、高齢者の大事な個人情報の取り扱いについて、今まで以上に配慮していくべきと考えます。

「地域包括ケアシステム」推進で自治体関係者に求められる心構え

「地域包括ケアシステム」推進にあたって、自治体としてどういう体制づくりが求められるのでしょうか

石巻市の取り組みからわかったことは、「地域包括ケアシステム」においては、リーダー役と推進役が必要であることです。リーダー役は、やはり人の生命、その最期を看取るドクターと考えます。そして推進役となるのは自治体と考えます。地域包括ケアシステム実現に向けた業務は介護保険関連にとどまらず、医療機関、地域のNPOやボランティア、子育てに関係する事業者をはじめ、多領域に及びます。しっかりした組織を構築してフレキシブルに対応するべきでしょう。

「地域包括ケアシステム」を推進するうえで、最も重要なポイントは何でしょうか

次世代にも通用する「地域包括ケアシステム」を目指し関係者の合意を得ることです。つまり、自治体主導で推進していくことは望ましいものの、物事を決める際には、医療関係者、介護事業者、インフォーマルサービス提供者、さらには障がい者などの関係者による合意を目指すことです。そのうえで、どのような人的ネットワークを構築し、どのように個々の高齢者を見守っていくのかという検討が必要でしょう。

そのためには、情報共有の仕組み、あるいは情報ネットワークが必要かを見定め、求められる要件に見合ったICTシステムを導入することも今後必ずや求められてくるでしょう。繰り返しになりますが、自治体は、関係者間の合意形成の出発点となり、地域包括ケアシステム実現までのよりどころとなる計画書を作り、そして、関係者とコミュニケーションをとり、試行錯誤しながら推進していくことが重要だと思います。

【湯川 喬介 氏 プロフィール】

株式会社富士通総研 金融・地域事業部 マネジングコンサルタント。
2003年 横浜国立大学大学院環境情報学府修了、同年、某コンサルタント会社入社。2006年7月 株式会社富士通総研入社。
これまで、ヘルスケア、防災といった安全・安心分野をテーマに国内外における調査・コンサルティング業務に従事。近年は、主に地域包括ケアシステム、医療・介護連携をテーマにしたコンサルティング業務に従事。

【株式会社富士通総研(FRI) 概要】
所在地 〒105-0022 東京都港区海岸1丁目16番1号 ニューピア竹芝サウスタワー
代表者 代表取締役社長 本庄 滋明
設立 1986年6月20日
従業員数 362名(2014年3月31日)
ホームページ http://jp.fujitsu.com/group/fri/
富士通総研のご紹介

ニューピア竹芝サウスタワーの外観株式会社富士通総研は、1986年の設立以来、コンサルティング部門および経済研究所を設置し、様々な企業、団体、機関における課題に対し解決策を提案しています。コンサルティングにおいては、最新のICTと社会・産業動向に基づき、具体的な課題解決策を提案し、実行。研究開発では、コンサルティングを支える新たな技法・モデルを追究。また経済研究においては、社会、経済、産業の将来の姿をグローバルに洞察し、先進的でユニークな研究成果を発信しています。

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