作業フローのテンプレート化と技術情報の一元管理により設計作業負荷を軽減する「PLEMIA」。多様な標準モジュールを組み合わせて、顧客仕様の製造装置を設計生産する従来の製品標準化手法の精度を高めることに成功。多様な標準モジュールを用意することで、最先端技術分野のニーズに応える製造装置開発力の向上に取り組む。
安藤 真 様
アピックヤマダ株式会社
企画室室長代理
岡村 勝実 様
アピックヤマダ株式会社
技術事業部設備技術
シニアエンジニア
永井 均 様
アピックヤマダ株式会社
技術事業部システム技術管理
エンジニア
アピックヤマダは半導体関連機器の製造装置メーカーのパイオニア。日本で最初に半導体チップをパッケージングする樹脂封止金型を開発製造し、リード加工機においては世界トップシェアを誇っている。厳しい市場環境下で業績を上げるため、同社は保有する技術力を統合し最先端技術分野に応え先進を図る。求められるのは、顧客ごとに異なる仕様要求、進化する半導体部品製造に即応できる設計開発力だ。
80年代より、同社ではプレス、切断など半導体製造の工程ごとの標準モジュールをあらかじめ作り、顧客の仕様にそって組み合わせる製品標準化による生産を続けてきた。しかしその後、製品標準化による設計作業の効率化はあまり進まなかった。「旧システムでは採番の仕組みが甘く、カスタマイズ部分の設計で、流用図面から部品データをたどるなどが困難でした。そのため、出図を急ぐ設計担当者は都度新図面を起こし、同じ部品に新たな番号を振る。その結果、図面や部品データの一元化、設計の効率化が進まず、標準モジュールを多様化して新規分野の需要に応えようとの展開は足踏み状態でした」。同社企画室室長代理の安藤真様はこう振りかえる。
2007年11月、同社は老朽化した旧システムを更改し、製品標準化6合目の壁を破るために富士通PDMの導入を決定。その理由を安藤様は「ユニット、モジュールの製造番号と部品番号がしっかりひも付けられ、設計の変更や流用・転用時も両番号の対応関係をいとも簡単に追えることがわかりました。また構成情報や付随するドキュメントを一括管理する機能は、関連データ探しなど設計準備作業をかなり軽減するだろうと思いました」と語る。導入決定から稼働まで、わずか6ヵ月。「大変タイトなスケジュールにもかかわらず、本当によく対応いただき、しかもきっちり予定どおりに稼働に持ち込むことができました」と、同社技術事業部システム技術管理 エンジニアの永井均様は当社SEの技量を高く評価する。
同社は、導入過程を「基本機能整備段階」、その後の1年を「設計業務改善段階」、さらにその後1年間(2010年3月末まで)を「情報共有充実段階」ととらえ、腰をすえた設計業務改善に取り組んでいる。
導入して間もなく、設計担当者の多くが業務の効率化を実感した。製品番号と部品番号がひも付けされ設計変更作業も楽になった。また技術情報の一元管理により点在するデータを探し回る時間も減った。しかし安藤様が期待するのは、これから現れてくる長期的なメリットだ。「標準モジュールの改善情報などがテンプレートで確実に集約されフィードバックされると、モジュールの品質がどんどん洗練されていきます。やがてPDCAサイクルが回りはじめると、標準モジュールを組み合わせた製品の品質は高まります。当社が多様な業種のニーズに、満足度の高い製品で応えるには、製品を洗練させるPDMが必要なのです」(安藤様)。
長期的視点で見たもう一つの効果は設計者の考え方、ノウハウの伝承。「図面からだけでは見えない情報、例えば転用・流用設計時に、どのような計算がなされ、どこにどう手が加えられたかの情報も図面と一緒に管理され参照できます。ベテラン設計者の考えもしっかり継承していきます」と同社技術事業部設備技術シニアエンジニアの岡村勝実様は語る。
PDMを活用しはじめ、次に取り組むべき課題も見えてきたという。一つは営業部門とのデータ共有。「引き合い情報と、以前に受注した設計情報などを一元管理し、ひも付ければ、営業担当者の見積もり提示の大幅スピードアップが可能です。医療関連向けなど異業種への営業展開においては必須のツールになるはずです」(安藤様)。もう一つの課題について岡村様はこう語る。「不具合、トラブルなどのデータを、モジュール、それを構成するユニット、構成する部品に関連づけて蓄積すれば、装置の不調や故障時の迅速な原因究明、復旧に役立てられます。メーカーとして保守・メンテナンスサービスを展開し、顧客満足度を向上させるために重要なデータとなります」PDMを活用した設計技術のレベルアップにより、みずからビジネスチャンスを創出する企業体質へと変わり始めた同社だ。