Skip to main content

Fujitsu

Japan

VPS 導入事例

2018年11月

村田機械株式会社 様


コンカレントエンジニアリングを推進し、
より良い製品をタイムリーに提供する体制を実現。

-試作組立時間の半減、開発リードタイム8ヵ月間短縮などを達成-

村田機械株式会社(以下:村田機械)・犬山事業所は、各種工作機械や自動倉庫などの物流システム、クリーンFA等の開発製造販売を担っている。以前から部門横断的に3D設計データの有効活用を推進してきた同事業所は、今回その戦略強化にVPSを活用。新機種開発プロセスにおけるコンカレントエンジニアリングを進め、設計の初期段階から後工程(生産技術・製造、加工、工事・サービス)の知見や気づきを吸収したフロントローディングを実現。同時に組立手順書の3D化と標準作業時間管理による生産体制強化を進め、QCD向上に大きな成果をあげている。

導入事例キーワード
設計品:
ロジスティクスシステム、FAシステム、クリーンFA、工作機械、シートメタル加工機、繊維機械、情報機器
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
VPS(DMU,MFG,GP4)

コンカレントエンジニアリングによるQCDの追求を目指す


岡山 登 様
製造本部 生産技術部係長

村田機械・犬山事業所では以前より、新機種開発に際して試作時に問題点を洗い出して、設計部門へのフィードバックを図る体制がとられていた。しかし、試作過程を待つ分だけ設計部門への指摘が遅れ、指摘に対する対応も不十分になりがちという問題が生じていた。全体最適の視点から、事業部横断的にものづくり全体の「あるべき姿」を打ち出し、その実現を進める製造本部 生産技術部 係長の岡山登氏は、こう語る。

「製品コストの80%は、設計段階で決定します。つまり出図までが勝負なんです。そこで、工程設計と組立検証をシミュレーションし、生産準備のフロントローディングを進めた垂直立ち上げと共に、3Dの組立手順書作成と、組立工程における目標時間の積上を目指しました」

これは、ものづくりの基本である品質にこだわりながら、設計の早期段階で問題点の芽を摘んで、無用な手戻りを排除。さらに、競争力と収益力の源泉となるコスト圧縮を追求し、開発リードタイムの圧縮を図ることで納期面でも優位性を発揮しよう、という戦略的な狙いによるものだった。


工程設計/検証ツールにVPSを選定、現場視点による指摘により設計精度アップが加速

早速、そのためのプラットフォーム選定が始められた。

「当初、3D-CADアドオンツールの活用も考えましたが、さらに高いパフォーマンスを求め、複数の候補をリストアップ。操作性や扱いやすさ、機能性などを総合的に評価・検討しました。その総合点や、すでに当社の情報機器分野でも同様の活用実績があったこと。さらに、機能追加や改善提案にもクイックに応えてくれる日本発のソリューションならではの対応性などをトータルに加味して、最終的にVPSを選定しました」

こうして、3D-CADデータを基に開発の早期段階から、組立プロセスを視覚的に作り込む体制が実現。今まで試作段階で、モノが出てから初めて可能になった後工程の視点による指摘を、構想設計・詳細設計の段階で吸い上げることができるようになった。

実際には、構想設計段階では細かい指摘はせず、組立の流れやサブアッセンブリの塊など、大まかな工程設計を行い、部品の分割位置など組立の大枠に関わる内容の指摘をする。その指摘を受けてさらに作り込まれた詳細設計段階では、細かな組順に至るまでの工程設計が示され、組立時の干渉や実際の加工性・組立性などが検証されるのである。ここで作りこんだ製造情報を含むVPSデータは手順書などの帳票作成にも流用できるため、1つのVPSデータから複数のアウトプットを効率的に作成する仕組みを実現できるのである。また、この製造情報を含む理解し易いVPSデータを組図替わりにする取り組みも試行中である。

構想設計段階では組立の流れやサブアセンブリのかたまりなど、大まかな組立工程設計を実施⇒部品の分割位置や配線経路・中継位置などを確認

詳細設計段階では細かい組順まで工程設計を実施⇒干渉や加工性・組立性などチェック

これら組立検証などの実績をベースとして、フロントローディングを促進するために事前の指摘評価者を生産技術部や組立工程に関わる人員から、さらに拡大。電気・制御、工事・サービス、調達など、生産後の工程を含めた全プロセスに関わる若手キーパーソンを一堂に会した検討プロジェクトチームを編成した。

下図は「VPS導入前」、「生産技術部のみでの事前検証」、「プロジェクトチームでの事前検証」を類似機種にして行った際の事前(試作機作成前)に設計製造課題のフィードバックができた割合を比較している。VPS導入前は0%、生産技術部のみで事前検証は19%、プロジェクトメンバーでの事前検証は55%のフィードバックが、実際にモノを作る前段階で上げることができた。

岡山氏は事前検証の定着のポイントとして、事業部の開発機種におけるフロントローディングに対する意識の高まりと生産技術が培ってきた3Dデータ活用の取組みがマッチしたことを挙げる。

このチームのおかげで、製品ライフサイクル全体を捉えた視点から製品を鍛え上げることができ、納品後日々製品を活用する顧客の視点に立った開発姿勢が一層加速されたのである。


標準作業時間の設定で効率的な生産体制が加速する

第二ステップとして垂直立ち上げを目指し、生産技術部にてVPSを活用した標準時間算出や組立手順書作成に取り組んだ。

標準作業時間算出については、従来から独自に作り上げていた作業時間算出用データベース(Excel)をVPS側のデータベースに移植することで、VPSの3Dアニメーションや手順を確認しながら、時間算出する仕組みを構築した。しかし、時間算出に必要なパラメーターの入力(例:手で取る、クレーンで取る)は手作業で行う必要があり、さらなる効率化が課題となっていた。そこで、3Dの属性(重量や部品名称など)や形状データなどを活用することで、パラメーターの自動入力ができないか徹底的に検討。パラメーター入力作業の45%の自動化を実現し、さらなる自動化を進めている。


組立手順書の3D化に挑戦し、確かなる効果を実証

3D-CADデータを基に、VPSを活用して組立手順書を3D化。その過程を通じて「作業者の見やすさを考慮て、概ね3~5点の部品をワンショットとして画面を築く」、「実際に組立を行う向きや作業者を意識したアングルとする」など、手順書作成の基本的なルールが確立されていった。

また、3D手順書の効果を定量化するため、「従来通りの組図での組立」と「3D手順書での組立」との比較検証を行った。結果として、組立時間達成率は60%から84%に向上。手順違いや組み忘れ、逆置きなどが排除されたおかげで、組図だと24回あった組立ミスも0になった。

従来の組図を見ながらの組立と事前に作成した3D手順書を活用した組立を比較

3D手順書の活用により組立時間が削減
組図の読み間違いによるミスも軽減

さらに、3D手順書の活用を試作から量産にまで広げることを目指し、VPS製造指示Viewerを導入。VPS製造指示ViewerはVPSの3Dアニメーションの画面を中心に据え、同一画面上に各種情報を表示。標準作業時間に基づくペースメーカーとともに、目標時間と現在の経過時間を提示することで、作業者が自ら作業水準を確認。また、操作ログ情報から作業の分析や改善を図ることで、さらなる作業精度向上も期待できるシステムとなっている。

以上、紹介してきた様々な努力の結果、開発段階でのフィードバック数は4.3倍に拡大し、試作組立時間は半減。さらに、VPS導入後の開発リードタイムも、生産技術部だけで検証した際には開発設計4ヵ月、試作組立~改良設計~ドキュメント作成まで20ヵ月だったが、プロジェクトチームの参画で短縮が加速した。事前検証が手厚くなった分、開発設計期間は6ヵ月に延びたが、改良設計での手戻りが排除され、ドキュメント作成までの期間は10ヵ月に半減し、トータルで8ヵ月の短縮が実現した。

村田機械・犬山事業所では、3Dデータを基盤に部門間をつなぐツールとしてVPSを活用し、大きな成果を上げてきた。さらに新たな取り組みとして、据付やメンテナンスなどの業務への3D活用も検討中だ。

【会社概要】

社名:村田機械株式会社

  • 本社:京都市伏見区竹田向代町136
  • 犬山事業所:愛知県犬山市橋爪中島2
  • 創業:1935年7月
  • 概要:ロジスティクスシステム、FAシステム、クリーンFA、工作機械、シートメタル加工機、
    繊維機械、情報機器などの製造販売