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Fujitsu

Japan

3D重畳 導入事例


AR(拡張現実)技術を活用したシステムで製造部材の診断を効率化し
品質の向上と現場組立遅延リスクの排除を実現

株式会社巴コーポレーション様

株式会社巴コーポレーション 様


総合建設から鉄塔、橋梁、鉄骨まで幅広い分野で事業を展開する株式会社巴コーポレーション(以下、巴コーポレーション)様。同社では、立体構造物を構成する製造部材の診断を主に目視で行っていましたが、検査漏れによる手戻りが課題となっていました。そこで、富士通とともに3次元CADデータとAR技術を活用した製造部材診断システムを開発。これにより、製作現場で組み立てる前に不具合を確実に検知でき、品質向上と現場組立遅延リスクの排除を実現しました。

[ 2016年11月制作 ]

【導入事例概要】
業種: 製造業
製品: FUJITSU Manufacturing Industry Solution 3D重畳

独自の立体構造関連技術で地域社会の発展に貢献

巴コーポレーション様は、1917年の創業以来、様々な立体構造物や鉄塔、橋梁、鉄骨などの設計・製作や施行を手がけてきました。同社独自の立体構造関連技術を有し、帆を模した屋根が特徴的なJR東京駅八重洲口の複合商業施設であるグランルーフや、JR新橋駅のホーム全体を覆う大屋根、自転車競技施設の伊豆ベロドロームなど、多くの建造物を製作しており、その技術力は高い評価を受けています。

JR新橋駅(大屋根) 伊豆ベロドローム
<JR新橋駅(大屋根)>
ホーム全体を覆う大屋根の老朽化に伴い、建替工事を実施(トモエユニトラスを採用)
<伊豆ベロドローム>
自転車のトラック競技に関する世界標準仕様の競技施設(トモエユニトラスを採用)

複雑な製造部材の診断を効率化し品質向上と現場組立遅延リスクを排除

西原 普明 様
事業部門/鉄構事業/
小山工場/上席執行役員
/工場副統括兼工場長
西原 普明 様

巴コーポレーション様では、2006年の早期から3次元CADや自動設計ソリューションを導入し、設計業務のICT化を進めてきました。しかし、構造物を構成する製造部材が設計図通りに作られていることを確認する診断では、作業員の目視確認や治具を使用した人手による寸法・角度の測定が中心で、思い込みによる取り付けミスなどのヒューマンエラーに起因する不具合を見逃すリスクが高くなっていました。上席執行役員で小山工場の工場副統括兼工場長を務める西原 普明様は次のように語ります。

「部材組立工程の診断で不具合を見逃してしまうと、後工程で手戻りが発生し、作業遅延が起きてしまいます。また、今後構造物の大型化や複雑化が進むと、人手での診断はより困難になることが予想されます。そこで製造部材の診断をICTで効率化して製造ミスを確実に発見し、品質を高めることを目指しました」

巴コーポレーション様は、当初独自で製造部材の写真と3次元CADのデータを重ね合わせて不具合を検知する手法を検討し、プロトタイプを開発しましたが、操作が複雑で難しく誰もが利用できるものではありませんでした。

そこで「iCAD」シリーズの導入・運用で10年以上の付き合いがある当社に課題解決の手法を相談。AR技術を活用した製造部材診断システムの開発提案を受け、小山工場で実証実験を行うことにしました。事業開発 システム推進部 部長の柳原 毅様は「当初はARマーカーを使ったシステムを想定していましたが、より自由度が高く、操作も簡略化できるマーカーレスのAR技術を活用する提案をいただき、一緒に開発に取り組むことにしました」と振り返ります。

タブレットのカメラで撮影し簡単な操作で即時に診断を実現

柳原 毅 様
事業開発/
システム推進部/部長
柳原 毅 様

AR技術を活用した製造部材診断システムの実証実験は、2015年12月から2016年6月にかけて行われました。診断対象は、同社が手がける多くの立体構造物で採用されているトモエユニトラスで、ボール状の鋼球と鋼板を接合した30cmから100cm程度の製造部材です。西原様は「複雑な構造で製造が難しい部材であることから、高い導入効果が期待できるトモエユニトラスでの検証を決めました」と語ります。

巴コーポレーション様と富士通で新たに開発した製造部材診断システムは、部材組立の工程で診断対象となる製造部材をタブレットの内蔵カメラで撮影し、その写真から直線部分を抽出したデータと、3次元CADデータをソリッドモデルで描画した図形をタブレット上で重ね合わせて即時に診断を行うものです。柳原様は「実証実験では、複雑な形状の部材写真からシンプルな直線が検出できるようにシステムの改良を重ねました」と説明します。

製造部材診断システムの利用イメージ

製造部材診断システムの利用イメージ

製造ミスの確実な検知により後工程での手戻りを撲滅

百目鬼 明宏 様
事業部門/鉄構事業/
小山工場/製造部/製造
第二グループ/主任
百目鬼 明宏 様

検証の結果、製造部材診断システムは誰でも簡単に操作ができ、所要時間も大幅に短縮できることが確認できました。事業部門 鉄構事業 小山工場 製造部 製造第二グループ 主任の百目鬼 明宏様は「1つの部材の診断は2、3分で終わるので、目視での診断に比べておよそ10分の1まで時間短縮ができ、作業効率が大幅に向上しました」とその効果を語ります。

実証実験後は、製品の出荷前にも製造部材診断システムを活用した検査工程を組み込み、さらなる品質の向上に取り組んでいます。「操作が簡単なので、初心者でもすぐに使いこなせるようになります。小山工場では現在3名の作業員が利用していますが、今後は2名増強し5名体制で診断を行っていく予定です」と百目鬼様は話しています。

AR技術を活用した製造部材診断システムにより、目視では難しかった製造ミスやヒューマンエラーに起因する不具合を確実に検知でき、早期に部材組立のやり直しができるため、後工程で発生していた手戻りもゼロになりました。事業部門 鉄構事業小山工場 品質管理部 部長の松本 一男様は「目標としていた品質の向上と現場組立遅延リスクの排除を実現でき、施主や発注元のゼネコンからも高い信頼を得られるようになりました」と語ります。

全工場で製造部材診断システムを活用し診断対象も拡大

松本 一男 様
事業部門/鉄構事業/
小山工場/品質管理部/
部長
松本 一男 様

巴コーポレーション様は今後、製造部材診断システムを北海道の札幌工場と青森県の十和田工場にも展開し、全工場で部材診断の精度を向上させていく予定です。また、トモエユニトラス以外の製造部材にも診断対象を拡大して、特殊な形状で診断が難しい立体構造物の製造品質の向上も目指しています。

松本様は「10メートル以上ある特殊な鉄骨も診断していきたいと思っています。そうなると製造部材のサイズが大きくなるので、撮影ポイントを分割した複数の写真を使って診断ができるように検証、開発を続けていきたいと考えています。富士通には撮影写真の高画質対応など、引き続き技術的な支援を期待しています」と述べています。

当社は、幅広い分野で社会に貢献する巴コーポレーション様のビジネスを支援するため、今後も共創体制を強化していきます。

【巴コーポレーション株式会社様 会社概要】
所在地 東京都中央区勝どき4-5-17
代表取締役社長 深沢 隆 様
創業 1917年10月6日
資本金 30億円
従業員数 368名
事業内容 鉄構建設事業、不動産業
ホームページ 株式会社巴コーポレーション様 ホームページOpen a new window

【導入事例(PDF版)】

本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は制作時のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。