坂本工業株式会社様では、紙ベースの情報伝達に起因する管理精度の低下、業務工数の増加といった積年の課題を解消するため富士通のPDM、PLEMIAを導入。BOM(部品表)ベースのPDMの活用で根本からの解決を図られました。第1ステップの稼働から1年半。設計・開発部門で作製されたBOM情報が部門内外との連携を可能にし、一気通貫のものづくり体制構築に確かな手応えを得られています。第2ステップでは会計業務との連携、さらに第3ステップでは全社ペーパレス化や物流システムとの連携などを計画されています。
坂本工業株式会社様は、エアークリーナーやエキゾーストパイプなど、自動車用保安部品や燃料タンクのメーカーです。坂本工業様の製品は、売上の6~7割を占める富士重工業をはじめ、ほとんどの国内自動車メーカーに納入されています。しかし、自動車部品業界は競争が厳しく、企業の実力、体力によって今後の生き残りが左右されかねません。そこで、将来を見据えて、「筋肉質かつシャープな身体づくり」のために富士通のPLEMIAを導入、PDMによる生産システムの業務革新に取り組まれました。
永島 立裕 様
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今西 正 様
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青木 茂 様
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岩崎 裕美 様
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樹脂燃料タンク(ホンダオデッセイ)
坂本工業様では従来、設計と製造部門の情報伝達をはじめ、部門間での情報のやりとりはすべてが紙ベースでした。それが結果的に管理精度は低下し、業務工数の増加を招いてました。「IT化をはじめ業務改善は部門単位に進めてきましたが、部門間のシームレスな連携に関しては、全く手つかずの状態でした」と製品開発部吸排システム設計2グループのグループ長、永島立裕様は語られています。
そこでPDMを中心に筋の通ったシステムを構築し、上流から下流に至るものづくりの一気通貫体制を目指すことにしました。
かつて、2000年問題の対応に迫られた時、坂本工業様では社内にCOBOL言語の分かる社員がいらっしゃらないため、苦労したことがありました。その経験を踏まえて、「誰にでも分かりやすいBOMを基本にした情報連携に取り組んでほしい」というトップの意向もありました。
技術情報検索画面
2002年に社内各部門の代表者で構成されるプロジェクトが発足し、業務の洗い出しや目標を決めた後、導入プロダクトを検討しました。その結果、富士通のPLEMIAが選定されました。総合企画部業務改革推進グループのグループ長、今西正様は選定理由について「厳格な決め事が要求されるプロダクトが多い中、当社のように初めて導入する企業でも使いやすいところを評価しました。ステップを踏んで拡張していける点も魅力でした」と語られています。
その言葉通り、坂本工業様では業務改革を一気に行うのではなく、3段階のステップを踏んで進めました。2005年8月に稼働した第1ステップでは、まず、受注情報をもとに、設計・開発部門が製品の構成情報や品目など、製品に関わる様々な情報を含んだ設計BOMを作成しました。その際、設計者は必要に応じて仕様書にコメントを付加し、その後、それらの情報をデータ形式で生産管理部門に渡します。生産管理側では、所要量や在庫、工程情報などを参考にしながら、製造BOMに落とし込み、工場に作業指示を出します。この一連の流れにより、開発と製造間のBOM連携が実現しました。
従来、開発・設計部門では開発情報を他部門に展開するツールがなかったため、設計変更が出た時、生産管理や工場で情報が錯綜するという問題がありました。また、同じ設計部内でもデータの蓄積や共有化が図れていなかったため、同じミスを繰り返すようなことも起こりました。
しかし、新システムの稼働後は、情報が共有化されました。例えば、開発・設計部門の各部署では各自各様に開発日程表などの帳票類を作成していましたが、PDMに蓄積されたBOMを加工することにより、これらの帳票類が簡単に作成できるようになりました。
また、生産管理側のシステムは、従来は部品手配の手段にすぎませんでしたが、PDMにより納品に必要な出荷情報や社内工場向けの製造指示、仕掛り在庫管理などが行えるようになりました。
設計部品表から製造部品表への連携
BOM構築で一番大変だったのが部品情報の入力でした。坂本工業様の取り扱う部品は、通常流れているものだけで約3万点、保守部品を含めると10万点にも及びます。これらの情報をすべて入力しなければなりませんでした。生産管理部生産管理グループのグループ長、青木茂様は「その作業だけで半年以上を費やしました」と、また同グループ第2管理担当の岩崎裕美様も、「もう、根性以外の何ものでもない、という感じでした」と語られました。現在情報精度をブラッシュアップ中とのことです。
開発・設計部門にも課題は残っています。「何があってもBOM情報は、上流から下流に向けてしか流さないというルールを作ったことで、情報の錯綜はなくなりましたが、BOM情報を、さらに製造しやすい形にする余地が残っているのです」(永島様)。
このため、1年半の実績と課題を踏まえ、対象車種を限定し、生産部門が展開しやすいようにBOM内容を充実させ、効率アップを図っていきます。
こうした一連の作業が順調に進めば本年4月以降、いよいよ次のステップに向かうことになります。第2ステップでは、原価管理や売上・請求・売掛・買掛などの会計業務との連携、さらに第3ステップでは、全社オールペーパレス化や調達物流(受注・出荷システム)との連動などを計画されています。