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Fujitsu

Japan

iCAD MX 導入事例


2次元3次元混在設計環境で図面を読み取る想像力を育成
-2次元図面と3次元形状の相関理解用教材として活用

国立高専機構 長野工業高等専門学校

国立高専機構 長野工業高等専門学校 様


長野工業高等専門学校では、2002年に3次元CADを導入し、2009年から正規のカリキュラムに組み入れた教育を実践。そのなかで2次元図面と3次元図面の相互関係を理解するために、手描きの機械製図実習と3次元CAD演習による設計能力習熟に力を入れてきた。その後、2次元3次元設計の整合性をより効果的に理解させる方法を模索した結果、2次元・3次元混在設計環境を実現したiCAD MXを導入。期待どおりの教育効果を得ている。

[ 2015年10月製作 ]

【導入事例概要】
業種: 文教
製品: FUJITSU Manufacturing Industry Solution iCAD MX

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長野県下の企業と密着した実践的教育、人材育成に尽力

国立高等専門学校機構(以下、高専)は、わが国の産業発展を支える実践的技術者の育成を目的とし1962年に設立された。その教育システムが、同じ高等教育機関である大学と異なる点は、中学卒業生を受け入れ、5年間の一貫教育を行い、国際的にも通用する開発型技術者を育成するところにある。メディアを通して熱戦が紹介される「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)」などの競技会は、学術、理論教育のみならず実践的教育や国際性を重視する高専ならではの教育を象徴するイベントといえる。

独立行政法人国立高等専門学校機構 長野工業高等専門学校(以下、長野高専)は、全国に51ある国立高等専門学校の一つであり、長年、県下企業との密接な関係を通した実践的な教育に力を入れている。同校校長の黒田孝春氏はこう述べる。「3年次、4年次では地元企業や公的機関の設計製造の現場に出向いて実務訓練を実施。問題を発見し解決していく実践力を身につけています」。また同校内に開設された、地域企業の技術支援、共同研究のための「地域共同テクノセンター」では、設計、品質向上をはじめ幅広いテーマのセミナーを年100回以上開催。地元企業の新人・中堅社員の人材育成事業にも力を入れている。

実践的なものづくり
実践的なものづくり

高専ロボコン
高専ロボコン

技能五輪「機械製図」への挑戦
技能五輪「機械製図」への挑戦

創造的なエンジニアに必須のデッサン力と手描き製図技能

「校長・博士(学術) 黒田 孝春 氏」写真

校長・博士(学術)
黒田 孝春 氏

「名誉教授・博士(工学) 岸 佐年 氏 」写真

名誉教授・博士(工学)
岸 佐年 氏

長野高専では2002年から世界的に普及しているミッドレンジの3次元CADを導入し、その教育に力を入れ始めた。2009年から正規のカリキュラムとしてスタートした3次元CAD教育では、操作の習得にとどまらず、『機械設計の7つ道具』、つまりJIS製図法、公差設計、機械材料、強度設計、信頼性設計、要素設計、加工法の知識や実技の体得を重視。そのなかで、CADの習得に先立ち、手描きによる製図の実習を取り入れた理由について、NPO「3次元設計能力検定協会」の設立に関わり、県下の教育機関への3次元CAD導入推進に携わってきた同校名誉教授の岸佐年氏はこう述べている。「手描きという手法はエンジニアの創造力に深く関わってくるからです。エンジニアは、ある物を創造する場合に、頭に浮かんだアイデアを洗練させていきます。そこで欠かせない能力が、物の全体を想像しながら、より美しくより機能的な形状を具体化するデッサンの力や、デッサンで描いた形を、ものづくり世界の共通言語ともいえる2次元図面に描く能力。したがって3次元CADの操作を教えるだけでは、エンジニアを育成する教育とはいえないのです」。

革新的な創造力を組立に導く想像力に繋ぐ力を育成したい

「電子制御工学科教授・博士(工学) 堀口 勝三 氏 」写真

電子制御工学科教授
博士(工学)
堀口 勝三 氏

2009年から始まったカリキュラムでは、それまで5年次後期で教えていた3次元CADを3年次に前倒し。さらに2年次に、手描きによる機械製図実習が組み込まれた。同校、電子制御工学科教授の堀口勝三氏は、「やはり、若いうちに3 次元CADに触れてもらいたい。ただその前に、2次元図面の作図能力をしっかりと習得して欲しかったからです」と、カリキュラムに込めた考えを語る。しかしカリキュラムを実践していく中で、新たに取り組むべき課題が見えてきたという。「学生たちは喜んで3次元CADに取り組み、面白がりながら使いこなしていきました。ブロックや積み木を組み合わせていくことで、アイデアを直接、3次元形状にできるので、絵を描くように3 次元図面を起こせるのです。ところが3次元CAD操作への慣れは予想以上に進む一方、2次元図面への落とし込みスキルの習得がどうしても遅れがちになりました。にもかかわらず『自分は、もう設計ができる』と思い込む学生も見受けられました」(堀口氏)。中には断面形状が四角形の穴を図面化して、それが加工できないことに気づかない学生もいたという。堀口氏は当時を振り返ってこう語る。「3 次元CADはたしかに学生の創造力を育ててくれます。しかし、創造力を組立可能な形状に落としこむ上で欠かせない2次元図面化の能力を鍛えるには、手描きの機械製図実習と3 次元CAD 演習の組み合わせだけでは十分ではない。このギャップを何とかして埋め合わせる育成手法あるいはツールがないものかと、正直、思い悩んでいました」(同氏)。

2次元設計と3次元設計の整合性を養うツールとして最適

2010年、iCAD MXを紹介された堀口氏は、2次元図面から3次元形状を想像し、逆に3次元形状から2次元図面を描き起こす能力の育成ツールになると確信したという。「導入しているミッドレンジのCADは3次元設計に特化していますから、2次元図面から3次元形状を認識する力を養うには、別に2次元CADを学ばせなければなりません。この点、ハイブリッドのiCAD MXであれば2次元3次元設計を同時に習得が可能。2次元図面と3次元形状を行き来しながら認識する、2次元3次元の整合性を養う育成ツールとしてはこれ以外にないとの結論に至りました」(同氏)。

2011年、iCAD MXを11ライセンス導入した同校は、2012年度から課外活動として、高学年向けの機械設計CAD講座と低学年向けCADセミナーを実践。堀口氏は、「機械製図の実習で製図を読み書きする能力を身につけておけば、組立不能の図面を描くという問題も起こらないので、低学年から積極的に3次元CADを学ばせることができます」と述べている。

3次元CADの基礎の上にアディティブ・マニュファクチャリングの素養を

iCAD MXを活用し10人単位で実践される課外活動は、まず2次元図面を見せ、3次元形状をイメージさせ、その結果をCADの表示と比較させる。あるいは3次元形状を表示し、そこから2次元図面を作成させるといった教材として活用されている。堀口氏は学生たちの反応について、こう語る。「やさしい演習から段階的にレベルを上げていくことで、学生は2次元3次元の整合性に自発的な興味を示すようになり、学年が上がるにつれ、かなり複雑な図面や形状の整合性を理解できるようになります」。また、校内に備えられたフライス盤を始めとする工作機械を使った機械加工実習と連携することによる効果も出ているという。岸氏は、「3次元CADで設計したデータをもとに実際に加工させることで、創造力をしっかりと形状に変えていく想像力が養われていきます。こうした演習とロボットコンテストを始めとする競技会を組み合わせることで、設計に対する学生のモチベーションをさらに引き出すことができるでしょう」と述べている。

堀口氏は、今後の取り組みについてこう語る。「現在は課外活動ですが、機械設計の7つ道具を強化する内容を盛り込み、いずれは本カリキュラムとしてスタートさせてまいります。例えば強度設計において、解析結果を鵜呑みにするのではなく、物理的に裏付けられる結果か、拘束条件が適切かなど洞察力を養うといったように、それぞれの道具つまり能力を高めるカリキュラムにしていきます」。

また堀口氏は、企業技術者への人材育成事業支援の経験を踏まえ、「企業における新人教育へのiCAD MX活用は有用であり、効果的な教育のあり方の研究も高専の使命ではないかと思います」と語る。岸氏はこれを踏まえて、次のように展望する。「すでに当校では10年ほど前から3次元プリンタの活用コンテストを開催するなど、次世代ものづくりの世界を切り拓くアディティブ・マニュファクチャリング(Additive Manufacturing)の教育に取り込んできています。3次元CADの活用能力をしっかりと身につけることで、こうした次世代ものづくり技術を駆使したイノベーションを形にする力をつけていく。それこそが高専に課せられた使命であると考えています」。

iCAD MXは、ものづくりの現場のみならず、次世代を担う若い世代の育成を力強く支えている。

手書き製図とCADとの連携
手書き製図とCADとの連携

機械加工とCADとの連携
機械加工とCADとの連携

設計教育へのCAD活用
設計教育へのCAD活用

【国立高専機構 長野工業高等専門学校 様 学校概要】
所在地 〒381-8550
長野県長野市徳間716
開設 1962年4月
学校長 黒田 孝春
学生数 本    科:1,024名
専攻科:56名
(2015年4月1日現在)
学科・専攻科構成 機械工学科、電気電子工学科、電子制御工学科、電子情報工学科、
環境都市工学科、生産環境システム専攻、電気情報システム専攻
国立高専機構 長野工業高等専門学校 国立高専機構 長野工業高等専門学校
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【導入事例(PDF版)】

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