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Fujitsu

Japan

PLEMIA EngineeringDocfileManager 導入事例


川崎重工業株式会社 様

部品干渉などの設計不具合を大幅に削減多数の設計者による協調設計環境も整う

鉄道車両の設計業務に3次元CADのSolidMXと仮想試作システムのVPSを活用、2次元CAD時代に多発していた部品干渉による設計不具合の発生件数を大幅に削減した。車両を丸ごと3次元表示するデザインレビューなどは客先からも好評を得ている。またデータ管理にPLEMIAを採用、数百人にのぼる設計者がコミュニケーションを取りながら2次元/3次元CADデータや干渉履歴情報などを共有する協調設計環境を整備した。今後、ライブラリの蓄積やモデリング技術の習熟に伴いフロントローディングの加速が期待されている。

山守 博文 氏 山守 博文 様
川崎重工業株式会社
車両カンパニー 技術本部
設計部 室内設計課
課長

本田 尚丈 氏 本田 尚丈 様
川崎重工業株式会社
車両カンパニー 企画本部
企画部 IT企画課
主事

川崎重工業の車両カンパニーは、新幹線やニューヨーク市地下鉄をはじめ国内外に鉄道車両を供給する日本のトップメーカーである。鉄道車両は接客設備を持った車体と走行機能を持った台車で構成されるが、同社の兵庫工場はまさしくその車体と台車を設計・製造する重要な開発拠点である。

2次元/3次元の混合設計機能や操作性、高速表示性が選択の決め手

台北の地下鉄 台北の地下鉄

鉄道車両は車両1両に数万点にも及ぶ部品が搭載される。2000年代初頭まで、車両カンパニーの設計業務には主に2次元CADが用いられていたが、部品同士の相互干渉や部品の設計思想の不整合から生じる設計ミスに悩まされていた。同カンパニー技術本部設計部室内設計課 課長の山守博文氏は「2次元CADは、手で図面を描いていた動作をそのままコンピュータ上で行うだけなので、頭の中で描いた設計が的を射ているか、描いた事象が破綻していないかなどは、手作業時代同様、設計後に人間による検証が必要です。しかし、多数の設計者で共同設計を行うケースでは、検証ミスも起こりやすかったのです」と述懐する。

こうした不具合の解消には、人間によるオペレーションを極力排除し、図面を誰にでも見やすいモデルにする必要がある。そこで2004年1月、富士通の3次元CAD、SolidMXを導入した。決め手になったのは、操作性や高速表示性能、それに2次元/3次元の混在設計に優れている点であった。特に、車両の設計・製造では、ベースになる設計が3次元化されても、客先への図面提出時や部品の製作および取付時には2次元図面が必要となるので、3次元設計と併せて2次元の出図が必要となる。SolidMXは比較検討したほかのどの3次元CADよりも、その機能を満たしていた。また、従来使用していた2次元CADの後継機という性格もあり、「過去に蓄積されたデータが生かせるなど、3次元化にスムーズに移行できることが魅力でした」と社内のIT化を推進する同カンパニー企画本部企画部IT企画課主事の本田尚丈氏は語る。

不具合の発生を6分の1以下に自動干渉チェックシステムも始動

VPS画像例(北米向け地下鉄) VPS画像例(北米向け地下鉄)

2004年秋には仮想試作システムのVPS(Virtual Product Simulator)も導入。SolidMXに慣れるために、導入当初は車両の床下設計に限定活用していたが、3次元のモデルチェックやデザインレビューを行うためには、車両1台を丸ごと表示することが望ましい。ところが、操作性や表示性能のよいSolidMXでも、部品点数が6万点にも及ぶ車両のアセンブリ表示は荷が重かった。そこで導入したのがVPSだ。VPSは、データを軽いモデルで扱えるビューア機能だけでなく、動的干渉や、ホースのような軟体物の挙動検証といった設計・検証ツールとして活用できるのが特徴だ。

海外受注車両の多くの場合は、車両の製作の前に実物さながらのモックアップを製作する。モックアップ製作の主な目的は、製造上、メンテナンス上、営業運用上の問題点を事前に見つけ出し、解決することだが、客先の厳しいレビューが入る。SolidMX+VPSを活用することで、モックアップ製造前に設計内容を客先に説明することができるので、モックアップを作ってから不具合が発覚するのを防止できている。

不具合の削減では数値的に大きな効果が出ている。2次元CADで設計した5年前の北米向けの地下鉄車両の場合、最初のロットで数百件の不具合が発生した。ところが、2005年10月から約半年間、SolidMXを活用して設計した新型車両では、不具合件数を6分の1の百件弱まで削減できたのである。また、ここにきてVPSをベースとした自動干渉システムも稼働、不具合発生件数のさらなる減少と不具合チェックの省力化が期待されている。

3つのプロダクトを連携させてフロントローディングを進める

PLEMIAによるデータ管理 PLEMIAによるデータ管理

SolidMXとVPSの3次元モデルによる設計業務の効率化は、2005年秋に導入したPDMのPLEMIAによって、さらにレベルアップした。例えば、仕掛(設計途中)の2次元図面および3次元アセンブリとパーツデータの管理。従来は、欲しい情報がどのファイルに入っているのかを探すのに手間がかかることが多かった。他人のファイルに上書きしてしまうようなトラブルも起きた。「PLEMIAのよいところは、CADデータをコピーや移動、名称変更などをする場合もデータの構成を維持し、確認しやすいこと。以前はモデルが作りかけなのか完成しているのか修正中なのか分からないことがありましたが、それも解消されました」と山守氏が言えば、本田氏も「SolidMXでモデルを開かなくても、PLEMIAだけでモデルツリー構成が分かるので、ツリーのチェックが容易になった。1つのモデルツリーを共有し、皆で作業することにより、設計者間のコミュニケーションがよくなり、設計の平行作業がスムーズになりました」と口を添える。

SolidMXで作ったデータをVPSでレビューし、PLEMIAで2次元/3次元CADデータや干渉履歴情報などを一元管理する協調設計環境が整った。

同社では今後、ライブラリの蓄積やモデリング技術に磨きをかけ、設計フロントローディングを強力に進める考えである。

【会社概要】

川崎重工業株式会社

  • 本社:神戸市中央区東川崎町1-1-3 神戸クリスタルタワー
  • 設立:1896年(明治29年)10月
  • 資本金:1031億8700万円
  • 従業員:9795人(連結・2万9211人2007年3月末現在)
  • 事業内容:船舶、航空機、鉄道車両、二輪車など輸送機器を中心とする重工業メーカー。2001年より社内カンパニー制を導入。車両カンパニー兵庫工場は1906年の開設以来、国産第1号蒸気機関車をはじめ、鉄道史に残る数々の名車両を製造。現在も世界トップ水準の技術力を誇る。
  • URL:http://www.khi.co.jp/Open a new window