PLEMIA M3 ECODUCE 導入事例
富士通株式会社 環境本部
「グリーン製品」の開発を支える
REACH対応含有科学物質管理システム
富士通グループでは、携帯電話やPCのようなコンシューマー製品からサーバや光伝送システムなどの基幹製品まで、非常に広範な製品開発を手がけており、そこで扱う部品点数は数十万点にも及ぶ。欧州連合(EU)によるRoHSやREACHといった規制をクリアし、環境負荷の低減を推進していくためには、それらの部品一つひとつに含まれる化学物質を、いかに正確かつ迅速に把握できるかが鍵を握る。設計情報システムや調達システムと連携し効率的に含有化学物質を管理するシステムとして、「PLEMIA/ECODUCE」を導入した。
(*1)REACH 規則:欧州連合による化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則。2007年6月施行。
(*2)RoHS 指令:欧州連合による電気電子機器に含まれる特定有害物質(6 物質群)の使用制限に関する指令。2006年7月施行。
藤井 正隆
富士通株式会社
環境本部 環境技術統括部
統括部長
濱川 雅之
富士通株式会社
環境本部 環境技術統括部
グリーンプロダクトエンジニアリング部
プロジェクト課長
永宮 卓也
富士通株式会社
環境本部 環境技術統括部
グリーンプロダクトエンジニアリング部
山田 真理子
富士通株式会社
環境本部 環境技術統括部
グリーンプロダクトエンジニアリング部
富士通グループでは、製品の開発にあたって、グループ一体となったエコデザインを推進しており、製品のライフサイクル全体を通じた環境パフォーマンスの向上に努めている。1993年より富士通グループ独自の製品環境アセスメントを実施し、「省エネルギー」「3R設計」「含有化学物質」「包装」などの観点において環境に配慮したグリーン製品の開発に取り組んでいる。その一方で省エネルギーや含有化学物質に関する法令の整備が世界各国で進んでおり、企業は独自の環境への取り組みを継続するだけでなく、確実な法令遵守の体制を構築する必要がある。
もっとも、これは決して簡単な取り組みではない。例えば、含有化学物質に着目すると、今日では欧州連合(EU)によるREACH 規則(*1)や、RoHS 指令(*2)といった環境規制をクリアしていないと、当該地域で製品を販売することさえ できない状況にある。問題は、その開発の過程で管理しなければならない部品点数の多さとサプライチェーンの複雑さである。
富士通 環境本部 環境技術統括部の統括部長を務める藤井正隆は、「富士通では、携帯電話やPCのようなコンシューマー製品から サーバや光伝送システムなどの基幹製品まで、非常に広範な製品開発を手がけており、そこで扱う部品点数は数十万点にも及びます。これらの部品一つひとつに含まれる化学物質を、いかに正確かつ迅速、容易にハンドリングできるようにするか、絶え間ない改善を重ねてきました」と語る。
含有化学物質管理システムのさらなる強化を目指す
この課題に対する富士通のアプローチは、ITを活用した化学物質管理プロセスの最適化にある。同社環境本部 環境技術統括部 グリーンプロダクトエンジニアリング部のプロジェクト課長を務める濱川雅之は、こう語る。
「私たちは長年をかけて、各製品のBOM(Bill of Materials:部品構成)を一元管理する設計情報システムや調達システムと連携した含有化学物質管理システムを整備してきました。サプライチェーンをさかのぼり、納入物に対する化学物質の詳細な含有情報を把握。自社内で適正に管理するとともに、法規制への適合を確実なものとするものです」
そして、このシステムをさらに強化すべく同社は、2009 年3月にリリースされたREACH対応含有化学物質管理システム「PLEMIA/ECODUCE」を新たに導入した。
使いやすいインタフェースを備えたREACH対応含有化学物質管理アプリケーション「PLEMIA/ECODUCE」
使いやすいインタフェースにより設計や調達業務での利用を拡大
含有化学物質調査のシステム連携
同社 環境本部 環境技術統括部 グリーンプロダクトエンジニアリング部の永宮卓也は、PLEMIA/ECODUCEを導入した狙いをこう説明する。
「特にREACH規則に対応する上では、製品に含まれる対象化学物質の総量を積算しなければならないなど、複雑な集計処理が求められます。また、対象化学物質そのものも時とともに変化していきます。こうした含有化学物質を管理するツールを各部門で独自開発していたのでは、そのノウハウが属人化し、柔軟なエンハンスができなくなってしまうおそれがあります。そこでこれを機に、JAMP(*3)が提唱するガイドラインや 情報伝達シートに準拠した標準的なパッケージであるPLEMIA/ECODUCEへの切り替えを図ったのです」
さらに、同社 環境本部 環境技術統括部 グリーンプロダクトエンジニアリング部の山田真理子が、このように続ける。「含有化学物質管理を徹底する上で最も重要なポイントは、ツールを一部の担当者だけのものではなく、設計や調達などの業務に携わるあらゆるユーザーに向けて普及を図っていくことにあります。その意味からも、様々な環境規制への対応状況を、視覚化されたBOM情報とともにマトリックス表示することが可能なため、PLEMIA/ECODUCEの使いやすいインタフェースに魅力を感じました。頻繁にマニュアルを参照しなくても、直感的に使いこなせるツールが理想的なのです」
(*3) JAMP:Joint Article Management Promotion-consortium の略。製品に含有する化学物質情報などを適切に管理し、サプライチェーンの中で円滑に伝達するための具体的な仕組み作りとその普及を目的とする、2006年9月に発足した産業界による自主的な協議
含有化学物質から対象部品を逆引き"する機能を搭載
PLEMIA/ECODUCEを導入することで、富士通の含有化学物質管理への取り組みは加速的な勢いがつきそうだ。その一方、PLEMIA/ECODUCEユーザーとしての意見を開発側にフィードバックし、パッケージそのもののブラッシュアップを促進。社内で得られた知見を反映させることで、より優れた含有化学物質管理のソリューションを幅広いお客様に提供していく "社内実践"としての狙いもそこにはあるという。
「ある部品に禁止された化学物質が含まれているかどうかといったチェックは、他社のどんなツールでも可能だと思います。それに加えてPLEMIA/ECODUCEでは、その化学物質が含まれている部品はどれかといった"逆引き"も可能となっています。これは数十万点にも及ぶ部品点数の管理に苦慮してきた富士通グループだからこそ、培うことができたノウハウを具現化した機能です。多くのお客様にメリットを感じていただけるものと自負しています」と藤井はPLEMIA/ECODUCEの他社製品との差異を指摘する。
例えば、新たな化学物質の規制が加えられた際に、開発途中にある製品の設計者にその情報をいち早く通達。設計の上流プロセスへの手戻りを最小限に抑えるといった意味からも、この"逆引き"機能は有効と考えられる
なお、PLEMIA/ECODUCEの導入も非常に簡単であるという。「すでにERP上などにBOMや含有化学物質のデータが整備された状態にあるならば、PLEMIA/ECODUCEは導入後すぐに運用に入ることも可能です」と永宮は語る。
あらゆる製造業にとって環境配慮は、終わりのない課題である。だからこそ最適なITソリューションを活用し、着実な一歩を重ねていくことが重要と言えそうだ。
【USER PROFILE】
- 社名:富士通株式会社 環境本部
- 事業内容:富士通グループは、2007年12月から環境負荷低減プロジェクト「GreenPolicy Innovation」を環境本部を中心に推進している。
このプロジェクトは、富士通グループが有する環境テクノロジーやノウハウを活かしたグリーンITの提供を通じて、お客様の企業活動や社会から 発生する環境負荷の低減をめざす取り組み。
IT機器やデータセンターの省電力化、省スペース化を追求するとともに、富士通グループ内で蓄積された環境ノウハウを活かしたソリューションを 提供することで、お客様の環境負荷の低減に貢献する。