タクマグループのボイラ専門メーカーとして半世紀にわたる歴史を重ねてきた日本サーモエナーは、1999年にiCAD MXを導入して以来、数度にわたる業務改革を実施。既存図面の有効活用による設計効率の向上から、PDM(製品情報管理システム)や生産管理システムとのデータ連携、さらには3次元設計による生産現場や営業現場との連携強化へ。iCAD MXを軸とした同社の業務改革への挑戦は今も続いている。
[ 2019年3月制作 ]
業種: | 製造業 |
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設計品: | 各種ボイラおよび設備機器全般 |
製品: | FUJITSU Manufacturing Industry Solution iCAD MX |
株式会社日本サーモエナーは、1961年にタクマグループの熱源装置専業メーカーとして誕生。『汽罐報国』を理念に掲げ、ボイラやヒータなどの熱源装置を幅広い産業分野に提供している。同社の強みは蒸気ボイラや温水ボイラ、熱媒油ボイラなど、特徴ある製品を用途ごとにラインナップし、ユーザーごとの要望にきめ細かく対応していること。特に真空式温水機「バコティンヒーター」は1974年に世界に先駆けて開発したもので、国内市場の約6割を占めるトップブランドとなっている。
スーパーバコティンヒーターシリーズ GTLH-500、屋内仕様(潜熱回収型)(真空式高効率温水発生器・ガス焚・缶体出力581kW、効率105%(13A焚時))
スーパーエクオスシリーズ EQi(H)-6001NM/LM、3台設置 (貫流ボイラ・ガス焚・換算蒸発量6000kg/h(1台))
エクオスシリーズ EQS(H)-1002KM/KS (小型ボイラ・油焚・換算蒸発量1000kg/h(1台))
京都工場
技術生産統轄本部
技術本部 設計2部長
森 朗 氏
同社がCAD設計を導入したのは1988年のこと。当初は外資系ベンダーの2次元CADを導入していたが、同製品のエンハンス停止やPCのリース切れといった環境変化を踏まえ、1998年に新しいCADへの移行を決定。iCAD MXと海外メーカーの汎用的な2次元CADを候補に比較検討を開始した。
「比較検討のポイントは、操作性、図面変換、カスタマイズ対応、価格の4点でした」と振り返るのは、蒸気ボイラの設計を担当する京都工場 技術生産統括轄本部 技術本部 設計2部の部長を務める森朗氏だ。「操作性については、使い慣れた従来CADとほぼ同様に操作できるiCAD MXの方が技術者の負担が少ないと考えました。次の図面変換とは、従来CADで作成した既存図面を活用できるか、という意味です。ボイラ設計では構造の近い既存品の図面を再利用するケースが多いため、これができるかどうかで設計効率が大きく左右されます。結果としては、汎用2次元CADは変換可能かどうかの検討を含めて時間を要するのに対し、iCAD MXはほぼ100%の図面が容易に変換可能。これは大きな決め手となりました」と森氏は語る。
「カスタマイズ対応を重視したのは、先述した図面再利用を効率化するため、図面管理システムとの連動を計画していたためです。CAD自体のカスタマイズ性に加えてメーカーの対応力も評価しましたが、汎用2次元CADの場合は海外での対応になるのに対し、iCAD MXは国内対応のため、迅速なレスポンスが期待できると考えました」(森氏)。
価格面こそ汎用2次元CADに軍配が上がったものの、森氏をはじめとした検討スタッフはiCAD MXの導入を決定。「3つのポイントに加えて表示速度の速さも魅力で、設計効率の大幅な向上が期待できました。汎用2次元CADで同等の表示速度を実現するには、PCのスペックを上げる必要があり、そのコスト負担を考えれば、むしろトータルコストではiCAD MXの方にメリットがあると考えました」(森氏)。
タクマ・エンジニアリング
株式会社 京都事業所
京都設計課 専任課長
松本 英之 氏
「iCAD MXの導入にあたっては、既存のCADとの並行運用期間を設けず、一気に置き換えましたが、それが可能になったのも富士通の手厚いサポートがあったからこそ」と、実際に設計業務を担うタクマ・エンジニアリング株式会社 京都事業所 京都設計課 専任課長 松本英之氏が語ります。「操作性が従来CADに近いとはいえ、やはり操作方法の習得が必要でしたが、富士通から派遣された講師によるオンサイトでの集合教育により効率的に学習できました。運用開始後も一週間は富士通SEが常駐し、その後も必要に応じて来社してもらうなど、継続的なフォローに助けられました」。
図面変換やカスタマイズについても、富士通の対応への評価は高い。「既存CADで10年間にわたって作成した図面数は約5万枚と膨大なもの。これらをすべて富士通が一括変換したため、こちらの負担は一切かかりませんでした。また、同時に導入した図面管理システムと連動させるためのカスタマイズにも柔軟かつ適切に対応してもらえたので、スピーディーに切り替えることができました」(松本氏)。
京都工場
技術生産統轄本部
技術本部設計2部 設計課
塚原 丈夫 氏
1999年に導入されたiCAD MXは、表示速度の向上に加え、ファイル管理の容易さ、頻用する作業のコマンド化など設計者ごとの操作・表示カスタマイズが可能といった、数々のメリットが設計現場から好評を博した。これらの成果を踏まえ、導入当初の9ライセンスから、現在は21ライセンスに拡大していった。
その背景には、設計技術者の世代交代もあるという。京都工場 技術生産統括轄本部 技術本部 設計2部の若手、塚原丈夫氏はこう語る。「私たちの世代は学生時代からCAD設計が普通でしたので、むしろドラフターによる設計に戸惑いがあります。CAD設計環境が整備されていなければ、仕事に慣れるのにもっと時間がかかったのではないでしょうか」。
設計業務にCADが浸透していくなか、同社はその効率をさらに高めるべく、2015年にPDM(製品情報管理システム)によるシステム改革に着手。その狙いを、森氏はこう説明する。「図面管理システムとの連携により、設計時に必要な図面の検索・再利用が可能になったものの、その効果は限定的でした。というのも図面管理システムでは親子図面の紐付けや、図面に付随する部品情報までは管理できていませんでした。そのため、親図面をもとに子図面を検索したり、図面を出力して部品情報を確認・再入力したりといった手間がかかっていました」。
システム改革では、これら課題を解決するため、CAD図面内の部品情報などあらゆる情報をデータ化してPDMに登録。PDM内でE-BOM(設計部品表)やM-BOM(製造部品表)を作成し、図面と合わせた再利用を容易にした。さらに、PDMを生産管理システムとも連動させ、設計データを部品調達にも活用できる仕組みとすることで、設計部門だけでなく全社的な業務効率の改善にも役立てている。
タクマ・エンジニアリング
株式会社 京都事業所
京都設計課
山地 健 氏
iCAD MXは2次元/3次元ハイブリッド設計が可能だが、必ずしも3次元設計を前提とせず、2次元CADの後継機として導入されるケースも少なくない。同社の場合も、設計対象となるボイラ本体の形状が2次元平面の組み合わせであることから、3次元CADを導入する必然性は低かった。しかし、これまでの業務改革でボイラ本体の設計効率が大きく向上したことを受け、新たな挑戦として、難易度の高い配管設計に3次元CADの導入を進めている。
まずはタクマ・エンジニアリング株式会社 京都事業所 京都設計課 山地健氏が専任となって、既存の2次元図面をもとに3次元図面を作成。そこで実感したメリットを、山地氏はこう語る。「斜め配管など複雑な配管の場合、2次元設計では配管が設計通りにつながるかどうかの判断が難しく、製造現場に苦労をかけたり、設計をやり直すことも少なくありませんでした。3次元設計であれば、配管の接合位置を正確に計算でき、加えて配管同士や他の設備との干渉を設計段階で確認でき、作業困難な配管の発生も防ぐことができました」。
これらは3次元設計を導入する狙いそのものだが、他にも予想外のメリットが多々あったという。「iCAD MXで3次元図面を作れば、そのデータから容易に2次元図面が作成できます。また、斜め配管の角度を変える際や、違う方向から見た図面を求められた際、これまでは新たに作図する必要がありましたが、3次元設計なら数値を変えたり、画面上で回転させるだけで済みます。これには驚かされました」(山地氏)。 山地氏が体感した3次元設計のメリットは、設計業務の負担を大きく軽減できるものとして、他の設計スタッフからも注目を集めている。
エクオス EQS-1002KM 3次元データ
「3次元設計のメリットは、設計部門の効率改善だけにとどまりません」と松本氏は期待を込めて語る。「例えば、3次元図面を製造部門への作業手配書として利用すれば、完成形をイメージしながら効率的に作業できます。また、開発段階から3次元モデルを活用して、お客様や製造部門とともに検討すれば、再設計の削減など全社的な効率改善につながるはずです」。
こうした3次元設計のメリットを全社化すべく、同社では近く、山地氏による社内発表も計画されているという。もちろん、設計者全員が3次元設計に習熟するには時間もかかり、ライセンス費用の問題もある。すべてを3次元にするのでなく、ボイラ本体は2次元、配管は3次元というように、2次元設計と3次元設計をうまく融合させることがカギになるだろう。2次元/3次元ハイブリッド設計というiCAD MXの特性は、同社の業務効率化に、これからも大きな貢献を果たしていくはずだ。
所在地 | 〒601-8205
京都府京都市南区久世殿城町600番地の1 |
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代表取締役社長 | 泉 雅彦 |
会社設立 | 1961(昭和36)年8月 |
資本金 | 491,400,000円 |
従業員数 | 432名(2018年4月1日現在) |
事業内容 | 各種ボイラおよび設備機器全般の製造・販売およびエンジニアリング、メンテナンスサービス |
ホームページ | 株式会社日本サーモエナー様 ホームページ |
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