製品設計において、納期の短縮につれ設計ミスは増加する傾向にあるといえる。調味料などの各種液体を包装するフィルムと、これらへの充填装置を製造販売する大成ラミックは、タイトな納期に対応するためiCAD MXを導入。新規製品の開発をステップにし、2次元設計から3次元設計へのビッグバン的移行に成功。手戻りを3分の1に抑えこみ、1カ月のリードタイムを 3週間に短縮するなど、設計のパワーアップを実現。液体・粘体包装機器のリーディングカンパニーとして躍進している。
[ 2015年6月取材 ]
業種: | 製造業 |
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設計品: | 充填機械・充填周辺装置・フィルム製造装置 |
製品: | FUJITSU Manufacturing Industry Solution iCAD MX |
大成ラミックは1966年の創業以来、主に食品用液体・粘体フィルムの製造販売を手がけている。フィルムの用途はインスタント食品や、いわゆる「中食」の弁当・惣菜類に添付されるソース・しょう油類、コンビニエンスストアの棚に並ぶサラダドレッシングの小袋がよく知られる。中食市場をはじめ食品関連のパッケージ対象は、例えばフリーズドライ品やすりおろし食材、ボイル殺菌食材など多様化の一途をたどる。同社はこうした新規領域のフィルム開発製造におけるリーディングカンパニーであり、常に各種フィルムの強度、耐熱性、遮光性、防湿性、ガスバリア性の向上に努めている。また同社は、これらフィルムの性能を最大限に引き出す高速充填装置の開発製造に活路を見出し、国内では唯一、フィルムと充填装置を製造・供給し、ワンストップでサポートを展開するメーカーとして知られる。1992年に製品化された「DANGAN」シリーズはコンピュータを搭載し、充填工程をすべてデジタル制御できる業界初の液体・粘体高速自動充填装置。同社独自開発の、手を汚さず簡単に開封でき注ぎ出しがスムーズな「アンプルカット」との組み合わせは、他社の追随をゆるさない高速ショット性能と使いやすさで高い評価を得ている。
液体・粘体高速自動充填機 DANGAN G
最新機種 DANGAN ASTRON
近年、充填装置の開発に力を入れてきた同社は、その設計開発においていくつかの課題を抱えていた。第1は手戻りの増加である。例えば、アンプルカットフィルムの小袋に液体素材を充填する装置では、シリーズの充填装置本体にオプションの装置を組み合わせる。オプション装置は小袋に賞味期限を印刷する装置や、高速充填を実現する装置、特殊な封入素材に対応する装置など多種多様。同社執行役員でデベロップセンター
センター長の新井宏一氏は、こう語る。「オプション装置は、顧客の食品メーカーごとに一品一様で設計することが珍しくありません。また、季節に合わせて市場投入する食品のためのオプション装置の場合、仕様が決まってから納品まで3カ月程度。設計期間が1カ月というタイトなスケジュールで設計しなければならないことがあり、穴あけ位置の間違いなどによる手戻りや、組み付け部品の発注漏れの発生要因になっていました」。発生原因の多くは、充填装置本体とオプション装置の取り合いや干渉チェックを、2次元図面で行っていたことによる見落としだったという。「干渉チェックでは多角的に検討を加える必要があり、そのための正面図、上面図、断面図、左右の側面図の作成が大きな負荷となっていました」(新井氏)。
そして第2の課題は、顧客との仕様検討、サポートサービスを担当する同社メンテナンスチームへの機能説明に時間を要していたことだった。同社デベロップセンター
研究開発部部長代理の松本久也氏は、こう語る。「仕様決定はお客様に図面を見ていただきながら進めるのですが、やはり2次元図面では一見して形状や構造を理解いただくことが難しく、時間を要していました。また製品完成後はメンテナンスチームに対し速やかに、機能、組み付け方、メンテナンス方法などを教育しなければなりません。しかし2次元図面では説明が難しく、実機を用いるのですが、内部構造の解説は大変でした」。
執行役員
デベロップセンター
センター長
新井 宏一 氏
デベロップセンター
研究開発部
部長代理
松本 久也 氏
デベロップセンター
研究開発部
チーフスタッフ
横山 直貴 氏
同社はこれら手戻りの発生や、顧客に対するプレゼンテーションの難しさ、そしてメンテナンスチームへの教育の非効率を根本的かつ一挙に解決する方法として、3次元CADの導入に踏み切り、iCAD MXを採用した。その理由について、同社デベロップセンター 研究開発部チーフスタッフの横山直貴氏は、このように語る。「運用中の、国内でもポピュラーな2次元CADの操作性に近く、既存の2次元図面データを元に、容易に3次元データを作成できる点を評価しました。実際に操作してみると直感的で分かりやすく、2次元設計ではかえって以前のCADより操作手順が少なくて済むことがわかりました。導入時における操作教育がしっかりしていた点、疑問点に対する迅速な対応など、国産CADベンダーならではのサポート体制にも満足しました」。
2001年、同社はiCAD
MXを導入。しかし受注するオプション装置をはじめ、納期がタイトであるため、設計者は手慣れた2次元設計から抜け出すことができず、3次元設計への移行を進めることができずにいた。横山氏はこう述べる。「とはいえ、新たな機能を搭載し、より高速充填できる後継シリーズの設計開発という最優先目標がありました。その実現は2次元設計ではまず不可能。3次元設計への移行が前提条件であることは明白でした。そこで新機種『DANGAN
G』の開発を機に3次元設計への移行を図ることにしたのです」。新機種の開発リーダーの立場にあった横山氏は、設計に関わる担当者が手慣れた2次元設計に頼ってしまう環境を排除することが必要と判断。流用が予想された現行機種の2次元図面データをすべて3次元データ化し、2次元設計への依存を断った。
「iCAD MX導入後も2次元図面で設計を進めていたため、2次元図面データすべての3次元データ化は相当大変になるだろうと思われましたが、評価したときと違わずiCAD
MXの同機能は使いやすく、作業は予想以上にスムーズに進み、新機種設計チームは3次元での設計を進めていけるようになりました」(横山氏)。
2次元設計から3次元設計への移行により、新機種「DANGAN G」の設計は迅速に進んだ。また同機以降、オプション装置もiCAD
MXで設計開発されるようになり同工程は大幅に効率化した。「iCAD
MXでは、充填装置本体にオプション装置をセットした状態で干渉チェックが可能となり、手戻りは3分の1に減りました。また、部品表の作成は自動化され、組立図の作成も大変スピーディーです。組立部門にビューアを導入したことで、『組立ミスが激減。ビューアのおかげで、設計者にあまり問い合わせすることなく組立作業が進むようになった』との声も寄せられています」(横山氏)。また松本氏は、「以前は設計、組立、完成まで1カ月という納期対応に手いっぱいでしたが、3次元設計への移行後は3週間に短縮し、余裕も生まれました。設計経験の浅い若手設計者でも図面を起こしやすくなったので、アセンブリの設計を任せるなどして、設計を分担できるようになったからです」と述べる。
さらに、課題だった顧客へのプレゼンテーションや社内のデザインレビュー、新製品教育も、3次元図面の利用で大きく改善。「お客様との仕様検討では、分かりやすい3次元図面を元に明確な要望をいただくようになりました。サポートチームの教育では、透視図などを活用し、短時間で正確に理解できるようになりました」(新井氏)。今後の取り組みについて、横山氏はこう述べている。「解析機能の利用者を増やし、解析の精度を上げることで過剰設計を抑制し、コスト削減につなげていければと考えています。また、モデルを管理し共用化を進め、各種の検索機能を整備するなどで、誰が設計しても一定の性能を備えた製品を設計できる環境を構築できると考えています」。
iCAD MXは、同社の開発力向上の重要なツールとなっている。
所在地 | 〒349-0293
埼玉県白岡市下大崎873-1 |
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代表取締役社長 | 木村 義成 |
設立 | 1966年3月 |
資本金 | 24億860万円 |
従業員数 | 433名 |
事業内容 | プラスチックフィルムを中心とした液体・粘体自動充填フィルム、レトルト袋、チャック袋の製造販売。液体・粘体用自動充填装置と周辺機器の販売及びアプリケーションサービス
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ホームページ | 大成ラミック株式会社様 ホームページ |
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