次世代通信の”5G”や先進AI技術の活用が”アフターデジタル”の未来を導く

中山 五輪男

富士通株式会社
理事、首席エバンジェリスト

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“伝道師”の意味を持つ“エバンジェリスト”は、最新の技術がもたらす価値や未来をわかりやすく伝えることが役割です。エバンジェリストとして、富士通が持つ人工知能(AI)など先進のICT技術の普及に努めると同時に、“伝える力”を強化するために社内のエバンジェリスト育成にも当たっています。AI技術や5G、VRなどの次世代テクノロジーは、ヘルスケア領域を含めて社会を大きく変革します。オンラインがメインとなる“アフターデジタル”の時代を迎える中で、今後は企業も医療機関も国家もデジタル技術を活用するためのマインドセットを大きく変えていくことが必要です。

製品や技術をわかりやすく伝え、広めるのが“エバンジェリスト”の役割

“エバンジェリスト”は、キリスト教における“伝道師”のことですが、ICT業界では以前から外資系を中心に自社の技術や製品を紹介するポジションとして位置づける企業がありました。企業がつくった新しい技術や概念をプレゼンテーションを通じて広く伝える役割と言っていいでしょう。私は、前職のソフトバンク時代にApple社のiPhoneの発売をきっかけにしてモバイル端末がもたらす未来を紹介する役割を任され、初めてエバンジェリストを名乗り、全国各地で数多くのプレゼンテーションを行ってきました。そして、2017年8月に首席エバンジェリストとして富士通に移籍しました。

エバンジェリストの役割は、製品や技術をわかりやすく説明することだけではなく、プレゼンテーションやデモを通じてお客様に直接訴えかけて人の心を動かすことです。人は、感動して本当に心が動かされなければ行動しません。そのためには、エバンジェリストは伝える技術を磨くことも必要ですし、直接お会いすることで人のネットワークができることも大きな財産です。今は年間240回のペースで日本全国で講演を行い、情報を発信しています。

人やモノをつないで新たな価値を生み出すデジタルトランスフォーメーションに取り組む

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政府が進める“Society5.0”を挙げるまでもなく、社会におけるICTの必要性は高まるばかりです。そこで富士通は、従来のシステムインテグレータ(SI)を中心とした事業から、デジタル技術を活用して人やモノをつないで新たな価値を生み出す“デジタルトランスフォーメーション(DX)”へと事業の転換を進めています。

DXを加速させるためには、企業のみならず医療機関や自治体、さらに言えば国家としての“チャレンジ”が必要です。今、日本に欠けているのはチャレンジするマインドで、もっと積極的につくったり壊したりできる、日本のサンドボックス(砂場)化が必要です。医療機関も企業も自治体も、ある種の賭けに近い“戦略的投資”をどんどんするべきです。富士通も、これまで培ってきたデジタル技術をベースに、新しい未来を実現するために新たなチャレンジを続けているところです。

次世代通信規格“5G”が開く新しいヘルスケアの未来

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今、大きな注目と期待を集めているのが次世代の通信規格である“5G(ファイブ・ジー)”です。携帯電話などの移動通信ネットワークはほぼ10年で世代(Generation)が変わっています。2000年頃にスタートした3Gではスマートフォンの時代に、2010年前後に始まった 4Gでは高速大容量によって動画の時代になりました。2020年にもスタートする5Gの特徴は3つしかありません。さらなる高速大容量、同時多接続、低遅延です。しかし、それらによって世の中を大きく変える可能性を秘めています。例えば、5Gでは2時間の映画が3秒でダウンロードできる高速大容量になります。ヘルスケアの領域では4Kサイズの映像でテレビ電話形式の遠隔医療が可能になったり、さらにホログラムのようにあたかも目の前に医師がいるような環境で診察が可能になります。これによって在宅医療や訪問看護・介護の現場を大きく変えることが期待されます。さらに、5Gでは、“VR(virtual reality)”の活用もさらに加速するでしょう。医療領域でも、すでに手術室での医師の手技の支援などで実用化が進みつつありますが、VRによる遠隔診療や教育などさまざまな応用が期待されます。

また、5Gではネットワークの遅延が4Gの1/10になります。
それはネットワーク越しの操作が、手元のスマートフォンを操作するのと同じぐらいのレスポンスです。例えば時速100km で走行する車を外部からブレーキ操作した時に、4Gでは静止まで1.4m進むのに対し、5Gでは2.8cmで止まります。
タイムラグがなくなれば、「da Vinci」のような手術支援ロボットを、病院に赴くことなく遠隔地から操作して手術することも可能です。

富士通のAI「Zinrai」や「デジタルアニーラ」が次世代の医療を加速

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AIについて富士通は、「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」として展開しています。医療分野では、画像診断の領域で、これまで専門医が1時間かけて診断していた過程を富士通のAIの支援によって10分に短縮できたという成果が出てきています。

5Gと組み合わせれば、CTやMRIの大容量のデータを転送しAIによる遠隔読影を行い、最後に専門医が診断するということも可能になるでしょう。また、AIではどうしてその答えを導いたかの過程や根拠がわからないブラックボックス化が課題になっています。富士通では、説明可能なAI技術として“Deep Tensor(ディープテンソル)”などを開発しています。すでにゲノム医療の現場では応用が進んでいますが、特に医療の世界では必要性が高いと思われます。

また、富士通には、量子現象に着想を得た先進のデジタル技術である「デジタルアニーラ」があります。量子コンピューティングでは、飛躍的な処理能力の向上でこれまで不可能だったさまざまな課題を解決できると言われていますが、デジタルアニーラでは、その中でも“組み合わせ最適化問題”を高速に解くことが可能です。組み合わせ最適化問題は、営業マンが複数の都市を最も効率的に移動できるルートを求める“巡回セールスマン問題”が有名です。医療の領域では、がんの放射線治療で腫瘍に対する照射の方向やエネルギーを決定する治療計画の計算時間を、通常は数日かかるものをデジタルアニーラでは数秒で終わらせることができます。そのほか、新薬の開発においても、これまで人間の勘や経験でカバーしていた部分を、デジタルアニーラで分子レベルでのシミュレーションが可能になり、創薬プロセスのスピードアップに貢献できます。

オンラインを前提にした“アフターデジタル”の思考が次世代の扉を開く

DXなど社会のデジタル化をもう一段階進めるためには、考え方を転換させる必要があります。これまでは、オフラインのリアルな世界にどうやってデジタルを取り入れるかを軸に考えてきました。しかし、あらゆる人やモノがネットワークにつながり、オフラインがオンラインに融合した世界のことを“アフターデジタル”と言います。そこではすべての物事はオンラインが軸であり、そこからオフライン(リアル)の世界を見るというパラダイムシフトが起こります。すでに中国ではこのアフターデジタルでのビジネスが急速に進みつつあります。これまで、富士通はSIとして、ユーザーに寄り添いニーズを把握して最適なソリューションを提供してきました。しかし、アフターデジタルの世界では、ユーザー自身にはどんなシステムが必要で、何をすればよいのか、判断が難しくなります。その時に、未来の方向や道筋が少しでも想像できるように、エバンジェリストとして新しい技術や概念をわかりやすく発信し続けていきます。

  • ※この記事は、ヘルスケアビジネス推進統括部発行の「HOPE Vision Vol.34」より抜粋したものです。

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